第1回懇談会の概要 |
日時、場所等
出席者(順不同)
資料 資料1−1 「産業構造の転換に即した都市政策のあり方懇談会」の
懇談会の進め方や背景などに関する事務局からの説明に引き続き、産業構造の転換に対応した都市政策のあり方について、各委員から様々な問題提起や検討方向の提案がありました。その概要は次の通りです。(文責は事務局) ● 戦後の経済システムが崩壊する中で、人(労働)、金(金融)、土地が硬直的になっている。 ● 懇談会名称中の「即した」という文言は、どう解釈するのか。産業に都市の方が合わせるという趣旨か。むしろ、全体的には都市の方がリーダーシップをとっていくべきと考えるが。例えば、生活空間倍増計画をみると、今後100年分の投資が見込まれ、その場合には都市が産業に影響を与えるだろう。一方では、工場跡地をどのようにするかという部分がある。その両面のどちらを議論するのか。工場跡地のことだけでは、都市がますます求心力を失う面もあると考えるが。 ●(事務局) 懇談会の名称については、この会で御議論頂いて、何か良い名称があればその名称にいたしたい。この名称は、従来、産業と都市との関係の中で都市が先走っていなかったかという若干の反省の上に立っている。 ● 「即した」では限定的な印象がある。妥協案として「産業構造の転換と都市」といった名称ではどうか。都市は産業政策に随分翻弄された面がある。むしろ都市がリーダーシップをとるべきではないか。都市政策は産業政策よりも巨視的、長期的に捉えるもの。 ● 今の意見に賛成。今後の都市の変化の要素として高齢化、人口減少がある。一方、モータリゼーションの進行もあり、これを結びつけると高齢者が車に乗れるのか、高齢者が使いにくい都市にならないかという問題が生ずる。従って、もっと都市の中、都心居住などに目を向ける必要があるが、これまでの議論は商業に偏っており、老人が活躍できる施設や機会が与えられていないことが問題。情報や国際競争も良いが、もっとヒューマンな働く場所が必要。 ● 「産業」にはどういう産業を対象にするかという議論からいけば、まさに先端産業を取り込むべきだと思う。また、臨海型の産業に限定せず、自動車と都市との関係を議論して欲しい。20世紀は自動車の時代であり個人の移動を自由にした。さらに情報がモバイルのように自動車にくっついて行く、ITSのようなメディアに新しい産業がある。 ● 資料の中の「ビルト・インする仕組み」について、具体的な動きとしては、千代田区のSOHOの動きがある。先ほどの説明で第3次産業のその他の産業が伸びているというが、こうした産業は既成市街地中で小さな単位でビルト・インされている。その仕組みを都市政策の中で工場跡地と併せて議論をする必要がある。また、東京が海外から来た人にとって優れたところかどうか検討する必要があろう。ドイツでも80年代後半に遊休地の転換が議論されたがそのとき遊休地をサスティナブルな(持続可能な)開発の拠点・種地とするため、できるだけ自然を残していくべきということになった。都市が深呼吸できる機能が必要である。 ● これまでは経済優先、製造業優先の下での土地利用で、都市の中で土地が足りない、通勤も延びて行く面があったが、今、その土地が開放される可能性が出てきて、都市づくりそのものが変わって行く可能性が出てきた。実際出てくる土地がどの程度のものなのか、見定める必要がある。 ● これまでは都市計画とは公共施設を作ることと考え、決めてしまえば市場も経済も自由に動くものと思い、市場も民主政体も省られず、都市とは何かという根本的な議論もなかった。右肩上がりの経済の下ではそれでも良かったが、今の段階では都市全体を考えなければならなくなった。 ● 「都市」が主導して行くのは大変良い。ただし、都市については「なべて」という議論は難しい。良いモデルがあれば、あとは自ずから伝わって行く。都市再構築のシナリオも総論的になってしまった面があるが、モデルスタディをやってはどうか。一つには先端産業について提案できないか。即地的な例としては秋葉原駅前の市場の跡地がある。ここを日本のSOHOや先端技術のショーケースにするとか。二つ目の例としては、地方都市の旧市街地について具体的に議論すべきではないか。 ● まさに一般論を議論しても意味がない。SOHOの場合、住宅とオフィスの中間形態であり、例えば、都市計画上どういう扱いにするか、住宅金融公庫融資を受けられるか、税制上の取扱いといった課題がある。 ● コンピューターを使ったビジネスの場合、例えばゲーム産業の立地の形態をトーキョー・ゲーム・クラスターと呼んでいるが、情報通信技術があるからと言って必ずしも都心から遠い場所に立地することはなく、個別の地域が持っているアドバンテージ(有利さ)に着目して立地する。ゲーム開発者は、雑草のように隙間を見つけて、そこに文化をつくっている。ただし、東京は、ニューヨーク、サンフランシスコに比べるとまだその知的社会インフラの整備が必要だが、計画ではつくれない、しかし何らかの再整理は必要である。 ● 産業構造の在り方についてこれまでのような見方では駄目なのだろう。繊維が落ち込んでいるというが、逆にファッション・アパレルは伸びている。 ● 懇談会のテーマとして考えられるのは、一つには工場跡地を流動化させるためにはどうするのかということ。もう一つには、今お話しのあったSOHOのように、都市文化がある中での新たな産業の振興ということがある。それぞれ全く違う話でどちらも重要だが、どちらに重心をかけるのか。 ● この会議で取り上げるのが適当かどうか解らないが2つ問題提起する。 ● 大都市と地方は全然違う。大都市では土地が空いたからどう使うかが議論となるが、地方はそもそも集積がなく、どうすれば集積するかが問題。過去に産業転換をした例としては産炭地域があるが、これを見るとモノカルチャー的産業では転換するときに駄目で、地場産業的であれば一部が駄目になっても次の産業へと生きて行く感じだ。 ● 10万人以下の都市でも備中高梁や尾道、愛媛の内子など観光や過去の蓄積などで生き残る都市はあるが、この会では大都市に焦点をあてるべき。 ● 産業構造の転換の中では、大企業が分社化やアウトソーシング(外部委託)などでフレキシブル・スペシャライゼーション(柔軟な特化)をしてゆく場合と、イタリアに見られるように、「ヨーマン・インダストリー」とも言える家業的な産業が新しい形の産業へと発展して行く部分、これを「個業」と呼んでいるが、その振興の議論がないと地方都市は扱えない。これが出来ないならば大都市をやったほうが良い。 ● 要するに、いかに国土の有効な使い方をするかということ。これは歴史的に変化しておりかつては加工貿易立国として工場用地として優先的に使っていた時代もあったが、相対的高賃金のもとで工場用地が要らなくなりつつある。そうした土地をどう使って行くか。例えば工業専用地域から準工業へ一部でも変更できれば可能性が広がる。この懇談会では時代の要請に適った国土の使い方を示せればと思っている。その中で法律の柔軟な仕組みを議論したい。産業構造の方向の部分より、早く具体論に入って、ケーススタディも含め有効利用に向けてどういう知恵があるかを議論したい。 ● 土地の利用転換前の利用ははっきりしているが、その後どういう転換をするかは誰もはっきりとは示せない。ほとんどの土地は使いようがない。使いみちがはっきりしている土地は、臨港地区をはずすなど方法ははっきりしている。使いみちがない土地は、従来の都市計画にあったような、こうあるべきという「べき」論では扱えない。むしろ、「べき論」ではない柔軟な都市計画、あるいはもっと柔軟に「わかってきたら決めよう」くらいで良いのではないか。 ● 80年代後半の拡大路線、民活型開発路線を経て、日本の産業は戦後三度目の構造変革期を迎えている。今の民間企業の取組は、株の持ち合い解消や外国人持株比率の拡大等株主構成の変化の影響もあり、「業種」というより個別企業の生き残り戦略としての取組みが多い。その中で、リストラの一環として、従来期待できなかった都心の社有地などの土地が放出されてきている。これをどう有効に使うか、大都市では新しい産業(情報・通信、福祉など)による活用も期待できる。一方、地方都市におけるテーマパークの失敗とその後のまちおこしの問題も、それはそれで大変大きな問題であり、大都市と一緒に議論するのは無理ではないか。この他に先ほど指摘があった建物評価の問題は、手法の問題であり、これはまた別物である。 ● これまでの都市政策のあり方について真摯に反省しなければならないところもある。しかし、なべて一般の「べき論」は無理にしても、世の中の動きに合わせた新しい「べき論」は可能なのではないか。 ● 今後遊休地的に出てくる土地をどのように管理して行くかという問題は、都市計画の問題なのかどうかを今後議論して、例えば、緑地、運動場にするとか、これも都市計画なんだと考える。さらには農地の減反の問題も含めて、都市的土地利用でない部分の土地管理の問題を併せて議論してゆく必要がある。 ● 確かに工場跡地に限定して具体のプロジェクトを議論すれば、なにがしかの成果は期待できる。しかし、単に遊休地が空いたからプロジェクトをやりましょうではなく、一方で長期的視点、バブルへの反省、社会の仕組のあり方論は重要。 |