第2部 海上交通をめぐる現状・課題と政策的対応
(3)日本籍船の減少
 1960年代後半以降の高度成長による人件費の上昇により、人件費のウェイトが高い在来貨物船(コンテナ船以外の貨物船)分野で日本籍船は急速にコスト競争力を失っていった。このため、これらの船舶はリベリア、パナマ等の便宜置籍国に売却され、主としてフィリピン等の発展途上国船員を配乗し再び日本船社が用船して運航されるようになった(チャーターバック船)。このような傾向は、71年のニクソンショックによる円レートの切り上げや、73年の変動相場制への移行等により拍車がかかり、さらには我が国外航海運企業が、リベリア、パナマ等に設立した自己の海外子会社に建造、当該国籍の船舶として保有させ、用船し運航する外国籍船(仕組船)が増えてきた。この結果、我が国商船隊に占める日本籍船の割合は、69年から80年にかけて、隻数ベースで86%から51%に、重量トン数ベースで84%から57%にまで低下した。
 しかしながら、日本籍船及び日本人船員の確保は、海運造船合理化審議会(海造審)や運輸政策審議会の答申等においても述べられているように、四面を海に囲まれ海外との交易によってその経済社会の発展を図り、また、世界の発展に寄与して行くべき我が国にとって、海運及び関連産業そのものとともに、貿易物資の安定輸送の確保、船舶運航等に係るノウハウの維持・向上、世界のトップレベルを行く造船業と連携した海上運送の安全の確保・向上及び海洋汚染防止を含む環境対策の充実等の面で、大きな意義を有している。
 このため、こうした日本籍船の減少に歯止めをかけるべく、日本籍船の国際競争力を強化し、あわせて日本人船員の職域を確保するため、83年以降乗組員を少数精鋭化した「近代化船」が導入され、その後も一旦海外子会社に貸し渡し外国人船員を配乗した上で用船する、いわゆるマルシップ方式による混乗船の導入等日本籍船の国際競争力を高めるための努力が続けられてきた。
 しかしながら、85年のプラザ合意以降急激に円高が進行する中で、日本籍船は再び大きく減少し、さらに、昨今為替相場が円安基調で推移する中にあっても減少は止まらず、97年央では182隻、1,880万重量トンとなっている(図表2-1-37)。


図表2-1-37 日本商船隊の構成の変化
(4)日本人外航船員の減少
 このように、わが国外航海運企業の国際競争力の低下により、日本籍船が減少していることに伴い、日本人船員は減少を続けている。
 この結果、日本人外航船員は、昭和60年の22,536人から平成9年には4,561人(対前年比▲11.6%)にまで減少している(図表2-1-38)。
 日本人外航船員は、高年齢層の占める割合が高く、近い将来大量の退職が発生することもあり(図表2-1-39)、将来的に貿易物資の安定輸送の確保等に支障をきたさないよう日本人船員の確保・養成が重要な課題となっている。


図表2-1-38 日本人外航船員数の推移


図表2-1-39 日本人外航船員の年齢構成


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