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T 諮問及び審議の経過


□第50回都市計画中央審議会(平成8年1月23日)諮問第21号

「安心で豊かな都市生活を過ごせる都市交通及び市街地の整備のあり方並びにその推進方策は、いかにあるべきか」

<検討事項>

  1. 安心で豊かな都市生活の実現に向けた市街地整備のあり方は、いかにあるべきか。
  2. 安全で快適な都市交通のあり方とその実現に向けた都市交通の整備のあり方は、いかにあるべきか。
  3. 市街地及び都市内道路の円滑で効果的な整備推進方策は、いかにあるべきか。

□都市交通・市街地整備部会における審議の経過

・第1回(平成8年2月26日)
都市交通及び市街地整備の現状と課題について
・第2回(平成8年4月16日)
検討事項Aに沿った審議内容
・第3回(平成8年6月5日)
検討事項Aに沿った審議内容
・第4回(平成8年7月22日)
検討事項@に沿った審議内容
・第5回(平成8年10月1日)
検討事項@に沿った審議内容
・第6回(平成8年12月5日)
検討事項Bに沿った審議内容
・第7回(平成9年1月23日)
検討事項Bに沿った審議内容
・第8回(平成9年3月18日)
部会報告素案の審議
・第9回(平成9年5月7日)
部会報告案とりまとめ
・地方懇談会
部会委員が地域の有識者と意見交換を行う地方懇談会を、水戸市(平 成8年5月21日)と広島市(平成8年9月11日)において開催

□第52回都市計画中央審議会(平成9年6月9日)

「安心で豊かな都市生活を過ごせる都市交通及び市街地の整備のあり方並びにその推進方策は、いかにあるべきか」についての答申

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U 答申の趣旨と概要


[答申の趣旨]

 本答申は、変革の時代にあたり、市街地整備及び都市交通の現状と課題について全般的な検討を行い、そのあり方と改革の方向及び整備推進方策を提言したもの。

[答申の概要]

T.都市をめぐる社会経済の動向と都市整備の基本戦略

 都市をめぐる社会経済の潮流は、「都市化社会」から、国民の大多数が都市に住み産業・文化等の活動が都市を共有の場として展開する成熟した「都市型社会」への転換期にあり、都市整備が目指すべき方向を転換することが必要と認識。
 都市整備の方向性として、以下の3点に整理。

1)量的拡大から質的充実へ

 新市街地の整備を中心とする「量的拡大型」の都市整備から、既成市街地のストックを活用した住宅・社会資本の再充実を中心とする「質的充実型」の都市整備に、施策の重点を移行することが必要。

2)連携と交流

 個々の都市が自画像としての将来像を描き都市整備を進めると同時に、都市と都市、都市と周辺地域が連携することによる活力ある都市圏の形成が必要。

3)公民の協同と役割分担

 公民がそれぞれの役割と責任を分担しつつ、協同して都市整備を推進。都市構造・広域交通・既成市街地再構築等に関わるものは、住民の意見を求めつつ行政が責任を持って推進する「行政提案型」が必要。地区スケールの整備は、住民の主体的参加に行政が支援する「住民提案型」の公民協同方式を中心に進めることが重要。
さらに、都市整備を担う国、地方自治体及び住民に対し都市整備の進め方の改革を提言。具体的には、以下の4点を提示。

1)ビジョンの策定と実現

 都市や地域の将来像をビジョンとして明らかにし、実現にあたることが必要。行政と市民・住民が意見交換し共有できるビジョンを策定するべき。「市町村の都市計画に関する基本方針」と「整備、開発又は保全の方針」を基本的に想定。

2)既存ストックの活用の重視

 良質な社会資本ストックの形成に努めつつ、既存ストックの有効活用により良好な市街地の形成に努めるべき。このため、既成市街地の再整備と既存道路の空間の再構築を重点的に進めるべき。

3)総合的・効果的な事業の展開

 事業の重点的実施、制度の柔軟な運用、関連施策の一体的実施等により、効率的・効果的に都市整備を進めるべき。

4)地方分権型社会における地域の選択と国の支援

 各地域や都市が責任をもって将来像を選択することが重要。国は、国家的見地、例えば国土構造の転換、地方拠点都市や業務核都市の整備、地球環境への負荷の軽減等の観点から、目指すべき都市の方向を想定し、その実現に向けて、財政的、制度的な面で重点的に支援すべき。

U.目指すべき都市のあり方

施策検討の基本として、都市に求められる機能及び都市の将来像を想定。

1)都市に求められる機能

 都市に求められる機能を性能面から、@安全、A環境との調和、B活力、C個性と魅力、D多世代の安心と便利、E人と情報の交流の6点に整理。

2)都市の将来像

 都市の規模や特性の観点から大都市圏と地方都市圏に分けて想定。都市の水平的ネットワークによる国土構造を構築するため、拠点都市圏として地方中枢・地方中核都市を育成・発展させることが必要。地方中小都市は、地域の核として相互に連携・交流。また、大都市圏は、安全性や環境の改善を進めつつ多核型の都市構造に変革。

V.市街地整備のあり方及び推進方策

市街地整備のあり方及び推進方策を提示。

1)総合的な市街地整備のあり方

 市街地整備の重点を、新市街地の整備から既成市街地の再生・再構築に移行。
 既成市街地の再整備については、地方都市の中心市街地の再構築、密集市街地の整備、大都市の中心市街地の再整備を柱に推進。
 新市街地の整備については、鉄道新線沿線の宅地供給、拠点市街地の整備、田園市街地の整備等に絞り込み。

2)市街地整備推進の基本的視点

 市街地整備を進める視点を、@公民の合意プロセスの重視、A整備主体や負担に関するルールの確立、B整備手法の充実と改善、C関連事業の重層的実施と施策連携、D広域レベルと地区レベルの調和、E地域のマスタープランの充実、の6点に整理。

3)具体的施策と推進方策

 総合的な市街地整備を進めるためのツールとして、@公民協同のまちづくりシステムの確立、A市街地整備主体の充実、B市街地整備手法の多様化・柔軟化、C土地利用計画との連携・連動方策の確立、D福祉・教育等生活関連施策との連携、E整備プログラムに基づく実施、Fアーバンデザイン手法の導入、G環境・エネルギー対策等の新しい技術・システムの導入、の8点に整理。

W. 都市交通のあり方と整備推進方策

都市交通の再整備の観点から都市交通のあり方と整備推進方策を提示。

1)都市交通施策の基本的方向性

 都市交通施策の方向性として、@利用者と生活者の発想で都市交通を再点検すること、及びA都市交通のサービス水準と負担の関係明確化、B施策の総合的展開、C広域レベルと都市・地区レベルの調和、の4点に整理。

2)総合的な都市交通のあり方

 歩行者、公共交通、自動車等交通手段別のあり方及び地区レベルと沿道市街地のあり方を提言。
 このなかで、歩行者・自転車交通ネットワークを連続的に形成するべきこと、公共交通を「都市の装置」として活用するべきこと、環状道路をはじめとする主要幹線道路の整備による都市内道路網の形成を進めるとともに自動車交通を適正化するべきこと、中心市街地等の地区交通を再構築するべきこと、幹線道路と沿道市街地を一体的に整備するべきこと等を具体的に提言。

3)具体的施策と推進方策

 総合都市交通計画の充実、及び@交通結節点の立体的整備、A歩行者動線の立体的整備、B公共交通の成立基盤整備の推進、C都市計画道路整備プログラムの策定、D都市内道路と沿道地域の一体的整備の推進、E都市内物流システムの改善、F地区内道路の計画と整備、G地区レベルの公共的施設の整備と管理、Hパッケージアプローチの導入、I交通実験・試行の導入、の10項目の推進方策を提言。