平成6年2月8日
経済対策閣僚会議
総合経済対策の概要
(建設省関係部分抜粋)
参考(民都機構の活用による都市開発事業用地の先行取得制度創設について
今回の総合経済対策のポイント | ||
(1)15兆円を上回る史上最大規模を確保
(2)平成元年1月実施以来、5年振りの所得税減税を実施 (3)規模だけではなく、公共投資等の拡大や住宅投資の促進、土地の 有効利用の促進、規制援和等の推進など現下の3つの課題に的確に 対応した処方箋を実施 |
今回の総合経済対策の基本的な考え方 | ||
我が国経済は、累次にわたる経済対策の効果もあって、住宅建設や公
共投資が経済活動を下支えしているものの、バブル経済の崩壊や円高等 内外経済環境の変化の影響により、依然厳しい状況が続き、中期的な不 透明感、閉塞感が広まっている。 政府としては、厳しい状況にある我が国経済を6年度中の出来るだけ 早い時期に本格的な回復軌道に乗せ、7年度以降の安定成長を確実なも のにするため、釆年度末までの間に可能な限りの施策を展開することが 重要であるとの認識のもと、次のミつの視点からなる総合的な経済対策 を決定した。 T 景気浮揚のための内需拡大 → 所得税減税の先行実施等、公共投資等の拡大、住宅投資の促進等 U 課題を抱える分野における重点的施策の展開 → 土地の有効利用の促進、金融・証券市場の活性化等 V 経済活力の喚起のための発展環境整備 → 規制緩和等の推進、調和ある対外経済関係の形成等 |
T.景気浮揚のための内需拡大
1 所得税減税の先行実施等 5兆4,700億円の所得税・住民段の特別減税を平成6年度限り の措置として実施。また、法人特別税及び普通乗用車に係る消費税率 の特例は、平成5年度末をもって廃止する。 税制改革については、公正で活力ある高齢化社会を実現するため、 引き続き検討を進め、年内の国会において関係の法律を成立させる。 |
2 公共投資等の拡大 総額7兆2,000億円の事業規模を確保。 この新たに追加される分も含め、今後とも、公共事業等の円滑かつ 着実な執行に努める。また、地方公共団体においても、地方単独事業 を含む事業の円滑かつ着実な施行を図るよう要請する。 |
(1)一般公共事業については、各地域経済の実情を笹まえ、国民生活の
質の向上に重点を置いた分野に出釆る限り配慮し、事業費3兆5,9
00億円(公団等の事業を含む)の追加。
このうち、公共事業の円滑な実施を図るため、7,800億円の規
模で公共用地の先行取得を行う。
(2)国民生活基盤、研究開発基盤等の充実を図るため、教育、研究、医
療等のための施設等の整備を推進し、事業費6,100億円を追加。
(3)地方単独事業については、切れ目なく積極的に展開等を図り、3,
000億円の事業費の追加を要請する。また、公共用地の取得につい
ては、1兆5,000億円の規模で事業費の拡大を要請する。
(4)住宅建設の促進を図るため、住宅金融公庫の事業規模を1兆2,00
0億円を追加。
3 住宅投資の促進 良質な住宅建設を促進し、景気拡大に資するため、住宅金融公庫融 資の追加及び住宅関連税制の拡充を図るほか、容積率の割増制度の運 用の弾力化、住宅建設コストの低減策、住宅供格のための諸施策を推 進する。 |
(1)住宅金融公庫の融資の追加
貸付枠を7万戸追加し、77万戸(当初貸付枠比22万戸増)とする。
当初予算 5万戸追加 10万戸追加 7万戸追加
55万戸 → 60万戸 → 70万戸 → 77万戸
4月対策 9月対策 今回対策
(2)住宅関連税制の拡充
平成6年度税制改正において、住宅建設の促進に資する観点から、
以下の措置を講ずる。
@ 住宅取得促進税制の所得要件(現行2000万円以下)の緩和
A 住宅取得資金の贈与に係る贈与税の特例について、特例計算限度額
(現行500万円)の引上げ及び所得要件(現行1000万円以下)等の緩和
(3)容積率の割増制度の連用の弾力化等
@ 特定街区、高度利用地区等の容積率の割増制度について、地域の
実情等に応じー定の計画的な住宅プロジェクトについて、より適切
な割増しが可能となるよう運用の弾力化を行う等
A 住宅に係る容積率規制について、地下室の床面積の取扱いの見直
し(建築審議会で検討中)
(4)住宅建設コストの低減
@ 住宅建設コストを低減するためのアクション・プログラムの策定
・各種規制の合理化、消費者への情報提供、住宅輸入・外国部品・
建材の円滑な導入等を進めることによる競争条件の整備
・生産性の向上、流通の合理化、技術開発等の推進
→住宅関連産業の発展環境を整備しつつ、住宅建設コストの引下げ
A 定期借地権制度を広く周知し、その普及・定着を図るとともに、
制度の利用が円滑に行われるよう適正な市場の育成等諸条件の整備
(5)住宅供袷のための諸施策の推進
特定優良賃貸住宅の供給、公共賃貸住宅の建替及び改善、住宅宅地
関連公共施設の整備等の推進。
U.課題を抱える分野における重点的施策の展開
1 土地の有効利用促進 土地の有効利用を通じ、公共事業、住宅建設、都市開発や民間事業 等の推進を図るため、公共用地や民間都市開発事業用地の先行取得、 土地の有効利用等のための税制上の措置、不動産取引情報の充実、不 動産共同投資のための事業環境整備等土地の有効利用を円滑に進める ための措置を講ずる。 |
(1)公共用地の先行取得
@ 公共事業等の円滑な実施を図るとともに、土地の有効利用にも資
するため、総額2兆2,800億円の規模で公共用地の先行取得を
行う。
A 用地の先行取得を円滑に進めるための制度の拡充
・都市開発資金融資制度の拡充(貸付対象土地の面積要件の緩和等)
・住宅・都市整備公団が行う住宅宅地用地の先行取得に係る出資金
制度の拡充(出資金を用地取得費のー部に充当することによる保
有コストの削減。)
→大都市地域における住宅宅地供給の推進
・地方住宅供給公社による住宅用地の先行取得に伴う利子負担軽減
のための助成制度の創設
一大都市地域の工場跡地、国鉄清算事業団用地等の先行取得促進
優良な民間都市開発事業の円滑な推進を図るため、(財)民間都市
開発推進機構による都市開発事業用地の先行取得制度の創設。(現行
の融資業務等に加え、新たに民間都市開発事業用地の取得・譲渡業務
等を追加)
また、同機構による民間都市開発事業に対する低利融資等の支援措
置の対象となる地域の拡大(東京23区、大阪市、名古屋市旧市街地
等を追加等)
(3)土地の有効利用等のための税制上の措黄
土地取引をめぐる諸事情を踏まえ、土地基本法に基づく制度の基
本的枠組みの中で土地の有効利用等に資する観点から、時限的に、
以下のような有効かつ適切な措置を平成6年度税制改正において講
ずる。
@ 市街地における土地の有効利用を促進するため、長期譲渡所得に
対する軽減税率等の適用対象の拡大(業務用を含む優良建築物を建
設する事業等のために土地等を譲渡した場合を追加)
A 企業の長期保有資産を利用した設備投資の促進を図るため、事業
用資産の買換え特例の適用対象の拡大
H 住み替えをー層促進するため、特定の居住用財産の買換特碗の拡
充(譲渡価格要件の引上げ)
C 民間都市開発推進機構の都市開発事業用地の先行取得と都市開発
事業の実施を支援のための措置
また、三大都市圏の特定市の市街化区域における特別土地保有税の
課税の特例(いわゆるミニ保有税)は、平成6年1月1日以後に取得
された土地については適用しないこととし、平成6年度税制改正にお
いて所要の措置。
(4)土地の有効利用を円滑に進めるための措置
@ 低未利用地有効利用促進協議会の設置等
地方公共団体等を構成員とする低未利用地有効利用促進協議会の
設置等による土地の有効利用の推進
・協議会における低未利用地に関する情報の交換等
・これを踏まえた地方公共団体による計画策定の推進
A 土地取引関連情報の充実
指定流通機構による不動産市況情報提供のためのシステム整備
B 監視区域制度の弾力的運用
C 不動産共同投資のための事業環境整備
不動産共同投資事業について、事業参加者の保護のあり方につい
ての検討を含め、事業環境の整備を行い、その健全な発展を図る。
5 金融・証券市場に関する施策 金融市場活性化の鏡である不良資産等の処理のー層の促進、資金の 円滑な供給及び証券市場活性化のための規制緩和等を引き続き実施。 ・当分の間、土地関連鼓資に係るいわゆるトリガー方式の適用を停止。 ・葛、同債権買取機構の活用と担保不動産の処分促進等 |
V.経済活力の喚起のための発展環境整備
1 規制緩和等の推進 「今後における行政改革の推進方策について」(6年2月3日行政 改革推進本部決定)に盛り込まれた措置の実施。特に新規事業の創出 や事業の拡大等の経済的効果を期する観点から、規制緩和等を実施す る。(別紙で掲載) また、6年度内に規制緩和を推進するための計画(期間5年間)を 策定し、公的規制の見直しを推進する。 |
(別紙)
住宅・土地関連の規制緩和項目(建設省関係4項目)
・住宅の地下室に係る容積率の規制の緩和
・容積率特例制度について住宅に着目した運用弾力化
・木造建築物の延べ面積制限の緩和
・土地区画整理事業の技術基準の柔軟化による地域特性への配慮
3 地域の視点に立った経済の活性化 地域の特性と創意を生かし魅力にあふれた特色ある地域づくりを進 めるとともに、各地域の経済活力の発現を通じた経済の活性化を図る ことが重要であり、このため、 ・公共投資等の拡大 ・各種地域開発等に関連する許認可等事務手続きの迅速化等 ・業務核都市や大坂湾臨海地域の整備等大都市地域の秩序ある整備 ・地方拠点都市地域の整備等地方圏の発展の拠点となる都市地域の機 能強化、 ・広域的な生活圏相互の交流を円滑にし拡大する高規格幹線道路等の 整備の計画的推進 を行う。 |
4 調和ある対外経済関係の形成 内需拡大策、ガット・ウルグアイ・ラウンドの合意等に加え、内外 無差別及び公正かつ開放的な市場の形成、輸入の促進、対日投資の促 進、開発途上国支援等による国際社会への貢献を通じ、調和ある対外 経済関係の形成を図る。 |
(1)輸入の促進
良質かつ安価な住宅の輸入を促進するため、引き続き、輸入住宅の
常設展示場の確保等
(2)政府調達手続きの改善
ガット政府調達協定改定交渉の合意に基づく政府調達に関する協定
の対象となる調達及び機関の範囲の拡大、一般競争入札による調達機
会の増大、アクション・プログラムのー層の推進による政府調達手続
きのー層の透明性の確保、公正な競争の機会の増大
(3)市場開放問題苦情処理体制(OTO)の活用 等
(参考)
1.施策の目的
土地市場の低迷を背景とした都市開発事業の停滞状況の中で、都市開
発事業の推進を図るため、民間都市開発推進機構を活用して都市開発事
業用地の先行取得と都市開発事業実施に向けての条件整備を行う。
2.施策の概要
民間都市開発推進機構(「民間都市開発の推進に関する特別措置法」
による指定法人)に、新たに民間都市開発事業用地の取得・譲渡業務等
を追加
* 民間都市開発事業:民間事業者による公共施設等の整備を伴う都市開発事 業
(1)機構は、機構に設置する経営審査会及び価格審査会の議を経て、
民間都市開発事業用地として活用することが見込まれるー定の要件
を満たす土地を取得
(2)機構は、民間都市開発事業への唯一の公的支援機関として自らの
有するノウハウ等を用いて、当該土地を有効に活用した優良な民間
都市開発事業の立ち上げを支援
(3)機構の取得した土地は、民間都市開発事業用地として活用(民間
都市開発事業者への譲渡又は土地所有者として民間都市開発事業へ
の参加)
(4)5年程度の時限措置
(5)事業規模 5,000億円を予定(5年間の措置)
(参 考)
民間都市開発推進機構が現在行っている業務は以下のとおり
(1)参加業務 民間都市開発事業について、共同事業者として
事業に参加
(2)融通業務 民間都市開発事業を施行する者に対し、長期
かつ低利の資金の融通
(3)NTT-A型無利子貸付業務 NTT株式の売払収入を活用した無利子貸付
等