小笠原諸島振興開発審議会(第74回)会議録

 

日 時  平成16年5月14日(金)午前10時00分

会 場  中央合同庁舎3号館 国土交通省 4階 特別会議室

議 題  (1)会長、会長代理の選任について

     (2)小笠原諸島振興開発特別措置法の一部改正について

     (3)小笠原諸島振興開発基本方針(案)について

     (4)その他

出席者  会     長  岡 本 伸 之
     会 長 代 理  秋 本 敏 文
     委     員  赤保谷 明 正
              小豆畑   孝
              岩 崎 美紀子
              海 津 ゆりえ
              楓   千 里
              北 村 節 子
              沼 田 早 苗
              森 下 一 男
              池 田   望

     幹     事  多 田 正 巳 小笠原総合事務所長

     国 土 交 通 省  平 田 憲一郎 国土交通大臣官房審議官(都市・地域整備局担当)
              上 田 信 一 都市・地域整備局総務課長
              内 田 俊 彦 都市・地域整備局特別地域振興課長
              大 谷 雅 実 海事局造船課次世代船舶事業推進企画官

     東  京  都  赤 星 經 昭 総務局長
              高 橋 敏 夫 総務局多摩島しょ振興担当部長

(参   考)

〜当日配布資料〜
資 料  1  小笠原諸島振興開発審議会委員及び幹事名簿 (PDF形式;8KB)
資 料  2  小笠原諸島振興開発特別措置法の改正概要(PDF形式;12KB)
資 料  3  小笠原諸島振興開発特別措置法の概要(PDF形式;9KB)
資 料  4  小笠原諸島振興開発事業のしくみ(PDF形式;14KB)
資 料  5  平成16年度小笠原諸島税制改正について(PDF形式;12KB)
資 料  6  小笠原諸島振興開発基本方針案について(諮問)(PDF形式;7KB)
資 料  7  小笠原諸島振興開発基本方針(案)(PDF形式;26KB)
資 料  8  テクノスーパーライナー(TSL)の建造状況について(PDF形式;257KB)

参考資料 1  小笠原諸島の振興開発について(意見具申)(PDF形式;5KB)
参考資料 2  平成16年度予算の概要(PDF形式;10KB)
参考資料 3  奄美群島振興開発特別措置法及び小笠原諸島振興開発特別措置法の一部を改正する法律案関係資料
参考資料 4  東京愛ランドフェア「島じまん2004」の開催について

 

< 議 事 詳 細 >

 

開  会

 

○内田課長 おはようございます。岩崎先生がご出席の予定でございますが、少し遅れるかもしれないということでございます。定刻でございますので、会議を始めさせていただきたいと思います。

 本日は大変お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。私は国土交通省都市・地域整備局特別地域振興課長の内田でございます。本日は委員の皆様方の任命換えになられましてから初めての審議会ということでございますので、会長が選任されるまでの間、暫時、私が進行役を務めさせていただきたいと思います。

 本日は委員13名のうち、現在10名の方がご出席いただいておりますので、委員の過半数の出席をいただいております。定足数に達しておりますので、ただいまから小笠原諸島振興開発審議会を開催させていただきます。

 なお、本日副大臣以下、出席する予定でございましたが、ちょうど衆議院、参議院ともに法案審議が入ってしまいましたので、やむなく欠席ということになりましたので、ご理解を賜りたいと思います。

 それでは、まず委員の皆様のご紹介をさせていただきます。再任の方からご紹介申し上げます。赤保谷委員でございます。

○赤保谷委員 赤保谷でございます。よろしくお願いします。

○内田課長 秋本委員でございます。

○秋本委員 よろしくお願いします。

○内田課長 小豆畑委員でございます。

○小豆畑委員 よろしくお願いします。

○内田課長 岩崎委員は少し遅れております。岡本委員でございます。

○岡本委員 よろしくお願いします。

○内田課長 沼田委員でございます。

○沼田委員 よろしくお願いします。

○内田課長 池田委員でございます。

○池田委員 よろしくお願いします。

○内田課長 あと、山下委員は本日ご欠席というお返事をいただいてございます。また、石原委員の代理といたしまして赤星総務局長が出席されております。

○赤星幹事 よろしくお願いします。

○内田課長 次に新任の方をご紹介させていただきます。海津委員でございます。

○海津委員 海津でございます。よろしくお願いいたします。

○内田課長 楓委員でございます。

○楓委員 楓でございます。よろしくお願いします。

○内田課長 北村委員でございます。

○北村委員 よろしくお願いします。

○内田課長 森下委員でございます。

○森下委員 森下でございます。よろしくお願いいたします。

○内田課長 また、幹事であります小笠原総合事務所の多田所長が人事異動により着任いたしましたので、ご紹介させていただきます。

○多田幹事 多田でございます。よろしくお願いいたします。

○内田課長 委員及び幹事の一覧はお手元にございます資料1に記載してございます。

 

議  事

 

(1)会長、会長代理の選任について

 

○内田課長 それでは、まず最初の議題といたしまして、当審議会の会長の選任をお願いしたいと思います。会長の選任は小笠原諸島振興開発特別措置法第12条第5項の規定によりまして、委員の皆様方の互選によることとなっております。皆様方のご意見を頂戴させていただきたいと思います。

○赤保谷委員 これまで2年間、岡本先生に会長をお引き受けいただいておりますので、引き続き岡本先生にお願いしたらいかがなと思いますので、ご推薦申し上げます。

○内田課長 ありがとうございました。ただいま赤保谷委員から岡本委員に会長をお願いしたらどうかというご提案がございましたけれども、いかがでございましょうか。

 

〔「異議なし」の声〕

 

○内田課長 ご異議がないようでございますので、そのようにお願いしたいと思います。それでは、岡本会長、席にお願いいたします。

○岡本会長 ただいま皆様のご推挙によりまして会長の職を務めることになりました岡本でございます。どうぞよろしくご協力のほどお願い申し上げます。なお、会長職務代理につきましては、法律の規定によりまして、会長による指名ということになっておりますので、私からご指名をさせていただきたいと思います。秋本委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○秋本会長代理 秋本でございます。岡本会長の下で審議会の円滑な運営に努めてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○岡本会長 それでは、会議次第によりまして議事に入ります。本日は小笠原諸島振興開発基本方針案について、本審議会に諮問されておりますので、この件について審議したいと思います。

 

(2)小笠原諸島振興開発特別措置法の一部改正について

 

○岡本会長 それでは、まず審議に入るに当たって、3月31日に成立した「小笠原諸島振興開発特別措置法の一部改正」について事務局から説明願います。

○内田課長 それでは、お手元にございます、資料番号2「小笠原諸島振興開発特別措置法の改正概要」、資料番号3「小笠原諸島振興開発特別措置法の概要」、資料番号4「小笠原諸島振興開発事業のしくみ」、資料番号5「平成16年度小笠原諸島税制改正について」によりまして、一括してご説明させていただきます。

 まず資料2をご覧いただきたいと思います。小笠原諸島振興開発特別措置法の改正の概要でございます。初めての委員もいらっしゃいますので、若干その法の制定経過等をご紹介させていただきたいと思います。

 この法律は、昭和43年の小笠原諸島の返還を受けまして、昭和44年12月、「小笠原諸島復興特別措置法」という形で制定されてございます。この際に当審議会の前身ともなります「小笠原諸島復興審議会」もまた設置されてございます。

 同法律に基づきまして5カ年の復興計画と年度実施計画の策定が実施されることとなりました。当時は自治省の所掌であったわけでございます。その後、昭和49年にその一部改正で延長がございます。さらにその期限が切れました昭和54年、また一部改正をいたしまして、名称を変更いたしました。「小笠原諸島振興特別措置法」という形で名称を改称してございます。この際もまた審議会の名称につきましても、これに合わせまして「小笠原諸島振興審議会」と改称されております。

 さらにこの5カ年を経まして、昭和59年に一部改正がございました。これでまた5カ年の延長がされてございます。平成元年にまた改正がございまして、この際に法律の題名が「小笠原諸島振興開発特別措置法」というふうに改称されてございます。審議会の名称につきましても、これに合わせて「小笠原諸島振興開発審議会」ということになっています。

 さらに同法律は平成6年、一部改正によりまして5カ年の延長をしております。さらに加えまして、また平成11年にその一部改正によりまして、昨年度までに至ったということでございます。ちょうど昨年度がその法律によります期限の最終年度でございまして、当審議会から16年度以降も「小笠原諸島の振興のため、新たな計画の下でこれに基づく事業の実施など特別の措置を積極的に講じていくべきである。」という旨のご意見をいただきました。これを受けまして法改正に着手いたしまして、今国会で改正いたしたわけでございます。

 資料をご覧いただきまして、その改正概要でございます。まず第1点目といたしまして、「地域の主体的な振興開発を促進するため、計画体系を改正した」という点がございます。当審議会のご意見をいただきまして、地元の発意と創意を生かした主体的な地域づくりの推進、あるいは他の地域にない魅力と資源、これを優位性と捉え、地理的、自然的特性を生かすことが重要であるというご指摘をいただきました。これを受けまして、国の責務、役割を維持しながら、地元の発意や創意を生かすという観点から計画体系を改正したものでございます。

 具体的に申しますと、この資料の左に書いてございますように、従来の法律では、都が計画案を作成して、国が計画そのものを決定するというしくみでございました。このしくみを改めまして、国は基本方針を定め、都が振興開発計画を策定する。この際、国はその振興開発計画に同意するという形に改めてございます。

 また、国が定めます基本方針につきましては、小笠原諸島の地理的、自然的な地域特性を生かして、その魅力の増進に資するような振興開発が図られるべきことを基本理念として定めなければならないこととされております。

 加えまして、さらに地元の主体的な地域づくりという観点から、都は計画策定に際しまして、小笠原村にその案の提出を求めることとされてございます。都は計画策定に当たりましては、その案の内容をできるだけ計画に反映するように努めるものとしたところでございます。

 また、次でございますが、計画で定めるべき事項を追加してございます。昨年の当審議会のご意見で交流促進の重要性、あるいは人材育成の必要性等のご指摘をいただきました。これを受け、計画で定めるべき事項といたしまして、「国内及び国外の地域との交流の促進に関する事項」と「小笠原諸島の振興開発に寄与する人材の育成に関する事項」、この2つの項目を追加させていただいたところであります。

 第2点目の改正の内容でございますが、「目的規定の改正と配慮規定の追加等」がございます。まず、目的でございますけれども、これもご意見をいただいた、今後自立的経済社会構造への転換を進める必要性。これを踏まえまして、法律の目的そのものに「小笠原諸島の自立的発展に資すること」これを追加させていただいております。

 また、このような目的に資する観点から、配慮規定につきましても整備をさせていただいてございます。カッコの中に記載してございますように、情報通信体系の充実に係る配慮規定、これは従来からあったわけでございますが、この中に「高度情報通信ネットワーク等を含む」ということの明確化をさせていただいております。

 また、地域の特性に即した農林水産業の振興に係る配慮規定といたしまして、生産基盤の強化、地域特産物の開発、流通及び消費の増進、観光業との連携に係る配慮規定を設けさせていただいているところであります。

 医療の充実に関しましても配慮規定を追加させていただきました。

 さらに加えまして、先ほど計画事項にも追加いたしました交流に関しまして、地域間交流の促進に関しての配慮規定を追加させていただいております。また、人材の育成に関しましても、その配慮規定を追加させていただきました。

 第3点目に書いてございます「補助率のかさ上げ等の特例措置」につきましては、従前同様の形で規定を継続することといたしてございます。

 さらに第4点目で「法の有効期限そのものを平成21年3月31日まで5年間延長する」ことといたしたところでございます。これが3月31日、ちょうど期限が切れますぎりぎりの日でございますが、可決成立いたしまして公布されてございます。

 続きまして、次の資料3でございます。こちらはこういった改正をした後の形としての概要を表わしたものでございますので、ご覧いただければと思います。この中で3の概要の(2)にございますように、今度国が定めることとされました小笠原諸島の振興開発基本方針、これは当審議会の議を経るとともに、関係行政機関の長と協議して定めることとされてございます。このため、本日諮問させていただいた次第でございます。

 (4)のところをご覧いただきますと、先ほどご説明させていただきました補助率のかさ上げ等、あるいは今回追加された配慮規定等以外につきまして、例えば「地方債についての配慮」、「交通の確保等についての配慮」等について、従来どおりの形で入っております。

 税制につきましては、また次の資料でご説明させていただきます。

 次に、資料4をご覧いただきたいと思います。小笠原諸島の振興開発事業のしくみの概略をつけさせていただきました。方針、計画等はまさに法律でご説明したとおりでございます。これに基づきまして、特別の助成というのがこの真ん中ぐらいの四角でございます。法律の6条で政令で定める事業につきまして、通常を超えた補助率のかさ上げをできるということが規定してございます。

 この中で、例えば産業基盤施設等整備というのがございます。港湾につきましては、通常10分の4の補助率を10分の6といたしております。父島の二見港、母島の沖港に対します補助でございます。また、漁港につきましても、例えば通常であれば3分の2の補助率を10分の9、あるいは10分の5のものを3分の2という形でのかさ上げがなされてございます。父島の二見漁港等に対するものでございます。

 また、生活基盤施設等整備という欄に書いてございますけれども、道路につきましても都道、村道、それぞれにつきまして、通常であれば2分の1の補助率を10分の6という形でかさ上げをさせていただいております。

 簡易水道につきましても、浄水場施設等を含めまして、通常3分の1、4分の1という補助率を2分の1までかさ上げしております。

 また、小中学校の整備につきましても、校舎やプールといった施設につきまして、通常3分の1の補助を3分の2にするというかさ上げ措置が定められてございます。

 この6条に基づきますもの以外に、法律の7条で国土交通大臣が当該事業の主務大臣と協議して指定する事業につきまして、補助ができるということに触れさせていただいております。例えば、ここに書いてございますように、産業基盤施設等整備といたしまして、農業試験地というのがございます。これは、小笠原の新たな農業特産物の研究の推進と、観光施設としての利用を図るための亜熱帯農業センター等に対するものでございます。また、水産センターは父島にございます水産センターの施設の整備に関するものでございます。

 自然公園につきましては、景勝地の買い上げ、あるいは自然公園内の休憩所や散策路の整備といったものに対するもの。あるいは、植生回復のための固有種の植栽等に対するものがございます。

 生活基盤施設等整備に関しましては、住宅関係といたしまして、村に父島住宅、母島住宅というのがございますが、これに対しての補助がございます。また、し尿処理施設につきましても補助します。

 また、この地域の特殊なものといたしまして、病害虫等防除対策というのが書いてございます。植物防疫法によりまして本土への上陸が禁止されておりますアフリカマイマイ等の指定病害虫の防除、あるいは日本では既に根絶が確認されておりますミカンコミバエ等が再侵入しないような警戒調査、あるいは防除方法の試験、研究に対する補助として、病害虫等防除対策がございます。

 診療所運営費につきましても補助がございます。このほかの各種調査等、こういうものを合わせまして特別の助成措置という形で行っております。法律の20条でこれらの予算につきましては、国土交通省で一括計上、直接執行するという形となってございます。

 その下にございます方針策定のしくみ、計画策定のしくみは、先ほど法改正のところでご説明させていただいたとおりでございます。

 また、加えまして、次に資料5をご覧いただければと思います。平成16年度の税制改正につきまして触れさせていただきます。

 これらの税制改正は、いずれも「永住の目的を持って移住する帰島者」に対するものでございますが、強制引揚者の本人、あるいはその子、孫並びにこれらの配偶者が小笠原に移住するときに、例えば1つ目の譲渡所得でありましたら、こちらで住んでいるところの資産を譲渡して小笠原へ移住されるとき、こちらで譲渡した資産に対しての譲渡所得分に対する控除等のものでございます。

 2つ目の不動産取得税につきまして同様の税制がございます。これらは従来あったものでございますが、この改正法の延長に合わせまして、それぞれ平成21年3月31日までの5年間延長することとされたところでございます。

 3つ目にございます特別土地保有税につきましては、形の上で延長が認められておりますが、平成15年度以降新たな課税が停止されている関係で、実態的にはございません。

 以上でございます。

○岡本会長 ありがとうございました。政府、国土交通省におかれましては措置法の改正、ご苦労様でございました。5年間延長ということで、誠におめでとうございます。審議会といたしましても大いに頑張りたいと思っております。

 それでは、ただいまの「小笠原諸島振興開発特別措置法の一部改正」につきまして、ご質問等がございましたら、ご発言をお願いします。秋本さん、いかがでございますか、ご感想など。

○秋本会長代理 どなたもご発言がなくて、私がご指名をいただきましたけれども。今度の法律は、今ご説明がありましたように、そもそも計画体系の組み立て方を変えるということをおやりになったというのは、今の分権時代といった流れにも沿っているものでしょうし、また、地元の自立的発展を願うという、今度目的規定の中に入れた考えにも沿ったものだと思います。これは、やっぱり東京都としても、あるいは小笠原村としても、1つの感慨深いものもあるのではないかと思います。

 これは、後でご発言の機会があるのかもしれませんが、それでしたら今はいいですけれども、そのことについて適当なときに伺いたいという気がいたします。

 配慮規定をいろいろ入れていただいたというのは、これまでにないものを入れていただいて、その中に例えば情報関係について、これも審議会でこれまでも度々ご指摘があったことをおそらく受けてのことだと思うんですけれども、大変意義があると思います。おそらく問題は、この配慮規定を具体的にどう生かしていくかというところが大変難しいのではないかと思うんです。

 その辺についてもまた、あるいは基本方針のところでお話があるかもしれませんけれども、どんなふうに考えておられるかというのは、適当なときにお伺いできればありがたいという気がいたします。

○岡本会長 どうもありがとうございました。後でよろしゅうございますか。

 

(3)小笠原諸島振興開発基本方針(案)について

 

○岡本会長 それでは、この改正につきましてはほかにご質問等がございませんようでしたら、本日の本題でございます、次の議題の「小笠原諸島振興開発基本方針(案)について」の審議に移りたいと思います。事務局から資料が出されておりますので、これを説明していただいた上で、委員の皆様からご質問、ご意見等をいただきたいと思います。

 それでは、よろしくお願いします。

○内田課長 それでは、お手元の資料番号6「小笠原諸島振興開発基本方針案について(諮問)」、資料番号7「小笠原諸島振興開発基本方針(案)」によりましてご説明させていただきます。

 まず、資料6でございます。先ほど申し上げましたように、この基本方針を定めるに当たりまして、当審議会の議を経ることと法律上されています。このため、当審議会に対してこの方針案につきまして諮問させていただいたものでございます。

 続きまして資料7、これが基本方針案の本体でございます。あらかじめ一言申し上げさせていただきたいと思いますが、本来であれば当審議会で何度かご審議いただいた上で、方針案についてご審議いただければよいのでございますが、先ほどの法改正のところでもご説明申し上げましたように、今回計画体系を大きく変えました。

 従来であれば、国が計画を定めるということでよかったわけでございますが、今回は国が方針を定め、その方針を受けて、まず村が案をつくり、その案を東京都に提出して、東京都が計画を定めるという手続が付加されたわけでございます。なおかつ、この基本方針というのは、今後5年間において実現可能なものを書くようにという法律の規定になってございまして、本年度を含めた5年分の方針を定めなければならないということでございます。

 このため、どうしてもできるだけ早くこの方針を定めることが必要だということで、今回特に事前に素案の形で各委員の皆様にお配りさせていただきまして、事前のご意見をいただきました。これらのご意見を踏まえて作成したものが、本日この場でお出ししているこの方針案でございます。その趣旨をお踏まえいただいて、また新たにこれをご覧いただければと思います。

 この目次のところで全体の構成をご説明させていただきます。まずTに、「序文」という形をつけさせていただいております。これは昨年審議会でいただいた意見、この中心的な考え方をこの方針に反映させるという意味も含めまして、全体を流れる基本的な考え方を述べさせていただいたものでございます。

 次にUとして、「小笠原諸島の振興開発の意義及び方向」がございます。この中を3つに大きく分けまして、まず「小笠原諸島の特殊事情とその役割」を述べさせていただいております。次に、この特殊事情と役割を踏まえた「振興開発の意義」、その意義をさらに踏まえた「振興開発施策の方向」ということで、その方向性を5つの項目にまとめさせていただいたものでございます。

 Vでございますが、これは「小笠原諸島の振興開発を図るための基本的な事項」、各分野についての基本的な事項を、それぞれ11項目記載させていただきました。この項目は、それぞれ法律において基本方針及び計画において定めなければならないこととされている事項について記載したものでございます。

 それでは、本文のご説明をさせていただきたいと思います。

 まず、Tの「序文」でございます。

 序文の最初のところからちょうど4つの段落までの部分、これは、基本的には昨年いただきました意見の趣旨をできるだけ体現する形でまとめさせていただいております。まず最初に、43年の復帰以来、各種の努力、諸施策により相応の成果をあげてきたこと。しかしながら、小笠原諸島については地理的、自然的、社会的、あるいは歴史的な特殊事情を抱えており、これら特殊事情による不利性及び課題を克服するとともに、さらに今後とも島民が安心して暮らせる生活環境の整備を図る必要があるという認識。

 一方でということで、小笠原諸島は我が国の排他的経済水域の約3分の1を確保する、あるいは緊急時の重要な寄港地であるといった国家的役割を有している。さらに固有の野生動植物が数多く存在するといった、自然環境面においても極めて貴重な地域である。これらは、これまで不利性として捉えてきた地理的、自然的条件に起因するものであるが、視点を変えれば他の地域にはない魅力と資源であると。ご意見でいただいた非常に大きなポイントであります、「不利性から優位性への転換」ということを大きくうたわせていただいております。

 今後とも生活環境の整備を図るとともに、この地域の地理的な位置、固有の自然環境等が有する国家的、さらには地球的ともいえる役割をいかし、国を超えた規模での交流促進、産業振興、研究機能の充実強化などに発展させていくことが重要であるとして、特にこれまで整備された基盤をいかし、観光業を中心とした産業間の連携を強化し、地域の資源と創意工夫をいかした産業の振興を図り、自立的経済社会構造への転換を進める必要があるということで、まとめさせていただいております。この部分はほぼ、当審議会からいただいた意見を忠実に方針として定めたものでございます。

 その次の段落は、先ほどご説明させていただきました法改正の概要につきまして、この段でご説明させていただいたものでございます。

 その次の段落の「本基本方針」以下は、この方針の位置付けについて記載してございます。法律第3条に基づいて小笠原諸島振興開発の意義及び方向を示すとともに、東京都及び小笠原村が振興開発計画の策定を行うに当たっての指針となるべき基本的事項について定めると、この方針の性格を表わしたものでございます。

 さらに、その後の段落では、今後の手続等に関しまして、小笠原村においては、この基本方針の趣旨を十分に踏まえて、地域住民、関係団体等多様な主体の参画の下で振興開発計画案の策定を行うことが期待される。また、東京都においては、この方針に基づいて、村の作成する計画案の内容をできる限り反映させながら振興開発計画を策定するということを述べさせていただいてございます。以上が「序文」ということでございます。

 次のページ、U以下で「小笠原諸島の振興開発の意義及び方向」を述べさせていただいております。

 この振興開発の意義及び方向は、法律によりましてこの方針に定めなければならないものとされているものでございます。

 まず、意義及び方向を述べるに当たっての前段といたしまして、1として、「小笠原諸島の特殊事情とその役割」について整理させていただいております。

 小笠原諸島は我が国の離島の中でも特に際立った地理的、自然的、社会的、歴史的な特殊事情がある。これらの特殊事情に由来する我が国にとっての重要な役割を担っているのだと、まず総括をさせていただいた上で、3つの項目に分けて記載させていただきました。

 まず、(1)は「地理的特殊事情とその役割」でございます。

 東京から約1,000キロ離れた太平洋上に位置する小笠原諸島は30余の島々で構成されており、中でも沖の鳥島は我が国最南端、南鳥島は最東端に位置していると。こういったことから、第二次世界大戦時には軍の基地が設置され、また、現在も自衛隊、海上保安庁の施設が設置されているなど、戦中戦後を通して我が国の安全にとって重要な地域であるという役割を果たしています。

 また、ちょっと古い歴史的なことを加えさせていただきました。周辺海域は世界有数の鯨の生息地であるということもございまして、19世紀には捕鯨船が数多く訪れたという歴史的なもので、同諸島は太平洋における海上交通の拠点として世界的にも重要な地域であると。現在に置き換えますと、我が国の排他的経済水域の約3分の1をこの小笠原諸島のおかげで確保しているということでございます。水産資源や鉱物資源など、海洋資源全体の開発可能性を秘めた太平洋における経済的要衝であるという役割を担っているということです。

 さらに加えて、特殊事情のご説明をさせていただいておりますけれども、その一方で、現在でも航空路が整備されていないということで、人口集積地からの時間的距離を見ますと、世界的にも極めて珍しい遠隔外海離島であるという特殊事情がございます。

 また、交通手段といたしましては、片道約26時間の行程を要する約1週間に1便の定期船に限定されている。これが観光客輸送、あるいは生活必需品の運搬を担っているという特殊事情があるということを触れさせていただいております。

 次に、(2)といたしまして「自然的特殊事情とその役割」につきまして記載させていただきました。

 同諸島は亜熱帯地域に属しております。そのため冬でも温暖なわけでございますが、当周辺海域は発達中の台風が通過する台風常襲地域だと。また、先ほどの事業のところでも申し上げましたが、本土には生息していない病害虫が生息し、島内の農作物の一部が本土への持ち込みを禁止されるなど、植物防疫面での制約も受けているという特殊事情がございます。

 ただ、一方で、小笠原諸島は海底火山の隆起で成立したということのようでございますけれども、島の成立以来、一度も大陸と陸続きになったことのない海洋島であります。このため、野生動植物は独自の進化を遂げており、生態系としても特異な島しょ生態系を形成しているということでございます。また、絶滅の恐れがある希少種が数多く生息するなど、世界的にも貴重でかけがえのない自然の宝庫ということです。また、昭和47年、国立公園に指定され、現在も面積の74%が国立公園でございますが、こういう指定をされているという特殊事情も記載させていただいております。

 次に、(3)といたしまして「歴史的・社会的特殊事情とその役割」につきまして記載させていただきました。

 戦前はハワイ等からの入植者を含む約7,700人の島民が生活していたということでございますが、強制疎開によりまして軍属を除く約7,000人の島民が本土に引き揚げたという歴史的な特殊事情があるということでございます。

 欧米系島民等、一部につきましては戦後帰島ができたわけでありますが、日本人島民の帰島は昭和43年の日本復帰後、ようやく認められたと。こういった歴史的な経緯も経て、同諸島には第二次世界大戦の状況を現在に伝える貴重な遺跡が数多く存在しているということがございます。

 また、太平洋の島々との交流などによりもたらされた文化、それと日本の文化が融合した「南洋おどり」でありますとか「小笠原民謡」、こういった独特の文化が存在していると。これは特殊な事情であるとともに、位置付けでございます。こういったものを記載させていただきました。

 こういった役割を踏まえまして、2で「振興開発の意義」について述べております。

 まず、先ほど述べた地理的な特殊事情からくる役割に対応するものでございますが、小笠原諸島は我が国南東方面の要衝である。また、排他的経済水域の確保に重要な役割を果たしている地域である。そのため、一般住民がそこで暮らして、実際に諸活動が営まれているということは、同諸島を我が国の領土として国内外に周知するとともに、密入国や密輸の防止等にも大きく寄与するものである。こういったことから、我が国の安全の確保や排他的経済水域の保全に大きく貢献するものであるということを述べております。

 また、周辺海域には豊富な海洋資源が存在しており、その秘められた可能性は将来の我が国経済の発展に向けた極めて貴重な財産であると。この周辺海域は漁場として多くの船が操業しているということもございます。付近を航行する船舶にとりましては、台風の発生時、あるいは急病人の発生時に避難、寄港、保護を受けているという実情もございます。このため、島に住民が存在しているということは、この周辺海域の航海、あるいは漁業従事者の安全にも資するものであり、同諸島の国家的役割を支えるものとしても重要であるとしております。

 また、「さらに」ということでございますが、役割のところの2で述べました自然的な特殊事情からくる役割に対応するものでございますが、野生動植物は世界的にも貴重でかけがえのないものである。同諸島の自然環境の保全を図ることは、我が国のみならず地球全体にとって意義のある取組であるといたしております。

 また、自然環境の保全を図るに当たって、積極的に野生動植物の保護活動や研究活動を行うとともに、国民が実際に利用し、各種の体験活動を通じて自然環境に対する関心、理解を深めることは有効な手段である。そのためには同諸島に住民が居住し、受入体制を整備することが必要と。こういった意義を持っております。独特の文化、貴重な遺跡、こういったものも将来に伝えていくべき重要な財産としております。

 こういったことを踏まえまして、総括いたしまして、小笠原諸島の振興開発によって島民の生活の安定及び福祉の向上、また、自然環境の保全や文化の継承を図り、ひいてはその自立的発展に結びつけていくということが、我が国全体の経済の発展と国民の福祉の向上に有益であるとして、その意義を取りまとめさせていただいております。

 次に、このような意義を踏まえて、3の「振興開発施策の方向」でございます。大きく5項目に分けて記載させていただきました。

 まず(1)は、「小笠原諸島の地域資源の再評価と活用」でございます。

 小笠原の地理的、自然的な特殊事情、これは生活するために克服又は甘受しなければならない不利性と捉えられてきた。「しかしながら」ということで、固有の野生動植物等の自然や独特の文化といった地域資源が存在している。また、地理的にみても、太平洋の交流・観光拠点、あるいは大陸棚資源調査等を行う上での重要な位置にあるということがございます。

 こういったことを考えますと、同審議会の意見でもポイントとして言われたことでございますけれども、これまで不利性として捉えられてきたこういった特殊事情、これも視点を変えれば、他の地域にはない魅力と資源である。したがって、こういった特殊事情に起因する事象を積極的に発掘して、固有の地域資源として再評価し、これを優位性であるという発想で捉え直して地域の活性化に結びつけていく。これが必要であるという形でまとめさせていただきました。これが振興開発施策の方向の第1番目のものでございます。

 (2)といたしまして、「地域の発意と創意工夫の活用」でございます。

 今まで述べておりますが、こういった小笠原諸島の有する魅力を発掘して、これを地域の活性化や自立的発展につなげていくためには、同諸島の事情に通じ、また島の活性化に対する意欲にあふれる島民自身の積極的な参加により、地元が主体となった地域づくりを行うことが不可欠であるとしております。

 このために、行政機関を始め、観光協会、商工会等の産業団体との連携を強化するとともに、島おこし運動の展開等々で島民一人ひとりが「小笠原島民」としての自覚と誇りを持って、自主的・主体的に、かつ島全体で将来を考える機運をより一層醸成していく。地域の発意と創意工夫を活用した振興開発施策を推進することが必要であるという形でまとめさせていただいております。

 (3)は、「ソフトとハードを一体とした総合的な施策の推進」でございます。

 ややもすれば、従前、ハード重視ではないかというご批判もあったようでございますが、今後地域の抱える諸課題の克服と、観光業の振興と新たな産業の育成等による将来の自立的発展に向けた環境づくりを進めるため、ソフト施策とハード施策を一体とした総合的な施策の展開が必要であるということを述べてございます。

 また、これまでに整備されてきた社会基盤につきましても、その一層の効果の発現を図るためには、やはりハード面のみならず、ソフト・ハード両面からの取組を進めることが必要であるということで、今後ソフトを重視し、これと一体となった施策の推進が必要であるということを方向性として述べさせていただいたものであります。

 (4)は、「交流人口の拡大と人材育成」であります。

 後ほど海事局からご説明があると思いますが、来年度、テクノスーパーライナー、TSLと言っておりますが、その就航が予定されてございます。この就航によりまして利便性が向上するとともに、現在取り組んでおります世界自然遺産の推薦に向けた取組、あるいは周辺海域の資源調査等が進展いたしますと、観光客はもとより、他の研究目的等で訪れる人々、ここに滞在することで何かを学び、習得しようとする人々、あるいは保養や療養を目的とした人々など、観光以外の目的で訪れる人々が増加することが予想されるわけであります。

 今後、観光に加えて国民の「知的探求」の場、あるいは「癒し」の空間としての活用が期待できるという認識です。

 また、これら交流人口の拡大を図ることによりまして、島内経済の活性化を図るとともに、個々の島民の意識の向上と、島外住民や観光客の視点を持って小笠原諸島の振興に当たることのできる人材の育成を図っていく必要が出てまいるということでございます。

 最後の(5)で「自然と共生した定住条件の整備」ということでございます。

 小笠原に住まわれる方々が小笠原諸島の豊富な自然とその恩恵を享受しながら安心して暮らせるように、気候や風土、あるいは景観を尊重しながら、一方で、必要に応じては現代のライフスタイルといったものも取り入れた居住環境を構築していくことが必要であるということを述べてございます。

 また、小笠原諸島は現在約2,300人強の人口がいらっしゃるようであります。人口的には全国の離島をみますと減少している中、決して減少しているということではないわけでございますけれども、やはりこの諸島で生活し、定住していくためには島民の就労先の確保も重要であるということでございます。このため、観光業など地域資源を持続的に活用できる産業を中心として、島内経済の活性化、あるいは島内雇用の拡大を促進して、旧島民の帰島促進、Iターン、Uターン等の定住人口の増加、安定を図ることが必要であるということでございます。

 以上のような5項目の形で基本的な方向を取りまとめさせていただきました。

 以下V、5ページ以下は各分野についての基本的な事項でございます。

 これは、それぞれの分野について法律に定めることとされてございますので、その法律の規定の順に沿いまして記載したものでございます。

 まず最初に、総括といたしまして、振興開発のための個々の事業の実施に当たっては、国の支援措置等を有効活用しつつ、東京都、小笠原村、民間からなる各事業主体間及び事業間の連携を強化し、ソフト・ハードの両面から、効率的・効果的な施策展開に努めるものとするということが書いてあります。

 その後「なお」以下で書いてございますが、これは当然のことではございますけれども、東京都が計画を作成するに当たりましては、この方針に記載のない事項でありましても、当然にその意義、方向に合致するものであれば記載できるということを、念のためにここで書かせていただいているものでございます。

 以下、各項目につきましてご説明申し上げます。

 1の「土地の利用に関する基本的な事項」でございます。

 土地の利用等に関する島別の対処方針を定め、また、各種振興開発施策を実施する父島・母島については、用途及び地域を明示した土地利用計画図を作成し、公示するものとするといたしております。

 今までの振興開発計画でも定めていたものでございますが、今回、国の定めるのは方針ということになりました関係で、このような記述の仕方となってございます。具体的な中身は東京都の計画の中で定められることになります。

 2といたしまして「道路、港湾等の交通施設及び通信施設の整備に関する基本的な事項」でございます。

 交通施設、あるいは交通利便性の確保の重要性につきましては、各委員からもご指摘をいただき、また、国会衆参の国土交通委員会の審議の際の附帯決議もいただいたところであります。

 このようなものを受けまして、まず、「(1)交通施設の整備」といたしまして、小笠原諸島における住民生活の利便性の向上、産業の振興等を図るためには、交通利便性の確保が重要であることを、述べさせていただきました。

 各施設といたしまして、道路及び港湾施設につきましては、小笠原諸島の自然環境や景観に配慮しながら、また、先ほど申し上げました平成17年春に予定されているTSLの就航を踏まえ、安全かつ安定的な輸送のために必要な施設の整備を図ることといたしております。

 航空路につきましては、様々な経緯が従来からあるところでございます。これまでの経緯及び検討を踏まえて、地元の意見と自然保護に十分配慮しつつ、高速移動手段を利用した安心して暮らせる生活環境の確保と産業振興を図るため、幅広く検討を進めるという形でまとめさせていただいてございます。

 次に「(2)通信施設の整備」でございます。

 これは法改正で「高度情報通信ネットワークを含む」という形で明確化させていただいたわけであります。この高度情報通信ネットワークをまず書かせていただきまして、こういったものが地理的制約を克服する上で有効な手段であり、医療、教育への活用のほか、観光情報のPR、あるいは特産品の販路拡大など、小笠原の魅力を広く知らしめることが可能となるものだとしております。このため、情報通信ネットワークの整備等を進め、島民の利便性の向上、産業の振興等を図るための通信体系の充実に努めることとしております。

 3でございますが「地域の特性に即した農林水産業、商工業等の産業の振興開発に関する基本的な事項」でございます。

 産業振興につきましては、小笠原の地域資源をいかして観光業と連携しながら、農林水産業や商工業等産業全体の活性化を図ることといたしております。

 特に、農業及び水産業につきましては、トロピカルフルーツ等の生産に適している温暖な亜熱帯性の気候、あるいは養殖業に適しているという高水温で清澄な海域特性から優位性を発揮できる分野でございます。このために、地域特産品の開発及び流通の促進を図り、地産・地消体制を強化するとともに、また東京都で取り組まれているようにも聞いておりますが、小笠原ブランドとしての定着、普及を図ることといたしております。

 4でございますが「住宅、生活環境施設、保健衛生施設及び社会福祉施設の整備その他市街地又は集落の整備及び開発並びに医療の確保等に関する基本的な事項」でございます。

 島民が安心して暮らせるよう上下水道、医療施設等の諸施設を整備・充実して生活の安定及び福祉の向上を図ることといたしております。

 特に医療につきまして、小笠原村に父島、母島、それぞれ村の診療所があるわけでございまして、一応の体制は整備されているということでございますが、この診療所は一次医療機関であるとともに、小笠原諸島周辺海域における唯一の医療機関ということでございます。このため必要な医師の確保、施設の充実などの対策は重要な課題であるということを述べてあります。こういったことを踏まえ、医師・施設等一定の医療水準の確保を図るとともに、本土を含めた医療施設、保健衛生施設及び社会福祉施設の相互間の有機的な連携を図ることといたしております。

 「また」以下でございますが、小笠原は高齢化率につきましては約10%程度です。ということで、現状では他地域と比べてもそれほど高いということではないと思います。ただ、高齢者福祉や介護体制につきましても、高齢化の今後の進行、あるいは地域の実情にあわせてその充実に努めることといたしております。

 5の「自然環境の保全及び公害の防止に関する基本的な事項」でございます。

 自然環境の保全につきましては、先ほど申し上げましたように面積の4分の3程度が国立公園ということもございます。この保全管理の充実及び適正な利用の促進、固有の野生動植物の保護及び増殖並びに外来生物の排除。外来生物としては、ノヤギやアカギ等といったものがあるそうでございます。こういったものの排除を図りながら、さらに現在取り組まれております世界自然遺産への推薦を目指すことといたしております。

 また、各種事業の実施に当たっては、必要に応じ環境影響評価を行うこと等によりまして、周囲の自然環境や景観との調和を図ることといたしております。

 公害につきまして、水質汚濁等による自然環境等への悪影響の防止に努めることといたしております。また、環境への負荷を低減させる循環型社会を形成していくため、廃棄物の排出抑制、あるいはリサイクル等の適正処理の促進を図るとさせていただいております。

 6の「防災及び国土保全に係る施設の整備に関する基本的な事項」でございます。

 台風常襲地域ということもございますので、自然環境や景観との調和を図りながら、砂防、地すべり対策はもとより、島内各施設の安全対策を講じ、島民等の安全確保を図ることといたしております。

 7の「教育及び文化の振興に関する基本的な事項」でございます。

 現在、小笠原には父島・母島に小中学校が、父島に高校があるわけでございますが、その公立学校施設の整備・充実を図るとともに、各種施設を島民に開放し、その有効活用を図ることといたしております。

 また、文化の振興につきましても、島内の文化財の保護に努めるととにも、小笠原諸島特有の民俗文化、歴史を教育に採り入れるなど、地域全体での伝承に努めることといたしております。

 さらにということで、小笠原諸島を海洋資源等の研究・教育の拠点として活用していくということも効果的だということで、このような方向性についても検討を行うことといたしております。

 8の「観光の開発に関する基本的な事項」でございます。

 言うまでもないことでございますが、観光は小笠原諸島の持つ魅力を最もいかすことのできる産業でございます。また、TSLの就航による効果を最大限発揮できるものでございます。この効果を最大限活用できるよう、観光客の受入体制を整備し、リピーターの増加と観光地としての評価の向上を図ることといたしております。

 また、エコツーリズムについても触れておりますが、ある意味小笠原の観光はその全てがエコツーリズムということも言えるわけでございまして、エコツーリズムの推進の観点から、観光振興と将来にわたり継承すべき貴重な自然環境の維持との両立に十分配慮して取り組むという形とさせていただいております。

 9の「国内及び国外の地域との交流の促進に関する基本的な事項」でございます。

 これは今回の法改正によりまして、新たに計画事項として追加されたものでございます。この事項といたしましては、観光はもとより、小笠原諸島の自然、文化、歴史、海洋資源の研究などの目的で訪れる交流人口を拡大すること、これにより地域経済の発展や人材の育成が期待されます。このことから、同諸島の自立的発展の促進に向けた振興開発を図る上で非常に重要であるとしております。

 このために来島者に同諸島の地球的・国家的な役割、あるいは地域資源をPRする。また、彼らとの交流活動を通じて、これまで島民が気が付かなかった地域資源の発掘が図られることを期待しております。また、国内外の地域との交流活動に取り組んで相互理解を深めることで、その相互の地域の発展に向けた取組を図ることといたしております。

 中長期的なものといたしまして、太平洋の島々との交流・観光の拠点とすること、あるいは海洋資源の調査や貴重な動植物の研究の拠点として発展させていくこと等、小笠原諸島の地球的な役割をいかした交流の実践に向けて検討を行うことといたしております。

 さらに加えまして、子供達にとりまして、同諸島の自然や環境の中で過ごすことができたら、これは日頃得られない貴重な経験となるものでございます。また、そのような経験をした子供達を通じて、同諸島の我が国における役割が広く認知されることとなるわけでございます。こういったことから、修学旅行、あるいは体験学習の場として同諸島をPRしていくことも重要であるという形でまとめさせていただきました。

 10の「小笠原諸島の振興開発に寄与する人材の育成に関する基本的な事項」でございます。

 これも今回の法改正で追加された事項でございます。当審議会のご意見でもいただいた創意工夫をいかした地域主体の振興開発を図る上では、その担い手となる人材の育成が不可欠です。このため、外部との交流機会の増加などによりまして、個々の島民の意識の向上を図る。それとともに島おこしにかける熱意を持ち、島外住民や観光客の視点を持って同諸島の振興開発・島おこしに当たることのできる人材の育成を図るということといたしております。また、島民主体の地域の活性化に向けた機運を醸成するための取組を行うとしております。

 さらに、研修活動の促進等で農林水産業従事者の育成を図るとともに、自然環境の保全と観光振興の両立を担う自然ガイドといったものの育成等の取組を図ることといたしております。

 最後の項目でございますが、「帰島を希望する旧島民の帰島の促進に関する基本的な事項」でございます。

 先ほどから何度か申し上げてございますように、TSLの就航によりまして、小笠原諸島への交通手段が改善されるということもございます。こういうものを契機といたしまして、さらに帰島を希望される旧島民もいらっしゃると思います。そういった方の受け入れに対応していくための環境整備を図ることといたしております。

 また、その次に、硫黄島と北硫黄島について触れさせていただいております。この硫黄島につきましては、実は昭和59年5月、この前身の小笠原諸島振興審議会によりまして、「火山活動による異常現象が激しいこと」あるいは「産業の成立が厳しいこと」などによりまして、ここには「一般住民の定住は困難であり、同島は振興開発には適さないと判断せざるを得ない。」という意見具申をいただきました。

 これを受けまして、当時の振興計画におきまして、「集団移転事業に類する措置を講ずるものとする」等の決定がなされたところであります。こういった経緯がございますので、硫黄島及び北硫黄島につきまして、一般住民の定住が困難であることにかんがみ、父島及び母島への集団移転事業に類する措置等を引き続き講ずるものとするとしてまとめてございます。

 ちなみにこの「類する措置」というのは、例えば昭和60年に父島に一時宿泊所を設置したということがございます。また、平成2年から8年度にかけて、母島に農業用地を造成して、旧島民に対して貸し付け等を行っていると、こういったものを引き続き講ずるということで記載させていただいているものでございます。

 方針案の説明、少し長くなりましたが、また、かなり網羅的でありますが、これは法律で各事項すべてについて記載せよという形になってございます。そういうことも踏まえて、またご審議いただければと思います。よろしくお願いいたします。

○岡本会長 ありがとうございました。それでは、ただいま説明のありました「小笠原諸島振興開発基本方針案」について、何かご質問、ご意見等がございましたら、ご発言をお願いいたします。事前に加筆修正等をいただいたようでございますけれども、なお本日またお気付きの点、ご遠慮なくご発言をいただきます。どうぞ、どなたか。岩崎先生、いかがですか。

○岩崎委員 私も事前に意見を述べさせていただいております。少し気になる点がございました。何と申し上げるんでしょうか、これまで小笠原は特殊事情があって、それが不利性と捉えられてきたと。しかし、それは視点を変えれば、他の地域にはない魅力と資源であるという新しい流れといいましょうか、そういうことであるということが今回の法律改正で出た新しい考え方と捉えることができると思うんです。

 確かにそうなんですけれども、不利であること、地理的に隔絶をしていて……。例えば3ページにあるんですけれども、「地理的、自然的な特殊事情は、これまで島民にとって同諸島で生活するためには、克服又は甘受しなければならない不利性と捉えられてきた。」と。今でも不利性は変わらないわけですね。今でもこの状況は変わっていないわけであります。その後に、「しかし」となって、いろいろな動植物がいて、特殊ですねと。大陸棚もあったりして、そういうことから考えると、これはとても優位な魅力であるということなんですが。

 でも、島にとって不利であることには変わりはないわけで、それを不利であるけれども、もうちょっと違う視点から見れば、島を離れてもう少し大きな視点から見れば、それは特別いろいろなポジティブな特徴がありますと。ところが、両方わかるんですけれども、そのつなぎの部分というのが、急に他人の視点といいましょうか、小笠原の審議会なのに、それを離れてしまった、何となくクールというか、冷たいというか、そういうのを最初に読んだときに感じてしまいました。

 私は事前にドラフトを送ってきて、いろいろな意見を述べたということは事務局がご説明くださったので、どういう意見を述べたということをここで申し上げても、前に意見交換があったと言えると思いますので、私がかなり強硬に主張して取り上げられなかったのが、ここの3ページのその後です。不利性は不利性でそうだと。優位性と考えることもできると。3ページから4ページに続くところですけれども、不利性ではなく優位性であるという発想で地域の活性化に結びつけていくことが重要であると。この発想はいいです。発想はいいけれども、実際に地域の活性化に結びつけていこうと思ったら、先ほど欠けているものをリンクしなくてはいけないというのは、このためには移動手段の確保が極めて重要であるということだと思うんです。私はこれでも配慮をして、移動手段の確保という言い方をしたのであって、航空路というふうに言い切らないで、移動手段と申し上げて、この方針は5年間ということだったので、5年間でできることということであるとすれば、例えばテクノスーパーライナーということで、今よりも利便性の高い移動手段になりますね。

 そうだし、しかしながら、やっぱり航空路の可能性もあきらめていないと。方針としてはそうであって、できるかできないかはまた次かもしれないけれども、一応国の方針としては……。国というか、ここのところで移動手段の確保ということをどうしても書いていただけなかったというのが、私は一番気になっています。

 あと、いろいろと基本事項のほうにいくと、例えばよくある市町村の計画とか、住民一人ひとりが生き生きして頑張ろうねとか、自覚を持ってやろうねとか、地域活性化に尽くそうねとかいうのは市町村計画でもあるわけですから、それはその後でつくってくださればいいので、ここの審議会は国の基本方針、そういうのからいくと、やはり島で努力してもできないことを。もうちょっと補完性の原理といいますけれども、自分でできることは自分でやる、そうでないものは一緒にやる。だから、市町村でできることは市町村でやる、できないことは都道府県、国でという補完性の原理も考えてみると、やはり移動手段、島とそれ以外のところの移動手段の確保というのは、どうしても外せないのに書いていただけなかったというのがすごく残念です。

 法律も13条の4、5、6などはほとんど交流で、農林水産業の振興ですとか、医療の充実ですとか、地域間交流の促進とか、新たに入ったものは全て移動しなければというか、動きがなければうまくいかないようなところが多いのに、どうやって不利性を優位性と考えて、発想を転換して地域活性化をするのかと。ここのところがちょっと。私は小笠原島民ではありませんし、住んだこともありませんので、島民が何を考えていらっしゃるか知りませんけれども、私はイマジネーションで島民の立場に立ってみると、とても胸が痛みます。

 余計なお世話かもしれませんけれども、ちょっと悲しかったですね。移動手段の確保という言い方すらもできなかったというのは、すごく残念だと思います。

○岡本会長 どうもありがとうございました。どうぞ。

○内田課長 今のご意見につきましてです。あらかじめそういうご意見をいただいておりまして、なかなか項目との関係で入れ込むところが難しいというのもあったのでございますが、5ページでございますけれども、ちょうど真ん中ぐらい、2の「(1)交通施設の整備」のところで、「小笠原諸島における住民生活の利便性の向上、産業の振興等を図るためには、交通利便性の確保が重要である。」という形で、実はこれを最後に追加させていただく形で修正させていただきました。うまく入る場所という意味では、ここが一番いいかなと思う形で、移動手段という言葉は使ってございませんけれども、ご趣旨はここへ入れさせていただいたつもりでおりますので、ご理解いただければと思いますけれども。

○岩崎委員 ここだと、島の中における移動手段というか……。考えようによっては交通利便性というので島と本土のというふうにも読めますけれども、ここの項目からいって、道路、港湾等の交通施設及び通信施設、大体が小笠原諸島における住民生活に……。何か私、これを読んでいると、島内の交通の利便性のような気もしてしまったんです。

 確かに読もうと思ったらそう読めるんですけれども、ここの基本的な事項よりも、不利性を優位性に変えるには、動かすものが重要であると、そこのところのほうが。ここに入れていただいたご苦労はすごくわかるんですけれども。情報とかお金はサイバー空間ですぐ行きますね。サイバー空間というか、ネット上で情報通信でいきますけれども、人と物は物理的に移動が必要なわけですから、そうすると、物理的に隔絶、遠いところが小笠原は不利と捉えてきて、それを優位と捉えるのであれば、移動手段の確保という。

 私の頭の中ではそういう一貫性が。ここに入るよりも、最初のところに入ってくれたほうが、方針らしいなということです。事務局がご苦労してここに入れてくださったというのはわかりますけれども、これは意見ですので。

○岡本会長 ありがとうございました。前段のほうにTSLの話などもございますので、必ずしもここは島内ではないとは思いますけれども。

 赤保谷委員、いかがでございますか。

○赤保谷委員 私も事前に素案というのか、見せてもらって、細かいところまでいろいろご意見を申し上げて、ほとんど採用してもらいました。

 今のところの交通手段、この5ページのところに航空路についてはとあるので、これは島の中だけとか、島と島との間ではなくて、本土との関係で言っているんだろうと思うので、それはそう理解しているんですけれども。

 これは言っても無理かなという感じがあったので事前には申し上げなかったんですけれども、同じところの5ページの今の航空路については、これまでの議論の経緯を踏まえて幅広く検討を進めると。これは、国土交通大臣が決めるわけでしょう。大臣としては閣僚の一人として決めるわけです。ここのところを本当は強くボンと打ち出してもらいたいんですが、関係省庁というのはいろいろあるので、このぐらいの書き方しかできないのかなと。気になった点です。

 これは意見としては事前には申し上げませんでした。ただ、そういう意味では岩崎委員の意見と同じような気持ちです。

○岡本会長 ありがとうございました。

○秋本会長代理 おそらく基本方針というものの中でどこまで書き込むかということをいろいろ考えてやったんだろうと思うんです。今の不利性、優位性というのは、私もここまできれいに割り切っていいのか、割り切れるかなと思ったことは思いました。

 それと、今の航空路というか、交通移動手段、情報を含めてですけれども、それを基本方針の中にどこまで書けるかといったときに、5年間なり何なりである程度の具体化をするということを想定しながら書くとすれば、幅広く検討を進めるということかもしれないとは思うんですけれども。ただ、この言葉は今初めて見るのではなくて、前から使われているんです。

 そうすると、言葉が全然変わらないとしたら、検討の中身ぐらいはどうなっているんだろうかといったことは、実はこの席で後でお尋ねしようかと思っていました。具体的にいうと、例えば平成16年度はこうしようと思っていますとか、5年なりという基本方針期間にどのようなことを考えていきたいと思っているとかといったことが、もうちょっと出て……。どうなのか聞いてみないといかんのではないかと。言葉としてはこうかもしれないけれども、何か背景にある実態の動きといったことについて、これはよく確かめておきたい。

 後でまたTSLのお話があると思います。TSL自体が大変なことではあると思うんですが、これができたら安心だみたいなことになってしまっても困るだろうということを確認したいと思います。ただ、今回の基本方針の中で、私は具体的にどこまで書くかというのは、書きようはいろいろあると思うんです。この数年来の検討を踏まえて国家的な意義みたいなものをできるだけ書こうとしている感じはわかります。

 それから、地球的な役割といったことも言葉として入れるようにしてきたというのは、この2、3年の間に海津委員なども参加していただいた、あの研究会の議論といったものもかなり取り入れていただいているんだろうというのもわかります。ただ、今、岩崎委員からお話がありましたようなことも含めてですけれども、普通のお役所の基本方針だったらここまでは書かないかもしれないというものもかなり突っ込んで書いているという点があって、これは評価はいろいろあるかもしれませんが、案外面白いのかもしれないという気もいたします。

 そして、航空路については5年というのを考えると踏み込めないかなと思われても、案外意外なところでというか、例えば今内閣で大陸棚の研究会なんていうのを始めている。この小笠原の持っている意味というのは、あの大陸棚とかなり密接に出てくるだろうと。そうすると、その中で研究開発とか、教育とかいった機関をここに設置するということも検討しようじゃないかということをここに踏み込んで書いている。これは、黙ってそっと大胆なことを書いているのかもしれないという気もいたします。

 だから、中身はいろいろなことに触れているし、通常のとはちょっと違った触れ方もかなりやっているということについては、それはそれで評価できるものもあるのではないかと思います。今の肝心の航空路みたいな話になると、事柄が大き過ぎるということもあるかもしれませんけれども、これだけではよくわからないと。文章は直せないかもしれないけれども、その後どうなっているのか、これからどうしようとするのかというのは、改めてお聞きしておきたいという気がいたします。

○岡本会長 では、その件は後でちらっとお伺いしましょう。毎回出てきますので、その件は置いておきまして。

 海津委員、今お名前が出ましたので、どうぞ。

○海津委員 ありがとうございます。秋本先生を座長にした検討を2年間続けている中でいろいろ出てきたことが入っているなと思いました。こういった法律に基づく基本方針というのはここまで書くんだなということを、今半ば感心しながら拝見しております。

 項目的には非常に多岐に渡って書かれていて、大体気になることはすべて盛り込まれているのではないかという気がしたんですけれども。追加というよりも、中で強調しておく必要があるのではないかと思ったところを挙げさせていただきたいと思います。特に「観光利用」とか「エコツーリズム」、小笠原ではまさに観光の方向性というのはそちらだと思います。大きな法律の目的が地域の自立ということで考えると、産業を中で興していくということにつながる方針、これが一番大事なところだと思います。観光はその中で一番小笠原で確かにできることだろうと思います。

 ただ、その一方で、中にちょっと書いてあるんですけれども、人が入ってくることに伴う保全というところが、今小笠原の現地に行くと、比較的課題として大きく取り上げられていて、特に移入種が入ってくるものの防除のこととか、島から出ていってしまうもの、そういったところについての保全の活動。それの背景になるのが、今の秋本委員から出ました研究というところだと思います。調査研究と保全の具体的な対策を立てていくというところは、もう少し強調しても、それもというよりは、それと並行して観光開発をという書き方になっていると、より望ましいかなと思いました。それが一点と。

 あと、移動の問題にかかわるんですけれども、医療のことが書いてあります。島民の方達と話をしていると、この医療上で、病院、大きな医院がないということ。特に母島から父島に船で行きにくいような緊急時のときの対応というところが、居住性の中で課題です。例えば島の中でなかなか出産をすることができなくて、子供ができると最後は本土に行かなければいけないということもあるという課題があるようです。

 ですので、この方針でいくと4ページの5のところですか、居住環境の構築をするというところだと思うんですけれども、そこに書き込まれているとより望ましいかなと思います。それは基本的な事項のところには触れられているように思いました。以上です。

○岡本会長 ありがとうございました。研究のほうは、今回別立てでお書きいただいたということでご配慮いただいたように思っております。

 楓委員、いかがでございますか。

○楓委員 この後の計画案のほうに盛り込んでいただければということを考えますけれども。ただ、3つほどあります。

 1点目は、情報拠点ということです。この中に含まれている観光的な面、研究的な面、いろいろな要素があると思うんですけれども、一括した情報拠点を、それが東京都内にあったらいいのかどうか、サイバー上に置くとか、いろいろな手法はあると思いますけれども、是非ご検討いただきたい。

 特に、今ビジット・ジャパンなども含めて海外の方たちへの情報発信というのも大変重要なポイントになってきておりますので、国内の方向けだけではなくて、海外の観光の方、研究の方、それらの方達に十分に情報発信できるような拠点。特に観光案内所みたいな発想ですと、行政サービスでコストがかかるということもあると思うんですけれども、これからはそういったような情報も有料で提供していくような仕組みもできていくと思いますので、全てがサービスと考えていく必要はないかと思います。

 2点目は観光の面です。観光というのは降ってくるものでも、だれかに押しつけられるものでもない、まさにそういう時代に入ってきました。本当に小笠原の方達がお客様に来てほしいと思ってくださるかどうか。来てくださったお客様に何をもっておもてなしをしたいかと、具体的に何を持っていらっしゃるか。と同時に、小笠原の皆さんが日本のいろいろなところの観光地のいろいろな例をご覧になって、あのケースは取り上げたい、こういう小笠原にはしたくないということを、ある種、生の情報を皆さん方が受けた上で、観光のいろいろな施設だかサービスだかわかりませんけれども、できるようなことを是非とも、これは最も具体的なことになりますけれども、お考えいただきたいと思います。

 3点目は交通の件です。ここに「安全かつ安定」というのもあるんですけれども、是非とも「安価」というところも今後検討の中で入れていただきたいと思っております。以上でございます。

○岡本会長 どうも貴重なご意見、ありがとうございました。

 北村委員、初めてお考えいただきましたが、いかがですか。

○北村委員 初めてなものですから、現地の事情がよくわからないままに幾つか私の意見を申し上げて、一部採用していただきました。私は島に行ったこともなければ、住んだこともないものですから、現地の本当にリアルなニーズというものがよくわからない。その上でこの案を拝見して、むしろ先ほど岩崎先生のほうからご指摘があった、不利性を優位性にというのは、新しい観点だと新鮮に感じたくちでございます。

 ただ、問題は、それを戦略としてどうやって不利性克服につなげていくかということだと思います。私などが関心を持つのは、言ってみれば小笠原をどうやって売り出すかという性格付けにあります。ハワイにするのか、ガラパゴスにするのかというような気持ちがとてもあったんです。

 おそらく日本はたくさんの観光資源に恵まれた国ですから、ここがほかの観光地と同様のカラーで売り出すということはハンディがあると。そういうことでいいますと、戦略としては、むしろ利便性を伴いながら、非常にデリケートな生態系に配慮するという基本線をもっと打ち出してもいいのではないかという気持ちがあります。それが今楓委員がおっしゃったような、観光について島民の方がどう考えているかということともリンクしてくると思うんです。

 そうなってくると、外の者がああだこうだいうということの善し悪しはまた別にあると思うんですけれども、とにかくたくさん客が来てくれて、たくさんお金を落としてくれればいいんだという考え方だけではないよという、ある程度こちらからの情報発信を島民の方に向けて行うことも、また必要ではないかと思いました。

 細かいことになるんですが、文言としては生態系という言葉を入れてくださいとか、エコツーリズムの考え方というのは、エコツーリズムというものを別立てにするのではなくて、考え方としては全体にかぶせていただきたいとかいうことを申し上げた次第なんですが。言ってみれば、「便利だけれどもオンリーワン」という戦略をぜひ掲げていただきたいと、そんなことを申し上げた次第です。

○岡本会長 ありがとうございました。

 高橋部長、航空路は部長にお尋ねしたら、審議経過みたいなことを多少おっしゃって……。

○高橋部長 それでは、航空路のお尋ねがございましたので、今までの経緯を含めましてご説明をさせていただきます。私どもでは当初、平成13年11月ですけれども、時雨山の計画を撤回して、そのときに新たな航空路案の検討を行うということで東京都の方針を決めました。このときの考え方は大きくいうと3つございます。

 1つ目は、既存施設の利用などを含め検討するということ。

 2つ目は、新たな航空路案として検討を行うこととした4つの案を軸として考えようと。硫黄島の自衛隊の滑走路を利用した案、水上飛行機の案、現地の陸上に滑走路をつくる案でございますが、滑走路案、それから、従来からございました聟島に滑走路をつくるという案でございます。

 3つ目は、それと同時に、今後技術開発の動向を踏まえまして幅広く検討していくというのが東京都の方針でございます。

 現在までどういう検討をやってきたかということを簡単にご説明します。

 平成13年度につきましては、4つの航空路案を主体にしまして、施設整備、どういう施設が必要になるか、それにかかる費用はどうかという調査をやってまいりました。

 平成14年度につきましては、この4つの航空路案に関する経済的な効果、環境面の問題、TSLが就航したときにどういう影響が出てくるか、共存していけるかどうかという面の調査を行っております。

 平成15年度でございますけれども、実はこの年につきましては、前回の審議会のときに、国のほうから「一般空港における新たな空港整備プロセスのあり方」という新しい考え方が示されましたので、これに基づいて4つの案を検討した場合にどうなるかということを視点に調査を行ってございます。具体的には、どういう課題が出てくるか、あるいはどういう準備をする必要があるのかという点を調査しました。

 もう一点は、コミューター機を主体とした最新の機材の開発動向でございます。これは今アメリカのほうでもかなり新しい航空機の開発が進んでおりますので、そこら辺の情報を収集しております。

 あと、平成16年度につきましては、4つの案が主体になりますけれども、運航主体がどうなるか、どういうところが運航することになるのか。それから収支面、特に料金面がどうなるかということを主体に検討したいという予定で考えております。概略は以上でございます。

○岡本会長 ありがとうございました。非常に小笠原は貴重な国土でございますので、住民の方が安心して暮らせるような交通条件がなお課題ではなかろうかと思います。

 ほかにいかがでございましょうか。どうぞ、小豆畑委員。

○小豆畑委員 前回まで秋本会長代理が繰り返しおっしゃっていたことは、小笠原を考える上で飛行場があるかないかで考え方は大きく変わってくると。それをもう少しはっきりさせようではないかというお話でありました。私も全く同意見であります。ただ、現時点で飛行場をつくるということの困難性も十二分に承知しているつもりです。

 にもかかわらず、前回までは国土交通省は空港という言葉を使っておられたはずですが、ここでは航空路。これは従来の東京都がいわれる言葉でありますので、その辺で何かあったのかという疑念が一つございます。なぜそんなことを申し上げるかといいますと、小笠原の現状は、観光客は昭和59年あたりをピークにしてむしろ減少気味。人口もまた5、6年前から横ばいを終わって、これも減少に転じつつある。

 返還後35年かかって、今までたくさんの人が努力をなさってここまできたわけでありますが、例えば島民所得でいいますと、給与所得が平成13年で93%、漁業所得が1.3%、農業所得が0.7%ぐらいだったと思います。にもかかわらず、農業、漁業ということがまた言われる。35年間一体何であったのかということを考えますと、もう少し別の光の当て方があると。

 例えば地元の皆さんがよく言うのには、商工業者の皆さんは、冷蔵庫を我々は自前で用意していると。農業協同組合、漁業協同組合は補助金で設置していると。売っているものは同じじゃないかということがあるわけです。そういう意味で、経済産業省の方がいらっしゃるかどうかわかりませんけれども、農水省に比べて少し力の入れ方が……。これは日本全国そうでありますから、言っても詮のないことでありますけれども、もう少し別の光の当て方があってもいいのではないかと。それが一つです。

 それから、最初の航空路の話に戻りますと、今まで二十数回飛行場の調査をしてきまして、うろ覚えでありますが、約17億5,000万円ほど調査費に費やしているはずであります。その都度小笠原の関係者は、村民はもちろんでありますが、一喜一憂した。その繰り返しであります。したがって困難性は重々承知をしておりますけれども、もう少し航空路ではなくて空港と言っていただけないかと、そんなところでございます。

○岡本会長 そこら辺、今の件、何かコメントございますでしょうか。航空路を空港と言ってほしいというご指摘がございました。どうぞ。

○秋本会長代理 お答えはいただいたらいいと思いますけれども。航空路という言葉が前回もひょっとしたら使われていたかもしれません。ただ、その時のいろいろなご説明というのは、航空路をとにかく確保する、整備をするという基本方針には疑問を持つというお話はあまりなくて、具体的にそれを水上飛行機でやるのか、空港を整備するときに場所をどこにするのかといったようなお話だったと思います。

 ただ、先ほどのお話ですと、例えばTSLを導入した場合にそれとの関係がどうなるかといったようなことの調査をなさっているということは、航空路の確保、整備ということ自体について、もう一遍根っこから考え直しますというふうにも聞こえるようなご説明だったように思うんです。それがそうであるとするならば、私は今までの話とはかなり基本的に違うんだと思います。

 そして、これは、あるいはひょっとしたら、本当は都庁だけの話ではないのかもしれません。だから、さっきのお話ですと、私がこの席で今までお聞きしていたのとは違うという印象を持ちましたが、いかがでしょうか。

○高橋部長 ただいまの点でございますけれども、TSLとの関連では、TSLが入った場合に航空路が出てくればどういうキャパになる必要があるのかと、そこら辺の調査は必要だろうということで、一応調査をしているわけでございます。TSLがあるから航空路は要らないということは、全然私どもとしては考えてございません。

 もう一つ、東京都の考えとしましては、必ずしも滑走路を造るということにはならない場合もあると。それは、陸上の滑走路を造る方法も検討しておりますけれども、場合によっては水上飛行機の場合もございますし、硫黄島を経由していく場合にはヘリポートでいいと、ヘリコプターで運ぶという案でございます。

 それから、技術的動向の観点からちょっとお話ししますと、ティルトローター機の開発が進んでおります。ヘリコプターと一般の飛行機とちょうど両方の機能を兼ね備えたような飛行機の開発が今進んでおりますので、もしこれが使えるようなことになれば、既存の長い滑走路は要らなくなると。そこら辺も十分含めた上で検討したいというのが東京都の立場でございます。

 そういう意味で、空港ではなくて航空路という形で私どもとしては使わせていただいたと。

○岡本会長 ありがとうございました。

○赤星局長 私どもとしては、航空路確保は絶対必要であるという認識には変わりございません。ですから、確保するに当たってどの方法が現実的であるか、これは考えざるを得ないし。もう一つは、環境面から、空港を造ってやっていくのがいいのか、今申し上げたいくつかの方法もございますので、それらも含めて検討する必要はあるだろうということで、航空路の確保が必要であるということは認識に変わりございません。

○岡本会長 ありがとうございました。審議官、どうぞ。

○平田審議官 航空問題でございますけれども、先の国会の審議の場においても、小笠原は希少資源、非常に自然環境の保全をしながら観光で対応していくというような観点から、自然環境を保全していきなさいという声、議論が非常に強かったということをご紹介しておきたいと思います。

 片や、先ほど来、移動手段の確保、交通の利便性の確保ということで、後ほどご説明をしていただくことになっていますが、テクノスーパーライナーの導入の話もさることながら、航空路の確保の重要性ということが、やはり非常に大事ではないかというような議論がございました。

 先ほど事務局のほうから説明させていただきましたが、衆議院、参議院の国会の附帯決議の中で具体的にご紹介いたします。「TSLを最大限活用した観光振興を図るとともに、空港整備等本土との交通利便性の確保に努めること。」ということが附帯決議の中に入ったところでございます。その時の私どもの国土交通大臣の基本的な考え方をこの場でお話をさせていただきたいと思います。

 小笠原の島民生活の安定、向上、それから小笠原の地域振興の面から、航空路の確保、空港の確保どちらの言葉でもよいと思いますが、長年の悲願になっているということは、私どもは十分承知していると。先般、公共事業改革についていろいろ議論が3年程なされてきているわけなんですが、国土交通省におきます公共事業改革への取り組みの中で、一般の地方空港の新設については抑制という方針が出されたわけでございます。その際にも、小笠原など離島空港の整備は今後とも必要であるという認識のもと、抑制の対象から外しているというところでございます。

 また、先ほど来、東京都のほうからのご説明がありますが、東京都が行ってこられました調査についても、国としても協力を行っていくと。平成13年の父島の時雨山周辺域での計画案の撤回に際しても、今後、都におかれましても、小笠原村の意見をよく聞いて進めていただきたいと、こういうふうに申し上げたところでございます。

 したがいまして、空港の確保につきましてはいろいろ今、東京都で調査、検討されておられますが、私ども航空局のほうといたしましては、とりあえずのところは技術面でのアドバイス、協力を行うというような形で適切に対応していきたいというところでございます。

 以上、法案の審議の過程、私ども、今の国土交通省のポジションということをご説明させていただきました。空港問題の重要性というものについて全く否定されるような話ではないということは、本席をおかりいたしましてお話をさせていただきたいと思いました。

 以上でございます。

○岡本会長 ありがとうございました。それでは、ちょっと話題を変えさせていただいてよろしゅうございましょうか。

 これも、ただ意見でございますけれども、地元で景観協議会のようなものをお作りいただけないかということを結論的に申し上げたいんです。実は、国土交通省に室谷さんという方がおられまして、運輸省の観光部におられたときに研究をなさいました。どんな研究かといいますと、観光地の魅力度を測る物差しを開発なさったんです。観光地の魅力度というのがどういう要因によって決まるのかという調査をなさいまして、観光地の魅力の源泉というのはいろいろなことがあるわけでございますけれども、室谷さんは、統計的に整理して整理すると、大体大きく4つぐらいの要因があると。

 1つ目は、賦存資源とおっしゃるんですけれども、これは天からの授かりものというような自然とか、そういう話です。2つ目は活動メニュー、何ができるかということです。小笠原で魚釣りができるとか、スキューバダイビングができるとか。3つ目は、宿泊施設です。宿泊施設のありよう。4つ目は空間的な快適性とおっしゃるんです。空間的な快適性というのは何の話かといいますと、要するに景観がいいとか、たたずまいがいいとか、そこにいるだけで非常に癒されるとか、そういう景観とか街並みのよさとか、そういうことでございます。

 この4つのうちのこれを100%としますと、重みがどうなっているかというと、結論を申しますと、この空間快適性というのが47%。観光地の魅力の半分は空間快適性なんです。景観、街並み、これをよくするということが非常に重要でございます。

 そこでちょっと話が変わりますが、実は今国会で国土交通省から法案が提案されておりますが、これは「景観法」という非常に短い名前の珍しい貴重な法律だろうと思います。景観法を提案するに至った前段として、昨年でございますか、「美しい国づくり政策大綱」というのを国土交通省が発表なさいました。その中身を拝読しますと、これまで高度経済成長を遂げたけれども、日本の国は電柱はそこら中に立っているし汚いと。汚いという言葉は使ってあったかどうかは別にして、もう少し美しい国づくりということを、これからの課題として考えなければいけないのではないかということを昨年おっしゃって、それが景観法につながったわけでございます。

 この法律ができるとどうなるかといいますと、まず行政と地元で景観協議会なるものをつくりまして、その地域に固有の、その地域らしい景観づくりというものを地域ぐるみでやろうじゃないかということができるようになるわけです。そういうことができる制度的な基盤ができるということです。

 景観地区というような特別な地区も指定することもできまして、その場合は、こういうことはいけないことにいたしましょうとか、その地域らしいこういう景観づくりに努めましょうとかということができるようになっているわけです。そして、NPOなども団体に指定して景観づくりをどんどんしていこうという法律です。

 私は、ちょっと正確かどうかわかりませんけれども、景観整備について国土交通省は200億か何かの予算を確保されたように思いますので、私は個人的には、まずは小笠原が最初に手を挙げられて、しかも、その地域で全部合わせても5,000人、そんなにたくさんの方が住んでおられることではございませんので、気持ちも一つにしやすい。

 ですから、おがさわら丸がついて大歓迎してくださることは大変結構。しかし、その背後にある地域の景観が小笠原にふさわしいものかどうかということは、必ずしもまだ問題があるように思えますので、是非こういった点をお考えいただいて、景観整備、街並み整備というものに努めていただければというふうに思っております。

 ちょっと申し上げましたが、ほかに何かございませんでしょうか。沼田委員、いかがでございますか。景観の話をさせていただきましたけれども。

○沼田委員 こちらに、6ページに世界自然遺産の推薦を目指すということが書いてございます。これは、すぐ実現して行動に移したら、今がいい時期なのではないかという気がいたします。やはり、小笠原は多分1周遅れのマラソンランナーで、今まで飛行場ができなかった分、自然がそれだけ豊富に残っているわけですから。これからまた、いろいろそれを壊さないように。

 一応そういう世界自然遺産とかいう、頭に冠ができると入っていらっしゃる方も緊張感もありますし、日本の国の宝という意味で大事にすると思いますので、是非これは早目に。それこそ、今まで飛行場ができなかった分、きれいなわけですから、それをやっていただいて、なおかつ安全な飛行場をつくっていただければいいのかなというふうな感じがいたしました。以上でございます。

○岡本会長 ありがとうございました。このほかご意見があるかもしれませんが、一応時間のこともございますので、ここらでこの小笠原諸島振興開発基本方針案の答申について、結論を出させていただきたいと思います。

 先ほど、一番冒頭で、岩崎委員から不利性を優位性にというところについてのご感想を伺いました。ご心配な点は、私の理解では不利性をそのまま放置して、それを優位性という言葉でということでは具合が悪いよと。特に航空路の問題というご指摘でございました。しかし、この方針案は、必ずしも不利性をそのままということではございません。また、航空路の説明もいただきましたので、私からの提案としては、この基本方針案を原案で適当である旨、答申するものといたしたいと思いますが、いかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。

 

〔「異議なし」の声〕

 

○岡本会長 それでは、ご異議がないようでございますので、答申案をお手元に配付いたします。

 それでは、事務局から答申案を朗読していただきたいと思います。

○内田課長 小笠原諸島振興開発基本方針案について(答申)。

 平成16年5月14付けで当審議会に諮問のあった小笠原諸島振興開発基本方針案については、審議の結果、適当であると認められるので、この旨答申する。

○岡本会長 この案文により答申することとしてはいかがでございましょうか。

 

〔「結構でございます」の声〕

 

○岡本会長 よろしゅうございますか。それでは、そのようにいたしたいと思います。今後の予定につきましては、国土交通大臣が当審議会の答申を踏まえて基本方針を定め、その後、基本方針に基づき小笠原村が計画案を東京都に提出し、東京都が小笠原諸島振興開発計画を定めることとなっています。

 

(4)その他

 

 それでは、次にその他の議題としてTSLの建造状況につきまして、国土交通省海事局より説明をお願いします。

○大谷企画官 それでは、テクノスーパーライナー、TSLの建造状況についてご説明させていただきます。

 テクノスーパーライナー、TSLと呼んでおりますが、これは平成元年から6年にかけまして開発された超高速船でございます。その実用化第1船ということで平成17年春、来年春に東京−小笠原航路に就航予定ということで、現在建造が進められております。

 起工は昨年8月でございまして、本年10月には進水という運びになっております。真ん中の絵がこの完成予想図でございます。カラーリングにつきましては昨年の7月から9月にTSL就航のPRというものも兼ねまして、公募をしております。応募総数約1万4,000ぐらいあったようでございますが、その公募の上、決定したものということでございます。

 横のほうに、スカイウォッチャーラウンジ、これは外が見えるラウンジということと、特等の部屋も参考までに絵を描いております。

 TSLの就航によりまして小笠原が現状よりどうなるかということが、下のほうの表に書いてあります。現状のおがさわら丸との比較を入れております。旅客定員は若干減る。1,000名から740名。貨物積載量は350トンから210トンに減少いたしますが、速力が時速42キロから70キロに増加。これによりまして、年間の便数が59便から92便ということで、サービス頻度が増加するということで、利便性がかなり向上するということでございます。

 次のページを見ていただきたいと思います。今後のスケジュールでございますが、今年の3月から4月にかけまして船名の募集をしておりまして、4月末で締め切っているんですが、5月の末には船名が決定すると。大体2,000ぐらいの応募があったようでございます。

 現在の建造状況でございますが、一番下の右のほうの図が現在の状況です。この部分は、真ん中のイラストの赤い線で囲っている部分でございまして、船体の下部の約3分の2ができているという状況でございます。進水が10月の予定、就航は来年春ということでございます。建造場所は三井造船の玉野事業所でございます。

 本船ができまして、ちなみにどういう運航になるかというシミュレーションをやっております。それを3ページ目につけております。TSLの導入ということで、航海時間が片道25時間半というものが16時間半程度に短縮されます。これによりまして、便数が年間、現在60便前後ですので、平均6日で1往復という便でございます。これがTSLによりまして約90便、平均4日で1往復ということで増加します。これによりまして、利用客は様々な旅行日程を設定できるわけでございます。現状、島民が本土に向かう場合、通常9泊10日、観光客が小笠原へ向かう場合の旅行日程は通常5泊6日ということでございますが、これが大分改善されるということでございます。

 こういった利便性の向上によりまして、従来のロングステイ・ベースの観光客というものに加えまして、新しい旅行需要というものが喚起できると考えております。ピーク時とそれ以外の需要格差の差が非常に大きい現状でございますが、ピーク時を外した時期の需要も大きく伸びてくるというふうに考えております。

 こういった現状の平均6日に1往復運航と、TSL就航によります4日に1往復運航での比較、これはシミュレーションでございまして、表として載せております。現状のおがさわら丸でございますと、土曜日の朝10時に東京発で、日曜日の午前中に父島に着くと。それから、帰りが水曜日の午後父島を発ちまして、木曜日の午後、東京に着くということでございます。現地に3日半滞在することに対して、土日を使いましても休暇が4日必要になるという状況でございますが、TSLを導入いたしますと、金曜日の夕方出て、土曜日の朝に現地に着くと。3日滞在しまして、月曜日の夕方発ちまして、火曜日の朝早く東京に着くということで、現地3日滞在に要する休暇として1日で済むというような、こういったスケジュールも組めるのではないかと。

 これによって、多様化しております観光客のニーズというものに対応可能できるとともに、島民の皆さんの利便性も大分改善されるのではないかと考えております。

 以上でございます。

○岡本会長 それでは、ただいまの海事局の説明に対しまして、何かご質問がございましたらご発言をお願いします。どうぞ。

○小豆畑委員 大変心強いご説明を受けてありがたいんですが。今まで、新しい船を2度造っておりますけれども、その都度2分の1補助がありました。今度は補助金がなくて造っていらっしゃる。そうすると、運賃にどう跳ね返ってくるのかが今一番関係者が心配しているところであります。その辺の見通しについて、お聞かせをいただきたいと思います。

○大谷企画官 ご説明いたします。TSLの導入によりまして、ご説明いたしましたように運航時間が短縮される、あるいは運航回数が大幅に増えると。これに加えまして、小笠原における受入体制が、本日ご審議いただいた基本方針に基づき充実されていくということで、利用者が相当増加するということが見込まれております。

 こうした中で、事業者としても採算性確保のために需要喚起といったもの、それからコスト削減の努力を相当するということになります。これによりまして、現状、民間事業として十分採算ベースに乗るものと考えております。

 したがいまして、現時点においてはランニングコストの支援というものについては考えてはございません。運賃につきましては、運航事業者が最終的に決定しているわけではございませんが、ほぼ現行の運賃水準での設定という方向にあると聞いております。

○岡本会長 りがとうございました。そのほか、小笠原関係につきまして、どのようなことでも結構でございますので、何かご意見、ご質問がございましたら、ご発言をお願いします。よろしゅうございましょうか。

 ございませんようでしたら、以上で本日の議事を終わりたいと存じます。

 なお、本日お集まりの各省庁をはじめ政府当局、東京都及び小笠原村におかれましては、本日の意見を踏まえ、今後の小笠原諸島の振興開発について格段のご努力をお願い申し上げます。

 

東京都及び小笠原村挨拶

 

○岡本会長 ここで東京都の赤星局長、及び小笠原村の森下村長からご発言のお申し出がございますので、どうぞご発言願います。

 まず、赤星局長から。

○赤星幹事 東京都の赤星でございます。貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。一言、御礼を申し上げたいと思います。本来ならば、知事が参って御礼を申し上げるところでございますが、お許しいただきまして、私から御礼の言葉を申し上げたいと思います。

 委員の先生方におかれましては、昨年、小笠原諸島振興開発特別措置法の改正・延長につきまして、当審議会で3回にわたり熱心なご審議をいただいたわけでございますが、おかげさまをもちまして国会の議決をいただきまして、本年4月から施行されております。多大なるご尽力を賜り、誠にありがとうございました。

 また、本日の審議会では、小笠原諸島振興開発基本方針をはじめ、振興開発につきましてご審議をいただきました。重ねて御礼を申し上げたいと思います。この度の法改正におきましては、地元の発意や主体性を生かすため、従前は国が行っておりました振興開発計画の策定を東京都が行うこととされました。都が果たすべき責任がこれまで以上に重くなっていると受け止めているところでございます。都といたしましては、本日ご審議いただいた基本方針に基づきまして、また、村の案の反映に積極的に努めながら、速やかに計画の策定に取り組んでまいる所存でございます。

 しかしながら、国のほうで財源確保も是非お願いいたしたいと思います。三位一体改革が真に自治体のためになるように、国土交通省をはじめ各省庁におかれましても、是非お願いいたしたいと思います。

 今後とも委員の先生方並びに国土交通省をはじめとする関係省庁の皆様方に、一層のご指導とご協力をお願い申し上げたいと思います。

 本日は大変ありがとうございました。

○岡本会長 ありがとうございました。次に、森下村長、お願い申し上げます。

○森下委員 発言の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。日頃より委員の皆様をはじめ、国土交通省並びに東京都の皆様におかれましては、私ども小笠原諸島の振興開発につきましてご尽力を賜りまして、厚く御礼を申し上げます。

 関係各位の皆様のご尽力によりまして、小笠原諸島振興開発特別措置法が延長され、今年2月には佐藤国土交通副大臣、また石原東京都知事のご臨席を賜りました記念式典など、昨年から今年にかけまして、一連の返還35周年記念事業を無事に終了することができました。このことも、この場を借りまして御礼を申し上げる次第でございます。

 本日、国の基本方針が審議されたわけでございますが、私ども村はこの基本方針及び基本方針に基づき策定します振興開発計画に則り、今後の小笠原諸島の自立発展に向け地元の創意と工夫、発意と熱意を生かした主体的な地域づくりを進めていくことになります。

 先般、村では第3次小笠原村総合計画を策定しましたが、小笠原村の将来像を「持続可能な島〜成長から成熟へ〜」と設定し、村民や観光客の皆様にずっと住み続けたい、もう一度行ってみたいと感じていただける魅力ある村づくりを進めてまいりたいと考えているところでございます。

 そのためには、TSL就航を契機とした観光振興、観光と連携した農業・漁業・商工業の振興、医療福祉など生活基盤の維持・確保、また、地域間交流や人材育成など多くの課題を解決していく必要があると考えております。中でも、持続可能な島づくりを進める上で重要な課題として、航空路の開設と世界自然遺産の登録がございます。航空路につきましては、今さら申し上げるまでもなく、返還以来の村民の悲願でございます。小笠原諸島は排他的経済水域の3分の1を占め、その海域を航行する船舶の緊急時の要衝であることなどから、その存在自体が国家的な役割を有しております。

 村民の生活の安定、産業振興や国家的な役割をはじめ、小笠原諸島でのあらゆる活動を持続的に維持、発展させていくためには、本土との毎日の足となる航空路の開設は欠くことのできない課題でございます。新しい特別措置法が国会で成立した際、衆参両院で附帯決議がつき、空港整備など、本土との高速交通の利便性の確保に努めることが盛り込まれましたが、村としましても国、東京都との連携のもと、実現性のある航空路の早期開設を目指してまいりたいと考えております。

 また、世界遺産につきましては、昨年5月、小笠原諸島が知床、琉球諸島とともに候補地に選定されました。私は、小笠原諸島が現に2,300有余の村民生活の場であることに鑑み、世界遺産に登録されることにより、村民の生活に多大な支障を生じさせないこと、また、世界遺産と航空路の開設が両立するものであることを前提に、東京都とも協力をしながらその登録を目指してまいりたいと、かように考えております。

 世界自然遺産の登録を目指すことにより、国家的にも世界的にも貴重な自然であり財産である小笠原諸島の自然環境を保全しつつ、その価値ある財産を広く国民の皆様とともに享受し、活用することをその契機としながら、持続可能な島づくりを目指してまいりたいと考えております。

 地元としましては、議会をはじめ村民の皆さんと一緒に小笠原諸島の未来を切り開いていく気概を持って、今後の振興開発を進めてまいる所存でございます。委員の皆様方を始めまして、関係各位の皆様におかれましては、今後とも変わらぬご支援とご指導を賜りますよう、改めてお願いを申し上げる次第でございます。

 私の発言は以上とさせていただきますが、今後ともどうか小笠原諸島のことをよろしくお願いをいたしまして、発言とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

 

審議官挨拶

 

○岡本会長 ありがとうございました。最後に、国土交通省都市・地域整備局平田官房審議官からご挨拶をお願いします。

○平田審議官 審議官の平田でございます。本日は委員の先生方、大変お忙しいところをご出席いただき、また、貴重なご意見を賜りまして、誠にありがとうございます。厚く厚く御礼申し上げます。

 委員の先生方から自然環境の保全の問題、観光の振興、特に会長のほうから今現在、私どもの大臣、局長をはじめ景観法という法律を出していまして、今審議の真っ最中でございますが、この景観法の適用を小笠原で考えてみたらどうかというお話でございますとか、航空路の整備というようなところについて貴重なご意見をいただきまして、誠にありがとうございました。

 先ほど来ご案内のとおり、今国会で改正法が成立したところでありますが、特別措置をただ単に5年間単純延長をするということではなく、地元の発意と創意工夫を生かすための計画体系の見直しなど、大きな転換点といいますか、大きな転換を図ったと考えてございます。

 ただ、その時に不利性から優位性への転換といっても、残されている課題、交通の利便性の確保というところの不利性は、不利であるという認識は私どもは十分に持っているところでございますので、そこら辺は東京都、小笠原村、関係の方々といろいろと相談をしながら、私どもも一生懸命汗を流したいと思っているところでございます。

 本日は、この新たな法体系の下、新たに国で策定することとなりました基本方針について、ご熱心なご議論をいただくことができたわけでございます。今後は、東京都におかれまして、この基本方針に基づいて、小笠原村のご意見、それから審議会の先生方のいろいろなご意見をいただきましたものですから、この小笠原村の意見を踏まえながら、振興開発の具体的な手法を定める振興開発計画を作成するという段取りになっているわけでございます。

 国土交通省といたしましても、今日賜りました先生方のいろいろな貴重なご意見を、十分に今後の予算編成過程とかございますが、反映させていただきたいと考えております。東京都や小笠原村と連携いたしまして、一生懸命やりたいと思っております。

 委員の先生方におかれましては、今後ともご指導、ご鞭撻を重ねてお願いを申し上げまして、私のご挨拶に代えさせていただきます。

 本日はどうもありがとうございました。

○岡本会長 ありがとうございました。それでは、以上をもちまして本日の審議会を終了させていただきたいと思います。

 皆様方におかれましては、ご多用中のところをご出席、長時間に渡りご協力を賜りまして、誠にありがとうございました。

 

閉  会