第4章 海陸の結節点として機能する港湾運送


第4章 海陸の結節点として機能する港湾運送

1.港湾運送とは

コンテナターミナル(東京・青海ふ頭)
アンローダ
 港湾においては、陸上輸送と海上輸送の結節点として、船舶への貨物の積み卸しなどを行う荷役をはじめ、貨物の仕分け等を行う上屋等への搬出入及び一時保管、さらには船積み貨物の重量の検査や証明等が行われており、これらをまとめて港湾運送と呼んでいる。
 平成8年に取り扱った港湾運送量1,148百万トンのうち、コンテナ貨物が約3割を占めており、続いて鉄鋼・石炭・金属鉱がそれぞれ1割強、自動車が1割弱となっている。
(i)港湾荷役形態の変遷
 かつては港湾荷役は人力に頼ることが多く、荷捌きのための時間がかかったが、コンテナ化や機械化・情報化が進み、作業の効率化が進んできた。特にコンテナの登場により、荷役効率は在来荷役の10倍以上になったと言われている。
(ii)荷役の機械化・情報化
 コンテナ貨物については、ガントリークレーンと呼ばれる大型の荷役機械を用いて船舶からの積み卸しを行い、ストラドルキャリアーやトランステナー等を用いて背後のコンテナヤードに一時的に整理・保管される。
 コンテナ荷役は一度に大量の個数のコンテナを扱うため、貨物の動きを集中管理する必要がある。このため、コンテナヤード全体が見渡せるコントロールセンターにおいて貨物の動きをコンピューターで集中管理するとともに、ガントリークレーン、トランステナー等に作業の指示を与えている。
 また、バルク貨物については、専用船で運ばれてくる穀物や石炭・鉄鉱石、チップなどのバルク貨物の積み卸しは、アンローダ等の大型の荷役機械によっており、短時間で大量のバルク貨物を捌くことが可能となっている。


2.港湾運送の果たす役割

夜間荷役 (1)陸上輸送と海上輸送の結節点
 日本の貿易量の99.8%は海上貿易が占めており、また金額ベースでも約8割が海上貿易によって行われている。
 港湾運送は、陸上輸送と海上輸送の結節点である港湾において、両者を円滑に結びつける不可欠かつ重要な役割を果たしている。
(2)生活を支える港湾運送
 我々の生活に欠かせない大豆や小麦のほとんどが海外から輸入されており、また、衣料品や家庭用品、紙類や木材なども海外から輸送され、港湾運送を介して全国各地に輸送されている。
 私たちの生活は港湾運送なくして立ち行かないのであり、港湾輸送がストップすれば私たちの日常生活はたちまち行き詰まってしまう。逆に港湾輸送がより効率的に行われれば、そのプラスの影響は国民生活、国民経済全般に及ぶものと考えられる。
(3)港湾輸送のサービス向上による国民生活・経済への貢献
 このような港湾運送の効率化、サービスの向上は、前述の荷役の機械化・情報化等により、進められてきたところである。また、保管や荷捌き、流通加工等のサービスを総合的に備えた総合輸入ターミナルの整備により、内陸輸送とのスムーズな接続を行っている。
 今後、国民生活、経済に大きな影響を及ぼす港湾運送について、関係者の取組により、さらに効率的、安定的なサービスの提供が行われるようにしていくことが重要である。



<コラム> 産業立地競争力
 最近、1995年4月をピークとする超円高期を前後して、日本企業の海外での現地生産が拡大したことから、「産業立地競争力」という表現で、それぞれの国、地方の税率、人件費を含むコスト等のほか、市場との距離を意識した輸送関連コストが問題とされる傾向がある。
 しかしながら、企業の事業活動の拠点選択に当たって、これらが真の判断要素となっているか否かについて十分な検証が必要である。
 そのいくつかの反証を以下に掲げてみると・・・
 
(1) 企業の海外事業展開等に関するアンケート調査結果を見ると、為替レートなどで大きく変動するコスト比較よりも、市場への密着度、将来の市場拡大余地への評価を重視する傾向が強い。(下図参照)
(2) コストを主眼とする立地選択では、為替レートの変動、各地の人件費をはじめとするコストの上昇に伴って、立地を転々とする必要が生じるが、現実にそうした活動を行う場合のリスクは大きいと考えられる。
(3) 日本の海運企業をはじめとして輸送関連コストの低廉化には様々な努力が続けられてきているが、極東の島国たる日本の工業製品が遠くヨーロッパや北米市場で大きな市場シェアを獲得することができたことは輸送関連コストとの関連では説明できない。


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