クリプトスポリジウムは、人間や哺乳動物に寄生する耐塩素性の病原性原虫であり、
人間が感染すると下痢や腹痛等の症状を引き起こします。 平成8年夏に埼玉県越生町において水道水を原因とするクリプトスポリジウム感染症が発生したことから、
平成9年2月に(社)日本下水道協会内に「下水道におけるクリプトスポリジウム検討委員会
(委員長:金子光美・摂南大学教授)」が設置され、 約3年にわたり、国内外の文献調査や土木研究所における調査結果を基に、
下水処理におけるクリプトスポリジウムの挙動や下水道におけるクリプトスポリジウムの対応等について
種々の観点から検討を行い、今般、別添のとおり最終報告がとりまとめられましたのでお知らせします。
検討の主な内容は以下のとおりです。
■下水及び下水処理水中のクリプトスポリジウム濃度の実態
- 下水処理水を再利用している下水処理場(全国67ヶ所)において、 流入下水及び処理水の濃度測定を行ったところ、
検出された処理場は全体の1割程度で、 その濃度範囲は流入下水が8〜50個/L、処理水で0.05〜1.6個/Lだった。
■下水・汚泥処理プロセスのクリプトスポリジウム除去効果の評価
- 下水の処理方法について、標準活性汚泥法では下水中のクリプトスポリジウムを約99%除去できる。
流入下水や生物反応槽に凝集剤を添加することにより、クリプトスポリジウムの除去率はさらに向上する。
- 処理水の砂ろ過は、クリプトスポリジウム除去に効果的である。
- 処理水の消毒方法について、塩素消毒によるクリプトスポリジウムの不活化は困難であるが、
紫外線消毒はクリプトスポリジウムの不活化効果を高める。
- 汚泥の処理方法について、焼却によりクリプトスポリジウムは死滅する。 十分に発酵を進行させたコンポストではクリプトスポリジウムの大半は死滅する。
嫌気性消化においてもクリプトスポリジウムの不活化が見込まれる。
■下水道におけるクリプトスポリジウムヘの対応について
下水道管理者の対応方法について、平常時と異常時を区別して考え方を整理した。
特に集団感染発生時等の異常時においては高濃度のクリプトスポリジウムが下水処理場に流入することが予想され、
下水道管理者は以下の対応が必要である。
- 処理水の放流先の安全性を確保するため、 凝集剤の添加等の緊急的な追加処理によりクリプトスポリジウムを除去する。
- その際発生した汚泥処理については十分注意が必要で 焼却、コンポスト、生石灰添加等の熱処理を基本とする。
- 市町村長が設置する対策本部のもとに関係部局が参画し、情報交換、 感染防止のため発生源対策も含めた総合的対策を行う必要がある。
- 処理水再利用の場合は、必要に応じて、供給の停止、利用制限等の措置をとる。
- 下水道従業者の安全の確保を図るため、マスクの着用、手袋の着装、作業後の手洗い等を徹底する。
(検討委員会名簿)
委員長 |
摂南大学工学部教授 |
金子 光美 |
委 員 |
大阪市立大学医学部助教授 |
井関 基弘 |
東北大学大学院工学研究科教授 |
大村 達夫 |
麻布大学環境保健学部教授 |
平田 強 |
建設省土木研究所下水道部長 |
佐藤 和明 |
日本下水道事業団技術開発部長 |
中村 栄一 |
東京都下水道局森ヶ崎水処理センター所長 |
地田 修一 |
横浜市下水道局管理部工場排水指導課長 |
千野 雅男 |
京都市下水道局水質試験所長 |
山内 啓二 |
特別委員 |
建設省下水道部下水道企画課下水道事業調整官 |
栗原 秀人 |
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