8.都市を語り合う人々

 

◎ ITを通じた情報のやりとりなどにより、まちづくりについて熱く語る人々が全国的に増え、多様な活動を展開している。今後のまちづくりは、このような人材の積極的な参画を得ながら、総体的にノウハウを高めていくことが必要。

 

 この数年間でまちづくりを熱く語る人たちが全国的に増えてきている。都市政策や都市計画について語る人もいれば、自分のまちやこれからのまちづくりについて語る人たちもいる。他方、まちの使い方であるとか、どのまちならよいサービスを受けられるとか、どこのまちが遊びに向いているかといった情報に詳しい、情報おたくのような人たちもいる。このような人たちがパソコンや携帯電話で情報のやりとりをしているうえ、海外経験のある人がますます増えていることから、地球規模で都市の生活、文化、人生を語り合う時代になってきている。

 

 具体的には、次のような事例が見られる。

 

* 安全・安心まちづくり女性フォーラム」を通じて、自由な発想を持った女性たちが「安全・安心まちづくり」をテーマに、まちづくりの企画論、計画論を多様に展開した。

 

*黒部まちづくり協議会」では、全市規模でまちづくりのNPO活動が積極的に展開されることとなった。

 

*都市観光を創る会」では、観光の専門家や都市計画の専門家、映像プロデューサー、イベントプロデューサーといった様々な業種のプロが集まって、インフォーマルな形で、観光の世界から見た都市づくり、逆に都市の戦略としての観光活用といった様々な観点から議論を展開している。

 

 このように都市を語り合える人々が増えていくことを受けて、まちづくりにおいても次のような点について転換が図られることが期待される。

 

テキスト ボックス:  
ワークショップ(山口県柳井市)
 第1は、まちづくりの経営、運営に関し、どのような空間ボリュームを、どのような主体、力が担いうるかということについての整理。

 

 第2は、公民協働システムということがよく言われるが、そこでの「公」の在り方、従来の「官」や「行政」との関係等についての整理。

 

 第3は、情報システムやコンテンツが高度なものとなる中で、行政においては、元の情報が少ないとか加工能力が低いといった問題の解決。

 

 第4は、クルマ社会の在り方についても、全面的に自動車という前提を置くのでなく、まちの構造やタウンモビリティの在り方について、様々な可能性を考えること。

 

 第5は、再生建築や商店街の再活性化ということについては、例えば、早稲田での商店街がエコによる商店街づくりを成功させたように、価値を転換したり、高めたりといった変換システムの仕組みを考えること。

 

 第6は、財政制約の中で、その運営に多額の維持費と高度な企画力が求められるアリーナやドームのような大規模空間の活用方策の真剣な検討。

 

 すなわち、おもしろい、楽しい、安心、美しいといった新しいテーマについては、従来とは違った仕組み、仕掛けを作っていくことが必要であるが、そのためには、NPOと行政との連携がますます必要になる。

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安全・安心まちづくり女性フォーラムとは?

 

  女性の視点から、安全で安心して暮らせるまちの実現のために、女性の価値観や視点、能力を最大限に活かすことを通 して、新しい知恵や方法を創り出し広く社会に提言しながら、具体的な行動に結びつけることを目的としたフォーラム。

  具体的には、「安全・安心」をきっかけとしたまちづくりへの市民参加の推進やそのための調査・研究、各方面で活躍 をするグループ同士のネットワークの構築、イベントやシンポジウムの開催などの活動を平成9年(1997年)から平成11年 (1999年)にわたり全国23箇所で展開した。<本文に戻る

 

黒部まちづくり協議会とは?

 

  黒部市商工会議所が黒部市長に提出した提言書を受けて、平成9年(1997年)6月に、黒部市内の主な団体と市内外の学  識経験者によって設立された。同協議会は市民ワークショップを実行組織と位置付け、行政や企業などを支援組織として、 市民全体のまちづくりを進めている。協議会の理念は「はな(華・花・英)」。「華」は、華のある個性づくり、「花」 は、花と名水の美しい自然を活かした魅せるまちづくり、「英」は、英れた知恵と感性、先進と伝統の創造技術による美 しい文化づくり、を目指している。<本文に戻る

 

都市観光を創る会とは?

 

  これからの活力ある都市づくりのためには、都市をモノの生産や流通拠点とするだけでなく、自己実現や交流のための 舞台装置として位置づけることが重要で、それが「都市観光」につながる。都市観光は、市民、企業、行政が一体となり、 国内外の多様な人々との交流を通じて、都市の生活、文化、産業の好循環を生み出すことから、産官学の代表者による都 市観光の振興を図ることを目的とした会。平成11年(1999年)7月に設立。会長は木村尚三郎東京大学名誉教授。<本文に戻る