21世紀を切りひらく緊急経済対策(抄)
平成9年11月18日
経済対策閣僚会議
目 次
T.規制緩和を中心とした経済構造改革・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
1.情報通信分野における故事・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2.福祉・医療分野における改革・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
3.雇用・労働分野における改革・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
4.金融分野における改革・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
5.物流・運輸分野における改革・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
6.教育分野における改革・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
7.その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
U.土地の取引活性化・有効活用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
1.都市の再構築を図るための施策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
2.積極的な土地・住宅の供給・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
3.現行規制を緩和する等その他の土地有効利用のための施策・・・・・・・・・14
4.不動産等の証券化等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
V.中小企業対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
1.金融対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
2.中心市街地活性化対策について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
3.その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
W.科学技術の振興・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
X.市場アクセス改善の加速化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
1.OTOの積極的活用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
2.市場アクセス改善のための具体的方策・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
Y.税制の見直し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
Z.民間活力を活用した社会資本整備その他の施策・・・・・・・・・・・・・・・22
1.情報通信基盤整備のための各種施策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
2.物流基盤整備の促進のための各種施策・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
3.環境政策の推進のための各種施策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
4.新しい社会資本整備手法の活用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
5.公共事業の効率的執行の確保等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
6.その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
不良債権処理を促進して経済活動全体を活性化させるとともに、長期的
な視野に立ってゆとりある居住スペースやオフィス・スペースを実現する
ことで豊かな国民生済を達成し、併せて、都市部における防災上の備えも
強化し、都市の再構築を図るため、以下の措置をとる。なお、土地政策が
地価抑制から土地有効利用促進へと転換したことに鑑み、土地の有効利用
に資する良好なプロジェクトへ十分な資金供給が行われることが土地取引
の活性化に資すると考えられる.
[中心市街地(商業地域等)における容積率の抜本的緩和】
・都市構造の再編、防災上、情報化等の観点から、都市中心市街地の更新
を促進するため、優良プロジェクトに係る容積率等の特例制度の活用や容
積率指定の見直しなど、機動的に土地利用規制を見直すよう地方公共団体
に要請する.(商業地域における法定容積率の再考限度は、1000%)
・特に、都心商業地域の更新については、地区の塁ましい更新の姿を示し
た構想を、地元公共団体が中心となって作成し、これに基づいて特例制度
の活用による容積率、斜線制限の緩和等の施策を総合的に展開する.併せ
て、附置駐車施設の敷地外への設置について、有効かつ適正に運用される
よう地方公共団体に要請する。
・この際、高度利用地区について、空地確保を必須の要件としない容積率
割増基準を新たに設定(割増上眼 300%)することにより、都心商業地域
の円滑な更新を図る。
・併せて、高度利用地区内の建築物の整備について、財政投融資を適切に
活用し、日本開発銀行等の融資を拡充する.
[都市構造再編プログラム(仮称)の策定の推進]
・都市計画道路等の整備と連動した容積率のアップとこれによる民間投資
の活発化を促進し、「都市の再構築」を実現するため、将来の都市像を明
らかにしつつ、都市基盤整備、高度利用等の具体的目標等を示す「都市構
造再編プログラム(仮称)」の策定を推進する。このプログラムに基づき
都市基盤の整備など各種施策を総合的に推進する。
[街路沿道の土地の高度利用と民間建設投資の促進]
・都市計画道路の整備によって誘発・促進される土地の高度利用と民間建
設投資を支援するため、民間都市開発推進機構の融通業務及び都市開発資
金貸付制度の拡充・活用を図る。
[民間都市開発推進機構の積極的活用]
・土地の高度利用・市街地の活性化等を積極的に進めるため、民間都市開
発推進機構を積極的に活用するものとする。
1)財政投融資を適切に活用し、融通業務(民間都市開発事業者に対する
日本開発銀行等を通じた長期低利資金の貸付け)を積極的に活用するため、
土地の高度利用に資する一定の場合につき面積要件の大幅な緩和を図る。
2)土地取得・譲渡業務で取得した土地を含め、民間都市開発推進機構自
らが民間都市開発事業・市街地再開発事業等に積極的に参加して事業の推
進を図る。
3)土地取得・譲渡業務については、当面、現在の政府保証枠(残額約
7,500億円)を活用して、引き続き積極的に取得を進めるとともに、取得し
た土地の事業化を推進する方策の充実を検討する.なお、取得期限(平成
10年度末)後のあり方について保証枠の規模を含め十分な検討を行う。
4)取得した土地を証券化等(法制化が予定されているSPC(特別目的
会社)の活用や土地信託の受益権の小口化等)によって市場流通させる方
策を検討する。
[容積率・斜線制限等の緩和や日影規制が適用除外となる「構想住居誘導地
区」制度の積極的活用の推進]
・本年9月に施行された「高層住居誘導地区」制度について、早期の地区
指定に向けて、地方公共団体の積極的な取り組みを推進する。
[密集市街地の再整備の推進]
・老朽木造住宅密集地域における防災性の向上を図るため、本年5月に公
布された密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律を踏まえ、
老朽住宅の除去及び建替え、公共施設等の整備などを計画的に推進する。
[容積率制限の複数敷地への一体的適用]
・既存建築物の建替えや、道路を含んだ区域など、一団地の総合的設計制
度について積極的活用等を図る。
[市街地再開発事業等における、民間のノウハウの活用]
・市街地再開発事業等において、民間のノウハウを活用する観点から、業
務代行方式の積極的な活用の推進を図る。
[住宅・都市整備公団の活用]
・住宅・都市整備公団において、平成9年6月の閣議決定の方針を踏まえ、
総合的な都市整備を推進する。
[生活環境の改善のための都市のリノべーシヨン]
・現在逼迫している都市開発等のための長期・低利の金融市場を補完し、
都心居住、工場跡地の利用転換等都市の再構築を推進するため、財政投融
資を適切に活用し、臨時的措置として、日本開発銀行等の融資を拡充する。
また、事業の円滑な推進を図るため、住宅・都市整備公団の活用を図る。
[行き過ぎた宅地開発等指導要綱の是正等]
・開発許可をはじめとする各種手続の迅速化を図るとともに、宅地開発等
指導要綱の実態について速やかに調査を行い、その結果に基づき是正指導
の徹底を図る。
[土地収用の積極的活用]
・道路等のインフラ整備等の収用適格事業については、事業確定後速やか
に事業認定の申請を行う等土地収用手続の積極的活用を図るとともに、事
業認定の事務処理の迅速・円滑化を図る。
[農地転用の円滑化]
・農業振興地域等で、原則転用不許可となっている農地であっても、集落
に接続するなどの要件を備えるもののほか、農村活性化土地利用構想等を
活用する場合には、転用を許可する。
・農地転用したい者が円滑に転用できるよう、農地転用及び農用地区域の
除外について、透明化・簡素化・迅速化の措置を講ずるとともに、これを
マニュアル化し、円滑な農地転用を図る。
・農地転用の許可権限については、4ha以下のものは都道府県知事へ早
急に移管する。また、市街化区域内にある農地の転用届出について、添付
資料の簡素化等を進め、円滑な運用に努める。
[市街化区域及び市街化調整区域の線引きの機動的な見直しの推進]
・線引きについて、5年ごとの国勢調査等を踏まえた見直しに加え、その
間において、必要に応じ、随時の見直しを機動的に推進するとともに、市
街化調整区域における開発許可の弾力的運用を図る。
[郊外型住宅等の取得促進]
・週末居住用の郊外型住宅、退職後の本格居住のために先行的に確保する
住宅等の多様な住宅ニーズに対応し投資を促進するため、財政投融資を適
切に活用しつつ、臨時的措置として、現在居住している住宅のほかに取得
する住宅に対する住宅金融公庫融資の拡充(地域限定要件の撤廃及び面積
要件の緩和)を図る。
・国有林野内の適地について、要望のある民間事業者、地方公共団体等に
提供することにより、セカンドハウス、福利厚生施設等の建設を促推する。
・市街化調整区域において、市町村が地区計画を作成した場合には、この
計画に沿った開発行為を許可する都市計画法上の特例制度の創設、集落地
域整備法の積極的活用等により、郊外型住宅用の宅地造成・住宅建設を戸
数の多少に関わりなく推進する。
・都市生活者が週末を過ごす自然環境調和型住宅(ガーデニングハウス)
の整備を促進するため、フィージビリティ・スタディの実施、住宅の仕様・
・部財の標準化による低コスト化、輸入住宅の導入等を推進する。
[住宅金融公庫融資の活用]
・住宅金融公庫の融資について、財政投融資を適切に活用し、臨時的措置
として、特別割増融資額の引上げ(800万円→1000万円)、返済能力の十分
な者に対する融資限度割合(現行80%)の撤廃を図る。
・住宅投資を促進するため、財政投融資を適切に活用し、臨時的に、マイ
ホーム新築等貸付の受付期間を長規化(原則2週間→4週間程度)すると
ともに、バリアフリー化、断熱構造化のための住宅改良貸付の受付期間を
通年化する。
[定期借家権の導入]
・良質の賃貸住宅の供給を促進する観点から、定期借家権の導入を促進す
る.
[借地方式等による公共事業の推進]
・現在、都市公園事業について実施されている借地方式を一層促進する。
・公営住宅等の供給に当たり、借地による住宅の供給や、借地による供給
よりも効率的な住宅整備方策として民間住宅の借上げ(転貸)方式による
供給を推進する。
・道路、河川のように将来にわたり公共の用に供される施設について、支
障のない限り借地権等の活用を図る.
[建築規制体系の見直し]
・仕様を詳細に規定する現行の建築基準(仕様規定)を、一定の性能さえ満
たせば具体の仕様の如何を問わないこととする方法を導入(性能規定化)
することにより、設計における選択の自由を拡大し、建築市湯の活性化、
建築コストの低減を進めるため、次期通常国会に建築基準法の一部改正法
案を提出する。
・行政が行っている建築確認・検査業務について、民間機関が行える途を
開くことにより、民間活力の活用、検査体制の充実、手続の迅速化を図る
ため、次期通常国会に建築基準法の一部改正法案を提出する。
[国土利用計画法に基づく土地取引届出制度の事後届出制への移行]
・国土利用計画法の届出勧告制については、原則として、事後届出に移行
するなど制度の改善を行うこととし、所要の法律案を次期通常国会に提出
する.事後届出とした場合、利用目的に関する極めて不適切な土地取引に
対しては適切な対応を行うことができることとするが、個々の取引価格に
ついては勧告等の措置は行わないこととする。また、地価水準の上昇の状
況に応じ、機動的に事前届出とすることができることとする。
[工業(場)等制限法による規制の抜本的見直し]
・工業(場)等制限法の工場跡地に関する制限の緩和、除外業種の拡大等
について、平成10年1月中に前倒し措置を行う。さらに、制度の枠組み
のあり方及びその手法の妥当性についての抜本的見直しの検討については、
平成10年夏までに中間的な論点整理を行い、首都圏基本計画及び近畿圏
基本整備計画が策定される平成10年度中に結論を得る。
[臨港地区の迅速かつ的確な見直しの促進]
・港湾機能の沖合展開等により臨港地区としての性格が低減・消失した地
域の土地の有効利用を図るため、地方公共団体に対して、臨港地区の指定・
変更等のための基準を明確化した平成9年3月の運輸省・建設省共同通達
の周知徹底を行い、臨港地区の見直しを迅速に進める。
[工場立地法の見直し]
・地方公共団体が、地域の実情に応じた緑地面積率の設定を可能にするこ
と等により、緑地の整備や工場施設のリニユーアルが促進されるよう、工
場立地法の改正を行う。
[不良債権の償却等を促進するための赤字会社の指名排除扱いの是正]
・早期かつ計画的な不良債権の償却等を促進するため、国、地方公共団体
において、単に赤字決算であることのみをもって直ちに指名から除外しな
い取扱いを徹底する。このため、先般、建設省・自治省連名で通達を発出
したところであり、今後、赤字決算となった建設業者の指名の取り扱いにつ
いて実態調査を行うとともに、通達の趣旨の徹底を図る。
[国鉄清算事業団用地の売却促進]
・地方公共団体による先行取得、購入者に対する政策金融の適切な活用、
規制緩和措置の周知徹底、郵便入札売却・公募型売却の対象拡大により、
国鉄清算事業団用地の売却促進を図る。
[高速自動車国道の早期施行命令]
・昨年末の国土開発幹線自動車道建設審議会に係る新たな整備計画区間に
ついて、調査が完了し地元の協力体制が整ったところから早急に施行命令
を出し、円滑な着工を図る。
[土地の有効活用の促進]
・将来の公共用地の需要に備えて、公有地拡大法等による公有地の先行取
得を適切に進める。
[不動産の証券化等]
・不動産・債権等の資産流動化促進のための特別目的会社(SPC)に係
る法案を次期通常国会に提出する。
・債権譲渡の第三者対抗要件の具備を簡素化し、債権流動化の促進を図る
べく、特例法案を次期通常国会に提出する。
・不動産特定共同事業の推進方策を拡充する。
[虫喰い・不整形状態で低未利用となっている担保士地の有効利用]
・虫喰い・不整形状態で低未利用となっている担保土地の有効利用を図る
ため、敷地整序型土地区画整理事業亭の実施により、土地の集約化・整形
化を推進する.
[担保土地の国民生活に密着した公共的な用地需要への活用]
・国民生活に密着した公共的な用地需要に応えるべく、住宅金融債権管理
機構等の保有する担保土地の国・地方における積極的な活用を促す。
[担保不動産の情報化の推進]
・当面、債権回収機関において、担保不動産について迅速なデータベース
化を進める等、担保不動産の情報化を推進する。