トピックで見る日本海運 トピックで見る日本海運

FMC制裁措置発動(平成9年9月)

 平成9年9月、米国連邦海事委員会(FMC)は、我が国の港湾労使慣行である事前協議制度等を問題として、この問題につき何の罪もない我が国海運企業3社に対し、米国の港に寄港する度に10万ドルの課徴金を課すという一方的な制裁措置を発動した。
 これに対し、当該制裁措置は明らかに日米友好通商航海条約違反であるため、即時撤回を求めて、同年10月10日から日米海運協議を開催したが、米国が港湾労使問題への日本政府の介入を求めたため協議は難航した。17日には、事前協議制度の改善等について大筋合意に達し、制裁措置は停止されたが、依然としてFMCが制裁措置停止前の課徴金の徴収に固執したため、27日、我が国海運企業3社はFMCに対し9月分の課徴金として150万ドルを支払うことを余儀なくされた。
 FMCは未だ制裁措置を撤回しておらず、運輸省としては、同条約に基づく協議において制裁措置の全面撤回を求めている。(FMC制裁問題参照)


日本のコンテナ船の荷役風景

運輸施設整備事業団設立(平成9年10月)

 船舶整備公団は、昭和34年に国内旅客船公団として設立されて以来、船舶の共有建造方式等により国内旅客船及び国内貨物船の建造等を促進し、離島航路をはじめとする国内旅客船の近代化及び大型化、内航海運の構造改善、モーダルシフトの推進に寄与してきたところであるが、近年の需要の高度化、多様化等に的確に対応した輸送体系の確立を図る等の観点から、平成9年10月1日、鉄道整備基金と統合、再編を行い、運輸施設整備事業団として新たなスタートを切ることとなった。
 事業団は、これまで船舶整備公団及び鉄道整備基金が行ってきた業務に加え、新たに次世代の運輸技術の開発に必要な基礎的研究等の運輸技術に関する基礎的研究業務を行う等、幅広い業務を行うこととしている。(運輸施設整備事業団の取り組み参照)

国民のニーズに対応した輸送体系の確立を図る

日本郵船と昭和海運の合併発表(平成10年3月)

 外航海運では、熾烈な国際競争の中にあって、各国各社とも生き残りを賭けてコスト削減、経営資源の有効活用等の観点から企業間提携等多様な経営戦略を進めている。
 平成9年にはP&OCL(英国)とネドロイド(オランダ)が合併したが、我が国においても、平成10年3月27日に業界最大手の日本郵船(株)と不定期船大手であって業界第5位の昭和海運(株)が、同年10月1日を目途に合併することに同意したことが発表された。
 この合併は、企業基盤の強化を目指したものであり、両社の事業領域が統合され、国際競争力が強化されることが期待されている。(
大手海運企業の合併参照


両社社長による記者会見「産経新聞社、日本工業新聞社提供」

客船クルーズ事業振興懇談会報告書まとまる(平成10年5月)
〜目標 平成20年クルーズ人口100万人〜

 我が国に本格的な外航クルーズ客船が登場し、「クルーズ元年」と言われた平成元年から、10年目を迎えた。この間、日本人の外航クルーズ客数は約2倍となったものの、景気の後退等の影響もあり、当初期待したほどの増加には至っていない。
 このため、平成9年12月に、関係者からなる「客船クルーズ事業振興懇談会」が設けられ、これまでの10年間をレビューし、客船クルーズ事業の振興のための方策、今後のあり方について検討が行われた。
 同懇談会においては、クルーズ事業の振興のためには、クルーズ船運航企業、旅行会社、航空会社、国・地方公共団体が連携を深め、バラエティーあるクルーズ商品等新規商品を開発し、新規顧客の開拓を行う等の方策を講ずる必要があるとされており、それら方策を実施することにより、平成20年に我が国のクルーズ人口を100万人にすることが目標として提言されている。(外航クルーズの振興参照)


外航クルーズ客船「飛鳥」

若年船員養成プロジェクト募集開始(平成10年5月)

 日本商船隊を支える上で重要な役割を担っている日本人船員については減少に歯止めがかかっておらず、将来を見据えたその確保・養成が不可欠である。また、日本籍船の国際競争力を確保するため、運輸省では「国際船舶」における日本人船長・機関長2名配乗体制の導入に向けた取り組みを進めているが、こうした日本人船員の少数配乗体制の導入により、日本人船長・機関長には従来にも増して高い指揮監督や業務遂行等の能力が求められることになる。さらに、我が国外航船員は、高年齢層の占める割合が高く、将来にわたって貿易物資の安定輸送の確保等を図るため、これまでの船員養成に比し、より実践的な能力を有した船員を早期に養成するスキーム作りが求められている。
 このため、運輸省では、シミュレータを活用したり実地の乗船訓練等を通して実践的な訓練を施す「若年船員養成プロジェクト」を平成10年度よりスタートさせることとし、実施主体である(財)日本船員福利雇用促進センターが第1期訓練生の募集を開始した。(教育訓練スキームの確立参照)


貿易物資の安定的な輸送を担う日本人船員

内航海運暫定措置事業の導入(平成10年5月)

 内航海運においては、いわゆる生産調整が困難で供給過剰(船腹過剰)に陥りやすい体質を有していたことから、昭和41年よりスクラップ・アンド・ビルド方式(船舶建造(ビルド)に当たり船舶の解撤等(スクラップ)を求める方式)による船腹調整事業が実施されてきたが、平成10年3月の海運造船合理化審議会内航部会の報告書を踏まえ、内航海運業のさらなる活性化を図るため、船腹調整事業を解消することとし、これまで財産的価値を有することとなっていた自己所有船の引当資格につき、自己所有船を解撤する転廃業者に、その補償として、日本内航海運組合総連合会が交付金を交付すること等を内容とした内航海運暫定措置事業を平成10年5月に導入した。
 内航海運暫定措置事業の導入により、一定の納付金を支払えば船舶を建造することが可能となり、船舶建造の自由度が高まること、また事業規模の拡大や新規参入が促進されることになるため、今後、内航海運の構造改善や活性化が促進されることが期待される。(内航海運政策参照)


内航自動車専用船

港湾運送事業の規制の見直しに着手(平成10年5月)
〜効率よく使いやすい港を目指して〜

 港湾運送事業に関しては、事業免許制・料金認可制により、安定的な港湾運送の確保、悪質な労務供給事業者の排除等を図られてきたところであるが、一方で、その弊害も生じてきたことから、平成9年12月、行政改革委員会は、事業の効率性の向上、船社のニーズに沿ったサービスの確保といった要請に対応するため、1.現行の事業免許制(需給調整規制)を許可制に、料金認可制を届出制とすべきであること、2.同時に、港湾運送の安定化や悪質な労務供給事業者の参入防止等を図るための諸施策を関係者の十分な議論の下に講ずる必要があること等を内容とする意見を取りまとめ、内閣総理大臣に提出した。
 運輸省においては、平成10年5月に運輸政策審議会の海上交通部会を、また6月には同部会の第1回港湾運送小委員会を開催し、規制の見直しと、それに伴う港湾運送の安定化等の具体化に向けた議論を開始した。(港湾運送事業活性化への取り組み参照)


運輸政策審議会海上交通部会港湾運送小委員会

外国資格受有者に対する承認制度創設(平成10年5月)

 我が国外航海運の国際競争力の強化を図るため、平成9年5月に取りまとめられた海運造船合理化審議会海運対策部会報告「新たな経済環境に対応した外航海運のあり方」において、安定的な国際海上輸送の確保上重要な一定の日本籍船である「国際船舶」については、船長及び機関長は日本人船員であることを原則とする混乗体制で運航できるよう、船長及び機関長以外の職についての外国人船員に対する海技資格の付与等の実施に向けて検討を進めることが提言された。
 これを受け、運輸省では、外国人船員に対する海技資格の付与等の方策について検討を進め、船舶職員法一部改正法案を国会に提出し、本年5月同法案が可決したことにより、STCW条約(1978年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約)の締約国が発給した資格証明書を受有している者であって、運輸大臣の承認を受けたものは、海技従事者の免許を有しなくても、船舶職員として日本籍船に乗り組むことができるとする制度が創設された。(日本人船長・機関長2名配乗体制の導入参照)


今後一層の活躍が期待される外国人船員

運輸政策審議会海上交通部会の答申まとまる(平成10年6月)
〜旅客船事業に係る需給調整規制の廃止〜

 運輸省は、平成8年12月、従来の運輸行政の転換を行い、需給調整規制を原則として廃止することとした。これを踏まえ、平成9年4月、運輸政策審議会に対し、交通運輸における需給調整規制廃止に向けて必要となる環境整備方策等について諮問を行い、旅客船事業については、同審議会の下に設置された海上交通部会旅客船小委員会において審議が行われた。
 平成10年6月、同部会は、参入につき免許制を許可制に、退出につき許可制を届出制に、運賃については認可制を事前届出制にするなど市場原理の導入による利用者利益の増進を図る観点から規制を最小限にするとともに、消費者保護、安全確保のための方策として従前からの方策に加え情報提供の充実等を図るべきこと、またいわゆる生活航路については、その維持のための所要の規制及び公的支援等の措置を講じることが必要であるとの答申をとりまとめた。(需給調整規制の廃止等参照)


運輸政策審議会海上交通部会

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