建設省営計発第101号
平成8年10月24日
官庁営繕部長決定
官庁施設の総合耐震診断・改修基準
第1章 総 則
1.1 目 的
この基準は、国家機関の建築物及びその附帯施設の位置、規模及び構造に関する基準(平成6年12月15日建設省告示第2379号、以下「位置・規模・構造の基準」という。)及び官庁施設の総合耐震計画基準(平成8年10月24日建設事務次官決定、以下「総合耐震計画基準」という。)に基づき、国家機関の建築物及びその附帯施設(以下「官庁施設」という。)の地震災害及びその二次災害に対する安全性の評価及び耐震改修についての基本的事項を定め、官庁施設として必要な耐震性能の確保を図ることを目的とする。
1.2 適用範囲
この基準は、全ての官庁施設の耐震診断及び耐震改修に適用する。
第2章 施設の耐震診断
2.1 基本事項
官庁施設の耐震診断は、施設の位置・配置等、構造体、建築非構造部材及び建築設備のうち、必要な項目について実施する。
2.2 施設の位置・配置等の改善のための評価
(1) 災害応急対策活動に必要な施設の位置については、敷地周辺の状況を調査し、総合的に適正であるか否かを評価する。
(2) 災害応急対策活動に必要な施設の敷地については、地盤状況及び施設の配置を調査し、総合的に適正であるか否かを評価する。
2.3 構造体の耐震診断
2.3.1 基本事項
(1) 構造体の耐震診断は、構造体全体を対象とし、設計図書に基づくとともに、現地調査により、立地、敷地状況、施工状況、劣化状況、増改築、改修の有無等を十分考慮して実施する。
(2) 上部構造の構造体の耐震診断は、保有水平耐力と部材のじん性を適切に評価して耐震性能を把握し、施設の耐震安全性の目標を考慮して実施する。評価は、各階及び各方向別に行う。
(3) 基礎構造及び地盤の耐震性能は、実状を考慮して、適切に評価する。
(4) 耐震安全性の評価は、上部構造及び基礎構造の評価を考慮して総合的に行う。
(5) 工作物の耐震診断は、実状を考慮して、適切に実施する。
2.3.2 鉄筋コンクリート造及び鉄骨鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造及び鉄骨鉄筋コンクリート造の耐震性能は、部材の強度及びじん性により、適切に評価する。
2.3.3 鉄骨造
鉄骨造の耐震性能は、部材の強度及びじん性により、適切に評価する。
2.3.4 地盤及び基礎構造
(1) 地盤及び基礎構造の耐震診断は、施設の機能確保の必要性、地盤条件等を考慮して、必要に応じて実施する。
(2) 地震動時における地盤の液状化が発生する可能性及びその程度を予測する。
(3) 直接基礎の耐震性能は、地盤の支持力及び基礎の強度により、適切に評価する。
(4) 杭基礎の耐震性能は、地盤の支持力、杭の鉛直耐力及び水平耐力により、適切に評価する。
(5) 発生する損傷の程度及び上部構造に及ぼす影響を考慮して、基礎構造の耐震安全性を総合的に評価する。
2.4 建築非構造部材の耐震診断
2.4.1 基本事項
(1) 建築非構造部材の耐震診断は、活動拠点室、活動支援室及び活動通路(以下「活動拠点室等」という。)、活動上重要な設備室、危険物を貯蔵又は使用する室、機能の停止が許されない室等を特定し、それ以外の一般室と区分したうえで実施する。
(2) 建築非構造部材の耐震診断を行うに当たっては、初めに一次診断を行い、これにより判断がつかない場合には、より詳細な二次診断を実施する。
2.4.2 建築非構造部材の耐震診断の方法
(1) 一次診断は、建築物の構造種別によって判断される大地震動時の構造体における層間変形角の推定により、建築物を剛性別に区分して部位別に実施する。
(2) 二次診断は、一次診断により判断がつかない場合、図面による詳細な確認と現場での調査により実施する。
2.5 建築設備の耐震診断
2.5.1 基本事項
(1) 建築設備の耐震診断は、建築設備機器、配管等が、大地震動後にその施設の目的に応じた耐震性能を保有しているか否かを評価する。
(2) 耐震診断に当たっては、それぞれの設備内容ごとに必要とされる機能を特定する。
(3) 設備内容ごとに、それぞれ目視、図面及び計算による診断方法により、設備機器、配管等を適切に診断し、総合的に評価する。
(4) それぞれの設備内容ごとに評価した結果を基に、建築設備全体の総合的な耐震安全性の評価を行う。
2.5.2 建築設備の耐震診断の方法
建築設備の耐震診断の方法は、その部位の状況により、目視、図面、計算等の適切な方法とする。
2.6 総合評価
(1) 官庁施設の耐震診断は、官庁施設の位置・配置等、構造体、建築非構造部材及び建築設備の耐震診断結果に基づき、耐震安全性確保のための措置の必要性について総合
的に評価する。
(2) 総合評価により、耐震安全性確保のための措置が必要と判断された場合には、耐震改修等のうち、最も適切な措置を講ずる。
第3章 施設の耐震改修
3.1 基本事項
耐震診断結果の総合評価により、耐震改修が必要と判断された場合には、施設の位置・配置等、構造体、建築非構造部材及び建築設備の診断結果について総合的に勘案し、最も効果的な方法により耐震改修を実施する。
3.2 耐震改修計画
耐震改修の効果的な実施のため、必要な調査を行い、施設の用途、立地条件等を考慮して耐震改修計画を作成する。
3.3 施設の位置・配置等の改善
(1) 災害応急対策活動に必要な施設は、人命の安全確保に加えて、大地震動後直ちに、災害応急対策活動が可能なよう、施設の位置・配置等の改善を行う。
(2) 施設の位置・配置等の改善は、関係機関との調整を十分図りつつ、最も効果的な方法により実施する。
3.4 構造体の耐震改修
3.4.1 基本事項
(1) 大地震動に対する耐震改修後の構造体の耐震安全性は、原則として、総合耐震計画基準に示す所要の目標を満足するものとする。
(2) 耐震改修後の耐震性能は、原則として、この基準に示す耐震診断の方法により評価を行い、大地震動時の変形が過大でないこと及び耐震安全性の目標に応じた性能を保有することを確認する。
(3) 耐震改修の方法は、上記の目標を達成するために、機能性、施工性及び経済性を考慮して適切な方法を選択する。
(4) 増設部材及び改修部材の耐震性能は、既存部分との接合方式及び施工の信頼性を考慮して、評価する。
(5) 増設部材及び改修部材により、既存部分へ悪影響を及ぼすことがないようにする。
3.4.2 鉄筋コンクリート造及び鉄骨鉄筋コンクリート造
(1) 鉄筋コンクリート造及び鉄骨鉄筋コンクリート造の耐震性能の向上は、原則として、耐力及びじん性を向上させる方法による。
(2) 耐力を向上させる方法は、原則として、鉄筋コンクリート壁の新設若しくは増打又は鉄骨フレームによる補強とする。
(3) じん性を向上させる方法は、原則として、柱若しくは梁の鋼板等によるせん断補強又は可とう長さの増大による方法とする。
3.4.3 鉄骨造
(1) 鉄骨造の耐震性能の向上は、原則として、耐力及びじん性を向上させる方法による。
(2) 耐力を向上させる方法は、原則として、筋かい等の新設、柱、梁及び筋かい耐力の増大並びに接合部の補強による。
(3) じん性を向上させる方法は、原則として、局部座屈の防止及び接合部の補強による。
(4) 既存部材へ補強材を溶接により接合する場合は、既存部材の材質、溶接面の状態、溶接による熱影響等を考慮して接合を行う。
3.4.4 地盤及び基礎構造
(1) 地盤及び基礎構造の耐震改修は、地盤状況を適切に把握して行う。地盤状況は当該敷地及びその周辺の既往の資料により把握するほか、必要に応じて、追加の地盤調査を行う。
(2) 地盤の改修の目標及び方法は、地盤条件及び敷地周辺の状況を考慮したものとする。
(3) 基礎構造の耐震改修方法は、改修後の耐震安全性の目標に応じたものとする。
3.5 建築非構造部材の耐震改修
3.5.1 基本事項
大地震動に対する耐震改修後の建築非構造部材の耐震安全性は、原則として、総合耐震計画基準に示す所要の目標を満足するものとする。
3.5.2 建築非構造部材の耐震改修方法
建築非構造部材の耐震改修方法は、建築非構造部材の耐震診断結果のほか、施設の位置・配置等、構造体、建築設備の耐震診断結果及び耐震改修方針を含め、総合的に判断し、決定する。
3.5.3 建築非構造部材の耐震改修設計
建築非構造部材の耐震改修に当たっては、要求性能に見合った適切な構工法を選択し、目標とする耐震性能の確保を図る。
3.6 建築設備の耐震改修
3.6.1 基本事項
大地震動に対する耐震改修後の建築設備の耐震安全性は、原則として、総合耐震計画基準に示す所要の目標を満足するものとする。
3.6.2 建築設備の耐震改修方法
建築設備の耐震改修方法は、建築設備の耐震診断結果のほか、施設の位置・配置等、構造体、建築非構造部材の耐震診断結果及び耐震改修方針を含め、総合的に判断し、決定する。
3.6.3 建築設備の耐震改修設計
建築設備の耐震改修設計は、施工性、予算等を総合的に勘案し立案する。
3.7 免震構造及び制振構造の耐震改修への適用
3.7.1 基本事項
特別な機能が要求される施設又は耐力及びじん性を向上させる方法等によっても耐震性能の向上が困難な施設については、免震構造又は制振構造の採用による耐震改修方法を検討する。
3.7.2 免震構造及び制振構造による耐震改修方法
(1) 安全性、機能性、施工性及び経済性を考慮して、適切な構造形式及び機構を選択する。
(2) 耐震改修後の耐震安全性は、原則として、大地震動後、構造体の補修をすることなく建築物を使用できることを目標とし、人命の安全確保に加えて、十分な機能確保が図られるものとする。
附則
この基準は、平成8年10月24日から適用する。
ただし、特段の理由がある場合には、平成9年度から適用するものとすることができる。