6. 就労と家庭・コミュニティとの調和
◎ 夫婦ともパートタイム労働を選択することにより十分な所得を得ながら短い労働拘束時間が実現できることから家庭生活やコミュニティ活動にも従事できるオランダの「 1.5モデル」も参考にしながら、地域コミュニティの中で人々が支え合うこととにより、サラリーマンだけでなく高齢者、障害者も含めて、就労、家庭、コミュニティのすべてに積極的に関わっていくことが必要。 |
近年、福祉に対する考え方が、「恵まれない人々に対する保護、サービス提供、金銭給付」から「市民にとって必要な、社会生活上、ライフステージの中で発生する様々な課題に対しての自立支援」へと変化してきている。
このような中で、地域で生活するためのサービスは、従来の非常に限定的な行政による福祉だけではなく、自分たちの住む地域コミュニティの中で市民あるいはNPOなども提供することが求められている。したがって、従来のいわゆるフォーマルな仕事だけでなく、インフォーマルな地域コミュニティでの労働が重要になってくる。
にもかかわらず、現在の日本においては、働く母親を含む多くの勤労者が通勤や就労に長時間を割かなければならないため、経済的には豊かであっても家族と関わる時間が少ない、地域コミュニティ活動になかなか参加できないなど、望ましい状況にはない。また、児童、青年、働く母親、サラリーマン、障害者、高齢者など人々が何らかの問題を抱え、単独ではその問題を解決することが難しい状態になっているので、市民のエンパワーメントが必要な状況にある。
この状況を改善するひとつのモデルとして、生活設計に合わせパートタイム労働かフルタイム労働が選択可能なオランダモデル(1.5モデル)と言われる就労モデルが注目されている。オランダでは、夫婦共々就労するが、どちらが主ということではなく、どちらもパート労働を選んだとしても一家族としては十分な所得が得られ、一家族としての労働拘束時間が少なくなることから、家庭や子育て、地域コミュニティ活動において十分な役割を果たすことができる。
次世代の都市生活においては、サラリーマンや子どもを持った母親だけでなく、高齢者、障害者が無理のない仕事をし、家庭、地域に対する責任も果たせることが可能になるよう、就労と家庭・コミュニティとの調和が図れるようにしなければならない。
オランダの協議制度を基本とした労使関係により、良好な経済パフォーマンスとパートタイム労働の創出で雇用拡大などに成功した事例として近年注目を集める就労モデルであり、パートタイム労働を積極的に位置づけていることが特徴である。一人週40時間フルタイム労働に対して、夫婦が共に週30時間、計60時間のパートタイム労働となったとしても一家族としてみると十分な賃金を得ることが可能となることから1.5モデルと言われている。
日本では「パート=低賃金・不安定雇用」であるが、オランダのそれは決定的に異なる。賃金・一時金等は労働時間に則して案分され、社会保険等はすべてフルタイム労働者と同等に適用される。
パートの職種は補助的業務だけでなく、社会的地位も賃金も高い職種もあり、労働者は自身の生活設計に合わせてパートかフルタイムを選択することができる。<本文に戻る>
エンパワーメントとは、辞書(デイリーコンサイス英和辞典)によれば、
(1)力をつけること。また,女性が力をつけ,連帯 して行動することによって自分たちの置かれた 不利な状況を変えていこうとする考え方。
(2)権限の委譲。従業員の組織内での力を引きのば すためや,開発援助において被援助国の自立を 促進するために行われる。
であるが、ここでは、何らかの問題を抱え、単独でその問題を解決することが難しい状態の市民が自立的に力をつけることの意味で用いている。<本文に戻る>