5.環境問題等への対応のための制度の強化

(1)各種の社会的課題に対する考え方のマスタープランへの明記    


 各種の社会的課題をマスタープランに明記することについては、賛成する意見も見られたが、総合計画等との役割分担が不明確になる等の理由から、慎重な意見も多数見られた。   

<賛成、他に盛り込むべき事項>

・各種の社会的課題をマスタープランに明記することに賛成。(個人、有識者、事業関係者、日本商工会議所、不動産協会、経済団体連合会、全国中小企業団体中央会、広島市、福岡市、越谷市、塩竈市)

・地球温暖化対策、オゾン対策等、地球環境問題に関する事項についても、都市レベルでの可能な取り組み方針をマスタープランにおいて明らかにするべき。(個人、事業関係者、岡山県)

・マスタープランにおいては、環境負荷の低減、農地の多面的機能の確保等の視点を盛り込むべき。(日本生態系協会)

・都市計画区域内の農地はできる限り保存すべき都市内緑地として、都市計画マスタープラン等に位置付けるべき。(都市計画学会九州支部)

<慎重意見>

・各種の社会的課題をマスタープランに記述することについては、より広範な内容を定めている総合計画や、福祉のまちづくり条例等との役割分担が不明確となり、仮に記述したとしても抽象論、一般論になるため、必要性が感じられない。(徳島県、山口県、名古屋市、北九州市)

・盛り込むべき事項や程度については、慎重な検討が必要。(岩手県、横浜市)

・必要があれば任意に記載することとし、法律による義務付けはするべきではない。(青森県、愛媛県)

・環境負荷の低減等の事項を明記する場合には、関係省庁と調整を図った上で、記載事項を検討するべき。(埼玉県)

・記述する事項はガイドライン程度にとどめるべき。(京都市)

・環境保全については、マスタープランのみならず、法そのものにその理念等を明記すべき。 (個人)

(2)広く緑地を保全・創出するための制度の強化    


 緑地を保全・創出することを目的とする制度の強化に対する賛成意見が多い一方で、過度な開発規制につながる可能性があることに対する懸念も示された。また、税財政面での制度的手当ての充実を望む意見も多く見られた。                       

<賛成>

・都市内の緑地を保全・創出するための制度の創設に賛成。(個人、有識者、事業関係者、日本商工会議所、全国農業会議所、大阪府農業会議、ランドスケープコンサルタンツ協会、全国中小企業団体中央会、川崎市、福岡市、多賀城市)

<制度構成に係る提案>

・行政側から買収に入れる仕組みなど、機動的に対応できる買取り制度を創設・整備するべき。(ランドスケープコンサルタンツ協会、福島県、京都市、北九州市)

・風致地区を拡充して、生態環境、防災、水環境等の公益的観点も取り入れた制度とするべき。(日本建築学会、日本都市計画家協会)

・風致地区等を見直して土地利用保全系制度の一元化を図り、市町村主体の制度を構築するべき。(徳島県)

・緑地の保全等に関する既存制度の整理統合が必要。(経済団体連合会、愛媛県)

・農地も対象とした制度とするべき。(福岡県)

・都道府県を越えた意味を持つ緑地については、例えば国営緑地の創設などにより、国が主体となって積極的に整備・保全を進めていく制度を検討すべき。(個人)

・開発許可制度の改革により、自然を損傷し環境負荷を増大させる土地利用行為に対して、その影響を軽減し、代替措置を講じるための条件付与のシステムを導入すべき。(都市計画家協会、日本建築学会)

・農地、林地の保全を含めたエコロジー系の地区計画を導入すべき。(埼玉県)

・区域区分制度の一環として保全区域を制度化すべき。(有識者)

<税財政面での手当ての充実>

・緑地の保全・創出の実効性を高めるため税制や財源の充実を図るべき。(有識者、事業関係者、日本都市計画家協会、ランドスケープコンサルタンツ協会、全国市長会、全国農業会議所、不動産協会、大阪府農業会議、兵庫県、山形県、島根県、京都市、岩手県、三重県、埼玉県、広島県、広島市、川崎市、福岡市、北九州市、浦和市、与野市、大宮市、越谷市、多賀城市)

・平地林や森林等も含めた緑地保全のための税制度等が必要。(有識者、全国農業会議所、長野市)

・地方公共団体の財政に過度の負担がかからない制度とするよう配慮するべき。(千葉市)

・緑地の保全・創出は、税制面での優遇措置など民間へのインセンティブを付与する形で行われるべき。(日本チェーンストア協会、建築業協会、日本建設業団体連合会、経済団体連合会、個人、事業関係者、埼玉県、全国住宅宅地協会連合会)

・管理費助成や税減免など規制に見合う地権者への措置についても検討するべき。(茨城県、個人、事業関係者、日本都市計画学会九州支部)

<慎重意見>

・風致地区、緑地保全地区、生産緑地地区が現行制度としてあり、新たな制度化は必要ない。(福島県)

・広範囲にわたって開発規制や買取り協議等を行うこととする制度の創設に反対。(日本ショッピングセンター協会)

・過度な開発規制を伴わないよう留意するべき。(不動産協会、日本ショッピングセンター協会)

(3)廃棄物の処理施設や処分場の積極的な都市計画決定    

 
 廃棄物処理施設や都市計画で位置付けようとする取り組みは評価されているものの、民間施設である産廃施設を都市計画のマスタープランに明示し、都市計画決定することに対する慎重意見が大勢を占めた。また、広域的な観点からの取り組み、環境部局との連携を求める意見も出された。                                         

<廃棄物処理施設等の都市計画決定>

・廃棄物の処理施設や処分場の積極的な都市計画決定に賛成。(日本造園学会、経済団体連合会、日本商工会議所、住宅生産団体連合会、全国中小企業団体中央会、岩手県、横浜市)

・民間が整備主体となる廃棄物処理施設等を都市計画決定することは困難。(山形県、徳島県、三重県、石川県、福岡県、札幌市、仙台市、千葉市、広島市、福岡市、北九州市)

・都市圏を超える廃棄物処理施設等を都市計画決定することは困難。(個人、札幌市)

・産業廃棄物処理施設を都市計画で位置づけると、設置までかなりの年数がかかることになり、慎重に検討すべき。(宮城県、栃木県)

<廃棄物処理施設等の整備方針のマスタープランへの明記>

・総論賛成、各論反対を考えると、整備方針をマスタープランに明記しても合意形成の手段としての効果が薄い。(徳島県)

・概ねの位置などの整備方針をマスタープランに明示することについては、その策定段階で周辺住民との十分な議論が必要となること等から、困難。(札幌市、熊谷市、三郷市、兵庫県、大阪市、北九州市、山口県)十分な地元調整を経た上で、事業化が見込まれる段階になって決定・公表する方が適切。(名古屋市)

・整備方針のマスタープランへの明記については、義務付けでなく自治体の判断に任せることとするべき。(茨城県)

<決定主体>

・産業廃棄物関係施設の決定主体を都道府県とすることに賛成。(個人、事業関係者、全国宅地建物取引業協会連合会、三重県、福島県、千葉市、福岡市、長野市、因島市)都道府県決定とする場合、市町村との十分な調整、市町村の意向の尊重が必要。(熊谷市、与野市)

・廃棄物処理施設等に関する都市計画は、周辺住民との調整が重要であること等から、市町村が決定することとするべき。(個人、日本都市計画学会九州支部、愛媛県、石川県、仙台市、広島市、大阪市、北九州市、名古屋市)

<広域的な観点>

・廃棄物処理施設等については、収集区域が複数の都道府県に跨るなど広域的な観点が求められ、都道府県を超えた範囲での検討を行う必要がある。(建築業協会、日本建設業団体連合会、徳島県)こうした施設は、都道府県マスタープランだけで解決できる問題ではない。(青森県、徳島県、大阪府農業会議)都道府県を超えた広域的な観点から、国・地方圏の環境マスタープラン等が必要。(大阪府、長崎県)

・広域調整等のルールが不可欠である。(日本都市計画学会)

<環境部局との連携>

・廃棄物処理施設等の都市計画決定や整備方針のマスタープランへの明記については、環境部局と連携し、廃棄物処理に関する制度・計画と併せた検討を行うべき。(全国市長会、岩手県、佐賀県、福島県、広島県、与野市)

・廃棄物処理施設等については、まず環境行政において廃棄物処理計画等に位置づけた上で、都市計画決定すべき。(大阪府)


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1.都道府県の都市計画に関するマスタープランの創設   
2.都市計画区域外における開発行為及び建築行為についての考え方   
3.線引き制度及び開発許可制度の見直し   
4.既成市街地再整備のための新たな制度   
5.環境問題等への対応のための制度の強化   
6.都市計画の決定システムの合理化