小笠原諸島振興開発審議会(第70回)会議録

 

日 時  平成14年5月28日(火)午後2時00分

 

会 場  中央合同庁舎3号館 国土交通省 11階 特別会議室

 

議 題  (1)会長、会長代理の選任について

     (2)平成14年度小笠原諸島振興開発実施計画について

     (3)小笠原諸島における振興開発のあり方について

     (4)その他

 

出席者  会       長  岡 本 伸 之

     会  長  代  理  秋 本 敏 文

     委       員    赤保谷 明 正

              小豆畑   孝

              伊 中 義 明

              岩 崎  美紀子

              台   たまえ

              麦 屋  弥 生

              山 下  生比古

              石 原  慎太郎(代理:東京都副知事 福永 正通)

              宮 澤  昭 一

              稲 垣      勇

     幹       事    澤 井  英 一 国土交通省都市・地域整備局長

              児 山 貴 一 小笠原総合事務所長

     国 土 交 通 省    森 下 博 之 国土交通大臣政務官

              坂 山  修 平 国土交通大臣官房審議官(都市・地域整備局担当)

              本 保 芳 明  国土交通大臣官房審議官(海事局・港湾局担当)

              阿 部   健  都市・地域整備局総務課長

              大 木 健 一  都市・地域整備局特別地域振興課長

     東   京   都  高 橋 敏 夫 総務局島しょ・小笠原振興担当部長

 

              目    次

 

1.開    会 

2.議    事

  (1) 会長、会長代理の選任について

  (2) 平成14年度小笠原諸島振興開発実施計画について

  (3) 小笠原諸島における振興開発のあり方について

   (4) その他

3.閉    会

 

              開    会

 

○大木課長 本日は、お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 私は、国土交通省都市・地域整備局特別地域振興課長、大木でございます。

 本日は、本年3月25日付をもちまして委員の皆様方が任命換えになられましてから初めての審議会でございます。会長が選任されるまでの間、私が進行役を務めさせていただきます。

 小笠原諸島振興開発審議会委員13名のうち、現在11名のご出席をいただいておりますので、只今から審議会を開催させていただきます。

 それでは、委員の皆様のご紹介をさせていただきます。

 まず、再任の方からご紹介申し上げます。

 赤保谷委員でございます。

 秋本委員でございます。

 小豆畑委員でございます。

 伊中委員でございます。

 岩崎委員でございます。

 麦屋委員でございます。

 宮澤委員でございます。

 稲垣委員でございます。

 沼田委員は本日ご欠席でございます。

 また、台委員は遅れてご出席とのご連絡をいただいております。

 また、石原委員の代理といたしまして、福永副知事が出席されております。

 次に、新任の方をご紹介いたします。

 岡本委員でございます。

 山下委員でございます。

 委員の一覧は、お手元の資料1のとおりでございます。

 また、国土交通省の人事異動によりまして、現地の総合事務所に児山所長が着任いたしましたので、ご紹介いたします。

 なお、都市・地域整備局長は、本日出席の予定でございますけれども、急きょ国会の方に呼ばれておりまして、終わり次第出席の予定でございます。

 

 

              議    事

 

        (1) 会長、会長代理の選任について

 

○大木課長 それでは、まず最初の議題といたしまして、当審議会の会長の選任をお願いいたします。

 会長の選任は、小笠原諸島振興開発特別措置法第12条第5項の規定によりまして、委員の皆様方の互選によることとなっております。

 皆様方のご意見を頂戴したいと思います。

○赤保谷委員 前の森会長さんには、非常に捌きよくお務めいただいて、ありがたく思っております。森さんが退任されまして、岡本委員に会長をお願いしてはいかがかと思います。

 岡本委員は、観光学を専攻され、そちらの方面での第一人者でもございますし、地域振興関係でも幅広い見識をお持ちだと伺っております。また、東京都の観光事業審議会の会長を務めておられる。したがいまして、こういう審議会の捌き役、会長として適任だと思いますので、岡本委員を会長にご推薦申し上げます。

○大木課長 只今赤保谷委員から、岡本委員に会長をお願いしてはどうかとのご提案がございましたが、いかがでございましょうか。

            〔「異議なし」の声あり〕

○大木課長 皆様ご異議がないようでございますので、そのようにお願いいたしたいと思います。それでは、岡本会長、よろしくお願いいたします。

○岡本会長 ただいま皆様のご推挙によりまして、会長の職を務めることになりました岡本でございます。よろしくご協力をお願い申し上げます。

 なお、会長代理につきましては、法律の規定(小笠原諸島振興開発特別措置法第12条第6項)により、会長による指名ということになっておりますので、私からご指名させていただきたいと思います。秋本委員にお願いしたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

○秋本会長代理 会長代理ということでご指名をいただきました秋本でございます。

 岡本会長の下、委員の方々のご意見をよく承りながら務めてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○岡本会長 それではここで、森下博之大臣政務官からご挨拶をいただきたいと存じます。

 

              〔挨    拶〕

 

○森下政務官 ご紹介いただきました森下でございます。

 岡本会長、秋本会長代理、また、委員の先生方におかれましては、大変ご多用中にもかかわりませず本審議会にご出席をいただきまして、誠にありがとうございます。

 さて、小笠原諸島は、昭和43年の本土復帰以来、特別措置法の下で産業の振興、社会基盤の整備などの各種施策を実施し、相応の成果を挙げてきたところであります。

 しかしながら、本土から 1,000キロ以上も離れた外海離島であるという厳しい自然条件の下にありまして、住民の定着、産業の振興、交通手段の改善など、引き続き多くの課題を抱えておるところであります。

 これらの課題を解決し、島民の生活の安定と地域の自立的発展を図るため、これまで、小笠原諸島振興開発計画にしたがいまして、道路、港湾や生活基盤施設の整備などを着実に推進してきたところであります。

 また、国土交通行政につきましては、昨年1月の国土交通省発足以来、統合のメリットを活かしまして、無駄なくスピーディーに、また、コストダウンを図りつつ、政策評価の導入も含め、質の高い施策を展開するよう努めてまいりました。小笠原諸島につきましても、今後、再編統合による施策の総合性を発揮し、振興開発を推進してまいりたいと考えておるところであります。

 さて、本日の審議会におきましては、平成14年度の小笠原諸島振興開発実施計画についてご審議をいただくとともに、豊かな自然環境を活かした振興開発など、小笠原諸島の今後のあり方につきまして、忌憚のないご意見をいただきたいと考えておるところであります。

 諸先生方のご意見を踏まえまして、今後の振興開発に活かしてまいりたいと考えておりますので、委員の皆様方におかれましては、引き続きご支援賜りますようお願いを申し上げる次第でございます。

 以上、簡単でございますが、私の挨拶とさせていただきます。

 先生方、どうかよろしくお願いをいたします。

○岡本会長 どうもありがとうございました。

 なお、森下政務官におかれましては、所用がございますので、ここでご退席されます。ご了承願います。

○森下政務官 誠に申し訳ございません。どうかよろしくお願いいたします。

 

              〔政務官退席〕

 

      (2) 平成14年度小笠原諸島振興開発実施計画について

 

○岡本会長 それでは、早速でございますが、会議次第により議事を進めたいと思います。

 「平成14年度小笠原諸島振興開発実施計画」について諮問されておりますので、この件につきまして審議いたしたく思います。

 それでは、事務局から説明願います。

○大木課長 お手元の資料2「平成14年度小笠原諸島振興開発実施計画」によりまして、ご説明申し上げます。

 1ページをおめくりいただきたいと思います。

 この実施計画につきましては、小笠原諸島振興開発特別措置法の第5条に基づきまして、毎年度の振興開発事業につきまして、東京都知事が計画を作成し、国土交通大臣に協議し、同意を得ることとされております。また、国土交通大臣は、同意をしようとするときには、あらかじめ審議会の意見を聞くこととされているところでございます。

 1ページの「基本方針」でございます。

 小笠原諸島につきましては、昭和43年6月に本土に復帰して以来、特別措置法に基づきまして事業を推進してまいりました。現在は、新小笠原諸島振興開発計画に基づきまして、東京都あるいは小笠原村等が実施する事業に対して補助金を交付し、交通施設や生活基盤の整備を行うとともに、産業の振興を図り、村民生活の安定と小笠原諸島の自立発展を促すための事業を推進することとしております。

 「事業概要」でございますけれども、主なものをご紹介させていただきます。

 1に「小笠原諸島振興開発事業費補助」とございますが、これは公共施設等のハード面の整備費でございます。

  (1)の交通施設整備費補助におきましては、父島の二見港等の港湾整備でありますとか、都道や村道の整備を行います。

  (2)の産業振興・観光開発費補助におきましては、避難港としての機能を有する母島漁港の整備でありますとか、観光開発といたしまして園地や遊歩道の整備を行うこととしております。

 2ページにまいりまして、 (3)が生活基盤施設等整備費補助でございます。

 主なものといたしましては、「情報通信基盤整備」とございますけれども、島内の地域情報化を進めるための計画の実施設計を行うこととしております。これは新規事業でございます。その他、母島におけるごみ処理施設の整備や父島の診療所へのCTスキャン施設の導入等を行うこととしております。

 2の「小笠原諸島振興開発費補助金」と申しますのは、いわばソフト面の補助でございまして、診療所の運営費や、都や村が行う各種調査費等でございます。

 3の「小笠原諸島調査」と申しますのは、国が行う調査でございます。

 3ページにまいりまして、総括表がございます。

 小笠原諸島振興開発事業費といたしまして、一番上に数字がございますけれども、平成14年度におきましては事業費で31億円余り。うち国費が18億4千万円余りとなっております。前年度と比較いたしますと、事業費で4億9千万円、国費で3億7千万円ほどの減額となっております。これは、小笠原諸島は極めて狭い地域でございますので、その時々の事業の進捗状況におきまして増減があるのはやむを得ないと考えておりまして、地元の要望を十分踏まえたものとなっていると考えております。

 6ページ以降に各事業ごとの細かい実施計画が書いてございますけれども、説明は省略させていただきたいと思います。

 以上でございます。

○岡本会長 ありがとうございました。

 それでは、只今の平成14年度小笠原諸島振興開発実施計画につきまして、ご質問、ご意見等がございましたらご発言をお願いいたします。

○小豆畑委員 今のご説明を伺って、国費ベースで18億。最盛期の半分近くに落ち込んでおります。現地の経済状況をよく聞いてみますと、振興開発事業の年々の縮小によって、小笠原は経済的な行き詰まりがかなり出てきておるように聞いております。昨年はホエールウオッチングの先駆者でありました方が命を絶つ以下、労務者の数が少なくなる、飲食店の灯が消える等々の状況が続いているようでございます。そこで、これは各省庁に対するお願いでございますが、困難なことは重々承知の上で、2点ほどのお願いをしたいと存じます。

 1点は、この特別措置法は通常の市町村の事業、都道府県の事業に対する補助金のかさ上げをすることが原則になっております。お願いをしたいのは、補助金のかさ上げもさることながら、補助金の対象事業を拡大していただけないかということです。具体的には、例えば持ち家政策をこの事業の中に導入していただけないか等々でございます。

 もう1つは、これも困難なことで恐縮ですが、新しい事業をすることについては、あるいは継続事業についてはこういう補助金を頂戴できますが、一度造った施設に対する維持管理については、村が独自に、あるいは東京都が独自に行わなければいけないことになっております。例えば小笠原村の水道事業で造らせていただいたダムは、年々土砂の流入で貯水量が減少しております。港の維持管理についても土砂が堆積しております。それらはこれらの補助対象事業にならないと承知しております。したがいまして、維持管理費についても、特別措置法でありますから、非常に難しい課題であるのは承知でありますが、ご再考いただけないか。この2点でございます。

○岡本会長 どうもありがとうございました。

 補助金の対象、とりわけ持ち家制度、造られた施設の維持管理についてご意見を頂戴いたしました。いかがでございましょうか。

○大木課長 今のご意見に対してでございますけれども、まず、持ち家に対して補助金をということでございまして、村からも、宅地造成に関してどうにかならないのかというご要望は以前から伺っているところでございます。しかしながら、持ち家と言いますと個人の資産形成に繋がるものでございまして、それに対して直接的に補助金を国として交付するというのはなかなか難しいと考えております。村が行う宅地造成に関連する公共施設としての例えば道路の整備とか、そういった形で間接的な支援ということは可能かと思いますけれども、直接というのは非常にハードルが高いと考えております。

 それから維持管理に関しての補助金でございますけれども、これも小豆畑委員がおっしゃったことではございますが、基本的に維持管理というのは、それぞれの管理するところが、あるいは受益者が行うというのが一般的な原則になっていると考えておりまして、これも、新たにそういう制度を創設するというのはなかなかハードルが高いのではないかと考えております。

○岡本会長 その他ございませんでしょうか。

○岩崎委員 この計画は、東京都が作成して、この審議会の同意を得て国土交通大臣が承認という手続きですか。

○大木課長 国土交通大臣の同意です。

○岩崎委員 同意ですね。先程そう伺ったわけでありますけれども、名目上は東京都知事が作成ということになっているかと思われますが、その際地元の小笠原村の方々の意見がどの程度反映されているかということを、まず事務局に対してお聞きしたいと思います。

 2点目として、今の小豆畑委員の発言に関連するのですけれども、私の推測から言えば、地元の希望よりも、ハード面の小笠原諸島振興開発事業費補助というのと、先程のご説明でソフト面の開発費補助金と、3つ目が調査ということですけれど、私は今3期目だと思うんですが、この割合が余り変わっていないような気がいたします。つまりハード重視でありまして、ソフト面ですとか、そういうものが非常に低い。

 もう少し言わせていただきますと、補助の対象になるものも決まっているのだとすると、余りにも硬直的過ぎるのではないかという気がします。もうだいぶ整備が整っている部分もあるし、社会経済状況の変化に合わせてニーズは変わってくるわけでありますので、補助の対象が余りにも硬直的ではないかということを2点目にお聞きしたいと思います。

 3点目ですけれども、全部関連するのですが、造ったものを維持管理するというのは、これから全ての公共の公物に関して問題になってくると思うのですが、これは造った人が責任を持つという方向に行くのかなと。これは現在議論中だと思うのですが、そろそろどのような維持管理をしていくかということも考えていかなければならないわけでありまして、特に太平洋の真っ只中にある島では、維持管理の費用と言いましょうか、潮風を受けて早目に傷むとか、そういうことがありますので、本土での償却期限、何と言うのでしょうか。何年間もつとか、そういうものよりもうんと早いと思うんです。そうしますと、建てたものを有効に使うというのは、いかに維持をして管理をしていくかということもあると思いますので、それは管理するところがやれば良いというふうに余りおっしゃらないで、もう少し検討していただけないかという気がいたしますけれども、以上3点をお聞きしたいと思います。

○岡本会長 ありがとうございました。

 どうぞ。

○大木課長 実施計画につきましては東京都が作成することになっておりますけれども、実質的には村の意見を十分聞いて作っていると承っております。

 それから、ハード、ソフトでソフトが弱いのではないかというご質問ですけれども、小笠原に関しましては、これは日本の中でも小笠原だけなのですが、ハード、ソフトを一体として行政部費として、公共事業費とは別に予算計上しておりまして、その辺の融通は非常に利くと考えております。したがいまして、この数字も、国の方から枠があってどうしているというよりも、地元の要望を踏まえて国として予算化したものでございます。

 それから、維持管理につきましては、先程と同じ答になってしまうのですけれども、特別扱いというのはなかなか困難ではないかと思っております。耐用年数が来た場合の改築に関しましては補助の対象になっておりまして、小笠原に関しましても、既に30年以上経ちまして、改築事業も出てきております。

 新規の補助対象といたしまして、これはソフトかハードかと言えば、この中ではハードの方に含めておりますけれども、情報通信基盤整備がございまして、これにつきましては、村の要望を踏まえまして新たに今年度制度化したものでございます。

○岡本会長 では、東京都からも。

○高橋部長 東京都でございます。

 1点目のご質問について補足させていただきます。

 地元の要望をどういう形で取り込んでいるかということにつきましては、地元の議員さん、村長さん、常時上京されて私どもへ陳情されるケースはかなりございますので、その時点で個別具体的にご要望をお聞きするということと、実施計画の策定に際しましては、村当局と十分ヒアリングを行いまして、村と合意の上で実施計画を策定するという形で作成させていただいております。

 以上でございます。

○岡本会長 審議官どうぞ。

○坂山審議官 5年間を切って法改正をやりまして、その法律システムを前提に事業計画を毎年度作る。今回、今年度の事業計画についてご審議をお願いしておるのですが、そういう状況のところでも、先程課長が申し上げましたように、情報通信基盤整備みたいなものについては補助対象事業に新たに加えるということもやっておりますし、先程小豆畑委員からもありました持ち家政策の話。持ち家政策というのはかなり大きな話になりますけれども、それとか、管理での特に堆砂みたいなものについてどうなのかということについては後程議論が出てまいります。

 これは今年からすぐということはご勘弁いただきたいと思うのですが、後程ご説明申し上げますけれども、法律の期限を睨みながら、現状どうなのかとか、振興開発自体をどうしていくのか、どうしていったら良いのかということを検討させていただきますので、その辺で村からも実情をよく聞かせていただきますし、都とも十分調整させていただきながら、小笠原の振興開発としてどうしていったら良いのかということをいろいろ勉強してまいりたいと思っております。

 成案ができましたら、この場にも相談させていただいて、再度ご議論いただく場を考えさせていただきたいと思いますので、いろいろ実情を聞かせていただきながら勉強させていただきたいと思っております。

○秋本会長代理 今、審議官からお話がありましたので重複しますけれど、後で議題になるはずの振興開発事業の総合調査という報告書の中で、この調査については私も参加した研究委員会で議論をしたのですが、その報告の中に書かれておりますことの1つに、振興開発事業のあり方。これが従来ハード中心ということで来たけれども、もっとソフトを考えていく必要があるのではないかといったことも書いてあります。それから、情報通信関係などについては喫緊の課題として力を入れていくべきではないか。つまり、振興開発事業のあり方についてもいろいろな面で考え直さなければいけないのではないかといったことが問題意識として書かれておりまして、この後議論になるであろうと思います。

 維持管理ということで小豆畑委員からお話がありました点も、維持管理と言ってしまうと国の方の助成対象にはしにくいかもしれませんが、維持修繕というか、大規模修繕というか、改修というか、そういうふうに見れば、検討の余地がひょっとしたら出てくるものもあるかもしれませんので、いろいろな対象事業を柔軟に見ながら可能性を考えていくということにしたらどうかという気がいたしますので、そういったことも含めてのこれからの検討ではないかという気が私はいたします。

○岡本会長 小豆畑委員、岩崎委員、どうもありがとうございました。

 稲垣委員どうぞ。

○稲垣委員 先程小豆畑委員から持ち家制度の補助についてありましたけれども、家そのものに補助というのは確かに難しいだろうと思いますが、運賃補助の拡大ができないかどうか、ご検討をお願いしたいと思います。

○岡本会長 ありがとうございました。

 課長、この件について何かございますか。

○大木課長 特には・・・。

○岡本会長 では、その他。

 麦屋委員どうぞ。

○麦屋委員 麦屋です。

 質問というよりは意見なのですけれども、皆さんのご意見を伺わせていただいて、私は、公共事業というのはこれからは量よりも質の時代に入るのではないかと感じています。これはいろいろな審議会でも議論されていることだと思うのですけれども、例えば港を整備しますという場合に、ただ整備するということではなく、どんなふうに整備するのかということが問題なのであって、そういう意味では、予算の金額だけではなく、中身を見ながら評価していかなくてはいけないのかなと思いました。

 1つ観光的な立場から申し上げると、小笠原というのは、観光の島と言うとあれですけれども、日本国民にとっては癒しの島であり、憧れの島の1つだと言うことができると思うんです。そうであれば、港や道路を整備するにしても、環境に配慮したとか、環境と共生できる、癒しを感じられる、そんな港や道路でございますということが表現できるような、そんな整備をしていただきたいと思っております。

 公共事業をする場合に、コンペ方式とか、入札とか、いろいろおやりになって、今の場合はほとんどが価格競争のような形で、できるだけ安く良いものを造れるようにという形になっていると思うのですが、小笠原の特に観光開発の事業に関しては、ホテルにしても、遊歩道にしても、ただ泊まれれば良いとか、ただ通れれば良いというレベルでは不十分だと思うんです。そういう意味で、小笠原に関しては別の判断基準で、より小笠原に合う公共事業を進めていけるような、非常に抽象的で恐縮なのですが、お考えいただきたいと思っています。

 先程来、小豆畑委員や岩崎委員からお話しされている維持管理の話でも、観光に関して言えば、遊歩道ができたから終わりということではなくて、そこをどういうふうに快適に通れるように維持管理していくかというのは非常に重要なことで、遊歩道を造るという時に、造る前の実施設計の段階で、できればソフトの部分の提案というか、島民の方々が維持管理に参加できるような仕組みも併せて作っていくとか、そんなことができないかなと思います。

 それと、9ページの「観光開発」の自然公園施設の事業についてですけれども、これを拝見して、遊歩道の整備というのは、言ってみれば観光利用を促進するための事業。植生回復というのは、ある意味で環境保全のような、そういう視点のものかと思うのですが、観光利用と環境保全という、従来ならば対立すると言われている2つのものをいかにうまく調整をしながら小笠原の中で進めていくかという、計画というのでしょうか、コンセプトというのでしょうか、方針というのでしょうか、そういうものが恐らくあると思うのですが、その辺りのお話も併せて・・・。後で出てくるのでしょうかね。よりこの事業についてわかり易いなというふうに思いました。

 以上です。

○岡本会長 ありがとうございました。

 どうぞ。

○山下委員 お願いと質問を兼ねたようなことなのですが、今日の資料を拝見していますと後程ご説明があるようですので、私の発言は早まっているかもしれませんが、テクノスーパーライナーについてお聞きしたいんです。

 1つは、資料にも出ているようですが、16年ぐらいには本格的に小笠原航路に就航するようですけれども、港の対応が、ハードとか、あるいはソフトの面での対応みたいなものもあるのかと思いますが、そういうものがきちんとなされる形になっているのか。予算表なんかございましたけれども、ああいうところに入っているのかどうかということが1つ。

 2番目はお願いなのですが、テクノスーパーライナーが実用的な航路に就航するのは、確認しておりませんのでよくわかりませんが、これが世界で初めてではないかという気がしております。そういうことだとしますと、私など海運に関わっている者からしますと、大変大きなエポックだと受け止められるのではないかと思いますので、振興ということをやる上での契機になるだろうと思います。そういう意味も含めまして、今のお話にもありましたようなソフト面で特段の対応を考えるとか、そういう工夫をなさいますと、単に航路の時間が短くなるということだけでなくて、それ以外にもプラスアルファのいろいろなメリットが生み出せるのではないかという気もいたしますので、2番目はお願いでございますが、私の意見でございます。

○岡本会長 ありがとうございました。

 どうぞ。

○高橋部長 東京都でございます。

 第1点目の港湾施設の件でございますけれども、今計画している船ですと、小笠原につきましても、東京港についても、大規模な投資をしないで係船は可能だと考えております。ただ、特殊な防舷材の使用が予定されていますので、そういうものを運航開始までの3年間にどうやって整備していくかという点が残っております。

 整備ヤードとか、これから具体的に検討しなければいけない問題がかなりありますけれども、それは就航までに十分検討できる時間があるだろうと考えております。

○岡本会長 ありがとうございました。

 他にいかがでございましょうか。

 よろしゅうございましょうか。

 ございませんようでしたら、諮問された「平成14年度小笠原諸島振興開発実施計画」につきましては、適当である旨答申することといたしたいと思いますが、いかがでございましょうか。

           〔「異議なし」の声あり〕

○岡本会長 ご異議ないようですので、そのように答申することといたしたいと思います。

 なお、この後の取り扱いにつきましては私にご一任いただきたいと存じますが、この件はいかがでございましょうか。

           〔「異議なし」の声あり〕

○岡本会長 ありがとうございました。

 それでは、そのようにさせていただきたいと思います。

 では、今日は沢山議題その他もございますので、次に進めさせていただきます。

 

      (3) 小笠原諸島における振興開発のあり方について

 

○岡本会長 続きまして、「小笠原諸島における振興開発のあり方について」を審議いたしたく思います。

 ここでは、小笠原諸島の抱える課題、あるいは今後の小笠原諸島に関する施策のあり方について、幅広い観点からご自由なご意見をいただきたいと思います。

 議論の材料として、国土交通省及び東京都より資料が提出されておりますので、ご説明をお願いします。

○大木課長 お手元の資料3「小笠原諸島振興開発に関する総合的な調査について」によりまして、ご説明申し上げます。

 1ページおめくりいただきますと、「はじめに」のところに、この調査の趣旨が書いてございます。

 小笠原につきましては、現行の小笠原諸島振興開発特別措置法が平成15年度末で期限を迎えます。このため、これまで実施してまいりました振興開発政策を総合的に評価して今後のあり方を明らかにしよう、そういうことから平成13、14年度の2カ年にわたりまして本調査を実施しているところでございます。

 この資料は13年度の調査における検討の成果を中間的に取りまとめたものでございます。取りまとめに当たりましては、これまで実施してまいりました事業の評価、あるいは残された課題を明らかにする、今後の振興開発のあり方を模索する、そういった視点に立っております。

 1ページが「特別措置法の制定、延長の経緯」でございます。

 小笠原に関しましては、昭和44年に特別措置法ができました。復帰までの間の長期にわたる島民不在によりまして荒廃に任されていたこと、本土から約 1,000キロと非常に遠く離れた地にあるといったことから、復興の前途は多大な困難が予想されまして、小笠原諸島の復興に関しましては国が責任を持って取り組むことが必要だという認識がなされまして、昭和44年に法律が制定されたわけでございます。

 特別措置法は、その後5年ごとに6回の延長がなされて今日に至っております。現在は、一番下にあります「新小笠原諸島振興開発計画」を推進しているところでございます。

 3ページにまいります。「小笠原諸島振興開発の特色」でございまして、3点にまとめております。

 第1は「特別の法制度と予算の仕組み」ということでありまして、特別措置法に基づきまして東京都が振興開発計画の案を作成し、国が決定する。毎年度の実施計画につきましても東京都が作成し、国が同意するという形になっております。

 また、公共施設整備を含めまして、1つの主務官庁、現在は国土交通省でございますが、振興開発事業予算全体を一括して計上し、直接執行する、こういう体制になっております。

 第2が「新しい村づくり」ということでありまして、復興計画を作成した際に、土地利用に関しましても具体的に地域区分を決めまして、一島一集落主義のもとに、計画的に新しい集落を建設したという経緯がございます。新しい地域社会をいわばゼロからつくり上げたという特色がございます。

 第3は「強力な支援措置」ということでございまして、平成12年度までに投じた振興開発事業費を見ますと、ハード面のみですが、国費で 632億円、事業費 1,076億円となっております。

 また、次のページにございますが、毎年度の予算を一般離島と比べますと、1人当たりの事業費で、現在におきましてもかなり多い数字になっております。

 4ページですが、小笠原に対する補助制度といたしまして、例えば道路、港湾等の通常の公共施設整備につきまして、国庫補助率が一般離島よりも更にかさ上げされていること、採択基準が緩和されていること、その他の事業につきましてもニーズに応じた予算配分を行うことが可能となっている。また、小笠原の特殊事情を背景とした独自の事業もあるということで、他の地域とは様々な点で異なる特別の制度が行われているところでございます。

 5ページ以降が「これまでの振興開発の成果と課題」を9つの側面からまとめたものでございます。

 まず、「(1) 島内インフラ」でございます。

 振興開発事業により、島民の日常生活に必要な道路、上下水道、学校施設等につきましては着実に整備が進展してきております。他の離島と比較いたしましても整備水準は遜色がない、むしろ上回っているものが多いと考えております。

 6ページでございますけれども、一方で高次の医療や文化等のサービスにつきましては、一定の水準を確保することがなかなか難しいと考えております。特に医療につきましては、救急医療あるいは専門医の配置等につきまして問題を残しておりまして、島民のアンケート調査によりましても満足度が低くなっております。

 また、住宅につきましては、先程もご意見がございましたけれども、公営住宅が大量に供給されましたが、反面、持ち家率は低いという状況になっております。

 7ページでございますが、今後の課題でございます。

 基礎的な島内のインフラにつきましては、今後は既存施設の適切な維持管理、あるいは施設の老朽化やニーズの高度化に対応した改築等に努めるべきではないかということ。また、宅地対策や医療面の充実、今後ますます重要になっていきます情報通信基盤の整備・充実、こういった点が今後の課題として必要になってくるのではないかと考えております。

 また、施設の整備に当たりまして、コストの縮減や自然との共生、小笠原の風土に適したものとするように努力する、こういった点への配慮が必要ではないかと考えております。

 8ページが「(2) 本土とのアクセス」でございます。

 振興開発事業によりまして、港湾の整備や新造船の就航によりまして、船によるアクセスの改善は段階的に進んでまいりましたけれども、今なお東京−父島間は25時間半を要します。また、空港整備につきましては、昨年、時雨山周辺域を予定地といたします整備計画が撤回されましたことから、現在は具体的な目処が立っていない状況となっております。東京都におきまして新しい航空路案の検討がなされている状況でございます。

 課題といたしましては、当面、テクノスーパーライナー(TSL)の円滑かつできる限り早期の導入を図るとともに、航空路整備について成案を得るよう引き続き具体的な検討を進める必要があるのではないか。また、TSLの導入による本土とのアクセス時間の16時間への短縮が島民生活の利便性向上、観光の振興等に寄与するように努めるべきではないかと考えております。

 9ページが産業面でございまして、「(3) 農業、水産業の振興」でございます。

 農業及び水産業に関しましては、基幹産業と位置づけまして、振興開発事業におきまして多大の投資をしてきたところでございます。その実績を見ますと、農業につきましては生産額が近年毎年1億円強ということでございまして、期待されたほどの成果を挙げたとは言い難いのではないか。一方水産業につきましては、養殖を含めまして5億〜6億円程度の水揚げ高がございまして、一定の成果を挙げていると言えるのではないかと考えております。

 10ページが今後の課題でございます。

 農業、あるいは水産業も同様でございますが、現在は本土向けの出荷が中心となっておりますけれども、今後は観光との連携に努めるべきではないかと考えております。また、農業につきましては、耕作放棄地が多いこともございまして、新たな基盤整備よりも、むしろ農地の有効活用や商品開発などソフト面の強化に努めるべきではないかと考えております。

 11ページが観光でございます。

 小笠原におきましては、自然そのものを活かしたマリンレジャーやホエールウオッチングを中心に、観光は最大の基幹産業に成長してきております。観光客の消費額は年間推計14億円ほどとなっております。また、小笠原の観光の特色といたしまして、季節による繁閑の差が大きいことや交通手段が限られていることもございまして、比較的目的意識の強い観光客が多いという点がございます。

 12ページが課題でございますけれども、今後観光を一層振興するためには、小笠原特有の魅力を活用し、エコツーリズム、学習の場としての活用、アイランドテラピー、長期滞在者の受け入れ等を推進すべきではないか。また、普通の観光客を惹きつけるためには、雨天時や冬季の対策の充実、ホスピタリティーの醸成、宿泊施設の質の向上等が課題ではないか。その一方で、自然との共生を目指した観光の哲学を確立することであるとか、観光客による自然環境への影響を管理する方法を検討・確立する必要があるのではないかと考えております。

 13ページが「(5) 経済の自立等」でございます。

 小笠原の島民の所得水準や村の財政力を見ますと、離島としてはかなり高い水準にございます。しかしながら、これは公共事業や公務員の給与により底上げされた結果でありまして、自立的発展の基盤は脆弱であると考えております。

 課題といたしまして、自立的な産業の展開ということが必要になるわけでございまして、そのためには民間の主体的な取り組みが重要なのですが、振興開発事業のあり方といたしましても、そういった取り組みを支援するためのソフト施策の充実強化が必要ではないかと考えております。

 14ページが「(6) 人口の回復」でございます。

 小笠原に関しましては、復興計画以来、目標人口を 3,000人、うち常住人口 2,500人と設定してまいりまして、現在は常住人口ベースで 2,400人の人口規模となっております。また、人口のうち旧島民の方は 500人台となっております。

 15ページにまいりまして、課題でございますけれども、今後の人口についての考え方といたしまして、様々な意見があるわけでございますが、将来の人口想定のあり方についても十分掘り下げて議論すべきではないかと考えております。一方で、そもそも国が定める計画におきまして、達成すべき目標ということで人口を設定することが今後とも必要なのかどうかという点についても、改めて議論すべきではないかと問題提起しているところでございます。

 16ページでございますが、小笠原の人口動態といたしまして、若者が一定期間居住してその後また島を離れるといった一時定住型のスタイルがかなり見られるわけですけれども、こういうスタイルをどう評価するのか。通常の永住型を目指すのかどうか。こういった点について検討しても良いのではないかと考えております。

 17ページが「(7) 自然環境の保全」でございます。

 小笠原は大部分が国立公園に指定されておりまして、生物多様性の観点からも、世界的に貴重かつ保全が必要な地域とされております。振興開発事業におきましても、これまで自然環境の保護のために野山羊の駆除や植生回復等を行ってきたところでございます。

 一方、小笠原の自然と言いますと、戦前から様々な人為の影響を受けておりまして、森林伐採や農地開拓、野山羊や外来植物の繁殖、近年では公共事業、観光客などの影響を受けているところでございます。

 今後の考え方でございますけれども、19ページにまいりまして、小笠原諸島の自然が極めて重要であること、自然そのものが最大の観光資源であることを十分認識して、今後とも積極的に適切な保護・活用を図る必要があるのではないか。振興開発事業におきましても自然の保護を目的とする施策の充実を図るべきではないか。しかし、一方で自然に全く手をつけずに住民の生活の改善を図ることは困難であり、自然と人間との共生についても十分な議論を行い、明確な方針を立てるべきではないかと考えております。

 20ページは「(8) 土地の利用」でございます。

 小笠原におきましては、振興開発計画におきまして具体的な土地利用計画を定めていることや、国立公園の特別地域が非常に多いということ、あるいは国有地が広大に存在することなど、土地利用に対する制約が他の地域と比べてかなり大きくなっております。

 また、利用区分毎に見ますと、集落地域における宅地の不足や、農業地域において農地の遊休化が進んでいること、自然保護地域におきまして管理が十分とは言えない状況にあるといった問題がございます。

 こういった点を踏まえまして、今後の望ましい土地のあり方や、そのための制度のあり方につきまして、改めて検討すべきではないかと考えております。

 21ページにまいりまして、最後の「(9) 国の領域、経済水域の保全等に係る役割」でございます。

 これらにつきましては現在の振興開発法の目的としては明示されておりません。しかしながら、一般住民が居住していること自体に意義があるというふうに考えますと、振興開発事業は大きな効果をもたらしてきたのではないかと考えられます。我が国の排他的経済水域のうち、約30%が小笠原諸島に関係しております。

 最後のページでございます。

 現在の離島振興法の延長、改正の議論がされておりますけれども、国土審議会がまとめました意見具申によりましても、経済水域の確保をはじめとして、離島の果たす役割はますます大きくなっている旨が明記されているところでございまして、小笠原につきましても、こういった点を踏まえて今後の位置づけを検討していく必要があるのではないかと考えております。

 以上でございます。

○岡本会長 続きまして、東京都から説明をお願いします。

○高橋部長 それでは、引き続きまして、東京都で調査しましたアンケートの調査結果についてご説明させていただきます。

 東京都におきましては、今後の小笠原諸島における振興開発の基本的な考え方、施策のあり方などについて、その方向性を明らかにすることを目的に「小笠原諸島振興開発事業のあり方調査」を実施してございます。この調査の中で、父島、母島の住民の方を対象にアンケート調査を実施いたしました。本日は、その中から主要なものをピックアップいたしましてご報告をさせていただきたいと思います。

 資料4の1ページをお開き願います。

 「アンケート調査の目的」は省略させていただきまして、調査の対象及び方法でございますが、本アンケートは、小笠原村に住民登録されている住民のうち、都や村の職員住宅、公務員でございますけれども、これに居住する世帯を除いた中から任意に 1,000世帯、小笠原のほぼ全世帯をカバーできていると思いますが、これを抽出しまして、郵送及び戸別訪問により調査をしました。

 回収状況でございますが、有効回答数は 412件で、回収率が43.3%でございます。

 次に回収アンケートの属性でございます。

 年齢でございますが、回答者数の多かった階層は、小笠原村全体における年齢構成と同様に30〜34歳と50〜54歳が比較的多かった状況でございます。また、19歳以下と65歳以上の回答者は合わせて16%でございました。

 次に性別でございますが、男性が62%、女性は38%でございます。これは小笠原村全体における男女比率と比較した場合、男性回答者の比率が若干大きくなっております。

 次に世帯でございますが、世帯主からの回答は72%を占めてございます。また、世帯構成は、単身世帯であると回答した人が37%でございます。世帯の人数が3人以下の世帯は全体の83%を占めております。

 次に居住状態でございますが、旧島民ではなく、返還後新たに住み始めた人が回答者のうち81%を占めてございます。

 次に勤務状況でございますが、常勤者が45%、パート・アルバイトが17%を占めてございます。

 なお、職種別ではかなり広範囲な業種に散らばっておりまして、特定の業種に偏ってはございませんでした。

 次に、各設問についてご説明をさせていただきます。

 2ページから3ページにまとめて書いてございますが、グラフで説明させていただきたいと思いますので、4ページをお開きいただきます。

 まず問1でございます。小笠原にこれからも住み続けたいと考えているかという設問でございます。「今後も長く住み続けたい」と「できれば住み続けたい」を合わせますと68.4%の方が小笠原に住み続けたいという意向を持ってございました。その一方で、「いずれは島を離れたい」を含めまして、17.9%は島を離れたいという意向を持っておりました。これは、平成9年度に同じような調査を実施しておりますが、その結果とほぼ同様の結果となってございます。

 「島を離れたい」と回答した人には、その理由を聞いておりますが、内地にいる家族の緊急時にすぐ駆けつけることができない、老後に対する不安、仕事の不安定さ、医療施設の不足などが挙げられております。

 次に問2でございますが、島に住み続けるための最大の障害として、回答者の23.6%が「医

療施設の不足」を挙げてございます。次いで「交通アクセスの不便さ」、「不安定な仕事」、「高い物価」、「住宅問題」と続いております。

 次に5ページの問3でございます。

 このグラフは生活の項目につきまして満足度を調査したものでございます。「満足」と「やや満足」を合わせた割合が大きいもの、これは満足度の高い項目と言えると思いますが、上から2番目の「自然環境」と一番下の「道路・港湾」がともに高くなっております。一方、「不満」と「やや不満」を合わせた割合が大きいもの、不満度が高い項目でございますが、下から5番目の「物価」、その2つ上の項目の「医療体制」、真ん中あたりにございます「金融機関」という項目が高くなっております。それに続きまして、下から2番目の項目「東京との交通アクセス手段」という順番になっております。

 一番上の項目でございます「総合」でございますが、「満足」は約10%、「やや満足」が14%、「普通」は37%、「やや不満」が28%、「不満」は約11%という状況となっております。「満足」と「やや満足」、「普通」を合わせますと約61%でございまして、これは、平成9年度の時点で同じような調査を実施しておりますが、この時に比べて10%ほど多いという結果になってございます。

 次に6ページをお開き願います。問4でございます。振興開発事業の評価について聞いたものでございます。

 「大変満足している」と「まあまあ満足している」と回答した人は合わせて16.1%でございます。「普通」と回答した人が15.8%おりまして、「満足しているものもあれば満足していないものもある」という回答が24.8%でございました。一方、「あまり満足していない」と「まったく満足していない」と回答した人は合わせて13.6%でございます。「満足していない」と回答した人には、具体的に満足していない点を聞き取りしてございますが、公共事業に村民の意思が反映されない、ハード事業中心で経費をかけ過ぎる、農漁業振興に偏り過ぎているといった意見をはじめとしまして、医療面で不安がある、輸送費を補助しているのに物価が高い等々の意見が寄せられております。

 問5でございますが、今後の振興開発事業の方向性について聞いてございます。

 施設やインフラ整備などのハード事業も大切だが、様々な施策や振興策などソフト事業も併せて充実してほしい、これからは施設やインフラの整備などのハード事業よりはむしろソフト事業を中心に事業を実施してほしいと考えている人が合わせて約50%となっております。一方、今までどおり施設やインフラ整備などハード事業を中心にと考えている人は4%でございます。

 また、振興開発事業に対する自由な意見も聞き取りしておりますが、その中には、交通アクセスの改善をはじめ観光業の充実、島民への情報提供の充実、IT環境整備、特産品の開発、自然と共生できる事業の実施、医療体制の向上等の項目が出ております。

 次に7ページでございますが、TSL就航による小笠原の変化について聞いたものでございます。

 「観光客が増える」と回答した人が全体の33.3%ございました。「経済が活性化する」と回答した人が16%に上っております。「救急医療が改善される」と回答した人が13.9%と続いております。一方、「大手資本が入り乱開発になる」、「地価が上がる」と回答した人は合わせて16.5%となってございます。

 問7はTSL就航や航空路開設に伴い重要な地元の対策について聞いておりまして、この設問は第1位から第3位まで順位をつけまして、第1位3点、第2位2点、第3位1点というようにポイントに換算して集計してございます。「自然保護対策」が第1位で 742点、それと並んで「宿泊施設の整備」 560点、「観光施設の整備」が 503点と、ともに高い値を示しました。

 次に8ページでございますが、今後ITの事業展開が予想されることもありまして、ITの現状についてアンケートしてございます。42.5%の方が「もっとIT環境を整備して欲しい」と回答してございます。一方、「今のままで十分である」という人が 9.2%、「よくわからない」と回答している人が31.1%という結果になってございます。

 以上、簡単でございますが、説明を終わらせていただきます。

○岡本会長 ありがとうございました。

 それでは、只今の説明も踏まえつつ、小笠原諸島における振興開発のあり方について、ご自由にご発言をお願いいたします。

 どうぞ。

○伊中委員 伊中ですけれども、昨年、審議会委員として現地を視察する機会をいただきまして、ありがとうございました。

 現地へ行って、地元の皆さんの空港整備にかける非常に強い意欲を承りましたのと同時に、時雨山を拝見して、ここにはやっぱり無理だろうなということを思ったのをよく記憶してございます。

 まさにTSLの問題が目の前の問題になってきたわけですけれども、これは飛行機と比べて全然違うわけですが、しかし、これは非常に大きな活気になることは間違いないわけでありまして、16時間ということになりますと、行っても良いかな、と思う人が相当増えるのではないかと思います。

 その場合どの程度観光客が増えるのか。その辺の見通しというか、手応えと言いますか、それがどの程度大きなインパクトを与えるのか。その辺をどういうふうに見ていらっしゃるのかですね。特に観光客の急増や人口がある程度伸びるということは間違いなくあると思いますので、このインパクトを抜きにしては何も語れないのではないかと思うのですけれども、今のところ、TSLの導入がどの程度のインパクトを与えるかについて、イメージをどの程度行政の側でお持ちになっていらっしゃるのかを伺いたいと思います。

○岡本会長 どうぞ。

○本保審議官 海事局と港湾局を担当している審議官の本保でございます。

 資料5でTSLの説明をさせていただくことになっておりますが、今の伊中委員のご発言から見ても、先に説明をさせていただいた方がよろしいのではないかという気がするのですが、いかがでしょうか。

○岡本会長 どうぞ。

○本保審議官 わかりやすい模型を持ってきておりますので。

              〔模型回覧〕

○本保審議官 資料5の2ページ目をお開きいただきたいのですが、船体模型をご覧いただいてわかりますように、大体あんなイメージの船でございまして、(参考)というところに、現在走っております「おがさわら丸」とTSLの比較が出ております。

 まず、サイズですが、長さが 140メートル。おがさわら丸よりもちょっと長い。その程度ですので、先程の山下委員のご質問の港湾の方は割と問題なく対応できるということであります。

 幅は約倍で30メートルになっておりますので、この関係で総トン数が倍程度の1万 4,500トン。おがさわら丸が 7,000トンぐらいですから、倍ぐらいになる。そういう大きさの船でございます。

 速力でございますが、時速約70キロ。おがさわら丸は時速約42キロですから、5割強のスピードアップになるわけであります。これはノットに直しますと38ノットという想定になっておりまして、実験船が今、フェリーあるいは防災船として静岡で動いているところですが、その船の長さが70メートル強、サイズが 3,000トン強ですから、半分以下の船が走っていると思えば良いのですが、その実験船で50ノットの数字を出しておりますので、頑張ればそこまでいける。ただ、経済性や運用の実態を考えて38ノットということになるわけでございます。

 このスピードでありますので、航海時間が、おがさわら丸の25.5時間から16時間になるわけでございまして、ぎりぎり頑張れば週に3往復できる。現在が2往復弱ですから、 1.5倍の便数増ということになります。ただ、実際に走らせる場合には、利用者の利便、わかり易さ、荷役の時間などもございますので、現行、おがさわら丸が年間59便走っておりますが、これに対しまして、今の計画では92便程度のものを考える、こういうことになっております。

 それから、キャパシティーでございますが、 725人という定員で、おがさわら丸に比べると、 1,000人ございますのでだいぶ小さくなるようなイメージでありますけれども、実は観光利用ということも考えまして、1人当たりのスペースを2倍に設定しております。したがいまして、スペースの設定の仕方で客数はだいぶ変わる、こういうふうに考えていただければよろしいかと思います。

 開発の経緯あるいは就航決定の経緯等につきましては1ページ目にございます。

 「1.経緯」のところをご覧いただきたいと思いますが、昨年9月にTSLの導入が東京都知事のご決断で決められたところでございまして、これを受けて実際の体制整備にかかったわけでございます。テクノスーパーライナー(TSL)につきましては運航と保有を分離するという方式をとっておりまして、運航主体は、いろいろな経緯がございましたが、小笠原海運が引き続きこれを主体となって実施をすることになっております。

 保有の方でございますが、「2.新会社の概要」とございます。保有会社を作りまして、こちらに政府が財投とか、債務保証するとか、あるいは技術的な支援をするという形で、円滑な保有あるいは運航ができるような体制を確保するということになっております。保有会社につきましては5月に設立の運びとなっておりまして、そこの資本金構成にございますように、十数社から33億円ほどの出資を得ているところでございます。

 運航開始につきましては16年度末ということで計画してございますが、先程のインパクトという点でございますけれども、座席の消席率を8割程度と見込みまして、これで採算がとれる。現在のおがさわら丸が6〜7割ですから、ちょっと高目ではあるのですが、ご覧のとおり旅客数を抑えているということもございまして、実質的にはほぼ同じ程度の消席率、ロードファクターを見込んでいるということでございます。

 ただし、総輸送数は、当然便数が増えますので、現在約2万 5,000人ございますが、これに対して倍増の5万人というものを想定しております。したがいまして、観光面その他のインパクトというものも、この数字を1つの前提としてお考えいただければよろしいのではないかと思っております。

 これだけの誘致をして円滑な経営運営を行っていくためには、当然ながら様々な誘客上の措置も必要になるところでございまして、観光振興を含めたソフト上の対策が大変肝要かと思っております。

 以上、簡単でございますが、ご説明に換えさせていただきたいと思います。

○岡本会長 ありがとうございました。

 倍くらいになるというご説明でございました。

 その他ございますでしょうか。

 どうぞ。

○赤保谷委員 資料7でエコツーリズムの資料も配られているのですが、これも今後の振興開発のあり方に関係があると思うので、一緒に説明をしてもらった方が良いのではないかという気がするんですが。

○岡本会長 よろしゅうございましょうか。

 それでは、どうぞよろしく。

○高橋部長 それでは、東京都でございますが、資料7の「小笠原諸島におけるエコツーリズム」についてご説明をさせていただきます。

 今、TSLのインパクトということで、観光客が現在の2万 5,000人から倍の5万人ぐらいという見込みのお話がございましたけれども、経営上も安定した状況で運航を行うためには5万人程度の観光客を確保する必要があるということでございますので、都としても積極的に観光客を誘致していかなければいけないと考えております。しかしながら、小笠原につきましては、単に観光客を誘致すれば良いというものではなく、貴重な自然を壊すことなく観光と自然保護の両立が図られるよう、エコツーリズムをキーコンセプトに新たな事業、施策の展開を考えているところでございます。

 取り組みの基本となる考え方は、世界的にも貴重な小笠原の自然を将来にわたって維持するとともに、観光資源として積極的に利活用して、観光産業の持続的な発展を図り、小笠原の地域振興、地域経済の活性化に貢献しようというものでございます。

 大きな理念といたしまして、1つが「新たな観光資源の創出」、2つ目として「世界的にも貴重な自然を保護」、3番目としましては「自然への理解と関心を深める」、4番目に「地域経済への貢献」、この4つを掲げてございます。この理念に基づきまして、これに合致した事業、施策をエコツーリズムの事業、施策としたいと考えてございます。

 事業、施策の推進に当たりましては、都単独で推進するのではなく、国や小笠原村とも連携・協力して推進してまいりたいと考えております。

 現段階で14年度以降の主な事業、施策として考えているものとしましては、ハード事業といたしまして、観光スポットの整備として、陸域でのツアーコースの整備、属島を利用しました海洋型の観光スポットの整備、自然観察拠点の整備、また、自然遊歩道の整備やビジターセンター等既存施設の改築、さらに自然再生型公共事業といたしまして、植生回復や固有動植物等の保護増殖施設の整備などを考えてございます。

 また、ソフト事業といたしまして、ガイド制度による保護と利用の調整を図り、観光客誘致のための戦略的な観光宣伝を展開し、街並み形成や景観誘導を検討いたしまして、エコツーリズムのため、地元推進組織の設立を支援し、国や都をはじめとする島内試験研究機関の連携を進め、また、農漁業と観光業との連携を図っていくなどの施策を考えてございます。

 なお、エコツーリズムにおける各事業・施策につきましては、国土交通省さんとも十分調整を行いまして、小笠原振興の根幹をなす振興開発事業として位置づけていきたいと考えてございます。

 また、本年度から実施可能な事業につきましては、先行して実施してまいりたいと考えております。具体的には、ガイド制度によります保護と利用の調整といたしまして、ガイドのレベルアップを図るための養成講習を実施いたしまして、一定のエリアを定めガイド付きツアーを試行し、モニタリングを行いながら、より良い制度を構築してまいりたいと考えております。

 2枚目にイメージ図をつけてございますので、ご参照いただきたいと思います。

 現在、養成講習の内容、エリアの指定などにつきましては、小笠原村及び地元関係団体と協議を行っているところでございます。調整が調えば、その内容を都と村と確認の上、対外的にアピールしていきたいと考えております。

 先程申し上げましたとおり、TSL就航後は小笠原への観光客も倍増すると思われますので、本年度以降の試行を踏まえ、17年度の就航時までに必要な見直し等を行っていき、倍増すると予想される観光客の受け入れ態勢を整備していきたいと考えてございます。

 説明は以上でございます。

○岡本会長 ありがとうございました。

 実は先週、海外の観光分野の学会に出ておりましたんですけれど、研究発表を聞きますと、その多くが自然あるいは地域文化との共生、サスティナブル、持続可能な開発という言葉がありますけれども、私どもの分野ではサスティナブル・ツーリズムということを言っておりまして、とりわけエコツーリズムというものがどこでも最大の関心事。今やマスツーリズムの時代ではないと。

 先程麦屋委員からもご質問がございましたが、小笠原諸島は日本の大変な財産だと思いますが、エコツーリズムの世界的な適地ということで、非常に質の高い観光事業が可能な力を持ったところだと私は認識いたします。

 先程の総合調査の結果、あるいは住民に対するアンケート調査の結果、テクノスーパーライナー、エコツーリズムのお話等々に関連いたしまして、この機会に委員の先生方のご意見を承りたいと思いますが、いかがでございましょうか。

 どうぞ。

○麦屋委員 TSLですけれども、料金についてはお幾らぐらいというふうに。例えば国内航空運賃と見てどれぐらいというような想定があるのでしょうか。

○本保審議官 基本的には現在と同じ運賃設定です。したがって、やや割高と言って良いかもしれません。

○岡本会長 どうぞ。

○赤保谷委員 エコツーリズムの資料の説明に関して質問ですけれども、ガイド付きツアー。地元でいろいろ調整をして、都とも調整をして、できたら14年度から始めたい。先程の14年度の予算、事業計画の中では、ソフトの事業ですから、どこかに潜ってしまっているのかもしれませんけれども、コメントにもなかったような気がするのですが、これは金はかけずにできるんですか。

 大島の三原山が噴火して、あの後へ行きますと、地元の方が無料で詳しく説明してくれているんです。無料といっても、なかなかそうもいかないでしょうし、ソフトの事業費、何か予算を組んでいるのか。それとも、先程お話がありましたように、地元、都との調整が済んだら14年度から始めたい。その時に補正でも組むのか。大して金はかからないから運用でやるんだということなのか。大事なところだろうと思うんですね、観光も含めて。

○高橋部長 今年度から事業を予定しておりまして、今年度は東京都の単費の事業でやりたいということで考えてございます。今年度の東京都の単独の経費でやりたいと考えてございます。ですから今のこの計画には入ってございません。来年度はこの計画に入れてもらうべく、今やっておりますので、来年はこの計画に入ってくるということで検討しております。

○岡本会長 どうぞ。

○赤保谷委員 今のお答えはよくわかりました。

 先程14年度の事業計画がありまして、ハード、ソフトありましたけれども、ハードの事業、従来型の事業がぞろぞろ並んでいる。延長線のような感じ。でも、これもまた地元の意見をお聞きしながら、優先度をつけながら、予算の範囲内で仕組んでいるのだろうと思うんです。

 先程来お話を伺っていますと、前回、前々回もそうですけれども、従来の復興型というのか、それとは別に、自然との共生というような、一例かもしれませんけれども、そういう旗印を掲げて、新しい視点で物を考えたらどうかというお話がございまして、そうかなと思うんです。そうかなと思いますけれども、では具体的にどうするのか。地元の方もいろいろ予算を陳情するというか、要請をするに当たって、抽象的な、こういう方向で村を持っていきたいと。マスタープランを作ってあるかどうかわかりませんけれども、そういうことで意見集約をして要請をしているのだろうと思うんですが、中身が問題なので、だから先程の14年度の予算は、IT関係が1つ入っていましたけれども、従来型でしょうがないかなと。

 これからの振興開発のあり方につきましては、そういう理念的、抽象的なことに加えて、私などはなかなか良い知恵が出ないのですけれども、そこは村長さんがおられますし、抽象的な言い方かもしれませんけれども、こういう方向でやったらどうかというようなご意見が出ましたら、これは本当は一番後に言うことかもしれない。よく村民の皆さんとご相談をして、具体的にどういう事業として仕組めるのか。そこが一番大事だろうと思うんです。考えてみて、抽象的な理念に合ったような具体的な方策というのは、ありそうでなかなかないという気もするんです。私は、それとはちょっと別ですけれども、先程来、農業、水産業、観光と同時に基幹産業と位置づけておる。だけども、農業は1億何千万、水産が5億か6億程度の売り上げに留まっている。やっぱり観光かなという気がします。

 先程ちょっと話がありました農業につきましても、外に向かって売り出す。それも大いに結構だろうと思うんですが、南から北まで、どこの地域でも競争している世の中ですから、小笠原という地理的な条件。良い意味でのね。そういうことを活かすようなこととか、小笠原でなければできない、農作物でも花でも良いんですけれど、そういう特殊なものでないと、なかなか外には売り込めないのではないかという気もしているんです。余り弱気を言ってはいかんのでしょうけれども。

 それで、先程お話を聞いていましたら、農業については、自給自足という言葉は使っていませんけれども、地場消費。そういうことも頭に置いてやっていきたいという話がありました。確かに農業に従事して生計を立てている人がいるわけですから、そういう方が通常の生活をできないようでは困るので、それをやったら良いと思うんですけれども、農業、水産業というのは、地元の人が働いて、地元の人で稼いでいる。観光は、地元の人は働くんですけれど、よそから人が来る。やっぱり人をよそから呼び込む。その次の自然との調和、自然との関係、環境との関係、それはありますけれども、やっぱりよそから人を呼び込む、そういう方向で考えていくのが良いのではないかという気がします。

 もう1つ、飛行場の問題ですけれども、今頓挫しているというか、また新しい空港について検討するということになっているんですが、従来の時雨山の飛行場についても、すぐできるというわけではなくて、長年かかる計画だと思うんです。ですから当面はテクノスーパーライナー、高速艇、あれを念頭に置いて事業構想を練って、高速艇を念頭に置いてやったのでは後々支障のあるようなことはやめる。当面はあの船を頭に置いて振興開発計画を組んでいったら良いのではないかという感じがいたします。いろいろ申し上げましたが。

○岡本会長 ありがとうございました。

 宮澤委員には後程ご発言の機会を設けますが、今、特段ご発言がございますでしょうか。

○宮澤委員 赤保谷先生のご意見は実感としてわかるわけですが、先程来議論されているように、テクノスーパーライナーによって5万人のお客さんが来なければ採算ラインに乗らないという前提条件の中で考えますと、私は、これは口で言うのは簡単なのですが、16時間になったとしても非常に厳しい数字ではないかという印象を第一に持っています。

 それはどういうことかと言いますと、ハイシーズンも閑散期も関係なく九十数便に 500人から 600人のお客さんに来てもらわなければそれだけの数字にならないという前提があるわけです。そうは言っても、小笠原が持つ可能性という面から見ますと、十分にその可能性はあるだろうという考え方を持っていますので、肝心なのは受け入れ側の態勢、姿勢ですね。

 先程農業も漁業も出ましたけれども、少なくとも地産地消という発想は、やはり来ていただくお客さんに対して私が一番感じるのはそのことだろうと。地元で取れたもの、生産できたものをお客様に提供するということが基本的に大事なことだろうと考えていますので、先程来議論されている観光、漁業、農業という連携がどうしても必要になってくるということで、様々な団体とそういう視点で議論も始めていますし、ここ3年間の間にそういう土壌をきちんと構築して、来ていただくお客さんにいかに満足感を持って帰っていただくかということを最大限の課題にして今後取り組んでいくならば、可能性としては5万人はあり得るし、あるいは6万、7万と広がっていく可能性もなくはないと考えていますので、要は我々受け入れ側がどう対応していくかということが一番重要なファクターだろうという認識をしております。

 以上です。

○岡本会長 この間、1週間ほどお邪魔をさせていただきまして、そのときの印象を只今の村長さんの可能性という点で補足させていただきますと、赤保谷委員の最初のご質問にございましたが、ガイド付きツアーを今後どういうふうに具体化するのかという点につきまして、非常に印象深かったのは、自然をどうガイドするかという点についての知識、技能、経験をお持ちの立派な方が既に地元におられるということを非常に心強く感じました。こういう知識、技能、経験を活かして、もう少し普及させるというのでしょうか。そういうことをすればかなり具体的な形が見えてくるはずだと。そこはどうか知恵を出していただきたいということですね。

 2つ目に申し上げたいのは、只今農業、漁業の話がございましたが、非常に印象深かったのは、小笠原では、農業をやっておられる方、漁業をやっておられる方の観光事業に対するご理解が非常に自然で、農業も漁業も観光も自然の豊かさを資源化するということで同じ事業なのですけれども、ややもするとそこを対立的に捉えるところがあるんです。小笠原の場合は、漁協の方につきましても、本当に観光と共生していくという、漁協自らがスキューバダイビングのビジネスをなさるというような、私たちにしてみれば理想的な形がございます。しかも、先程外部の方という話もございましたが、よそからおいでになる方を、ダイビングのインストラクター等につきましても排除しない。そういう温かく受け入れる文化があるように私は感じまして、非常に大きな可能性を感じました。ちょっと感想を申し上げました。

 どうぞ他に。

○秋本会長代理 今、村長からお話を伺って、私はほっとしたような気持ちがするんですけれども、5万人というのはそんなに簡単な数字ではないと思うんです。恐らく今は夏場はほとんど満杯状態に来ている。それを倍にするというのは、受け入れ態勢とか何かをしても大変な話だと。他のシーズンでお客さんの少ない時まで含めて、お話がありましたように客室の利用率を8割見当ぐらいまで年間維持するというのは、夏場はともかくとして、その他のシーズンはもっときつい話になるはず。だから5万人というのは、計算上は、5万人であれば料金は現在程度の料金でいけるという試算じゃないかと内心思いながら見ていまして、5万人というのは、テクノスーパーライナーが走るようになれば5万人になるよということではなくて、5万人にするということがいかに大変なことかということをみんながまずきちっと認識しておかないといけないのではないかという気がいたします。私もいろいろなところで離島の船とか何かをやったことがありますけれど、そう簡単ではありませんでした。

 それから、TSLについて、小笠原の振興開発事業としてはどういう対応をするのか。先程港湾の整備というお話がありましたけれど、それ以外の問題も含めて、あるのかどうかというのは今まで議論を全くしていない。あるいは白紙かもしれませんけれども、そういったことについてお尋ねしておきたいと思います。

 それから5万人に絡んでの話で、受け入れの問題というのは先程お話があったとおりだと思うんですが、私は、エコツーリズムという視点からの取り組みも大事だと思いますけれど、観光というのは、今日は専門家が沢山いらっしゃってあれですが、ただエコツーリズムとかなんとかいう観点からだけのものでは絶対ないのだろうと思うんです。

 自分自身の体験を考えても、1週間という時間はとてもじゃないけれど取れない。3日なら行けるかといっても、3日行って全然連絡が取れないというのでは二の足を踏むといった時に、情報通信は島に行っても心配ないよということになれば、思い切って行き易い。だからいろいろな問題が全部絡んでくると思うんです。したがって、観光というのは地域振興のいわば集約された形としてあらゆる面から取り組むということを、本当に気持ちを新たにしてやらなければいけないのではないか。

 私も昔自分が関係していて今頃になってこんなことを言うのも恥ずかしいですけれど、先程の報告の中にも、例えば亜熱帯の農業センターというものを見せていただいた時に、これをなぜもっと観光資源として使えないのかなというのを実はあの時も思ったんです。あんなものはもっと早くと思いながらも、今までできていなかったわけですが、5万人ということで考えるならば、あらゆる地域政策の面からこれを考えていかないとまずいのではないだろうかという気がいたします。

 それから、小笠原に行った時の島の風景というのが、例えば花がいっぱいあるといったような、全体の雰囲気からして変えていくといったこと。これは多少時間がかかってでもやるということでないと、そう簡単なことではないという気がいたしまして、先程私は村長のお話を伺っていて、そういうご認識をお持ちだというので、ある意味では安心したのですけれど、厳しいという点においては全く同感であります。

○岡本会長 ありがとうございました。

 それでは、TSLについて東京都から補足のお話はございますか。

○高橋部長 今、受け入れ態勢の話が出ましたが、5万人を呼べるかどうかというのは厳しいというご意見もありまして、私どももそう簡単ではないと思っていますが、小笠原の物理的な受け入れ態勢はどうなるかということは試算をしておりまして、今、最大の宿泊人員が最盛期 1,000人ぐらいになるだろうと見込んでおります。現有の宿泊施設が 800人でございますので、 200人ほど不足するという形になりますので、TSLの就航までにこの宿泊施設をどうするかという問題は1つ出てきております。上下水道、ごみ処理、電力については、基本的に対応が可能という試算が出ております。

 以上です。

○岡本会長 どうもありがとうございました。

 大木課長どうぞ。

○大木課長 振興開発事業におきましてTSLにどう対応するかということでございますけれども、港湾の整備に関しましてはそれほど大きなことは必要ないであろう。先程説明があったとおりでございます。振興開発事業におきましては、受け入れといいますか、特に観光の振興のために必要な事業というものを考えていく必要があると思っております。今でもビジターセンターがございますけれども、それについても今後更に良いものにしていくというお考えが東京都でもあると聞いておりまして、そういった対応が必要であると考えております。

○岡本会長 ありがとうございました。

 他にご質問、ご意見はございませんでしょうか。

 どうぞ。

○本保審議官 TSLの採算性についてご議論がございまして、楽観してはいけないというのはご指摘のとおりでありますし、現実に5万人を実現するためには様々な方策を総合的に講じなければいけないということも全くそのとおりでございますが、一方で、非常に採算が悪いという暗いニュースが流れるのも困るところがございまして、補足的に申し上げておきたいと思いますが、この実用化については、当然ながら運航会社の小笠原海運でも真剣な検討をされております。と申しますのは、現在の小笠原航路が黒字航路なものですから、TSLを引き受けて赤字化するということは企業として基本的に受け入れ難いことですから、そういう意味で非常に厳しい採算面での検討がされた上で受け入れられたということを一言申し上げておきたいと思います。

 それから出資者。ご覧いただきましてわかりますように、メーカーである造船企業の他に、日本政策投資銀行も大口出資者として入っております。ご案内のとおり、特殊法人等に対する厳しい環境の中で、適正な投資リターンが得られないものには投資ができないということで、これも銀行内で大変厳しい採算上の検討がされた上でのものでございますので、私どもとしては、もちろんいろいろな条件はつくと思いますけれども、十分にやっていける、こういう見通しでおりますし、最終的な責任は私どもと都で負わなければいけないということにもなっておりますので、その辺のご理解をお願いしたいと思います。

 ありがとうございました。

○岡本会長 ありがとうございました。

 それでは、国土交通省及び東京都におかれましては、只今の各委員のご意見を十分に踏まえ、今後の振興開発計画の検討を進めていただきたいと存じます。

 以上をもちまして、議事の2番目「小笠原諸島における振興開発のあり方について」を終えさせていただいたことにいたします。

 

             (4) その他

 

○岡本会長 次の議題でございます。「その他」でございますが、先程お話がございましたように、1番のTSL、3番目のエコツーリズムについてはご議論をいただきました。

 それでは、小笠原空港の今後の取り扱いについて、東京都よりご説明をお願い申し上げます。

○高橋部長 それでは、小笠原空港につきましてご説明をさせていただきます。

 お手元の資料6をご覧いただきたいと思います。

 1枚目の文書でございますが、これは昨年11月、小笠原空港の今後の取り扱いにつきまして都の方針を決定し、公表した際の文書でございます。これに基づきまして説明をさせていただきます。

 小笠原への航空路の開設につきましては、平成10年5月19日に父島の時雨山周辺域を空港建設地と決定いたしまして、以来、事業化に向けまして、環境アセスメントに入るための事前調査として、環境現況調査を実施いたしました。続いて自然環境保全方策の検討を行ってまいりました。この間の経緯につきましては、2枚目に「これまでの検討等の経緯」ということで添付させていただいておりますので、ご参照願います。

 環境現況調査の結果によりますと、環境省や東京都のレッドデータブックに記載されておりますムニンツツジなど絶滅危惧種等44種の貴重植物、オガサワラノスリなど国の天然記念物に指定されている動物22種などが確認されております。

 この結果を踏まえまして環境保全の方策を検討してきたわけでございますが、学識経験者等で構成されます「小笠原自然環境保全対策検討委員会」から、3枚目に添付しております資料のとおり、影響を被る貴重種が多数あり、保全方策を確実に講じたとしても影響軽減効果には限界があるとする厳しい内容の意見書が提出されました。また、環境保全対策を含めて事業計画の見直しをしましたところ、総事業費が 1,100億円を超え、事業期間も長期間を要し、完成が平成30年度以降となる見込みとなりました。

 以上の自然環境への影響や事業費の増加等から、時雨山周辺域での空港建設計画を撤回することといたしまして、今後は、費用、環境、技術面から新たな航空路案を検討していくこととしたものでございます。

なお、新たな航空路案といたしまして、現在4つの案を検討しております。

 1つは既存施設の活用ということで、硫黄島の防衛庁の既存滑走路を利用し、父島に乗り継ぐという案でございまして、東京と硫黄島をビジネスジェット、硫黄島−父島間をヘリコプターで結ぶという案でございます。

 2つ目は新機種の活用ということで、父島に揚陸施設、エプロン等を整備し、東京と父島を水上飛行艇の直行便で繋ごうという案でございます。

 3つ目は小型機の利用ということで、父島にあります洲崎地区にコミューター機用の短い滑走路を整備いたしまして、八丈島を経由するなどして東京との間を小型機で結ぼうという案でございます。

 4つ目は、聟島に大型機用の滑走路を整備しまして、東京−聟島間をジェット機、聟島−父島間、約70キロございますが、これを船で結ぶ案でございまして、かつて時雨山を決めた時の第2候補であったものでございます。

 以上が新たな航空路案として今事務的に検討しているものでございます。いずれも課題を有しておりまして、この案以外にも、新技術の開発動向等に応じて費用、環境面で案が出てくれば、適宜検討を行うことといたしております。

 以上、簡単でございますが、小笠原空港の今後の取り扱いについて説明させていただきました。

○岡本会長 只今の東京都の説明に対しまして、ご質問がございましたらご発言をお願いいたします。

 どうぞ。

○赤保谷委員 質問ではないんですけれども、これは小笠原の皆さんの悲願だったと思うんです。私がこの審議会の委員をお引き受けしてからも、時雨山に飛行場を造ると。自然環境への影響はどうなのか。大丈夫そうだ。確かあれは秋本さんだと思うんだけれども、金をどうするんだと。金がかかる。その点の目処もついているのかというようなご質問もあったと思うんです。

 そういう経緯を踏まえて、これならいける。飛行場ができる。すぐじゃありませんよ、さっき言ったように。だいぶ先でしょうけれども、それを睨んでみんなやっていたわけですよ、東京都、村民の皆さんが。それが突然こうなっちゃって、いろいろ経緯があってそうなったのでしょうけれども、代替案が3つある、4つあると言ったって、そんなにすぐ決まるわけがない。新たな航空路案の検討を行う。去年の11月に発表になって。だからこれは半ば文句を言うような格好になるんですけれども、当面はさっき言ったようにTSLを念頭に小笠原の振興開発計画を考えていくということだろうと。

 文句めいたことで申し訳ないですけれども。

○岡本会長 他にいかがでございましょうか。

 稲垣委員、どうぞ。

○稲垣委員 飛行場についてではないんですけれども、振興法の延長について村議会から要望したいと思います。

 先程、小笠原振興開発事業のあり方について、国と東京都から調査報告がありました。それと少しダブるかもしれませんけれども、村議会から法延長の要望をさせていただきます。

 返還以来、小笠原諸島開発特別措置法の下で様々な施策が実行されてまいりました。特に平成13年度では、私が生活している母島の診療所にCT装置が導入されまして、また、長年の懸案事項でありました夜間の緊急搬送に対して新たなヘリポートも完成し、海上自衛隊の慣熟訓練も終了しまして、5月15日より運用が開始されました。今回上京するに当たり、私も自衛隊の慣熟訓練を見せていただきまして、母島に住む村民は、さらに安心して生活を営むことができるようになりました。

 このように返還以来様々な施策が実施され、村民生活も充実してまいりました。まず、この場をお借りしまして、関係者の皆様の長年にわたるご尽力に対しまして、小笠原村議会を代表しましてお礼申し上げます。本当にありがとうございます。

 さて、財政基盤が脆弱な当村でこのような施策を整備できるのも、この振興法のお陰だと思っております。ここで、小笠原振興開発特別措置法の延長に向けてのお願いをさせていただきます。

 この法律は、皆様ご案内のように、平成16年3月末で時限立法の措置が切れます。村民生活は、法制度の下、着実にその成果を出していただいております。しかしながら、そのゴールは未だ道半ばでございます。このこともご理解いただきたいと思います。

 その中で、私どもの最大課題であります、悲願でもあります航空路の開設が未だ不透明でございます。先程委員の皆様から力強いご発言もございまして、本当にご理解いただいておるところでございます。けれども、まだまだ解決しなければならない課題が沢山あります。この課題解決のためにも法延長が必要不可欠であることは言うまでもありません。これは私をはじめ村議会の総意であります。

 先日、衆議院国土交通委員会で、小笠原航空路の質問に対しまして、扇大臣の大変心強いご答弁をいただきました。私ども村民一同は、心を新たに一致団結してこの重要課題解決に向けて努力してまいる所存でございますが、今後とも国、東京都の更なるご尽力がなければ解決できません。

 また、土地利用について、現在の土地利用計画は、集落地域、農業地域、自然保護地域、その他地域の4地域に区分・分類されておりますが、実際には農業地域やその他地域に居住されている方もいますし、集落やその他地域で農業を行っておる方もいます。返還に当たり、効率的に生活基盤施設や農業基盤施設を整備するために、この利用計画に基づき各政策が実施されてきたことにより各基盤整備は充実してまいりました。けれども、返還より三十有余年が過ぎたこの区分にそぐわない土地の利用が行われてきていることも事実でございます。また、農家の方にとってみれば、都営住宅からの通勤農業より、畑の側に住んで農業に従事する方が効率的であることは言うまでもありません。こういったことを踏まえ、長期的土地利用を見直していかなければならないと思っております。

 先程委員の中から意見も出されましたが、情報化に向けて、最近、島におきましても携帯電話の普及が盛んになり、情報化も進んできております。村では村内の情報化をより一層進めるため、今年度、その計画策定の調査を実施いたしますが、村内の施設が整いましても、本土と島を結ぶ肝心の情報の幹線回路ができておりません。そのため、実際にその施設をどう使えるのか、その運用が難しいと思われます。

 そのためには、本土から伊豆諸島、小笠原諸島、そして硫黄島までを結ぶ光ケーブルの敷設が必要になります。また、実際の運用に当たりましても、通話料の低減を行いませんと、なかなか利用が進まないことにもなります。国もe−Japan構想を進めていますので、情報化社会に取り残されないよう、情報化を重要課題として取り扱っていただきたいと思っております。

 最後に硫黄島であります。硫黄島は定住が困難であることから計画の対象外となっておりますが、終戦から間もなく60年を迎えようとしていますけれども、いまだに遺骨の収集が続けられ、硫黄島においては、未だ戦後処理は終わっていないのが現状でございます。旧島民や遺族の高齢化がますます進み、墓参や訪島が思うようにできないこの状況の中で、旧島民やご遺族の心情を考えますと、このままで良いのかと思わないわけにはまいりません。私は、硫黄島の戦後処理を一日も早く終わらせることがまず先決であると考えます。

 また、返還35年を来年迎えるに当たる現在、硫黄島を取り巻く状況も変わってきております。

 以上、航空路、土地利用、情報化、硫黄島等、まだまだ重要課題が山積しております。長期的な計画を立てて解決していく必要があると思っております。委員の皆様にも、どうぞこれらの点をご理解いただきまして、法延長に向けて、よろしく取り組みをお願いしたいと思います。

 ありがとうございました。

○岡本会長 貴重なご意見、ご指摘をいただきまして、ありがとうございました。

 その他、小笠原関係につきまして、どのようなことでも結構でございますので、ご意見、ご質問がございましたらご発言をお願いします。

 どうぞ。

○岩崎委員 空港のことについて、一言だけ申し上げておきたいと思います。

 以前、時雨山に決定をした時ですか、多分前の前のこの小笠原審議会だと思いますけれども、兄島が昔だめになったこともあるので、今度は大丈夫ですねというふうに、秋本委員も覚えていらっしゃると思いますけれども、私はかなりきつく念を押した覚えがあるんです。大丈夫ですとおっしゃって、実際に現場に行きますと、ここを削っていくのはちょっと大変かなという思いはありましたけれども、時雨山に造るかどうかという場所よりも、とにかく空港をというところを重視していただきたいということをお願いしたわけであります。

 今回「諸般の理由」ということで撤回されたわけでありますけれども、テクノスーパーライナーができたとしても16時間かかるわけですね。現在26時間弱ですね。これ程遠い日本の国土はないと思うんです。東京の桟橋から行って26時間ですね。北海道の人が小笠原に行こうと思ったらもっともっとかかるわけです。週に何便かしかないわけですから、それを考えると何日かかるかわからないぐらい遠いわけです。そういう意味で非常に特別な存在だと思います。地理的に離れているということで、遠隔性というのはかなり特別だと思うわけです。ですからこそ、経済水域ですとか、自然が沢山あるとか、そういうこともあるわけですから、非常に特別な存在である。かつ国境に位置する。大戦中はいろいろなことを島民の皆さんに強制をした。そういうことを考えていきますと、それに対する配慮というんでしょうかね。一般に条件不利地域というカテゴリーで言って良いのかということがすごく私は気になるわけです。

 空港の問題に戻しますと、高速鉄道があり、高速道路があるところに、さらに空港をということが日本国内であるわけです。そういうところで空港を造る。メカニズムは違うと思うんですけれども、空港の配置というのを考えると、沖縄に二十幾つ空港があり、今申し上げましたように、高速鉄道、高速道路と、他の手段がある所に更に空港を造ろうということがあるわけですよね。そういう動きが一方であって、片やこれは26時間ですから、パリを往復したってまだ着かないわけです。そういう国土がある。

 小笠原島民の方が、空港は要らない、孤立性を楽しんでいる、というふうにおっしゃるのであれば、それはそれで1つの解答かもしれませんけれども、悲願であったというのをずっとおっしゃっているわけで、それを余りにも軽く扱い過ぎるのではないかという気が私はしております。

 別にお返事は結構ですけれども、前回、大丈夫ですねと申し上げて、大丈夫ですとおっしゃっていただいたにもかかわらず、大丈夫かなと思っていたのが、やっぱりこういうふうになってしまったということ。これは東京都にアドレスをしたいと思いますし、国土交通省には、申し訳ないんですけれども、今申し上げましたように、空港の配置ということを考えて、もう少し戦略的というか、国家安全保障も含めて、硫黄島があるから良いということではなくて、そこに人が住んでいるからこそ、今日の報告書にも「一般住民が居住すること自体に領土保全の意義がある」と書いてございますので、そうすると、そこに住んでいらっしゃる方、もう少しそういうところを考えての空港の戦略的な配置というのを、限られたリソースの中でなら、尚更していただきたいと非常に強く思います。

○岡本会長 どうもありがとうございました。

 他にございませんでしょうか。

○台委員 台と申します。

 2点あるんですけれども、第1点は、空港の問題につきまして、代替案として4つのルートが示されました。不確かなんですが、この4月から、鳥獣保護法の改定によって天然記念物等の指定が海洋生物にも及び、かつ、生物の個体のみならず、生息域までその範囲とされるというように改定されたと思うんです。今日こういう議題が出るとは思いませんでしたのできちっとした確認は取れていませんが、そうなると、例えば沖縄の普天間の代替基地移設の問題も、ジュゴンの海がどうなっていくのかということが問題に挙がっていたりしますので、その点、4つの代替案と新規の鳥獣保護法がどういうふうになっているのかということを、もしわかったら教えていただきたいということが1点です。

 2点目に、稲垣委員からご指摘がありましたように、小笠原における土地利用の問題。特に農業者にとっては、生産手段であります土地の高度な利用化という問題が非常に大きな問題になっていると思います。ところが、まだ村の方でも地籍図ができていない状況と承っております。

 4年ぐらい前でしたか、この会議で、農地法の適用外にしろ、本来あるべき農家基本台帳がないということは、今後の開発において、農業者と農地という両側面から押さえていく上で必要なのではないかということで、その調査に入っていただいたと思います。2年ぐらい前でしょうか、農家基本台帳作成のための調査が実施されていると思いますけれども、この3月現在、地籍図自体が未作成ということから、土地台帳もできないという状況があるようでございます。

 研究職でありますので、予算の項目等、事業費も含めて、どうしても調査というところに目が行ってしまうのですけれども、今回の国の基本調査でありますとか、都の報告書。恐らくこれは途中経過ということで、成果品はこれからかと思いますけれども、毎年繰り返されていく調査が一体どういうふうに活かされているのか。国は個々の産業毎の検討を踏まえて将来像を探るんだと事業計画にも謳っておりますし、東京都も平成9年に同様のアンケートをされているようですけれども、その時点といかに−多少ご説明があったかと思いますが−変容し、その間どういう具体的な実施をしたのかということと、村も 2,000万円近くの調査費をかけていらっしゃるようですけれども、一体どのような調査が行われ、どのように村民に具体的な事業として返されているのかということを、今回は求めませんけれども、次回にでもご説明いただけたらと思います。

 以上です。

○高橋部長 1点目の鳥獣保護法の関係でございますけれども、鳥獣保護法という、特別それだけという形ではございませんけれども、4案を検討する際の重要なファクターとして、環境に与える影響がどうなるかということは十分検討した上で絞り込みを行いたいと考えております。

○岡本会長 ありがとうございました。

 それでは、他にございませんようでしたら、以上で本日の議事を終わりにしたいと存じます。

 なお、本日お集まりの各省庁はじめ政府当局、東京都及び小笠原村におかれましては、本日の意見を踏まえ、今後の小笠原諸島の振興開発について格段のご努力をお願い申し上げます。

 最後になりましたが、東京都の福永副知事がお見えでございます。また、小笠原村の宮澤村長からご挨拶のお申し出がございますので、お願い申し上げます。

 まず、福永副知事からお願いいたします。

○福永副知事 東京都の福永でございます。知事に代わりまして、私から一言御礼のご挨拶を申し述べさせていただきたいと思います。

 本日は、委員の先生方並びに国土交通省をはじめといたします各省庁の皆様方におかれましては、大変ご多忙の中を、平成14年度小笠原諸島振興開発実施計画及び同諸島の振興開発につきましてご審議を賜りまして、厚く御礼を申し上げます。

 平成14年度小笠原諸島振興開発事業につきましては、ご案内のとおり、東京都も依然として大変厳しい財政状況にはございますけれども、着実に新小笠原諸島振興開発5箇年計画を達成いたすため、引き続き交通施設、産業振興、生活基盤整備等の各種振興施策を実施いたしまして、村民の皆さんの生活の安定と小笠原村の自立的発展の推進に努めてまいりたいと存じます。

 また、小笠原諸島の素晴らしい自然環境は村の最大の資源であるということを深く認識いたしておりまして、これは日本全体の共有の財産であるということで、私どもといたしましても、小笠原村と十分協力をしながら、この魅力ある貴重な自然の保全に向けまして更なる努力をいたすとともに、自然環境との共生を目指して、新たな観光施策の構築を図ってまいる所存でございます。

 また、空港問題につきましては、いろいろと厳しいご意見もございました。時雨山周辺の建設案を撤回いたしましたけれども、航空路の開設につきましては引き続き検討を行っているところでございます。もとより今後の小笠原振興に向けての諸事業は一朝一夕に事成就するものではございません。先程小笠原の村議長からのご発言もありましたとおり、これからの法延長につきましても不可欠の問題であると認識をいたしております。

 今後とも、委員の皆様方並びに国土交通省はじめ各省庁の皆様方には、一層のご指導とご協力をお願い申し上げたいと存じます。

大変簡単でございますけれども、お礼の挨拶とさせていただきます。

 本日は、誠にありがとうございました。

○岡本会長 ありがとうございました。

 それでは、次に宮澤村長、お願いいたします。

○宮澤委員 発言の機会をいただき、ありがとうございます。

 委員の皆様をはじめ国土交通省並びに東京都の皆様におかれましては、日頃より小笠原諸島の振興開発につきましてご尽力を賜り、厚く御礼を申し上げます。

 また、本日は、平成14年度小笠原諸島振興開発実施計画をはじめ小笠原諸島の振興につきまして貴重なご意見をいただきましたこと、重ねて御礼を申し上げます。

 さて、平成13年度におきましては、母島に整備を進めてきました急患搬送用の夜間離着陸設備であるヘリポートが完成いたしました。父島においては、平成13年5月から夜間急患搬送が可能となっており、実績としましては、平成13年度は24件の急患搬送のうち11件が夜間の搬送でございました。要請から病院収容までの平均時間も10時間を切りました。村民の生命を守る上で、母島におきましても、その役割を十分に発揮できるものと期待をしております。

 先程ご説明にありました超高速船テクノスーパーライナー、いわゆるTSLの就航につきましては、関係各所のご努力により所要の準備が進められる中、ようやく村民に説明できる状況になり、先日、父島、母島におきまして、国土交通省海事局及び海運会社、造船会社から村民に対して説明をしていただきました。

 観光立島を謳う小笠原村としては、いかに多くの観光客を誘致するか、また、観光客に満足していただける受け入れ態勢を築いていくかが今後の重要課題となります。このTSL就航を小笠原村に活力を生み出す大きな契機として捉え、村民一丸となって全力を挙げて取り組んでまいりたい、そのように考えております。

 しかし、TSL就航はあくまでも航路の改善で、海と空のアクセスが両立してこそ離島の足は確保されたと言えます。また、自然環境へ配慮した村づくりも今後の大きな課題であり、まだまだ特別措置法の下に実施していただきたい事業は山積しております。

 このような中で、平成15年度末をもって現在の特別措置法の期限を迎えることになります。国土交通省及び東京都におかれましては、昨年度、振興開発事業のあり方に関する調査を行い、今年度も継続して実施するように聞いております。世間一般の公共事業に対する風潮や国家財政の緊縮など、公共事業を取り巻く状況は厳しいものがございますが、振興審議会の委員の皆様方をはじめ国土交通省、東京都、そして私たち地元の村が一体となって、特別措置法の必要性、振興開発の方向性や公共事業のあり方などについて十分に議論し合い、ぜひとも法延長に向けてご尽力をいただきたいと存じます。

 今後とも小笠原村の自立発展に向け、より一層の皆様方のご支援、ご協力を賜りますようお願いを申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。

 本日は、どうもありがとうございました。

○岡本会長 ありがとうございました。

 それでは、以上をもちまして本日の会議を終わりたいと存じます。

 長時間にわたりご協力を賜りまして、誠にありがとうございました。

 

              閉    会

 

 

−−−−以  上−−−−

 

 

(参  考)

当日配付資料

 

資料1  小笠原諸島振興開発審議会委員名簿(PDF形式;4KB)

資料2  平成14年度小笠原諸島振興開発実施計画(PDF形式;253KB)

資料3  小笠原諸島振興開発に関する総合的な調査について(PDF形式;615KB)

資料4  小笠原諸島振興開発事業のあり方調査(アンケート結果)(PDF形式;165KB)

資料5  TSLの小笠原航路就航計画について(PDF形式;178KB)

資料6  小笠原空港の今後の取扱いについて(PDF形式;7KB)

資料7  小笠原諸島におけるエコツーリズム(PDF形式;12KB)

 


特別地域振興課 TOP PAGE   小笠原諸島振興開発審議会