3.線引き制度及び開発許可制度の見直し
(1)線引き制度の弾力的な運用
線引き制度それ自体については維持すべきとする意見が多かったものの、線引き制度を適用するか否かについて地域の判断に委ねるべきとする見解が多数を占めた。 |
<制度の存置>
・線引き制度を維持することに賛成。(個人、事業関係者、全国商工会連合会、全国商店街振興組合連合会、福岡県、徳島県、千葉市、長野市、春日部市、塩竃市)
・線引きは、ゾーニングのガイドラインとして、都道府県マスタープランと関連させつつ維持することが望ましい。(有識者)
・線引き制度を廃止すべき。(個人、事業関係者)
・市街化調整区域は不要。(個人)
・線引き制度自体の全面的な見直しが必要。(呉市)
<選択制の導入>
・線引きするか否かを都道府県が地域の実情に応じて定めることに賛成。(個人、不動産協会、経済団体連合会、全国商工会連合会、全国商店街振興組合連合会、全国中小企業団体中央会、福島県、宮崎県)
・線引きが可能な都市計画区域が拡大されることになるので慎重な検討が必要。(全国宅地建物 取引業協会連合会)
線引きするかどうかを原則として都道府県の判断に委ねつつ、一定の都市計画区域について引き続き線引きすることを義務付けるべきであるとの意見が見られたが、その範囲については見解が分かれた。 |
<線引きの義務づけ範囲>
・一定の都市計画区域について線引きを義務付けることに賛成(全国商工会連合会、全国商店街振興組合連合会、不動産協会、埼玉県)。指定都市については、法律上線引きを義務付けとするべき(札幌市、仙台市、福岡市、北九州市)。
・三大都市圏の既成市街地等については線引きを引き続き義務付けるとしているが、各地域で土地利用の状況も異なり、弾力的に考えるべき。(大阪府農業会議、大阪府、奈良県)
・政令附則第4条3号の密接関連区域については、県が定め得ることとすべき。(兵庫県)
<線引きの要否の基準>
・線引きの要否の客観的なメルクマールを示すべき。(個人、事業者、福島県、三重県、広島県、福岡県、京都府、名古屋市)
・非線引きを選択する場合においては、営農環境の悪化等を防ぐため、開発に対する一定の考え方を示した上で行うこととするべき。(大阪府農業会議)
・中心部の空洞化や無秩序な市街化を防ぐため、無条件に線引きを廃止すべきではない。(日本都市計画学会九州支部)
市街化調整区域での開発許可基準について、当該区域内の実情に即した弾力的な設定が可能となるよう制度を拡充すべきであるとの意見が多数出された一方、開発許可基準の設定の仕方によっては、都道府県間で不公平が生ずる等の反対意見も見られた。 |
<賛成意見>
・区域内の状況に応じて開発許可の基準を弾力的に変更することを可能とすることに賛成。(有識者、経済団体連合会、青森県、岩手県、島根県、岡山県、広島市、川崎市、神戸市、北九州市、与野市、鴻巣市)
・開発許可の基準を予め条例で明示する等、透明な運用を行い得る制度とすることに賛成。(不動産協会、埼玉県、須賀川市)
<慎重意見>
・市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域としての基本を守るべき。(宮城県)
・開発許可基準を緩和するのは限定的なケースに限るべき。(大宮市、浦和市、塩竈市、会津若松市)
・市街化調整区域において許容する開発行為については、無秩序な開発を防止する観点から、条例で明示するのではなく、法定化して一定の歯止めをかけるべき(大阪府農業会議)。
・条例により、エリアごとに開発許可基準を異なったものとすることは、市街化調整区域の性格を分かつことになり、困難。(栃木県、千葉県)
・開発許可の基準変更を条例等に委ねることにより、都道府県間の不公平が生じるおそれがある。(日本チェーンストア協会)
・条例策定の裁量に一定の枠を設けるべき。(群馬県、埼玉県、福岡市、浦和市)
・開発の必要性の判断や妥当な規模等について農業側との調整を図った上で基準を定めるべき(東京都農業会議)。
・市街化調整区域内の開発許可の立地基準を緩和するのは条例によるのでなく、地区計画で対応すべき。(山梨県、長野県、奈良県、福井県)
<制度提案>
・市街化調整区域を開発を認めない区域と一定の開発を認める区域とに二分する等、市街化区域と市街化調整区域の区分について、段階的な土地利用規制が可能となるようより詳細な区分を設けるべき。(個人、ランドスケープコンサルタンツ協会、全国農業会議所、大阪府農業会議、日本チェーンストア協会、建築業協会、日本建設業団体連合会、愛媛県、徳島県、山形県、茨城県、和歌山県、岡山県、京都市、熊谷市)
・計画開発の誘導区域としての市街化調整区域の機能を明らかにするために、一部の保存すべき地域を除き、その名称を「開発保留区域」に変更するべき。(都市開発協会)
・市街化調整区域のうち幹線道路沿線や市街化区域隣接部等の開発圧力が高い区域においては、用途地域に類する地域地区を設定し、土地利用コントロールを行うこととするべき。(岡山県)
・開発を許容する地区の考え方については、マスタープランに記述すべき。(埼玉県)
・開発許可権者による条例は地域の指定手段としては馴染まないため、都市計画決定権者が開発許可基準の内容を定めることができることとするべき。(東京都、山梨県)
・法第34条第10号に該当する開発行為については、条例による限定列挙に改めるべき。(個人)
<その他>
・市街化調整区域における開発許可基準を緩和するべき。(事業関係者、日本ショッピングセンター協会)
・市街化調整区域の規制緩和は反対。(個人)
・線引きの内容を経済社会の変化を勘案し、定期的に見直すことを明確にするべき。(経済団体連合会)
・市街化調整区域において開発が必要な場合には、線引きを弾力的に見直し、市街化区域への編入を行うべき(建築業協会、日本建設業団体連合会、全国商工会連合会、日本ショッピングセンター協会、全国宅地建物取引業協会連合会)
・農業調整のルールを簡素化し、柔軟な対応が図られるべき。(盛岡市)
(2)「非」線引き都市計画区域における規制のあり方
「非」線引き都市計画区域についても、当該区域の健全な発展を図る観点から立地が望ましくない建築物を特定し、立地調整を図ることが可能な制度を創設すべきとの意見が数多く見られた。 |
・非線引き都市計画区域においてはある程度厳しい立地規制を適用することとするべき。(個人、日本商工会議所、全国商工会連合会、全国商店街振興組合連合会、山口県、妻沼町)
・非線引き都市計画区域は縮小又は廃止の方向で検討すべき。(有識者、全国商工会連合会、全国商店街振興組合連合会)
・非線引き都市計画区域については、立地規制を行うことを前提とし、地域にとって必要な開発が出てきた場合には柔軟に対応するという仕組みとするべき。(個人、事業関係者、福岡県)
・非線引き都市計画区域においても、地域の実情に応じ段階的に開発規制が行えるようにするべき。(青森県)
・非線引き都市計画区域における開発抑制方策として、新しいゾーニング制度の創設も検討するべき。(個人、日本都市計画学会、日本造園学会、福井県)
・線引きをやめる場合には、当該区域における開発行為についてマスタープラン適合を義務付ける等、相当の担保措置が必要。(日本建築学会)
・非線引き白地区域においては、地域地区等(用途地域、特別用途地区、保全系の地域地区、地区計画)の積極的な活用を図るべき。(日本都市計画学会、長崎県、三重県、福井県、大阪府、愛媛県、気仙沼市、古川市)
・市街化調整区域を単に活性化するために非線引きとするのは避けるべき。(個人)
(3)開発許可の技術的基準における地域特性の反映
開発許可の技術的基準については、条例により、基準を強化又は付加できる範囲が法令上予め明確化されていることが必要であるとの観点からの意見が多い。 |
<条例による基準の強化・付加・緩和に対する賛否>
・技術的基準について、条例による強化又は付加を許容することに賛成。(個人、有識者、事業関係者、日本建築学会、日本商工会議所、全国商工会連合会、徳島県、三重県、埼玉県、岡山県、横浜市、広島市、古川市、越谷市、北本市、鳩山町、鷲沼町)
・技術的基準について、条例による強化又は付加を許容することに反対。(日本ショッピングセンター協会、不動産協会)
・技術的基準の条例への委任については、強化又は付加できる項目を限定する等、法令により一定の枠を設けるべき。(個人、不動産協会、経済団体連合会、福岡市)
・安全に関する基準等全国一律で定めることが適切な事項については、国が考え方や例示等をガイドラインとして示すべき。(個人、埼玉県、広島市)
・開発負担の増大やコストアップ要因となるような基準の強化・付加がなされないようにするべき。(全国宅地建物取引業協会連合会)
・条例等で基準を強化・付加する場合は自治体の開発指導要綱を廃止するなどダブルスタンダードとならないようにすべき。(住宅生産団体連合会)
・状況に応じて開発許可の基準の変更が可能になると、思惑が働き、地価高騰の要因となる懸念があるので慎重に検討すべき。(個人)
・開発許可の基準づくりは基礎自治体に委ねるべき。(有識者)
・基準の条例化にあたっては、地域特性等に応じて弾力的な運用が可能な基準とすべき。(庄原市、廿日市市)
・開発許可の技術的基準を地域特性に応じて緩和することも積極的に行うべき。(経済団体連合会)
<制度提案>
・災害危険区域、地滑り防止区域、急傾斜地危険区域などについては、自己の居住の用に供する住宅を含め、原則、開発不許可とすべき。(日本生態系協会)
・法第33条第9号に関して環境問題への配慮の強化を図るべき。(ランドスケープコンサルタンツ協会)
・パブリックコメントなどの手続を経て規則等で位置づけた場合は、開発基準として適用できることとすべき。(茨木市)
(4)その他線引き・開発許可制度全般
用途地域外での容積率・建ぺい率の数値を引き下げること、既存宅地確認制度を廃止すること等により、市街化調整区域、「非」線引き都市計画区域内の用途未指定地域(非線引き白地区域)における建築・開発行為等を計画的に整序すべきであるとの意見が見られた。 |
<制度提案>
・用途地域外(市街化調整区域及び非線引き白地区域)における建ぺい率、容積率の基準を引き下げるべき(日本都市計画学会)。この場合、地区計画等でコントロールするときに限り容積率や建ぺい率を緩和できるようにするべき(東京都農業会議、埼玉県)。
・既存宅地制度を廃止すべき。(個人、日本都市計画学会、茨城県、北九州市)
・市街化調整区域における開発許可の適用除外、例外許可が多すぎるため、公益上必要な建築物を目的とする開発行為も開発行為の対象に加える等、許可基準を整理すべき。(個人、日本商工会議所、茨城県、横浜市、川崎市)
・露天駐車場、資材置き場等の建築行為を伴わない区画形質の変更についても、規制ができるようにするべき。(個人、東京都農業会議、岡山県、広島市、神戸市)
<その他>
・開発許可の適用対象外とされている一定規模未満の開発行為についても開発許可の対象とするなど、その対象を拡大するべき。(日本建築学会、日本都市計画家協会、日本商工会議所)
・線引きの決定権限を市町村に委譲する、線引きに際して市町村の意見を十分に聴くこととするなど、線引き制度における市町村の役割を拡大するべき。(全国市長会、横浜市)
・過大な開発負担金を求める等の行き過ぎた宅地開発等指導要綱等については、その是正措置を図るべき。(不動産協会、建築業協会、日本建設業団体連合会、全国宅地建物取引業協会連合会)
・線引きの運用が近隣地域で極端に異なる等の事態を防ぐため、県間の協議ができるようにするべき。(福岡県)
・開発審査会に付議する項目を減らし、現状に即した施策を可能とすべき。(個人)
1.都道府県の都市計画に関するマスタープランの創設
2.都市計画区域外における開発行為及び建築行為についての考え方
3.線引き制度及び開発許可制度の見直し
4.既成市街地再整備のための新たな制度
5.環境問題等への対応のための制度の強化
6.都市計画の決定システムの合理化