○「次世代の都市生活」を創る

 

 バブル崩壊に至るまでの日本の数十年間は、歴史的に見ても世界的に見ても例のない、奇跡的な高度成長の時代であった。

 

 多くの人々は、地方部から大都市圏へと住まいを変え、勤勉に働きながら、高度成長を支えてきた。

 

 その一方で、やがては自然の豊かな郊外に住む、あるいはふるさとで第二の人生を送ることを夢見ながら、現実には、長距離通勤に耐え、家庭生活や地域活動に十分な時間を割くことができないという生活を余儀なくされる場合も多かった。

 

 また、この間、決して恵まれているとはいえない住環境、都市景観の荒廃、公共施設や商業施設の郊外立地に伴う中心市街地の活力低下・地域コミュニティの崩壊といった、様々な都市のひずみが生じてきた。

 

 バブル崩壊から約10年を経過した今、私たちは成熟社会を迎えている。その成熟社会とは、いいかえれば、多くの人々が都市に生まれ、都市に育ち、そして都市でその生を終える、「都市型社会」であるということができよう。

 

 同時に、私たちは、今、急激な少子高齢化や、人類がいまだかつて経験したことのない地球環境問題にも直面している。

 

 私たち、そして次世代をになう私たちの子どもたちは、このような未曾有の大変化の中で、都市のひずみを克服しながら、みんなで力を合わせ、元気で前向きに「次世代の都市生活」を創っていくことが必要である。

 

 それは、私たち、そして次世代をになう私たちの子どもたちが、自分たちの住まう「都市」の真の快適さや美しさとは何かという課題を自分のこととして考え、「都市」という舞台の上で様々な価値観を持った人々と広く交流し、理想の都市像を語り合いながら、「次世代の都市生活」についてのコンセンサスを練り上げていく創造的なプロセスにほかならない。また、それは、仕事と家庭生活と地域活動のバランスをとりつつ、市民力豊かな人々が熱い思いで参画し、かつ、行政やNPOとのパートナーシップも創っていく、主体的な営みとなるであろう。

 

 このようなプロセスを通じてこそ、年齢や心身の状態に関わりなく「ふつうの生活」を送ることができるノーマライゼーション、子どもを産み育てたい人にふさわしい住宅や地域環境、いろいろな世代の人々が集まり、遊び、交流できる場、美しい都市景観や自然環境、様々な問題を抱えながらもいっしょうけんめい生きているすべての市民のエンパワーメント、主体性と市民力を備えた人づくりといった理想が現実のものとなる。

 

 地域を中心としたこれらの取り組みとその成果は、親世代から子世代へ、子世代から孫世代へと確実に引き継がれていく持続可能な都市生活コミュニティの形成へと発展していくことだろう。

 

 持続可能な都市生活コミュニティが形成されたとき、過去と現在と未来がつながり、人と人とがつながり、人と自然とがつながることとなる。すなわち、このコミュニティの中での自分の存在感や役割、自然との一体感を感じ、自分の思いが次の世代に継承されていくことを発見して、私たちは、一日一日が充実感にあふれた生活を送ることができるようになるだろう。

 

 そこに、初めて、真の意味で快適で、生きがいのある「次世代の都市生活」が実現するのではないだろうか。

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「次世代の都市生活を語る懇談会」名簿

 

座長  金平 輝子   東京都社会福祉協会会長

 

     井手 佳季子  (株)ポリテクニック・エイディディ 地域計画部ランドスケープグループ主任研究員

 

     犬養 亜美   エッセイスト

 

     大江 守之   慶應義塾大学総合政策学部教授

 

     大熊 由紀子  ジャーナリスト

 

     大野 美代子  (株)エムアンドエムデザイン事務所代表取締役

 

     小幡 純子   上智大学法学部教授

 

     岸井 隆幸   日本大学理工学部土木工学科教授

 

     小澤 紀美子  東京学芸大学教授、附属教育実践総合センター長 

 

     白石 真澄   (株)ニッセイ基礎研究所主任研究員

 

     田島 優子   弁護士、さわやか法律事務所

 

     栃本 一三郎  上智大学文学部社会福祉学科助教授

 

     森泉 陽子   神奈川大学経済学部教授

 

     森下 郁子   (社)淡水生物研究所所長

 

     森下 慶子   (株)ケーピー代表取締役

 

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「次世代の都市生活を語る懇談会」開催経緯

 

第一回  平成11(1999)年7月2日(金)15:00〜17:00 都市計画会館

 『少子高齢化が都市に及ぼす影響』(大江委員)

 『住宅需要について』(森泉委員) 

 

第二回  平成11(1999)年9月27日(月)10:00〜12:00 麹町会館 ガーネット

 『子どもを健やかに産み育てる住宅環境』(白石委員)

 『高齢社会の法律問題』(田島委員)

 

第三回  平成12(2000)年1月18日(火)10:00〜12:00 麹町会館 ガーネット

 『日本の景観を考える〜諸外国と比較しつつ〜』(犬養委員)

 『フィンランド等の都市景観について』(大野委員)

 

第四回  平成12(2000)年5月15日(月)15:00〜17:00 麹町会館 ガーネット

 『都市における自然とのふれあい』(井手委員)

 『都市の自然環境』(森下郁子委員)

 

第五回  平成12(2000)年7月17日(月)15:00〜17:30 建設省 4階会議室

 『障害者は高齢社会の水先案内』(大熊委員)

 『都市における個人の権利と公益』(小幡委員)

 『快適な都市生活のための人づくり』(小澤委員)

 

第六回  平成12(2000)年11月29日(水)16:00〜18:30 三番町共用会議所

 『コミュニティとエンパワーメント

   〜新しい就労と家庭・コミュニティとの調和〜』(栃本委員)

 『21世紀の都市生活』(森下慶子委員)

  懇談会報告書について議論

 

第七回  平成12(2000)年12月14日(木)13:00〜14:30 建設省 3階会議室

  懇談会報告書について議論

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