2. 老いも若きもやすらぐ空間

◎ 少子高齢化は、特に大都市部を中心に、急激な人口減少と高齢化、社会のモビリティの高まりなどの大きな変化をもたらす。 これに対応し、既成市街地の再構築、メンテナンスが充実した耐久性の高い住宅、良質な借家の供給等を図ることが必要。

◎ 高齢者がこれまでのふつうの生活をできるだけ自立して送っていけるよう、リバースモーゲージの確立、適切な司法サービスの提供等により、社会が支えていくことが必要。

◎ いろいろな世代の人々が集まり、遊び、交流できる場の整備、 運営、管理を通じたコミュニティの充実を図ることが必要。

 日本では少子化が急速に進んでおり、合計特殊出生率は、既に人口を維持するために必要な水準である2.08を大幅に割り込み、平成11年(1999年)時点で1.34となっている。なかでも、大都市圏の少子化は顕著で、東京では1.03にまでなっている。この水準で推移すれば、2世代で人口が半減するなど人口減少が急速に進むほか現在は地方において顕著な高齢化が今後は大都市を中心として進行することとなる。また、これらの人口動向に加えて、IT革命等の技術革新がもたらす労働市場、産業構造等の変化により、転職の増加など社会のモビリティが増加することも予想される。

 

 このような動きに対応するためには、既成市街地の再構築やメンテナンスを的確に行うとともに、メンテナンスが充実した耐久性の高い住宅、 多様なニーズに応じた良質な借家をリーズナブルな価格で供給していくといったことが重要であり、バランスのとれた借家政策など様々な支援策を講ずるべきである。

 

 一方で、高齢者の親族や高齢者自身の意識の変化などにより、親族による扶養が当たり前という考え方がすたれつつある。

 

 このため、高齢者自身の自助努力により、あるいは公的な福祉の支援を受けながら自立して生活していけるように、新たに設けられた成年後見制度の活用を図るとともに、リバースモーゲージの確立、グループリビングへの支援等、様々な支援制度の整備が望まれる。有料老人ホームの契約問題、訪問販売等による高齢者の消費者被害など高齢者の陥りやすい深刻な問題についても、契約内容の適正化、適時適切な司法サービスの提供を工夫すべきである。

 

 また、都市の在り方としても、高齢者や障害者などが安全に暮らすことができるよう、バスの活用、交通機関およびその周辺のバリアフリー化などを図るとともに、高層ビル街での風害防止にも配慮することが必要である。

 

 高齢者や障害者もIT技術を活用することで活動の場が広がり、都市生活を楽しむことができ、若者にとってもより都市生活における選択の幅が広がることになる。

 

 さらに、都市の中でいろいろな人が自然に集まり、遊び、交流することができるよう、歩いて行ける範囲に公園などの「場」が必要であり、そのような「場」を周囲の住民とともにつくり、運営し、管理していくことがコミュニティの充実にも役立つものである。

→ 次に進む

←目次に戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

●リバースモーゲージとは?

 

 「リバースモーゲージ」とは、持ち家(一戸建て・マンション)を担保に自治体・民間金融機関から年金型の生活資金融資を受ける制度の総称。4人に1人が65歳以上の高齢者となる超高齢社会が目前に迫り、公的年金給付の抑制や医療・介護費用の自己負担が増える中で、持ち家はあっても生活資金に余裕を欠く高齢者層が一層増えると予想されている。リバースモーゲージはこうした高齢者層に向けた新方式の融資で、平成10(1998)現在、首都圏・近畿圏の16自治体が公的制度として導入しており、今後一層の普及が期待されている。<本文へ戻る

 

合計特殊出生率とは?

 

 1549歳までの女子の年齢別出生率を合計したもので、1人の女性が仮にその年次の年齢別出生率で一生の間に子どもを産むと仮定した場合の平均子ども数。本文へ戻る

 

成年後見制度とは?

  痴呆症の人、知的障害のある人、精神障害のある人など判断能力の不十分な人々は、財産管理や身上監護(介護、施設への入退所などの生活について配慮すること)についての契約や遺産分割などの法律行為を自分で行うことが困難であったり、悪徳商法などの被害にあうおそれがある。このような判断能力の不十分な人々を保護し支援する制度。

  平成12年(2000年)に《自己決定の尊重》の理念と《本人の保護》の調和を目的として、より柔軟かつ弾力的で利用しやすい制度として改正された。本文へ戻る

 

グループ・リビングとは?

 「元気な高齢者が、少人数の気の合う仲間と老後を一緒に暮らす、ついのすみか」というイメージで、様々な呼称で使われている。痴呆高齢者や障害者にとって、少人数で自宅に近い環境で暮らすことが介護によいとされたことから、欧米で広く定着している概念。   本文へ戻る