第7節 世界の国々との観光交流強化施策の展開

  1. 観光関係二国間協議の開催
     我が国は、諸外国との観光交流を一層促進するため、観光分野で関係の深いいくつかの国との間で二国間の観光協議を定期的に開催している。
     現在、定期協議を開催している相手国は、韓国、中国、米国、スペイン、カナダ、豪州及びドイツの7か国であり、これらの国とは、原則としておおむね年1回、日本と相手国とで交互に開催している。
     なお、12年度内に実施した協議は表3-7-1のとおりである。

    表3-7-1 平成12年度に実施した観光関係二国間協議

  2. 国際機関等に対する協力
    (1)世界観光機関に対する協力

     世界観光機関(WTO)は、観光の分野における世界的規模の国際機関であり、観光の振興・開発、旅行の容易化、観光の調査・研究等の面における国際協力を推進しているほか、国際旅行統計に関する年報を編集刊行している。
     2001年1月現在、加盟国は133か国、準加盟地域は6地域、賛助加盟員は約350団体である。日本は加盟国(1978年加盟)としてその活動に参加しているほか、国際観光振興会、(財)日本交通公社、(社)日本旅行業協会、日本航空(株)が賛助加盟員となっている。
     なお、1995年6月にWTOで唯一の地域事務所として大阪に設置されたアジア太平洋事務所は、アジア太平洋地域におけるWTOの活動拠点として域内の観光振興のための活動を行っており、我が国は、同事務所に対し資金を拠出するとともに、その活動を支援しているなど、WTOの活動を支える大きな役割を担っている。
     また、1999年9月に開催されたWTO第13回総会(開催地:チリ・サンチャゴ)において、次回の第14回総会を、WTO総会では初の共同開催として、日本と韓国(開催地:大阪及びソウル、開催時期:2001年9月)で開催することが決定されている。

    2)東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センターに対する協力
     東南アジア貿易投資観光促進センター(ASEANセンター。平成13年4月1日より、日本アセアンセンターに略称変更。)は、日本・ASEAN諸国間の貿易、投資及び観光の促進を目的として設立された国際機関であり、我が国及びASEANの7カ国が加盟し(ラオス、ミャンマー、カンボディアはオブザーバーとして参加。カンボディアについては、平成13年度正式加盟予定。)、加盟国は資金拠出等を行っている。
     観光分野においては、我が国からASEAN諸国への観光促進を目的として、「アセアン観光フェスティバル」の開催、「アセアン・ツーリズム・フォーラム」へのミッション派遣、ASEAN諸国における日本観光セミナー、観光日本語訓練等の各種事業を実施している。
     特に、平成12年度においては、ASEANセンターが主催した特別プロモーション・キャンペーン「日本―アセアン2000:新たなる挑戦に向かって」の下、観光分野について、「アセアン写真&絵画コンテスト」や沖縄において「アセアン観光フェスティバル」を開催した。

    アセアン観光フェスティバル

    3)南太平洋経済交流支援センターに対する協力
     南太平洋経済交流支援センター(通称:太平洋諸島センター)は、我が国と太平洋諸島フォーラム(PIF)(フィジー、パプア・ニューギニア等の太平洋の16の国・地域で構成する地域協力機構、2000年10月に南太平洋フォーラムから(SPF)改称)を代表する同フォーラム事務局により、1996年10月に東京に設立された国際機関であり、我が国と太平洋諸島フォーラムが資金拠出を行っている。
     同センターは太平洋島嶼国の対日輸出の促進、我が国から島嶼国への投資・観光の促進を目的としており、見本市・投資促進フェアーへの参加、島嶼国産品展示会・セミナーの開催、各種照会への対応、出版物の発行等を実施している。観光促進の分野においては、セミナー開催に加え出版物を作成しており、すでに「観光プロファイル―ホテルガイド」、「フォトアルバム」、「魅惑の観光スポット―ミクロネシア編」の3種類を発行した。

  3. 開発途上国への協力
     開発観光の振興は、国際間の相互理解の増進のみならず、国際収支の改善、雇用機会の創出等旅行者受入国の国民生活の安定向上に寄与するものである。このため、我が国は開発途上国の観光振興に資するため次のような協力を行っている。

    1)国際協力事業団を通じた協力
     国際協力事業団を通じて、チュニジア国観光開発計画調査を継続し、ヴィエトナム国中部観光開発計画調査、グァテマラ国全国観光開発計画調査、南アフリカ国観光開発調査に着手した。なお、ペルー国全国観光開発マスタープラン作成調査(フェーズ2)、エジプト国観光開発総合計画調査、ジョルダン国観光施設建設事業実施設計計画調査、コスタ・リカ国沿岸地域観光土地利用計画調査は最終報告が作成され、観光開発に係る包括的な提言を行った。
     また、ミャンマー、カンボディア、ジョルダン、ラオス、ウズベキスタン、アルゼンティン、ブラジル等に専門家を派遣して観光振興などについての提言等を行った。
     さらに、観光分野の途上国の行政官等に対する研修を実施しており、特設研修として「観光振興とマーケティング」で17カ国18名、「観光開発と環境保全」で10カ国10名、さらに、国別特設研修として「ペルー観光産業育成計画指導者セミナー」で9名、「モン
    ゴル観光開発」で6名、「南部アフリカ地域観光振興セミナー」で9カ国10名、「大洋州地域持続可能な観光開発」で8カ国8名を受け入れた。

    2)(財)国際観光開発研究センターを通じた協力
     このほか、(財)国際観光開発研究センターを通じ、開発途上国に対する観光開発協力の基本的な方針・観光拠点開発構想の検討を目的として、国際観光開発促進協力調査をイラン、南部アフリカ、キューバにおいて実施したほか、観光開発と環境保全のあり方との関連等に関する調査を実施するため、途上国における環境に配慮した観光開発のあり方に関する調査をヴィエトナム、パラオにおいて実施した。また、観光開発等に関する情報を収集するため、海外観光情報収集調査をクロアチア、スロヴェニア、エクアドル、ヴェネズエラにおいて実施した。

    3)地域観光産業の振興への参画
     また、中東地域においても、我が国は、中東和平プロセスを側面から支える多国間協力の一環として、多国間協議・経済開発ワーキング・グループの観光分野のシェパード(世話役)として観光ワークショップを主催するなど、地域の観光産業の振興に積極的に参画している。
     具体的には、中東・北アフリカ地域の観光振興を行う機関としての「中東・地中海旅行観光協会(MEMTTA)」の設立に向けた議論を進め、1995年10月には同観光協会の設立憲章の署名、1996年には本部(チュニジア)の設置が行われた。また、1998年3月には、同協会の活動を支援すべく、本邦にて「中東観光振興セミナー」を開催した。
     中南米地域においては、2000年5月に、日本・メキシコ間の賢人会議である「新日墨21世紀委員会」が、メキシコへの日本人観光拡大等のための提言をとりまとめた。
     カリブ地域に対しては、1997年から1999年まで毎年カリブ諸国の政府関係者を対象とした観光振興セミナーを日本で開催した。また、2000年には、カリブ観光機関(CTO)に対し、国連開発計画(UNDP)を通じて人材育成のための協力を実施したほか、同年11月に開催された日・カリブ閣僚レベル会議では、カリブ地域の観光振興に対する協力を推進していくことが決定された。

  4. 国際航空と外航海運の充実等
    (1)国際空港の整備等

     我が国の空港整備については、空港の計画的かつ着実な整備を図るため、昭和42年度以来五箇年計画を策定している。
     第7次計画(平成9年に2年延長され七箇年計画となっている。)においては、航空ネットワーク形成の拠点となる大都市圏拠点空港の整備を最優先課題として推進することとしており、このような認識に立ち、関西国際空港、中部国際空港等の整備を進めているところである。
     具体的には、関西国際空港については、2期事業として、4,000mの平行滑走路等を整備する計画であり、平成19年の平行滑走路供用開始をめざし、事業を推進している。中部国際空港については、名古屋の南概ね35kmの常滑沖海上に、長さ3,500mの滑走路一本を有する面積470haの新空港を平成17年の開港を目途に整備する計画である。

    2)国際航空路線網の充実等
     国際航空については、平成12年にはイスラエルとの間で新規に航空協定を締結したほか、米国や韓国を含む24か国と航空当局間協議を行った。
     なお、これらの航空当局間協議の結果、韓国、フィンランド等18カ国との間で平成14年5月に供用開始が予定されている成田暫定平行滑走路の活用等による輸送力の増強等について合意した。

    3)外航客船旅行の振興
     外船客船旅行の振興については、(社)日本外航客船協会を通じて安全の確保及び利用者の保護に関する施策を講じる一方、外航クルーズ利用者に対して実施したアンケート等により得られた情報を基に広く国民に外航クルーズに関する情報提供を行っているところである。平成12年度は全国3都市において港に停泊中の外航クルーズ客船のホール等を会場として外航クルーズに造詣の深い文化人による「クルーズ文化講演会」等を実施している。