第2部 海上交通をめぐる現状・課題と政策的対応
(2)日本の外航海運企業の経営状況
(i)外航海運企業の概況
 平成9年央における日本の外航海運企業の構成は以下のようになっている。


図表2-1-26 外航海運企業の構成
 その概況は以下の通りである。


図表2-1-27 外航海運企業の概況
 これによると、オーナーについては1社当たり平均で、資本金40億1千万円、雇用船員数62.0人であり、純オペレーター(資本金4億9千万円、雇用船員数22.8人)と比べ、海運企業としての規模は大きくなっている。外航海運企業のうち、全く船員を雇用していない企業は約6割存在するが、そのうち純オペレーターが約7割を占めている。一般的に純オペレーターの雇用船員が少ない理由としては、 定期用船 が多いこと及び 裸用船 において 船舶管理会社 の活用があることが挙げられる。
 一方、総従業員数については、オーナーの1社当たりの平均が134.2人であるのに対して、純オペレーターは333.3人と、総従業員数については純オペレーターがオーナーの平均値を上回っている。また、総従業員数に占める船員数は、オーナーが平均46.2%であるのに対し、純オペレーターは平均6.8%と極めて低率になっている。これは、オーナーが海運業をほぼ専業としているのに対し、純オペレーターの中には海運業以外の業種を本業とし海運業をいくつかある業務部門のうちの一つとしている企業が相当数あることや、前述のとおり海運業を専業としながらも船員を雇用していない企業が多数存在するためと考えられる。

 次に、船舶の所有状況についてみると、大手5社については、会社数ではオ−ナ−全体に占める割合は6.8%と少ないが、その所有隻数及び総トン数は94隻、6,869千総トンで、オーナー全体に占める割合はそれぞれ55.3%、57.5%と、会社数の占める割合に比べるときわめて大きな比率を占めている。また、1社当りの所有隻数、総トン数及び1隻当りの総トン数についてみると、大手5社は、1社平均18.8隻、1,373.8千総トン、1隻当り平均73千総トンとなっている。
 一方、その他のオーナーは、会社数は69社(93.2%)と圧倒的に多いが、所有隻数は76隻(44.7%)となり、総トン数については5,083千総トン(42.5%)に止まっている。1社当りの所有隻数及び総トン数についてみると、1社平均1.1隻、74千総トンで、企業規模は相対的に小さい(図表2-1-28)。


図表2-1-28 外航海運企業の船舶所有状況
 次に、外航海運企業の8年度の経営状況をみる。
 8年度海運業収益は全体で3兆3,125億円であり、このうち、オーナー全体の海運業収益は2兆4,172億円と、全体の73.0%を占める。大手5社は全体の50.4%と過半数を占める一方、その他のオーナーの占める割合は全体の22.6%で、大手5社との間には収益規模において大きな格差がみられる。一方、純オペレーターの海運業収益は8,953億円で、全体の27.0%を占める程度であるが、営業収益に占めるその他事業収益のウェートが海運業収入の割合よりも高いことが特徴であり、海運業以外の事業分野に相当のウェートを置いていることが分かる。
 経常損益については、オーナーは422億円の黒字を計上しており、このうち大手5社分で85.0%を占めている。また、純オペレーターも424億円の黒字を計上している(図表2-1-29)。


図表2-1-29 外航海運企業の損益状況(8年度)
 一方財務状況については、オーナーの自己資本比率は25.2%と低くなっており、他人資本への依存度が高くなっている。純オペレーターにおいては、自己資本比率は48.6%と高くなっている(図表2-1-30、2-1-31)。


図表2-1-30 外航海運企業の財務状況(8年度)

図表2-1-31 外航海運事業者の財務比率(8年度)



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