関西文化学術研究都市の建設に関する基本方針

第1章 都市建設の目標

1 意義及び理念

今日、世界経済の一翼を担うまでに発展した我が国が、今後、国際社会の一員として、人類の平和と繁栄に一層貢献するためには、科学技術創造立国、さらには世界から尊敬される文化立国を目指して、基礎科学の充実強化、創造的な学術・研究の振興及び新産業の創出を図り、あわせて、日本固有の文化の継承・発展とともに、世界の異なる文化との交流・融合を図ることにより、新しい文化を創造・発信する必要がある。

このような創造的な学術・研究の振興等を図るための基盤として、既存の文化・学術・研究の集積の活用と連携のもとに、良好な自然・生活環境を備え将来の可能性に対応しうる新しい都市の建設に対する要請はますます高まっている。

関西文化学術研究都市の建設は、このような要請にこたえるため、近畿圏において培われてきた豊かな文化・学術・研究の蓄積をいかし、歴史、文化、自然環境に恵まれた京阪奈丘陵において、次の基本的視点に立って創造的かつ、国際的、学際的、業際的な文化・学術・研究の新たな展開の拠点づくりを目指すものであり、新しい近畿の創生に貢献することはもとより、我が国及び世界の文化・学術・研究の発展並びに国民経済の発達に寄与するものである。

(1)文化の創造と交流

我が国の文化の振興を先導する文化創造の拠点づくりを推進するとともに、国際的な文化交流・協力を進めることにより文化による国際貢献・発信を行う。

(2)新しい学術・研究の推進

人間存在の基本に関する課題、人類の生存条件の確保に関する課題等について、自然科学と人文・社会科学とが連携した総合的な学術・研究を推進し、人類的課題の解決に貢献する。また、科学技術の振興とその成果の活用により、経済と社会の発展、人類の繁栄に寄与する。

(3)21世紀のパイロット・モデル都市の建設

文化学術研究の諸活動の成果を取り入れ、安全性の確保、環境の保全をはじめとして人間居住の各側面で21世紀の文明にふさわしい新しい試みに積極的に取り組むことにより、今後の都市のあり方を提示する先導的な都市の実現を目指し、街づくり面で現代の都市が直面する諸問題の解決に貢献していく。

2 都市の機能

次に掲げる諸機能の整備及び街づくりを図ることにより、文化・学術・研究、街づくりの融合した都市の実現を目標とする。

  • (1) 文化を冠した学術・研究都市として、文化創造の拠点としての機能及び今後の学術・研究、産業活動のあり方を先導する機能の整備を図る。
  • (2) 文化、学術・研究、産業の各側面で地球全体の平和と繁栄に貢献していくため、本都市で行う活動の成果を国内だけでなく、世界に向けて発信する機能の整備を図る。
  • (3) これら諸活動を支える基盤として、文化学術研究の中枢にふさわしい心地良さを感じさせるような文化の薫る住みよい街づくり、世界に開かれた街づくりを進める。

3 施設等の整備の方向

文化学術研究都市にふさわしい機能を総合的に確保するため、防災性の向上及び環境への負荷の低減や自然との共生を図りつつ、地域の歴史・文化的条件、自然条件等に配慮して、21世紀初頭までに都市が概成されるよう、次に掲げる整備等を図る。

(1)文化学術研究施設等の整備

文化・学術・研究の中心とするべき都市にふさわしい、文化の発展、学術の振興又は研究開発を目的とする施設の整備、誘導を図るとともに、文化の発展、学術の振興並びに研究開発に係る交流及び共同研究を推進するための文化学術研究交流施設の整備・充実を図る。

(2)産業の振興

文化・学術・研究の成果をいかす研究開発型産業及び文化・学術・研究活動を支援する産業の創出、育成を図る。

(3)居住環境の整備

文化学術研究都市にふさわしい人間性豊かな快適な居住環境を確保するため、良好な住宅・宅地等の整備を推進する。

(4)都市機能の整備

国際化、高度情報化、高齢化等経済、社会の変化に対応した、文化学術研究都市にふさわしい公共施設、情報・通信基盤施設を含む都市機能の総合的な整備を推進する。また、この場合、住民、研究者等の利便性の確保及び高次都市機能に対処した都市の安全性の確保に配慮する。

(5)広域的な交通施設、情報・通信基盤施設の整備

国際化、高度情報化に対応して、近畿圏をはじめとする国内外の諸都市及び研究開発拠点との連携を確保するため、道路、鉄道等の交通施設及び情報・通信基盤施設の整備を推進する。また、交通施設の整備に伴い必要となる安全施設等の整備を推進するとともに、高度情報通信技術を活用した新しい道路交通システムの導入を図る。