第2部 海上交通をめぐる現状・課題と政策的対応
2.モーダルシフトの推進
(1)モーダルシフトの推進の必要性

 我が国の国内貨物輸送において、近年、環境問題、道路混雑、労働力問題といった物流をめぐる制約要因が顕著になる中、トラック輸送に過度に依存しない物流体系の構築に対する社会的期待に対応するため、運輸省は モーダルシフト の推進に積極的に取り組んでおり、単位輸送量当たりのエネルギー効率が高く環境に対する負荷が低い内航海運は、その受け皿として大きな期待が寄せられている。

モーダルシフトを担う内航RORO船 (2)モーダルシフト推進施策

 内航海運へのモーダルシフトを推進するためには、その受け皿となる船舶の運航コストの削減、利便性の高いターミナル、ダイヤ設定、高速化、目的地等を同一とする大量貨物の一括集荷、陸上輸送機関との円滑な接続等の主要な課題に対応していく必要がある。このため、運輸施設整備事業団の船舶共有業務の弾力化、複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルの拠点的整備、複合一貫輸送推進インフラ事業等の施策を推進することにより、総合的に内航海運へのモーダルシフトの推進を図ることとしている。

3.運輸施設整備事業団の取り組み
(1)運輸施設整備事業団の設立

 鉄道事業者、海上運送事業者等による運輸施設の整備を推進するための支援を総合的かつ効率的に行うことにより、輸送に対する国民の需要の高度化、多様化等に的確に対応した大量輸送機関を基幹とする輸送体系の確立を図るとともに、運輸技術に関する基礎的研究に関する業務を行うことにより、陸上輸送、海上運送及び航空運送の円滑化を図り、国民経済の健全な発展と国民生活の向上に寄与することを目的として、平成9年10月1日船舶整備公団と鉄道整備基金が統合され運輸施設整備事業団が設立された。また、統合に伴い、従来の船舶整備公団の業務についてもあわせて全般的な見直しを行った。

(2)事業概要(船舶関係業務等)

 国内旅客船や内航貨物船は老朽船が多く、事業者には中小事業者も多いことから、船舶の改善が容易に進まない状況にある。このため、事業団では、 共有建造方式 により、これらの船舶の近代化・合理化を推進するとともに、船舶改造に対する融資及び運転資金等に係る債務保証業務も行うことにより、海上運送の効率化を図っている。
 平成10年度については、特に、現下の厳しい経済情勢を踏まえ、内航海運の活性化を図るため、モーダルシフト船等に対する手数料の一部免除、共有比率の引き上げ、共有期間の繰り延べ等の共有業務の弾力化措置を講じており、内航海運組合総連合会の行う内航海運暫定措置事業に要する資金の融資の業務も開始されることになった。

(3)平成9年度事業実施状況及び平成10年度事業計画等

 平成9年度船舶建改造事業は、内航貨物船、国内旅客船とも、国内景気の低迷等により、前年度に比し建造量は大幅に減少した。


図表2-2-16 船舶建造実績
(単位:百万円)
  貨物船 旅客船
年度 隻数 総トン数 事業団
分担額
隻数 総トン数 事業団
分担額
63 90 100,487 32,552 21 40,174 16,074
55 57,268 24,820 28 56,595 28,657
48 45,545 25,452 21 36,150 18,004
92 96,713 51,009 20 60,498 31,140
○運輸省海上交通局資料による。
(注) ( )内は実事業者数である。なお、許可事業と届出事業、運送業と貸渡業を兼業している業者もあるため、合計値は一致しない。
(2)内航海運の運賃協定の見直し

 従来より、荷主の優位性が強い内航海運においては、沖縄航路運賃同盟をはじめとした8つの運賃同盟を締結し、適正な運賃水準の確保を通じた内航の安定輸送の確保を図っていたが、運賃同盟は価格競争を制限するものであることから、内航海運の活性化への支障が指摘されるようになった。このような状況を受け、平成8年3月の「規制緩和推進計画の改定について」において、以下のとおり閣議決定された。

・沖縄航路運賃同盟及び先島航路運賃同盟については、デイリーサービスの確保の観点から実施されている共同運航関係の協定に限って引き続き適用除外を認める。
・内航タンカー運賃協定、内航ケミカルタンカー運賃協定については、平成10年度末までに廃止する。
・その他の運賃協定については平成8年度末までに廃止する。

 これを受けて、平成8年11月末までに北海道定期航路運賃同盟等6協定が廃止され、沖縄関連の航路についても、デイリーサービスの確保の観点から、平成8年10月に阪神/沖縄航路共同運航協定及び沖縄本島/先島航路共同運航協定が締結されたことに合わせて運賃同盟が廃止された。
 内航海運の運賃協定の見直しを行うに際しては、併せて荷主の優越的な地位の濫用を防止し、公正な取引関係を構築していくための新たな措置を講じることが不可欠であることから、運輸省の意見も踏まえ公正取引委員会では、平成10年3月「役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針」をとりまとめた。これにより、荷主の優越的な地位の濫用の防止が図られるものと期待される。



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