はじめに はじめに

 ユーラシア大陸の東端に位置する島国である我が国は、その生活や経済活動を支える諸外国との交易の大部分を海上輸送に依存しており、我が国外航海運は、長年にわたり、経済の発展と国民の日常生活に必要な物資の安定的な輸送に多大な貢献をしてきた。また、国内輸送においても、内航貨物輸送は、産業基幹物資を中心に長距離大量輸送の担い手として我が国産業・経済の発展を支えており、内航旅客輸送は、離島航路、中・長距離フェリー航路等さまざまな形態があるが、いずれも国民生活に密着した交通手段として重要な役割を果たしてきた。
 しかしながら、外航海運については、近年の定期船部門における運賃水準の低迷、日本籍船の国際競争力低下に伴うフラッギングアウトの大幅な進展等、我が国をとりまく情勢は一段と厳しさを増しており、我が国外航海運の国際競争力の確保を図ることが引き続き強く求められている。内航貨物輸送については、景気の低迷に伴う船腹過剰や荷主による物流コスト低減の動き等厳しい経営環境にある一方で、近年の地球温暖化等環境問題がクローズアップされる中、エネルギー効率、CO2排出の面で有利な内航海運の有効活用が求められており、内航海運の活性化等の要請が高まっている。また、これら海上貨物輸送と陸上輸送との結節点を担う港湾運送においても、物流効率化等の観点からユーザーのニーズに対応したサービス向上が求められている。さらに、内航旅客輸送についても、景気の低迷等を受け、離島航路を始めとして厳しい経営を余儀なくされている状況にある中で、利用者ニーズの多様化等に対応したさらなるサービス向上が求められている。
 これらの課題に対応すべく、運輸省海上交通局においては、外航海運における国際船舶制度及び船・機長2名配乗体制の整備、内航貨物輸送における内航海運暫定措置事業の導入、港湾運送の規制のあり方の見直し、内航旅客輸送における需給調整規制の廃止に向けた検討等、種々の施策を推進してきているところである。
 なお、海上輸送は、直接海上運送に携わるもののみならず、港湾整備、船員労働、造船技術、航行安全システム等によって支えられ、これらのすぐれた蓄積と発達が一体となって、日本の海を身近で利用可能なものとしており、物流構造改革等時代の大きな変革に対応する各種の施策を講じるに当たっても港湾行政、船員行政、海上技術安全行政、海上保安行政と相互に密接な連携をとって進めることがより一層重要となっている。


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