92回奄美群島振興開発審議会会議録

 

日 時 平成16513日(木) 午前10

場 所 中央合同庁舎3号館4階 国土交通省特別会議室

議 題 (1) 奄美群島振興開発特別措置法の一部改正について

(2)       奄美群島振興開発基本方針(案)について

    (3) その他

 

出席者 会   長  宮 廻 甫 允

    委   員  出水沢 藍 子

           坂 井 順 行

           坂 柳 迪 夫

           濱 田 百合子

           元 山 三 郎

           吉 見 美 香

           須 賀 龍 郎

    幹   事  竹 歳   誠  国土交通省都市・地域整備局長

           上 園   淳  鹿児島県大島支庁長

    国土交通   佐 藤 茂 樹

    大臣政務官

    国土交通省  平 田 憲一郎  国土交通大臣官房審議官

           内 田 俊 彦  都市・地域整備局特別地域振興課長

 

 

 

資料一覧 資 料 1  奄美群島振興開発審議会委員及び幹事名簿PDF形式;8KB

     資 料 2  奄美群島振興開発特別措置法の改正概要PDF形式;12KB

     資 料 3  奄美群島振興開発特別措置法の概要PDF形式;8KB

     資 料 4  奄美群島振興開発事業のしくみPDF形式;12KB

     資 料 5  平成16年度奄美群島税制改正についてPDF形式;16KB

     資 料 6  奄美群島振興開発基本方針案について(諮問)PDF形式;12KB

     資 料 7  奄美群島振興開発基本方針(案)PDF形式;20KB

     参考資料1  奄美群島の振興開発について(意見具申)PDF形式;1.21MB

     参考資料2  平成16年度予算の概要PDF形式;8KB

     参考資料3  奄美群島振興開発特別措置法及び

小笠原諸島振興開発特別措置法の一部を改正する法律案関係資料

 

 

目   次

 

1.開  会

2.議  事

 (1) 奄美群島振興開発特別措置法の一部改正について

 (2) 奄美群島振興開発基本方針(案)について

3.閉  会

1. 開  会

 

 

○宮廻会長  開会時間まであと二、三分ほどありますが、皆さんおそろいですので、これから始めたいと思います。

 まず委員11名のうち、8名ご出席いただいていることをご報告いたします。審議会開催の定足数に達しておりますので、ただいまから、第92回奄美群島振興開発審議会を開催いたします。

 それでは議事に先立ちまして、佐藤国土交通大臣政務官がご臨席でございますので、ごあいさつをお願いしたいと存じます。佐藤国土交通大臣政務官、よろしくお願いいたします。

 

国土交通大臣政務官挨拶

 

○佐藤国土交通大臣政務官  皆様、おはようございます。ただいまご紹介を賜りました国土交通大臣政務官を承っております、衆議院議員の佐藤茂樹と申します。

 第92回の奄美群島振興開発審議会の開催に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げます。本日は公私何かと大変お忙しいところ、ご出席いただきまして、また平素より奄美群島の振興開発につきまして、格別のご支援、ご協力を賜り、厚く御礼申し上げる次第でございます。

 さて、奄美群島は昭和28年の本土復帰以来、産業の振興、社会資本の整備など、振興開発事業の実施によりまして、相応の成果を上げてきたところでございます。しかしながら、奄美群島はその厳しい地理的、自然的条件等の特殊事情による不利性を抱えまして、なお本土との間に経済面、生活面での諸格差が残されております。また、昨年、当審議会でご指摘いただいたとおり、自然的・地理的不利性を優位性と捉え直して、地域の魅力と資源として活用するとともに、島ごとの特性に応じた振興を目指しまして、地元の発意と創意工夫を生かした地域づくりに取り組むことが課題となっております。

 このため、この通常国会におきましても、奄美群島振興開発特別措置法の有効期限を平成21年3月までの5か年間延長するとともに、従来国が定めておりました振興開発計画について、国の定める基本方針に基づき、鹿児島県が策定するということになりました。今までは国が計画を策定していましたが、国は基本方針だけを決めて、具体的な計画については鹿児島県が定めるというように、地域の主体的な振興開発を促進するための改正を行ったところでございます。

 本日は、この国が定める奄美群島振興開発基本方針案につきまして、諮問させていただきまして、ご審議をお願いしております。この案についてご審議を経て、答申をいただければ、答申を踏まえまして、基本方針として決定して参りたいと考えております。

 ここまで硬い話をさせていただきましたが、実は私の長年の友人で、相撲界で活躍しておりました旭道山和泰君というのがおりまして、彼は奄美群島の中の徳之島出身なんですけれども、前々から私に、奄美群島というのはいいところだから、一度ぜひ一緒に行こうという誘いを受けているんですが、こっちが何かと忙しいがゆえに、実現できていない状況でございまして、近いうちになるべく、私も奄美群島に行かせていただいて、いろいろ現地のこともつぶさにつかんだ上で、私も発展に寄与をさせていただきたいと思っております。

 奄美群島の今後の振興開発につきましては、国土交通省といたしましてもできる限りの努力をしてまいりたいと考えておりますので、今後とも委員の皆様方のご指導、ご協力を賜りますよう、お願い申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。

○宮廻会長  どうもありがとうございました。

 佐藤国土交通大臣政務官は所用がございますので、ここでご退席されます。

 

国土交通大臣政務官退席

 

○宮廻会長  次に本日は所用でご欠席されていますが、鹿児島県議会議長の交替に伴い、溝口宏二委員に替わり、川原秀男委員が委員に就任されましたことをご報告させていただきます。

 

2. 議  事

 

(1)奄美群島振興開発特別措置法の一部改正について

 

○宮廻会長  それでは会議次第によりまして、議事に入りたいと思います。本日は奄美群島振興開発基本方針案について、本審議会に諮問されておりますので、この件について審議したいと思います。

 議題1の「奄美群島振興開発特別措置法の一部改正について」。まず、審議に入るにあたりまして、3月31日に成立した奄美群島振興開発特別措置法の一部改正について、事務局から説明をお願いします。

○内田特別地域振興課長  事務局をいたしております特別地域振興課長の内田でございます。

 お手元の資料番号の2、「奄美群島振興開発特別措置法の改正概要」、資料番号の3、「奄美群島振興開発特別措置法の概要」、資料番号の4、「奄美群島振興開発事業のしくみ」、資料番号の5、「平成16年度奄美群島税制改正について」によりまして、順次ご説明をさせていただきます。

 まず資料の2の「奄美群島振興開発特別措置法の改正概要」をご覧いただきたいと思います。ご承知のとおり、この法律は昭和29年、奄美群島の復帰に伴いまして、その復興計画を策定し、事業を実施する必要があるということで、法律が制定されて以来、おおむね5年ごとに延長され、現在に至っていたわけでございます。ちょうど昨年度が旧法の期限となってございまして、当審議会から16年度以降の奄美振興のための特別措置を講ずべきというご意見をいただいたことを受けまして、さらに5年間延長する等の改正を行ったものでございます。

 その改正の概要でございますが、第1点といたしまして、地域の主体的な振興開発を促進するための計画体系の改正がございます。地元の発意と創意をいかした主体的な地域づくりの推進、あるいは地理的・自然的特性をいかした、特に他の地域にはない魅力と資源を優位性と捉えた地域振興、また、島ごとの特性を踏まえた振興開発を図るといったご意見をいただいたことを受けまして、法律改正の考え方として、国の責務・役割を維持しながら、地元の発意や創意をいかすと、これを基本といたしまして、計画体系の改正をいたしております。

 具体的に申しますと、この四角で囲った二つのところがございますけれども、まず従来は、先ほど政務官の挨拶の中でございましたように、国が計画を策定するという形でございました。これを国が基本方針を定め、県が振興開発計画の策定を行い、これに対して、国が同意を行うという形に改めてございます。なおかつ、国がその基本方針を定める際には地域の特性をいかして、その魅力の増進に資するような振興開発が図られるべきことを基本理念として定めなければならないとしてございます。

 加えまして、計画そのものは県が策定するといたしておりますが、その計画策定に際しましては、奄美群島内の市町村に案の提出を求めることといたしております。そして、県はその出された案の内容をできる限り計画に反映させるように努めるという形といたしております。また、その案の提出に当たりましても、さらに市町村は単独あるいは共同でその案を策定して提出することができることとしております。このような形で、できるだけ地元主体、地元の発意をいかした計画策定ができるような形に計画体制を改正したものでございます。

 また、これに加えまして、昨年のご意見でもいただいた中で、交流活動の推進、あるいは人材育成の重要性というのをご指摘いただきました。こういったことを受けまして、計画で定めるべき事項につきましても、ここにございますように、国内及び国外の地域との交流の促進に関する事項、あるいは奄美群島の振興開発に寄与する人材の育成に関する事項、この二つの事項を新たに加えさせていただいております。この事項は、方針及び計画それぞれに定めなければならないこととして、追加したものでございます。

 また、次に大きな2の目的規定の改正と配慮規定の追加等の改正でございます。まず、この法律の法目的に、奄美群島の「自立的発展に資すること」ということを加えました。これも、昨年いただいたご意見の中で、自立的経済社会構造への転換の必要性ということを強くご指摘いただいたことを受けたものでございます。

 また、このような目的を加えたことにも伴いまして、その自立的発展に資するという観点から、さまざまな規定の整備を行っております。この括弧の中に書いてございますように、県が実施すべき医療機関の協力体制の内容につきまして、ヘリコプター輸送による患者輸送等を含むということを明確にいたしております。

 また、従来、無医地区についての規定はございましたが、無医地区以外の地区におきましても医療の充実に係る配慮規定というものを追加させていただいております。

 さらに農林水産業の振興につきましても、その生産基盤の強化あるいは地域特産物の開発、流通消費の推進、観光業との連携の推進等の配慮規定を追加させていただいております。

 また、情報通信体系の充実に係る配慮規定につきましても、この高度情報通信ネットワークを含むということで、その考え方を規定上も明確にさせていただいております。

 また、計画事項にも追加させていただきましたが、交流の推進ということを踏まえまして、地域間交流の促進に係る配慮規定を追加させていただいております。また、人材の育成に係る配慮規定につきましても、同様に、追加させていただいております。御意見で御指摘いただいた地域主体の振興開発の担い手としての人材育成の重要性にかんがみ、その配慮規定を追加したものでございます。

 以上が改正内容でございまして、さらに補助率の嵩上げ等の特例措置につきましては、これを従前どおり継続するという形にいたしております。ここに書いてございますように、例えば道路でございますが、一般国道は本土が10分の5.5でございますが、奄美は10分の8、港湾、重要港湾の外郭・水域施設では本土は10分の5、奄美は10分の9等の措置につきましては、引き続き継続するという内容となってございます。

 また、このほか平成13年12月特殊法人等整理合理化計画によりまして、独立行政法人化という方針が出ておりました奄美群島振興開発基金につきまして、これをこの法律の中で、平成16年10月1日に独立行政法人化することといたしまして、そのために必要な規定の整備を行ってございます。

 全体といたしまして、法律の有効期限を平成21年3月31日まで、5年間延長するとさせていただいたものでございます。

 次の資料の3は、このような改正をした結果の形としての法律の概要でございますが、ご覧いただければわかりますように、特に支援措置の段で、新たに地域間交流への配慮、人材育成についての配慮等が加えられた形となってございます。これは説明を省略させていただきます。

 また資料の4、「奄美群島振興開発事業のしくみ」でございますが、これは基本的にこの事業のしくみや法律の延長に伴いまして、従来と同様ということでございます。審議会の委員の皆様方は十分ご承知のことと思いますので、これも説明は省略させていただきます。

 最後に資料の5でございますが、「平成16年度奄美群島税制改正」につきまして、ご説明させていただきます。まず1点目といたしまして、「所得税及び法人税の特別償却制度の延長及び拡充」ということがございます。まず一つ、延長の内容でございますけれども、奄美群島における、製造の事業、若しくは旅館業の事業の用に供する設備につきましての特別償却の特例というものが従来からございました。これにつきまして、平成18年3月31日まで、2年間延長することといたしております。

 またあわせまして、いわゆる観光関連農林水産物販売業と申しますか、「その地区で生産された農林水産物あるいは農林水産物を原料若しくは材料として製造・加工若しくは調理したものを店舗において、主に当該地区以外の地域の者に販売する」と、法律でございますと、こういう書き方になるわけでございますが、いわゆる観光関連農林水産物販売業につきましても、特別償却の対象として、追加していただいたところでございます。

 また2番目にございますが、「奄美群島振興開発基金に係る非課税措置の延長」ということで、これにつきましても、平成21年3月31日までの5年間、延長させていただきました。これは従来と同様の税制の特例を受けられるということでございます。

 法律の改正の概要につきましてのご説明は以上でございます。

○宮廻会長  ただいまの奄美群島振興開発特別措置法の一部改正につきまして、ご質問等ございましたら、ご発言をお願いいたします。どなたからでも結構ですけれども、何かございませんか。

 

(2)奄美群島振興開発基本方針(案)について

 

○宮廻会長  ないようでしたら、次の議題2に入らせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。議題2が本題ですけれども、「奄美群島振興開発基本方針(案)について」の審議に移りたいと思います。事務局から資料が出されておりますので、これを説明していただいた上で、委員の皆様方からご質問、ご意見等をいただきたいと思います。

 それでは事務局から説明をお願いします。

○内田特別地域振興課長  それでは、お手元の資料番号の6、「奄美群島振興開発基本方針案について(諮問)」というものと、資料番号の7、「奄美群島振興開発基本方針(案)」によりましてご説明を申し上げます。

 まず資料の6でございますが、これは本日付けで主務大臣から当審議会に対しましてさせていただいた諮問の内容でございます。内容は奄美群島振興開発特別措置法第2条第5項の規定に基づきまして、奄美群島振興開発基本方針案について、貴審議会の意見を求めますという内容となってございます。

 法律上、当審議会の議を経た上で決定することとされておりますので、諮問させていただいた次第でございます。

 次に方針の本体でございます資料7のご説明をさせていただきたいと思います。あらかじめ、一言申し上げさせていただきますけれども、この方針は、もちろんそれを受けた計画も含めまして、平成16年度を初年度として、5年間を目途として作成されるような内容でなければならないことと法律でされてございます。

 また今回、先ほどご説明させていただきましたように、計画体系の変更に伴いまして、この方針を受けて、各市町村が案をつくり、その案を反映させた形で県が計画をつくる。その計画の案を主務大臣に協議をして同意を得るという、新たな手続が増えてございます。このような事情がございまして、従来に比べまして、できるだけ早くこのような方針を策定させていただく必要があるということもございます。

 本来であれば、この審議会で何度かご審議いただければよろしかったわけでありますけれども、このような事情がございまして、あらかじめ、素案を委員の先生方にお配りさせていただきまして、ご意見も伺わせていただきました。そのようなご意見も踏まえまして、また全体を通しまして、基本的には昨年の6月に当審議会からいただきましたご意見に沿ってまとめさせていただいたつもりでございます。これから内容をご説明させていただきますが、この案について、さらにご審議をいただければと思います。

 まず全体の構成についてご説明させていただきます。この目次の項目をご覧いただければと思います。まず、今回は方針ということもございまして、最初に序文ということを付けさせていただいております。あと、法律に基づきまして、この基本方針には奄美群島の振興開発の意義及び方向ということを書かなければならないこととされてございます。このローマ数字のUはそれを記載するものでございます。

 その内容としては、算用数字の1でございますように、まず奄美群島の役割について述べさせていただきました。その次に、2で振興開発の意義をまとめさせていただきまして、それを受けて、3で振興開発の方向性を5項目に分けて記載させていただいてございます。

 その後、ローマ数字のVのところでございますが、奄美群島の振興開発を図るための基本的事項ということで、これはそれぞれ法律によって定められております方針の中で、定めるべき基本的な事項を各分野につきまして、算用数字の1から12まで沿って書いてございます。

 全体的にあくまで方針ということになりましたので、極力、個別・具体的なものというよりは、大きな方針を記載する形で作成させていただいております。

 では、1枚めくっていただきまして、奄美群島振興開発基本方針の内容についてご説明させていただきます。まず1の序文でございます。この最初の部分は昨年の当審議会からいただきました意見が今回の法改正や、あるいは法改正を踏まえた今後の奄美群島の振興開発の考え方の基礎となるものと考えてございますので、国の今回の方針につきましても、この意見に沿った形で入れさせていただいているものでございます。

 具体的には、昭和28年以来の各種施策によりまして、既に相応の成果を上げてきたこと。しかしながら、一方で、特殊事情による不利性を抱え、それを克服するための取組をなお実施する必要があること。あるいは、なお諸格差が残されており、さらに高齢化等の問題を含めて、抱える多くの課題について対応していく必要があること。

 一方で、従来不利性として捉えられてきた各種の事情も、視点を変えれば、国の宝とも言うべき他の地域にない魅力的な資源であり優位性として捉え直すことができるということでございます。

 このようなことを踏まえて、今後、奄美群島における地域振興を進めるに当たっては、格差是正の進展のみならず、優位性を伸ばすという視点を明確にして、必要な基盤施設の整備を進めるとともに、これをいかし、地域の魅力と資源を活用した、内発的産業の振興を図り、その優位性の発想に基づく地域振興を進め、地域経済社会を自立的経済社会構造に転換する必要があるということでまとめさせていただいてございます。これは意見を踏まえた形でございまして、この方針全体に通ずる考え方でございます。

 次の段落の「このような背景の下」以下は今回、先ほどご説明させていただきました法改正の内容につきまして、ここで触れさせていただいたものでございます。

 その次の段落の「本基本方針は」以下でございますが、これはこの方針の位置付けにつきまして述べさせていただきました。法2条に基づいて定めるもので、方向を示すとともに、鹿児島県及び市町村が計画の策定を行うに当たっての指針となるべき基本的事項について定めたものであるということでございます。

 その後で、今後、関係市町村はこの方針の趣旨を踏まえて、地域住民や関係団体等、多様な主体の参画の下で振興開発計画案の策定を行うことが期待されるといたしております。また、鹿児島県はこの方針に基づいて、市町村の作成する振興開発計画の内容をできる限り反映させつつ、振興開発計画を策定するということで、最終的に締めくくってございます。

 これを序文とさせていただきまして、全体としてはこのような考え方を踏まえ、それぞれ記載いたしております。

 ローマ数字のUのところ、「奄美群島の振興開発の意義及び方向」でございます。まず最初に「奄美群島の役割」について記述させていただきました。奄美群島は他の地域にない風土的な魅力や資源に恵まれており、我が国にとって、重要な役割を担っているという総括をした上で、四つの項目に分けてその役割を記載させていただいております。

 まず(1)といたしまして、「豊かな自然環境」でございます。奄美群島は亜熱帯地域としては世界でも雨の多い特殊な気象条件下ということもあり、また古い時代に日本列島から隔絶されたということもあって、固有種や希少種など、貴重な野生動植物が生息している。あるいは美しいさんご礁の海や亜熱帯性の森など、多様な自然が残っている。このようなことを踏まえまして、奄美群島は学術的にも価値の高い地域である。我が国の多様な自然環境の形成・維持に大きな役割を果たしているということで、豊かな自然環境の面での役割を記載してございます。

 (2)といたしまして、「多様で個性的な伝統文化等」という項目でまとめさせていただいておりますが、奄美群島では個性豊かな独自の文化が形成されており、島唄あるいは八月踊りといった、固有の伝統行事や民俗文化財等が受け継がれているということです。こういった我が国の文化・地域社会の多様性の維持・増進を通じて、国民生活の充実に貢献しているということを述べてございます。

 (3)といたしまして、「長寿・癒しの島」ということでまとめさせていただいております。奄美群島は健康や長寿、癒しに関連の深い、多様な資源を有しているということはご意見でも指摘いただいています。また、特筆すべきこととして、特に100歳以上の高齢者の方の割合が、県としては全国一の沖縄県よりも高いといった特徴も有している。こういった長寿・癒しの島としての特性は国民に対するゆとりと潤いのある生活の提供を通じて豊かな国民生活の実現に役立っているという形でその役割を、記載させていただいております。

 また(4)といたしまして、「海洋資源の利用等」の役割について記載しております。代表的な海洋資源の役割ということだけ記載させていただいておりますが、奄美群島は870キロに及ぶ海岸線、あるいは美しいさんご礁、こういったものが海洋や自然との触れ合いを求める国民の志向ともあいまって、観光資源としての役割が期待されているということでございます。また、黒潮の影響や回遊性魚類といったものが見られる。あるいは天然礁が多く存在するということで、好漁場が形成されており、良質な食料の安定的な供給に貢献しているということであります。また、そもそも南北約200キロの広大な海域に点在して、排他的経済水域を保全しているという大きな役割がございますので、それを記載しております。

 このような役割を踏まえまして、次に2のところで、「振興開発の意義」について、述べさせていただいています。この最初の部分は若干序文の繰り返しというところもございますが、各施策でその成果を上げてきたけれども、なおその地理的条件や自然的条件によって、本土や沖縄との間に所得水準をはじめとする経済面、生活面での諸格差が残されており、奄美群島の自立的発展に向けて、引き続き取り組んでいく必要があるということをまず述べております。

 また、1のところで述べました、その役割に対応するものでございますけれども、奄美群島の野生動植物は非常に他の地域では見られない、貴重でかけがえのないものである。多様な自然環境の形成・維持に貢献しているということを踏まえれば、その豊かな自然環境を保全していくことは、我が国にとって意義のある取組であるということで、先ほどの(1)で述べた役割への対応の意義を述べてございます。

 さらに加えまして、奄美群島の個性的な伝統文化や癒し・長寿の島、先ほどの役割の(2)と(3)で述べさせていただきましたもの、この特性、役割は我が国の文化・地域社会の多様性の維持・増進、あるいは国民に対するゆとりと潤いのある生活の提供などを通じて、国民生活の充実に役立てる。こういった地域社会を維持していくことは、社会全般にとっても有益だということで、その意義を述べさせていただいております。

 加えて、先ほどの海洋資源で述べました、(4)の役割で述べましたところに対応した部分でもございますけれども、奄美群島の存在そのものが排他的経済水域等の保全、あるいは船舶の航行や操業漁船の安全の確保など、多面的な役割を果たしている。今後とも奄美群島の地域社会を人々が安定的に生活できる場として維持していくことに大きな意義があるということで、その意義を述べてございます。

 このようなことを受けまして、総括いたしまして、このような奄美群島の果たしている種々の重要な役割を維持しながら、奄美群島の振興開発により、住民の生活の安定及び福祉の向上を図り、ひいてはその自立的発展に結び付けていくことは、我が国全体の経済の発展と国民の福祉の向上に有益だということで、まとめさせていただいてございます。

  次に、「振興開発の方向」について、大きくまとめさせていただいております。ここも意見あるいは序文を受けた形で記載してございますけれども、今後の奄美群島の振興開発に当たっては、引き続き社会基盤、生活基盤の整備を推進し、基礎条件の改善に努める。これが一つであります。これとともに、奄美群島の自立的発展に向けて、奄美群島の魅力と資源を活用した産業振興策、将来の奄美群島の振興開発を担う人材の育成等の施策の推進が必要であるということです。

 このために、以下、今度は5項目に分けまして、記載させていただいておりますが、五つの方向を基本として取り組むものとしてまとめさせていただいております。この第1点目でございます。今回の一つの考え方の基本でございます「優位性への転換と奄美群島の魅力の増進」でございます。意見でいただいた形を受けまして、従来、克服すべき、あるいは甘受しなければならない不利性の要因として捉えられてきた地理的・自然的条件を、世界に類を見ない貴重な野生動植物に代表される自然的特性や、多様で個性的な伝統文化の文化的特性、長寿・癒しの島といった社会的特性、こういう逆の面からの捉え方もある。こういった、視点を変えて捉えれば、他の地域にはない魅力と資源を奄美群島の優位性として捉え、この発想に基づいて、その地域の特性をいかした内発的産業の振興を図るなど、地域の活性に結びつけていく。これを第1番目の基本的な方向として述べさせていただいております。

 第2点目でございますが、「地域の発意と創意工夫の活用」でございます。これも今まで述べてまいりましたような貴重な自然環境あるいは伝統文化、こういった資源というものを発掘して、自立的発展につなげていくためには、こういった資源についての詳細な知識と地域振興に向けた強い意欲をあわせ持った住民の積極的な参画が必要でありまた、振興開発に当たっては、地元が受動的な立場から、さらに能動的な立場に変わることを認識することが必要であるという認識をまず述べてあります。

 このために、行政機関をはじめとして、観光協会や商工会などの関係団体が連携を強化するとともに、個々の住民が奄美群島の住民としての自覚と誇りを持つように、自主的かつ地域ぐるみで、今後の奄美群島の振興開発のあり方を考える気運の醸成を図るなどで、住民の発意と創意工夫を引き出して、具体的な振興開発施策に結び付けていくという方向性を述べさせていただいてございます。

 三つ目でございますが、「島ごとの特性に応じた振興開発の推進」ということでございます。奄美の特性もまた、島ごとにそれぞれ、気象あるいは地理・文化・産業等も異なっているということから、島ごとの地理的・自然的特性、あるいは人口及び産業の集積の状況その他の特性に応じた振興の開発を図っていくこととしております。

 また、先ほど法律の説明を述べさせていただきましたけれども、振興開発計画の策定に当たりましては、市町村にその案の提出を求めることとされてございますが、その際、複数市町村による共同での案の提出も可能となってございます。このため、島内に複数の市町村がある場合には、その島としての独自性をいかした計画案を共同で作成・提出するといったようなことも期待されるということで、あえて述べさせていただいております。もちろん、これは強制という性格のものではございませんので、あくまでも期待ということで記載させていただいております。

 次に(4)ということでございますけれども、「地元主体の自主的な地域づくりの推進」ということでございます。今後の奄美群島の自立的発展を促進するため、もちろん地元の発意・創意工夫をいかした振興開発が必要でありますが、あわせて地元が主体性を発揮して、自助努力により、特に公共事業だけに依存しない、足腰の強い地域づくりを進めていくことも重要であるということでございます。あわせて地元主体の自主的な地域づくりのための、より効果的な支援方策についても検討していくことといたしております。

 5番目に、「ソフトとハードを一体とした総合的な施策の推進」ということでございます。奄美群島の特性をいかした地域の主体的な取組を支援して、地域が抱える諸課題を克服し、新たな産業の育成あるいは観光の開発といった地域の自立的発展に向けた環境づくりを推進するために、ソフト施策とハード施策を一体的に実施する総合的な取組を展開することといたしております。従来、ややもすれば、ハード重視ではないかという批判もあったことも踏まえ、さらに今後の必要性も踏まえて、ソフト施策とハード施策との一体的な取組ということを強調させていただいております。また従来、整備されてきた社会基盤につきましても、今後さらにソフト・ハード両面からの取組を進めることで、一層の効果が期待されるということを述べさせていただいてございます。

 以上が、今回の基本方針におきましての振興開発の方向として述べさせていただいた5項目でございます。こういった形でまとめさせていただきました。

 次に、「奄美群島の振興開発を図るための基本的な事項」ということで、各分野につきましての基本的な事項をそれぞれ記載してございます。まず、総論的に振興開発のための個々の事業の実施に当たりましては、国、鹿児島県、奄美群島内の市町村あるいは民間事業者といった、各事業主体間及び事業間の連携を強化して、振興開発の推進に必要な行財政、金融、税制等に関する措置を有効かつ適切に活用し、ソフト・ハード両面からの効率的・効果的な施策展開に努めるということを記載してございます。

 それ以下、これは当然のことではございますが、この計画はあくまで地元主体で作成されるということでございますので、ここに記載してございます振興開発の意義及び方向に合致するものであれば、特に以下の各分野の項目について記載のない事項についても、その計画に記載することを妨げるものではないということを、付記させていただいてございます。

 以下はそれぞれ法律において、定めるべきこととされた各分野の基本的な事項でございます。第1は「地域の特性に即した農林水産業、商工業等の産業の振興開発に関する基本的な事項」ということでございまして、これを二つに分けて記載させていただきました。まず(1)として、「地域資源を活用した産業の振興」ということでございます。何度も出てまいりましたように、他の地域にない魅力と資源を最大限に活用した産業の振興が重要であるという認識を述べさせていただいております。このために、地元主体の産業振興の取組に対して、ソフト施策による需要開拓、あるいは地域資源発掘等の支援、課税の特例措置。もう一つ、この10月に独立行政法人化されます奄美群島振興開発基金の活用など、必要な支援を行うことといたしております。また大島紬、黒糖焼酎といった在来型の産業につきましても、島内外の市場における競争力の強化、情報化への対応、流通体制の強化等に努めることといたしております。

 なお、基金につきましては、自律的かつ効率的な運営を行うとともに、産業の振興に必要な業務の充実強化に努めることといたしております。

 次に(2)といたしまして、農林水産業について取り出して書かせていただいてございます。農林水産業につきましても、その地域の特性に十分対応した農林水産業の振興を図ることが重要であるということをまず述べさせていただいております。このために、奄美群島の地理的・自然的特性に対応した農林水産業の生産基盤の強化や基幹作物でありますさとうきびの生産対策、特殊病害虫対策を促進するといたしております。

 また、それぞれの島の特性に合った流通体系を確立して、輸送コストの低減と販路の拡大を図るといたしております。また、さらに島ごとの特色ある農林水産物、あるいは本土の端境期に出荷する作物といった地域特性をいかした特産物の開発あるいは普及、さらに生産・流通・消費の増進を図り、観光資源をいかした、観光業と連携した取組を推進するものといたしております。先ほど、税制改正の特別償却で追加されました、例えば観光関連農林水産物販売施設に対する税制の特例等も、こういった取組を進める上での支援になろうかと思います。

 次に2の「観光の開発に関する基本的な事項」でございます。まず観光は奄美群島の魅力と資源を最も直接的にいかすことができる産業であるということで、その認識を述べさせていただいております。こういった魅力ある地域特性を観光資源として、奄美群島内外に強くアピールして、その魅力を最大限に活用した体験、滞在型観光を推進する。これに加えまして、住民と行政による良質のサービスの提供。農林漁業との連携や、奄美群島内外との交流活動の推進といったものを図りながら、島ごとの独自性を重視した総合的な観光の開発に努める。また、特に一過性でない、リピーターの増加が重要であろうと思いますので、リピーターの増加と、観光地としての評価の向上を図ることといたしております。

 また最近、各種取組が見られますエコツーリズムにつきましても述べさせていただいております。このエコツーリズムにつきましても、今後有望な観光の一形態であるということで、その推進については観光の開発と将来にわたり継承すべき貴重な自然環境の維持との両立に十分配慮して取り組むものといたしております。

 3番目の交通関係でございますが、「道路、港湾、空港等の交通施設及び通信施設の整備、その他の奄美群島以外の本邦の地域と奄美群島及び奄美群島内の交通通信の確保に関する基本的な事項」ということでございます。この項目は「交通の確保」と「通信の確保」にそれぞれ分けて記載させていただきました。

 まず交通の確保でございますが、道路、港湾、空港といった交通施設、これが地域経済の活性化を図っていく上での重要な生活・産業の基盤だという認識を述べさせていただいた上で、このためということで、奄美群島の景観にも配慮しつつ、安全かつ安定的な輸送のために必要な交通基盤の整備を推進すると。これにあわせて、奄美群島と本土との間及び奄美群島内の航空路線及び離島航路の安定的な運行の確保にも努めることといたしております。

 また、「通信の確保」につきましては、法律でその内容を明確にさせていただきました高度情報通信ネットワークについて記載させていただきまして、こういったネットワークが奄美群島の地理的な制約を克服する上で、極めて有効な手段であるという認識を述べさせていただいております。また、医療、教育、特産物のPR、販路拡大といった奄美の魅力を広く知らしめることが可能となる仕組みであるということで、このために奄美群島において、情報通信ネットワークの整備等を進め、住民生活の利便性の向上、産業の振興等を図るための通信体系の充実に努めることといたしてございます。

 4番目の「生活環境の整備に関する基本的な事項」でございます。まず、この項目に関しましては、IターンあるいはUターンといった形で、奄美群島に居住しようとする人々について、生産・定住意欲を促進していただくことが必要であり、そのためには快適な生活環境の形成が必要であるといたしてございます。このために、生活基盤の整備については、生活用水の安定確保、公共下水道の整備、道路・都市公園の整備、公営住宅の整備などによりまして、良好な居住環境の整備を推進し、やすらぎとうるおいのある生活空間の形成を図る。これとともに、環境に優しい循環型社会を形成するため、廃棄物の排出抑制やリサイクル等の適正処理を促進することといたしてございます。

 5番目の「保健衛生の向上に関する基本的な事項」でございます。奄美群島の特性でございます長寿・癒しの島の要因について研究するとともに、その豊かな地域資源をいかしまして、保健・医療及び福祉の連携による総合的な健康づくりへの取組を促進することといたしております。また、引き続きハブの駆除対策及び咬症対策についても記述させていただきました。

 6番目の「高齢者の福祉その他の福祉の増進に関する基本的な事項」でございます。ご承知のとおり、奄美群島では高齢化率が既に25%を超えているということで、国や県よりも速いスピードで高齢化が進んでございます。こういったことで医療や介護の需要も高まってきているということに対応し、地域の実情あるいは高齢者のニーズに合った高齢者福祉の充実、あるいは高齢者が地域社会の一員として安心して自立した生活を送ることができる長寿社会づくりを推進するといたしております。

 また奄美の場合は出生率が高いということもございます。これは相互扶助の気風が強いことや、子は宝といった価値観に基づくものだということも言われてございますが、こういった特性をいかした子育ての環境整備、あるいは障害者が社会活動へ積極的に参加するために必要な支援等の障害者福祉対策といった地域ぐるみの福祉環境の整備を促進するといたしてございます。

 7番目の「医療の確保等に関する基本的な事項」でございます。この点につきましては、依然として無医地区が存在するということも述べた上で、必要な医師の確保あるいは診療所等の施設の充実、島外への救急患者の輸送の対応など、医療体制の充実も重要な課題であるということを述べ、このために中核的な病院による支援・協力体制の構築、遠隔医療支援システム等の活用、医師・看護師の確保などによって、必要な医療水準の確保を図ることといたしてございます。

 8番目の「防災及び国土保全に係る施設の整備に関する基本的な事項」でございます。この点につきましても、防災及び国土保全施設の整備、あるいは自主防災組織の育成など、防災対策等の推進に努めることといたしております。

 9番目の「自然環境の保全及び公害の防止に関する基本的な事項」でございます。まず第1点目として、「自然環境の保全」でございますけれども、自然の特性等については、これまで随所に述べてきたわけでございますが、こういったことが世界的にも高く評価されているということを述べた上で、このため、奄美群島固有の野生動植物の保護及び増殖、外来生物の排除並びに国定公園の適正な保全及び利用の推進を図りながら、世界自然遺産への推薦を目指すということで、ここに述べさせていただいてございます。また、各種事業の実施に当たっては、人と自然との共生あるいは周囲の自然環境との調和に努めるとさせていただいてございます。

 第2点目の「公害の防止」につきましては、大気及び水質の保全、騒音の防止に努めるとともに、廃棄物等の排出抑制あるいは適正処理の推進、環境への負荷の少ない農業の推進などに努めることといたしてございます。

 10番目の「教育及び文化の振興に関する基本的な事項」でございます。まず「教育の振興」につきましては、今回の大きなテーマでございます自立的発展を促進するためには、やはり奄美群島の将来を担う人材を育成していくことが重要だ、必要だという認識を述べさせていただいた上で、この魅力ある地域資源をいかした体験学習や、あるいは本土の子供たちとの交換留学などを取り入れるといったことなどを含めて、地域の特性に応じた教育を進めるとともに、公立学校施設の整備・充実を図るなど、必要な教育環境の整備を推進して、創造性豊かな人材の育成を図ることといたしております。

 またあわせて、地域に開かれた学校づくりということで、こういったものも進め、多様化・高度化する地域住民の学習ニーズに対応した生涯学習社会の形成あるいは社会教育活動の促進に努めることといたしております。

 また、次の(2)の「文化の振興」についてでございます。奄美群島の特性の一つを担っております伝統行事あるいは民族文化財等、これを後世に受け継いでいくためには、もちろん地域住民の中で、その保存・伝承に努めるとともに、こうした固有の文化に対する国民の理解を深めることが必要であるということをまず述べさせていただいております。このために、本土の人々も含めて、こういった伝統文化にふれあう機会を積極的に設け、また学校教育や生涯学習の場におきまして、伝統文化の保存、伝承の促進に努めることといたしております。

 次の11番目の項目でございます。これは先ほど申し上げましたように、法改正によって追加された項目でございますが、「国内及び国外の地域との交流の促進に関する基本的な事項」でございます。最初に交流が奄美群島の自立的発展を促進する上で、非常に重要だということを述べた上で、まずこのために、いわゆる「奄美ミュージアム構想」でございますが、奄美群島を博物館と見立てて、産業、観光、文化等を総合的に振興する構想を定め、奄美群島の魅力や役割をPRするとともに、観光客との交流を推進するといたしております。また、こういった取組を通じて、群島の住民が気付いていなかった地域資源の発掘を図る。さらに国内外の地域との交流活動に取り組んで、相互理解を深めることによって、その交流する相互の地域の発展等を促進するということといたしております。

 また「加えて」と書いてございますが、特に都市部の子供たちにとって、こういった奄美群島の豊かな自然・文化の中で過ごすということは、通常得られない、大変貴重な経験でございます。また、そういう経験を積んでいただくことによりまして、奄美群島の役割が広く認知される機会ともなるということで、修学旅行あるいは体験学習の場として、対外的にもPRしていくということも重要だということを述べさせていただいております。

 また、今後も観光拠点を結んだネットワークの形成でありますとか、伝統芸能を通じた文化交流、あるいは気象条件が類似しております農林水産業の技術交流など、諸分野での沖縄との交流につきましても推進することとさせていただいております。

 最後に、12番目の「奄美群島の振興開発に寄与する人材の育成に関する基本的な事項」でございます。これもまた、今回の法改正によって、追加された事項でございます。昨年度の意見以来、一環してその人材育成の必要性をご指摘いただいているところでございますが、まず地域主体の振興開発を推進するためには、振興開発の担い手となる人材の育成が不可欠だという認識を述べさせていただいた上で、このためということで、外部との交流の機会の増加等によりまして、個々の住民の意識の向上を図るとともに、地域おこしに対する意欲を持ち、本土の人々や観光客の視点を持って奄美群島の振興開発に当たることのできる人材の育成を図ることといたしております。

 また、住民主体の地域の活性化に向けた気運を醸成するための取組を行うということといたしております。さらに加えまして、奄美の自然・歴史・文化等についての研修の実施によります観光客に対応し得るガイド能力を有する人材の育成、あるいは各種の技術習得のための研修の実施による産業の担い手の育成等に取り組むとしてございます。

 事務局で用意させていただきました基本方針の案といたしましては以上のとおりでございます。

○宮廻会長  ただいま説明のありました奄美群島振興開発基本方針案につきまして、これからご審議いただくわけですが、その前に事務局に確認しておきたいことがあるんですが、ただいま説明のあった基本方針案は私は事前にいただいておりますが、そのほかの委員の方全員に、事前にお配りされているわけですね。

○内田特別地域振興課長  先ほど申し上げましたように、事前に一度お配りさせていただきまして、ご覧いただいております。

○宮廻会長  それに対してご意見のある方は、もうそちらにお寄せいただいているのですか。

○内田特別地域振興課長  はい、いただきまして、それも踏まえた形にしております。

○宮廻会長  それについて、事務局としてここに盛り込めることにつきましては、この案文に反映されているのですか。

○内田特別地域振興課長  基本的にあくまで方針でございますので、国の方針としてふさわしいものについてはできるだけ取り込ませていただくような形にしております。

○宮廻会長  わかりました。

 それではご意見をお伺いしたいと思いますが、どなたからでもどうぞ。質問でも結構で す。坂柳委員、どうぞ。

○坂柳委員  大変きめ細かく書いていただいていると思いますが、一つ伺いたいことは、 今回の方針の中で、奄美の一つの目玉というか、長寿・癒しの島ということが出てきていますね。前回、確か知事さんからご説明はあったと思うんですが、その要因について研究するということを言われていますけれども、もう既に鹿児島大学の関係とか、そういうところで研究をなさっているのかどうか、その辺の実情、どの辺まで行っているのかということをちょっと教えてください。

○須賀委員  私からお答えいたします。

 現在、まだ研究中です。これはプロジェクトチームをつくりまして、鹿児島大学、県それから地元が一体となった連携プロジェクトチームの中で、「長寿・癒しの島」と書いてありますけれども、「長寿・子宝・癒しの島」と、私どもの研究の中には「子宝」が入っているんです。と申しますのは、全国の出生率が1.3ぐらいですが、鹿児島は1.51ぐらいですが、奄美は全国の中でもトップクラス、1番から5番までは奄美の町なんです。一番高いところは、沖永良部の和泊町ですが、この出生率は2.58なんです。奄美全体が2.22ぐらいで、非常に子宝に恵まれている島であります。

 その環境の問題等も含めて、私のほうは長寿・子宝・癒しの島ということで、今、いろいろな研究といいますか、その要因について調査をやっておりますが、中間報告がやがて出てくると思いますけれども、一部にはエアロゾルを非常に浴びていると。それからよく奄美の人は動くと。最初は「働く」と書いてありましたけれども、それは動くのほうが正しくはないかということで、「動く」にしてあります。それから、よく油物をとると。それから野菜をよく召し上がるという食生活、生活環境、そういうものに一応の中間報告が出てきていますけれども、最終的にまだ結果の取りまとめまでは至っていません。やがて、これは出てくると思います。

○坂柳委員  鹿児島大学の医学部ですか。

○須賀委員  医学部です。

○宮廻会長  ただいまありましたように、鹿児島大学の医学部が長寿のことで、この前もシンポジウムを年末にやりました。それと今、須賀委員からご紹介がありましたような形で調査をされて、それに基づいて、16年度「長寿・子宝・癒しの島、奄美」の構築を目標にして、鹿児島県で奄美、長寿・子宝プロジェクトを発足させるということで、昨日、私はこちらに来る前に保健福祉部からお話がありまして、委員をお引き受けするようなことになっているんですけれども、そこのところでは戦略ビジョンと言っていますが、それを決めて、この先5年間の長期ビジョンを検討するというお話を昨日伺ったところなんです。

○須賀委員  今、宮廻会長がおっしゃいましたとおり、プロジェクトチームを再編成しまして、最終的な今までの基礎資料をもとに、さらに調査を深めていきたいということで、今取り組んでおります。

○宮廻会長  ただいまの基礎調査というのは、15年度に行われているのですか。

○須賀委員  はい、これは15年度に行っております。

○宮廻会長  今、まとめの段階に入っているのですか。

○須賀委員  はい、今のところ中間まとめで、さっき申し上げました、エアロゾルの問題とか、あるいはよく体を動かすとか、それから食生活の中で、よく油物をとっている、豆類をよくとっている、というのも出ておりましたね。そういういろいろなデータが出ています。

○宮廻会長  どうもありがとうございました。

 坂柳委員、どうぞ。

○坂柳委員  ありがとうございました。それに関連して、ちょっとこの基本方針を読ませていただいての感想というか、感じたことを申し上げたいと思うんです。どこをどう直してくれという意味じゃございませんが、全体を通じて、自立的発展ということを非常に強調されておられる。それは正しいんだろうと思いますが、やっぱりそれと同時に、バックアップをするということが大事だと思うんです。バックアップの仕方というのは、もちろんハード、ソフトいろいろなことがあるんですが、今、癒しの研究のことを伺ったのは、これは、こういうような大学なんかとの共同研究、共同調査ということで、新しい事実が出てくるということは、地元の方々にとっては大変誇りになることだ、やろうという気になるということではないかと思うんです。

  この方針の中にも、市町村が共同して提案をするというようなこともできるというところがありますが、実は農業関係で申し上げますと、昨年、岩手大学の学部長クラスの方のお話を伺ったんですが、岩手大学も御多分に漏れず、法人化ということの中で、地域貢献というのを非常に一生懸命取り組んでおられる。そういう中で、岩手県内の条件の似た数か町村をグループ化して、そことの共同研究で、特産物開発とか、利用とか、そういうことをおやりになっているという話がありまして、やはり今言われた、鹿児島大学医学部がプロジェクトチームで地元も巻き込んでやっておられたという方式は、おそらくいろいろな分野であり得るんだろうという感じがいたしました。

○宮廻会長  その関連ですが、鹿児島大学で、医学部だけではなくて、私が所属する法文学部、それから大学院の人文社会科学研究科、そこに今、地域政策科学専攻という博士課程ができていますが、そこあたりはプロジェクト研究といって、社会人もいるんですけれども、博士課程の大学院生が現場に出て行って、そして政策形成をしていくという研究教育をやっていまして、それでそういう大学院のメンバーを中心にして、奄美を中心にしながらも、沖縄までも視野に入れた島しょ圏開発のグランドデザインという、学長裁量経費というので、それを立ち上げていまして、これは法文の文系のスタッフが中心なんですけど、理系の人も入って、南西諸島における環境ガバナンス型地域政策と、環境に配慮した形で地域開発をいかにして行っていくかということでやっております。

 だから、そういうことで、須賀委員にも随分いろいろと大学のほうはお世話になって、地域貢献といいますか、官学連携という形ではいろいろな面でやってきているところです。そういうものをもっと今後は、地元の創意工夫ということがありますので、そうした政策形成に大学も県と一緒にいかに貢献できるかということをこれから考えていかなければいけないと思っておりまして、今、坂柳委員からご発言があったことは大学に持ち帰って、私もしかるべきところに伝えたいと思います。どうもありがとうございました。

 ほかにどなたか。吉見委員、どうぞ。

○吉見委員  基本方針案自体に関しましては、ほんとうによく考えられた立派な内容だと思います。作成された方々にまずお礼を申し上げたいと思います。

 ただ、ちょっと質問と意見と両方あるんですけれども、一つは、まずご質問させていただきたい内容なんですが、7ページ目の11の項目、「奄美群島の住民が気付いていなかった地域資源の発掘を図るとともに」という文言があるんですけれども、この5年以内に限ってで結構なんですが、地域住民が気付いていなかった何か特産物になり得るようなものが発掘された経緯というのはあるんでしょうか。それをまず伺わせていただきたいと思います。

○宮廻会長  いかがでしょうか。

○須賀委員  それは文化の面でしょうか。あるいは産業振興の面でしょうか。

○吉見委員  どちらでも結構です。文化でも産業振興にかかわることでも結構です。

○須賀委員  これは今、ちょっと調べていますけれども、法律延長に際して、新たな計画をつくるときに、私も奄美の若い人々も含めて、いろいろな方々とお話し合いをしてきたんですが、ここには非常に薬草が多いという話を聞きまして、その薬草の何かいい開発というとおかしいですが、活用の方法や、どういう薬草があるのか、もう少しよく調査をすべきではないのかということは言っておりますけれども、具体的にこういうものがあるというのは、まだ報告が来ておりません。

○吉見委員  わかりました。なぜ質問させていただいたのかと申し上げますと、実は、バンシロウと地元で呼ばれている、グァバとも呼ばれますが、ありますね。あの葉っぱを乾燥させて、昔から糖尿病対策として地元では飲んでいました。私の祖父母とかがそれをよくそういう形で活用していたのが記憶にあります。そうしたものがありましたものですから、ヤクルトさんから、蕃爽麗茶という名前のお茶が2年ぐらい前、新発売されたときに、私ははっと思いました。なぜ奄美にいて、そういう知識を私も持っていたのに、そういったことが島の産業として出なかったのかなというのをちょっと思ったんです。

 それと同時に、私自身は雑誌の仕事を通じまして、当時ダイエットの大ブームとなりました低インシュリンダイエットというのがありました。その低インシュリンダイエットというものの根本というのは、インシュリンを上げない。それを上げないというのが、グァバ、バンシロウの葉っぱに含まれているというのを研究開発なさったのがヤクルトさんの蕃爽麗茶だったわけです。そういった昔ながらの民間療法的な薬草的なものというのが、多少違う点もあることもあるとは思いますが、かなり有効性があるということを一つ実証したのが、その商品だったような気がしております。

 例えば、そういったことが県ですとか、市町村を通じて、地元の住民たちにPRされた場合には、なるほどと思いながら、「そういえば」ということで、思い出すことというのは幾つも出てくるんじゃないかと思うんです。

 すべきことというのは、地域住民たちに「それを考えなさい。」と言うのはたやすいことだと思いますが、具体的なヒントになること、「ああ、なるほど。じゃ、あそこのばあさんに聞いてみようか。」とか、「あのじいさんたちのご長寿の秘密というのを伺ってみようか。」とか、そういったことを思わせる手がかりになることというのも、これは計画ではなくて基本方針案ですので、もちろんこういった具体的なことというのは盛り込む質のものではないと思いますが、今後、どんどん県ですとか、市町村とかという形で、練られていく中で、一つの具体的な例としてのことというのも盛り込みながら、案の計画を練られていただくといいと感じたので、質問させていただいたわけです。

○宮廻会長  須賀委員から何かありますか。

○須賀委員  これはグァバ茶のことでしょうけれども、「確かに糖尿病によく、効用がある。」と言われているお茶なんですけれども、この量がどの程度あるのか、それを定期的にきちんと製造していける、流通に乗せていけるというのは全くないわけです。ただ、「効きますよ。」というので、私どももよく見ますけれども、そこら辺の木の葉っぱをばさっともいできたような葉っぱで、「これを煎じて飲むと非常に体にいいんですよ。」というだけですから、今申し上げたように、薬草の一種として、こういうものも今後、活用していけるのかどうか、そのためには、きちんと定期的に収量があり、そしてまたどういう製造工程、どういう流通過程を通っていくかということも大事でしょうから、こういう点も含めて、将来の自立的発展の一環として、私は地元も県も一体となって、また鹿児島大学の皆さん方にもご協力いただきながら、研究をしていく必要があると考えています。

○吉見委員  わかりました。そうですね。先ほどおっしゃっていた鹿大の研究機関を大いに活用していただいて、今申し上げたのはあくまでも例ですけれども、それ以外の地元から上がってきたものに関しても研究なさっていただきたいと思います。私だけになりますので、意見は後ほどまた申し上げさせていただきたいと思います。

○宮廻会長  どうもありがとうございました。

  濱田委員、どうぞ。

○濱田委員  濱田です。今回、奄美に特別なご配慮をこのように賜り、すばらしい基本方針案を出していただきましたことに、まず感謝申し上げます。

 5年間という期間限定ということは、5年後には自立しなさいよということになるのかと思うんです。5年後に自立していくための土台づくりをこの5年の間にしていくということと理解した上で考えると、いろいろ書かれていてあれなんですけれども、「持続可能な循環型の」という言葉をこの基本方針案の中のどこかに盛り込んでいただきたいと思うんです。昨年、世界自然遺産登録は惜しくも見送られましたけれども、奄美の自然の価値がそれで下がったわけではありませんし、今回の奄振では自然遺産登録へ向けての土台づくりということも考えていいのではないかと思っているんです。

 例えば、今まで公共工事ということで、いろいろ護岸整備であるとか、漁港整備とか、林道整備とかもされてきていますけれども、例えば、海岸線のテトラポットは世界自然遺産登録に向けての景観上好ましくないから、防災面を考えながら、海の中に沈め込むとか、そういう方策というのも考えられるのではないかと思うんです。

 あるいは砂浜の保持・回復にアダンを植える。アダンというのは砂が流出するのを食い止める役割が昔からあるということで、皆さん、今でもお年寄りたちは経験上おっしゃっていることなんですが、そういう世界自然遺産登録へ向けての土台づくりということを考えてもいいのではないか。

 林道工事という、この狭い奄美群島の中で、かなり林道が張りめぐらされてきているわけですけれども、元山さんがいらっしゃるからおわかりになると思うんですが、工事をしたことによって、舗装されたところに車がスピードを出しやすくなるわけで、そうすると、小さい小動物たちは死んでいく可能性が非常に高いのと、分断されてしまうので、それでも環境が限定されてしまうという可能性が非常に高いということもあるわけで、これだけ貴重な動植物と言われていながら、そういう開発によって失われていくことも反対にあるという、その兼ね合いが非常に難しいと思うんですけれども、これだけのすばらしい自然を持続可能な形の循環型の保全ということを考えていきたいと思います。

 海のさんごに関しても、今、さんご礁というのは、これだけの群生地というのは奄美が北限なんですけれども、奄美の北限のさんご礁というのは、今、世界的な規模での地球温暖化の抑制をする、結局COを吸収して、酸素を出していくという役割を担っているわけですから、これの保全ということも、日本国において非常に大切なことではないかという研究資料等も必要ではないかと思います。

 その持続可能な循環型というのは、自然だけではなくて、産業にも、人材育成にも私は当てはまることではないかと思います。

○宮廻会長  その持続可能なというのは自然の保全とか、環境保全とかいうものと、ゼロエミッションみたいな、ああいう島内リサイクルみたいなものを含めて、今、言われているわけですね。

○濱田委員  そうです。それも含めてです。

○宮廻会長  ただいまの濱田委員のことにつきまして、何か事務局からありますか。

○内田特別地域振興課長  基本的には、先生のおっしゃったような自然の保護というのは、全体を通じた非常に大きな問題として捉えているところでございまして、まず第一に奄美群島の役割のところでも、豊かな自然というのが第一の役割として挙げられておりますし、こういったものを保全していくというのは、全体を通じて書かれていると思います。表現の問題はともかくといたしまして、先生のおっしゃっている趣旨は取り込んでいるつもりでございます。

 また、循環型社会という記述に関しましては、ちょうど6ページでございますけれども、4の項目、「生活環境の整備に関する基本的な事項」のところで、2行目でございますけれども、「環境に優しい循環型社会を形成するため、廃棄物の排出抑制やリサイクル等の適正処理を促進する」という形での記載もさせていただいております。

 また、事業との調整の関係につきましては、同じページの9の「自然環境の保全及び公害の防止に関する基本的な事項」の中の「自然環境の保全」の部分で、特に「各種事業の実施に当たっては、奄美群島の生態系や天然の景観を損なわないように、人と自然との共生、周囲の自然環境との調和等に努める」といったことも含めまして記述してございますので、趣旨としては入れているつもりではございます。

○濱田委員  今まで、例えば開発をいろいろしていただいたものへの視点を違えるという形で、新たな開発ということにおいて、例えばさっき申し上げた、テトラポットを海の底に埋めるというところで成功している住用の和瀬海岸等は、非常にすばらしいという評価も聞いておりますので、奄美の方々が望んでいらっしゃることにもつながると思っているんですが、そういう視点の新たな開発の転換というのは考えられることなんでしょうか。

○須賀委員  これは今まで、復興事業、振興事業、振興開発事業、県と国と地元と一緒になってやってきた関係上、私から申し上げますけれども、今、テトラポットなんかをさらに海に沈める方法というご意見ですけれども、その地域がどこなのかというのも、まだ私はわかっておりませんが、今日まで奄美の交通基盤あるいは生産基盤の醸成のために、50年間にわたりまして、1兆7千億円の投資をしてきているわけです。そういう中で、そういう地域があったとして、そしてまた今、それが非常に阻害要因になっているということならば、具体的にお示しいただければ、また話し合いといいましょうか、検討の余地があるかもわかりませんが、私が今日までやってきた公共事業といいましょうか、そういう事業はすべて奄美14市町村の市町村長、議長、それからいろいろな機関の方々と全部協議を重ねながら、今日までやってきております。ですから、これからさらにその自然をもとに戻せと、そのために今の公共事業をどうしろということになってきますと、これは具体的に県との話し合いをよくしていきたいと思います。

○宮廻会長  どうもありがとうございました。濱田委員。

○濱田委員  元に戻せということではなくて、新たな開発というふうに発想を転換していただければいいんじゃないかと思うんです。その当時は皆さんが議会で賛成されて、地元の人たちも望んでそれができたわけですけれども、今、世界自然遺産登録というものに向けて、観点を考えると、求められている砂浜ってありますよね。ユネスコのほうから求められている保持のあり方とかいうことを考えると、そういうこともこれから考えていってもいいんじゃないかなということです。

○須賀委員  今からの振興開発をやっていくためには、当然、自然環境というものには十分配慮しながら、自然というものを保全しながら、どうあるべきかということは地元の皆さん方とも十分な意見交換をしながら、私は進めていくべきであると考えています。特に砂浜等につきましては、最近、台風等の影響もあったりして、非常に失われつつありますから、そういう場合の養浜事業をどうしていくかということもあるだろうと思います。ですから、個々のケースによって、濱田委員は地元でございますから、県ともよく話し合いをしていただいて、そしてまた、私どもとしては必要に応じて国土交通省にもご相談申し上げるということにしていきたいと思います。

○宮廻会長  ただいま、ご意見が須賀委員からもありましたし、その前に内田課長からもありましたように、自然保護とか、そういう環境保全についての文言も入っていますし、それから環境に優しい循環型社会とか、リサイクルの問題も文言として出てきますね。それで全体の流れからしても、この基本方針から言えば、開発をしていく場合でも、やっぱり環境に配慮していくということになります。

 そうすると、先ほど資料2で説明がありましたように、市町村が計画案を作成するときに、やっぱりこの基本方針に基づいて作成していく。それから県に計画を上げて、県が策定するということになっていますが、そのときにもその基本方針に則って、大筋行われているかどうかということになります。ですからそういう中で、その辺は検討していけばよろしいんじゃないでしょうか。

 ほかに。元山委員、どうぞ。

○元山委員  先ほどの環境関係で、濱田委員からありましたけれども、奄美が50年間、先ほど須賀委員がおっしゃったとおり、公共事業はあれでよかったと思っています。テトラポットとかそういうものを今から先使うかということは、やはりテトラポットを落として入れなきゃならないところに、それに代わるような工法があるかないか。そういうものが今から先の自然を守るための工事だと思うんです。

 この間、2月に私ども宇検村のほうでも林道関係で、ここは非常に希少動物がおりまして、その保護のために、この舗装を止めてもらえないだろうかということでございましたので、早速県と協議をしまして、自然保護団体の方々と三者で話し合いまして、クロウサギが側溝に落ちないような、側溝を改良するとか、そういう話し合いを持って、事業費そのものはある程度縮小になりましたけれども、工事はすぐにしました。ですから、今後、須賀委員がおっしゃったように、自然そのものを新たに発想を変えるという工法があるのか、もしさっきおっしゃったように、アダンがその砂を止めることが昔の方々の知恵としてあるんですけど、そのアダンが国土保全になるのか、例えば大きな津波とか高潮とかをアダンで防げるのかと、いろいろな考え方があると思うんです。ですから、もちろん今の自然を最小限残しながら、やはり社会基盤整備をやらなければならないと思っています。

 ですから、私どもがお願いするところは、自然保護団体の方々に、例えば林道を通したい、ここにあれを通したいというときに、やはり皆様方も例えばここはどうしても困るんだとか、ここはこの程度はいいだろうかとか、そういう自然保護団体の方々もある程度優先順位のマップをつくっていただきたいと要望したところであります。

 それから、またもう一つは、この5年間、ハードからソフトということで、非常にいろいろなものが盛り込まれていますけれども、先ほど会長さんからありましたように、鹿児島大学の先生方が非常にたくさんノウハウを持っていらっしゃいますので、癒しの島とか、保健関係、そういうものをぜひとも鹿児島大学の先生方のお力を借りて、さらにこの5か年間の奄振事業で一つでも多く実現するように、またいい案ができるように、ぜひ鹿児島大学の先生にお願いしたいと思います。

 以上でございます。

○宮廻会長  どうもありがとうございました。

 先ほどの坂柳委員の件とあわせて、大学の方には伝えておきます。

○須賀委員  今、元山委員が言われたように、奄美が復帰したときには、アダンがすべて防風林の役目を果たしていたわけです。ところが地元の方々が台風常襲地帯で、毎回、毎年の台風ではアダンではどうしようもないと。相当潮風、海水が上がってくるということから、それを変えてくれということで、ちょっと変えたんですけれども、やはりこれからはそういう点についても十分留意しながら、今後のそういうあり方については、自然をいかにいかしながらやっていけるかということについては、細心の注意を払っていかなくてはならないと思います。そのためには地元とも十分検討して、話し合いをしながら、やっていきたいと思っておりますので、その点はご理解をいただきたいと思います。

 それから私が大変申し上げにくいことがあるんですが、この3ページの3の「振興開発の方向」のここはよろしいんですが、2行目から「奄美群島の自立的発展に向けて、奄美群島の魅力と資源を活用した産業振興策」の、次の「将来の奄美群島の振興開発を担う人材の育成」。この「振興開発を担う」というのを、「奄美群島の自立的発展を担う」と。でないと、振興開発だけを担っていただいても、私はこれからは人材の育成としては困ると思うんです。できたら、「奄美の自立的発展を担う人材」と、私は申し上げにくいことを今、あえて申し上げているんですが、いかがでしょうか。

○宮廻会長  この辺はいかがでしょうか。「奄美群島の自立的発展を担う」ということで、「振興開発」を「自立的発展」に置き換えるということでお認めいただけますか。

(「異議なし」の声あり)

○宮廻会長  先ほど須賀委員が言われた前段のことはおっしゃるとおりだと思います。そして、そういう方向というのは、この基本方針でそういう方向を促進するようなことになっているということですから、それであるからいいんじゃないかと私は思っております。

 吉見委員、どうぞ。

○吉見委員  私はこの方針案に関しまして、一番思いましたことは、これまでの50年という、奄振の意味と、これからの5年という奄振の意味を住民の一人ひとりが自覚をするとともに、市町村それから県、国というのが大きくバックアップをしていただくというのが一番の大きなベースだと思うんです。その中の最も重要な50年と、5年の違いというのが、方針案の序文にありました自立的発展ということだと思うんです。ですので、今、須賀委員がおっしゃった人材育成の頭にありました文言というものの変換というのも、まさしくそのとおりだと思いました。

 私は文章の専門家ではあるつもりなんですけれども、法律用語ですとか、お役所の言葉というのは、とてもなじみがありませんので、よく理解していないのかもしれないのですが、私どもが物を考えるときに、分母と分子というふうに分けて考えます。私はこの自立的発展というのが、これからの5年の奄振を考える上での分母だろうと、個人的には思います。その上に乗る分子、これがあまりにも多岐にわたり過ぎていて、頭がとても重たいな。分子、子供が重たくて分母がつぶれそうだなという気がしたのが正直な感想なんです。

 自立的発展ということを分母と、私がとらえたような形で、仮に正解だとしますと、その分母の上に乗る分子、このことをせめて三つぐらいに絞れないものか。少なくとも、これからの5年間で、確実に一歩、二歩、願わくば100%歩み寄ろうとするための最重要課題と申しましょうか、そういったものを絞り込んでいったほうがいいのではないかと思いました。その最重要課題というのが何なのかということは、地元の市町村をはじめ、県との計画の練り込みの中で、十分な話し合いがなされることを望みたいと思います。

 この中に書かれていることは、ほんとうに大切なことだと思いますし、立派なことだと思うのですけれども、あれもこれもと願い過ぎて、親がちょっとつぶれてしまわないかなというのが非常に心配です。

 と同時に、地域住民たちの自立的発展、国が何をしてくれる、県が何をしてくれる、市町村が何をしてくれるということも大事なことながら、自分たち一人ひとりがほんとうに大事な担い手であるんだということを自覚してもらうためにも、そういった絞り込みというのが必要なのではないかなと、案をいただいたときに思いました。ただ、そのことはあまりにも全体的なことでしたので、あえて電話では申し上げませんでしたけれども、そういうふうに私は感じております。

○宮廻会長  どうもありがとうございました。

 ほかに何かありますか。どうぞ。

○内田特別地域振興課長  先ほどの須賀委員のご意見の関係なのですが、ちょっと文章的な話で恐縮でございますけれども、先ほどの3ページの「振興開発」を「自立的発展」に直すというところでございますが、実はこの前のところで、「自立的発展に向けての施策の推進が必要である」となってございまして、このまま直しますと、「自立的発展に向けて、奄美群島の自立的発展を担う人材の」ということになりますが。

○宮廻会長  この「奄美群島の自立的発展に向けて」という前のほうを削除してもいいんじゃないですか。

○内田特別地域振興課長  それともう一点ございまして、実はこの表現ぶりが、7ページの一番最後の12の項目が、「奄美群島の振興開発に寄与する人材の育成に関する基本的な事項」という表題がついてございますが、これは実は法律上の規定の事項の書きぶりでございまして、法律上は奄美群島の振興開発に寄与する人材の育成について記載しなさいという書きぶりになると、それに合わせた形でこういう記載になっているという事情をちょっとご説明させていただこうと思ったのでございます。

○須賀委員  それはわかります。そうすれば、「奄美群島の自立発展に向けて、人材の育成並びに奄美群島の魅力と資源を活用した産業振興策」という文章にしたらどうでしょう。

 私が今、ちょっとこだわったのは、将来の奄美群島の振興開発を担うと、その人材だと、この人材の育成そのものが非常に幅が狭いという感じを持たないかなという気がしたので申し上げたんです。これは私も前もっていただいておきながら、今になってこう申し上げるのは、大変心苦しいんですけれども。「奄美群島の自立的発展に向けて、人材の育成並びに奄美群島の魅力と資源を活用した産業振興策等の推進が必要である」と、そう書いておけば、7ページのこことの整合性もとれるんじゃないでしょうか。

○宮廻会長  以上のような提案が出ましたけれども、いかがですか。

○須賀委員  これは、今すぐ難しければ、後でお願いします。

○内田特別地域振興課長  例えば、今のところですと、「将来の奄美群島を担う」として、「振興開発」を取るだけでもよろしいかとは思いますけれども。

○須賀委員  僕は「将来の奄美群島を担う」という言葉は非常に大事にしているんです。

○内田特別地域振興課長  そういう書き方にしてはどうかと。

○須賀委員  はい、それはそれで結構ですよ。「将来の、奄美群島を担う人材の育成」で結構です。

○内田特別地域振興課長  ちょっと最終的な文章は調整させていただきたいと思います。

○宮廻会長  それでは、今、検討されますか。

○須賀委員  会長、今、ここは「振興開発を担う」という言葉をやめて、「将来の奄美群島を担う」としたらどうでしょうか。

○宮廻会長  「担う」ということですね。だから、「の振興開発」を削除して、「将来の奄美群島を担う人材の育成等」というふうにつなげていくというご提案ですけれども、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○宮廻会長  それでは、そういうふうに処理させていただきたいと思います。

 それから吉見委員が先ほどおっしゃったことは、多かれ少なかれ、お読みいただいた方は感じているかもしれませんが、一つには意見具申というものがあって、その内容を引き継いで、言ってみれば、余すところなく、ここに引き継いでおかなきゃいかんということで、意見具申そのものの内容がかなりこれを規制しているという面があるんですね。

 それと、先ほど言われたように、具体的な事例もちょっと入れてということになると、やっぱりどうしても内容的にも増えてきて、多少、そういう文章のところがあるんですね。だから、基本方針をどう考えるかということで、やっぱり一つは非常にスリムに重要事項だけで、その方向性だけ示すということと、もう少し具体例なんかも示して、そのヒントをその後、計画立案する人がある程度幅が狭まるようにするということもあると思うんですけど、そこのところはなかなか難しいところですけど、一応ここでは意見具申の内容は、そう整理することはできないだろうという感じがするんですね。おっしゃる意見はそのように思いますけど、内容的にはそういうことでご了承いただければと思うんですけど。

 出水沢委員、どうぞ。

○出水沢委員  出水沢です。ほんとうに具体的でわかりやすい基本方針をつくっていただきまして、とてもうれしく思いました。

 私のほうは、この振興開発の方向の一つとして、方向の中の5番、「ソフトとハードを一体とした総合的な施策の推進」とございますけれども、このことは、大変前から言われていまして、ほんとうに島づくりは人づくりだということを皆さんおっしゃっていらっしゃいまして、今度、これがどのように反映されるんだろうかと思って、予算のほうを大変期待しておりましたけれども、これは予算のことをここの場で申し上げていいものかどうかわかりませんが、いまだにすごく公共事業のほうがはるかに金額的に大きいですよね。351億円と非公共事業が5億円ですか。こういう割合というのは、私たちが一般の考えをしますと、まだまだ少ないんじゃないかなという気がいたしますが、これについてのご説明をお願いしたいと思います。

○須賀委員  これは国のほうがいいと思う。

○宮廻会長  内田課長、どうぞお願いします。

○内田特別地域振興課長  予算の関係でございますが、どうしても事業規模という形ではおっしゃるとおりです。格段の差があると見られるかもしれませんが、やはりソフト予算を伸ばすということで、私どもは随分取り組んでいるところでございまして、参考資料の2のところで予算の資料をつけさせていただいておりますが、例えば、この奄美群島振興開発調査費等というのが二つ目の項目のところにございますが、こういったところにソフトが入っているということで、この部分が国費でいくと、1.19ということで、できるだけそういう部分を伸ばすような方向で取り組ませていただいているところでございますので、今後もそういう方向を続けていきたいと思います。ぜひご理解を賜りたいと思います。

○出水沢委員  わかりました。

○宮廻会長  須賀委員、どうぞ。

○須賀委員  今、大分遠慮しておっしゃっているようですけれども、公共事業の対前年度比伸びは97.2%なんです。去年よりも10億円ぐらい予算は減っております。ただ、非公共事業、ソフト面は2.5%対前年度比が伸びているんです。これは国の予算編成のシステムというのが非常に厳しいものがありまして、対前年度比幾らで来るんです。公共事業になりますと、道路、港湾、農業基盤整備からすべてのものが含まれてきますから。今、国費が奄美だけで351億円ぐらいあったと思います。そういう中で、それを削って、ソフトのほうに、非公共に回すというのがなかなか難しい。

 そこで、いつも国土交通省の皆さんは大変ご苦労いただいているんですが、今回、こういう法律も延長され、基本方針が決定されてきますと、やはりこれを一つの足がかりにして、さらに努力をしていくということは、私は県も非常に大事だと思いますので、今後、県としても大いに努力をさせていただきたいと思います。

○宮廻会長  こういう状況の中で、ソフトが多少伸びているというところあたりをやっぱり評価すべきですか。

○須賀委員  そうですね。軒並みに予算が対前年度減額されている中で、この奄美の非公共事業だけは2.5%も伸びているということは、私があまり言うと何ですけれども、大変なご努力をいただいたということは、大変感謝しております。

○宮廻会長  だから、中身の問題として、もう少しソフトのほうも伸ばしていただきたいということなんでしょうけど、基本方針そのものは別に修正とかいうことではないわけですね。

○出水沢委員  わかりました。ありがとうございました。よろしいですか。

 それから、この大きな基本方針の3番目に、「奄美群島の振興開発を図るための基本的事項」とありまして、扉のほうですけど、1から12までありまして、ずっといろいろなことを書いて、これは大きなものからどんどん具体的になっていって、こうなったんだと思いますけれども、さっきと関連しまして、人づくりという意味で、例えば教育及び文化の振興に関する基本的な事項とか、人材の育成に関する基本的な事項というものは、10番、11番、12番になっているんですね。もちろん最後のほうだから、力を入れないというのではないと思いますけれども、やはり人をほんとうにつくるという意味で、こういうことをどんどん前面に力を入れていこう、リーダー育成をやろう、ほんとうに島を愛して、島に誇りを持って、そういうものをどんどん広げていくという若い力なり、あるいはリーダーというものをどんどん広めていくために、みんなの自立する島づくりの意欲を促進するためのそういう人材をつくるためには、こういうことこそ私はうんと前面に打ち出してほしいなと。もちろん基盤をつくってから、人というお考えでしょうけれども、やはりそこら辺の発想の逆転もお願いしたいと思いました。

○宮廻会長  おっしゃるとおりなんだけれども、省庁の関係があるんじゃないかと思うんですが。

○内田特別地域振興課長  よろしいでしょうか。実はこの順番は必ずしも重要性の順ということではなくて、法律に規定がございまして、法律が記載すべき事項をこの順に書いてあるんです。その順序に沿って書いているので、こういう形になって、その規定の仕方は過去の経緯等もございまして、こういう順番になっているということでございます。決して、重要性の順で並べているわけではないということでございますので、ご理解賜りたいと思います。

  また、人材育成の重要性はもう序文から一貫して記載をさせていただいている部分でございますので、そういう形でご理解賜りたいと思います。

○濱田委員  基本方針にというわけではなくて、基本方針を実行するに当たって、一つ、私なりの提案をさせていただきたいんですが、住民の発意と創意工夫を引き出し、具体的な振興開発施策に結び付けていくということは非常にいいことだと思います。ただ、そのために、皆さんがどんどん意見をいろいろ言えるような受け入れとして、奄美大島には大島支庁というのがございますが、県の出先機関である大島支庁に奄振係、これだけ大きな予算を使う形の中で、今、県の離島振興課が担っていらっしゃるのか、その辺すら、一般の人たちはどこに何を言っていいのかわからないわけです。その離島振興課の例えば大島支庁の中に総務がありますが、総務の中の奄振係なのかわかりませんが、そういう奄振係をつくって、私はトータルプランナー、あるいはトータルの奄美群島のグランドデザインを考えていくプロフェッショナルがいてもいいんじゃないかと思っているんです。奄美群島の中では広域事務組合が管轄していますけど、広域事務組合が県に行くのではなくて、大島支庁という出先機関があるのに、そこには農林なら農林の執行部しかないわけです。縦割り行政ではなくて、トータルなそのグランドデザインを、奄振係というその名前がいいかわかりませんけれども、奄美グランドデザイン係でもいいんですが、そういう担当の課をつくっていただくと、係でもいいんです、課じゃ大きいと思いますが、係をつくっていただくと、地元の発意がもっと吸収しやすいんじゃないか、もっと私たちは言いやすいんじゃないか、どこに何を言ったらいいのか、やっぱり県というのは非常に敷居が高いですから、国のこういうところで言うこともおかしいんですけれども、やはりそういうところがあると思うんです。須賀委員はとても気さくな方ですけれども、やはりそこに至るまでのお話というのは、なかなか普通はできないもので、そういう係があってもいいんじゃないかなと思っております。

 そして、欲を言えば、その大島支庁のグランドデザイン係でもいいんですが、そこで奄美に関する発注ものはそこで入札もできたらと思うんです。奄美の人たちが県に行って、県でその入札ものをいただいてくるというわけではなくて、奄美の仕事は県の人たちが奄美に入札をしに来るという体制があってもいいんじゃないかと思うんです。その辺が、非常に地元の人たちがやっぱり不便を感じているところで、奄振にこれだけ予算があるのに、奄美にお金が落ちていないんじゃないかという声は結構聞くものですから、そういう提案を一つさせていただきました。

○須賀委員  これは県の組織・機構に関する話ですから、私からお答え申し上げたいと思います。

○宮廻会長  須賀委員、よろしくお願いいたします。

○須賀委員  奄美の振興を所管しているのは、企画部の離島振興課です。かつて、これは自治省が一括所管をしているときも、離島振興課が所管をしていたんですけれども、国土庁に移りまして、これは昭和49年からだったと思います。各省予算計上になり、その集約といいましょうか、それを国土交通省の特別地域振興課でやっていただいております。だから、県の場合も各部のいろいろな要望を離島振興課がまとめて、そして国に要求をする。各部が予算要求の素案をまとめるときには、必ず大島支庁と連携をとって、そして支庁の意向を聞いてまとめたものを本庁の各部が離島振興課に持ってきて、国土交通省のほうにまとめたものをお願いするというシステムになっているわけです。

 ですから、この予算がついて、事業を執行する場合も、すべて各部において、これは予算執行がなされております。各部が執行する場合も必ず大島支庁の中の土木とか、農林水産とかいう課を通じて、予算執行は行っております。そこでまた、そこらあたりの総合調整をするというために、大島支庁長という者がいるわけですから、そしてまた、大島支庁の次長もいるわけですから、そういうところで全体的な総合調整も行った上で、本庁とは常に連携をとりながら、事業執行をしております。

 ですから今、お話のありますように、大島支庁の中に奄振課をつくりますと、奄振課は中二階的な存在になって、かえって混乱というわけではないんですが、煩雑になるんではないかという気がしないでもありません。これはせっかくのご意見でありますから、持ち帰ってよく検討をいたしますけれども、非常に私は奄振課をつくるということについては、今までのシステムの中に、何が問題があるのかというところから掘り起こしていかなければいけないだろうと思います。

 それからその次の発注の問題、確かに奄美で400億円からの公共事業費がございますが、このうちの私が承知しているものでは、契約は85%が地元です。15%が奄美群島以外です。というのは、公共事業の中でも、高度な技術を要するものについては、やはり奄美群島外のところと契約をせざるを得ませんが、そういう場合であっても、必ずジョイントを組んで、地元企業を使うということで契約は進めてきております。

 それからもう一つ、奄美に金が落ちていないというお話です。確かにそういう点がお見受けされるのかもわかりませんが、私どものデータでは、これら公共事業に対しましては、70%がすべて奄美管内で支払われております。3割ぐらいが奄美群島外の事業者が工事をとっております。件数といい、それから地元に落ちる金といい、総公共事業の85%と70%が地元に落ちている。県外は15%の契約で、3割ぐらいしかとっていないというのが実態だということ、これは私どもの公共の土木部それから農政部等のデータではっきりと出ておりますので、その点、また疑問がございましたら、私のほうからも説明をさせます。

○宮廻会長  どうもありがとうございました。

 時間も大分経過いたしまして、また多くの貴重なご意見もお出しいただきましたので、そろそろまとめをしたいと思います。

 いろいろご意見が出まして、今後、改正法のもとで、市町村が計画案を作成して、県に提出し、県はそれを反映して、計画を策定するということですが、その中でいろいろまだ解決すべき問題があるわけですが、この基本方針案は奄美群島の自立的発展を促進するような方向性を定めるということですので、これまでのご意見ですと、大きな修正ということはしなくてもいいように、私は受けとめました。

 それで、須賀委員から出されました3ページの3、「振興開発の方向」の3行目、「将来の奄美群島の振興開発を担う」となっている、「の振興開発」を削除して、「将来の奄美群島を担う人材の育成等」というふうに修正をいたしまして、諮問されました奄美群島振興開発基本方針案を適当である旨答申するものとしたいと思いますが、いかがでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○宮廻会長  よろしいでしょうか。

 ご異議がないようですので、答申案をお手元に配付いたします。

 それでは事務局から答申案を朗読していただきたいと思います。

○内田特別地域振興課長  「奄美群島振興開発基本方針案について答申。平成16年5月13日付けで、当審議会に諮問のあった奄美群島振興開発基本方針案については、審議の結果、適当であると認められるので、この旨答申する」。

○宮廻会長  この案文により、答申することとしてよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○宮廻会長  それでは、そのようにいたしたいと思います。

 今後の予定につきましては、国土交通大臣、総務大臣及び農林水産大臣が当審議会の答申を踏まえて、基本方針を定め、その後、基本方針に基づき、奄美群島内の市町村が計画案を鹿児島県に提出し、鹿児島県が奄美群島振興開発計画を定めることとなっております。

 

鹿児島県及び大島郡町村会挨拶

 

○宮廻会長  それでは、ここで地元の須賀委員と元山委員から発言の申し出がありますので、須賀委員からご発言ください。

○須賀委員  それでは、私から一言ごあいさつを申し上げます。

 奄美群島の振興開発につきましては、日ごろから審議会の委員の皆様方をはじめ、国土交通省並びに関係省庁の皆様方には格別なるご指導、ご支援を賜っておりますことに、この席をお借りいたしまして、厚く御礼を申し上げます。

 群島の振興開発特別措置法の延長につきましては、本県にとりましても、極めて大きな課題でございましたが、当審議会の委員の皆様方をはじめ、関係国会議員並びに各省庁の方々のご理解をいただきまして、去る3月31日に改正法が成立いたしました。これもひとえに皆様方のご高配の賜物でございまして、改めて厚く御礼を申し上げます。

 今後は新しい法律の趣旨を踏まえまして、主体的、自発的な地域づくりを目指しました新たな振興開発計画を策定いたしまして、奄美の特性をいかした産業の振興や、人と自然が共生する癒しの島づくり、群島内外との交流促進など、奄美群島の自立的発展に向けた取組を積極的に進めてまいりたいと考えております。

 今後とも皆様方の一層のご指導、ご支援を賜りますよう、お願いを申し上げまして、私からのご挨拶とさせていただきます。

 大変どうもありがとうございました。

○宮廻会長  ありがとうございました。

 次に元山委員、どうぞ。

○元山委員  奄美群島の町村会を代表しまして、一言御礼を述べさせていただきます。

 奄美群島の振興開発につきましては、かねてから審議会の委員の皆様をはじめ、国土交通省並びに関係省庁の皆様方には、特別にご配慮を賜り、心から厚く御礼を申し上げます。

 このたび、特に奄美群島民が熱望しておりました奄美群島振興開発特別措置法が関係国会議員の皆様をはじめ、関係省庁の方々のご理解とご尽力によりまして、平成16年度から5か年延長されましたことは、誠にありがたく、ここに改めて皆様方の確別なるご高配に対し、群島民の一同、心から喜び、深甚なる感謝を申し上げます。

 これを機会に私どもは、自立自興の意欲をさらに高め、地域の振興・発展と、住民の福祉向上に努めるとともに、自然と共生する癒しの島づくりを実現するなど、群島の自立的発展に向け、群島民ともども、創意と工夫に根ざした具体的な取組をしてまいりたいと存じます。

 今後とも当地域の実情をおくみ取りいただき、奄美群島の振興・発展に対しまして、審議会委員の皆様方のより一層のご指導とご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げまして、挨拶とします。

 本日はほんとうにありがとうございました。

 

審議官挨拶

 

○宮廻会長  ありがとうございました。

 最後に国土交通省都市・地域整備局平田官房審議官から、ご挨拶をお願いします。

○平田官房審議官  平田でございます。

 本日は委員の先生方、大変お忙しい中、ご出席いただきまして、また、大変貴重なご意見を多数賜りましたこと、さらに基本方針の案につきまして、これを適当であるということで答申をいただきましたことを厚く御礼申し上げる次第でございます。

 ただいま、各委員からいろいろご意見を賜りましたが、例えば鹿児島大学、各国立大学との連携の話でありますとか、それから自立的な発展に資するための産業振興、どういう項目について、絞り込み、重点的な話を行っていくのかという点について、まさに、それは基本方針のほうには網羅的な形で述べさせてはいただいておりますけれども、地元におきます市町村それから県が中心になりまして、この絞り込みの作業こそ、今後の自立的発展につながっていく重要な仕事だと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 さらに、いろいろな各種事業を進めていくに当たりましては、自然環境の保全ということは申すまでもなく、当然のことだと思いますので、ここらあたりの調和をとりながらやっていかなければいけないというようなことで、承らせていただいておりました。

 思い起こしてみますと、ちょうど一昨年の6月でございますが、当審議会からの答申をいただきまして、そのキーワードは本日ご議論いただいたように、自立的な発展と、不利性から優位性への転換の二つだったと思っております。

 さらに委員の先生方から、奄美のこれまでの不利性だと言われていたところを、逆転の発想のもと、国の宝とも言うべき捉え方としてやっていくべきではないかというようなことを受けまして、私ども法律改正を内閣提案という形でやらせていただきまして、去る3月31日に改正・延長が認められたわけでありますが、本日さまざまなご議論がございましたように、特別措置法をただ単純に5年間延長するということではなくて、地元の発意・創意工夫をいかすための計画体系の見直し、これはかなりのインパクトが出てまいるのではないかと考えておりますが、見直しを行うなど、大きな転換を図ったところでございます。

 不十分なところもあるかと思いますが、予算措置につきましても、先ほど須賀委員からお褒めの言葉もいただきましたけれども、ソフト予算を相当程度頑張って増やしたつもりでございますし、新規の税制改正措置もなされているところでございます。したがって、地元の皆様方のご要望に対する、私ども、国の受け皿づくりとしては、ある程度させていただいたのではないかと考えているところでございます。

 本日はこの新たな法体系のもとに、新たな形で国で策定することになりました。基本方針案につきまして熱心なご議論をいただくことができました。今後は、鹿児島県におきまして、この基本方針に基づき、地元の市町村のご意見も踏まえながら、振興開発の具体的な手法を定める計画を策定していただきたいと考えております。

 国土交通省といたしましても、本日の委員の先生方の貴重なご意見を十分に参考にさせていただきながら、鹿児島県、地元の市町村と連携をしながら、地元、奄美群島の振興開発に取り組んでまいりたいと考えております。

 委員の先生方におかれましては、今後ともご指導、ご協力を賜りますよう、重ねてお願い申し上げまして、お礼のご挨拶とさせていただきます。

 本日はどうもありがとうございました。

○宮廻会長  ありがとうございました。

 以上をもちまして、第92回奄美群島振興開発審議会を終了いたします。皆様方におかれましては、ご多用中のところをご出席いただき、長時間にわたりご協力いただきまして、誠にありがとうございました。

 

 

閉  会