第6節 宿泊・休養施設の整備施策の展開

第6節のポイント
 ホテル、旅館の整備とともに、国民宿舎、ユースホステル等公的施設の整備を推進した。
 高齢者が利用しやすい施設として、シルバースター登録制度の普及が進んだ。
 長引く景気の低迷の中でホテル、旅館は厳しい経営状況にあり、様々な経営努力や支援措置が講じられている。

  1. ホテル、旅館等の整備
    (1)概況

     宿泊施設については、「旅館業法」によって、公衆衛生及び国民生活の向上の見地から各種の規制が加えられている。業として営まれる宿泊施設には、いわゆるホテル、旅館から民宿、山小屋に至るまで様々な形態があるが、これらはすべて「旅館業」として「旅館業法」の適用対象とされており、その経営には都道府県知事等の許可が必要とされている。
     また、旅館業を営む者は、「環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律」に基づき、都道府県ごとに環境衛生同業組合を組織し、衛生施設の改善や経営健全化のための自主的活動を行っており、国においても全国及び都道府県の(財)環境衛生営業指導センターの行う経営指導事業等について助成を行っている。
     このほか、ホテル・旅館のうち、外客の宿泊に適した一定水準以上の施設を有するものについては、「国際観光ホテル整備法」に基づき登録し、その施設整備を支援しているほか、これらの登録ホテル・旅館の宿泊情報を外国人に提供して、在日外国人の利便の向上を図っている。

    1ホテル
     平成11年度末現在で「旅館業法」により営業の許可を受けているホテルは、表4-6-1のとおり8,110軒、客室61万2,581室で、1ホテル当たりの平均客室数は75.5室となっている。前年に比べ軒数で2.1%増となっている。

    表4-6-1 ホテル数等の推移

     このうち「国際観光ホテル整備法」による国土交通大臣の登録を受けている登録ホテルは、11年度末現在1,083軒、客室数は19万4,946室となっている。

    2旅館
     11年度末現在における全国の旅館数は、表4-6-2のとおり、6万6,766軒、客室数96万7,645室で、1旅館当たりの平均客室数は14.5室となっている。

    表4-6-2 旅館数等の推移

     これらの旅館のうち「国際観光ホテル整備法」により登録されたものは、11年度末現在で2,045軒、客室数11万8,863室となっている。
     宿泊施設やサービス・料理等の面で高齢者が利用しやすい旅館・ホテルとして一定の基準を満たした旅館・ホテルを全国旅館生活衛生同業組合連合会がシルバースター旅館として認定登録し、従業員等に対し高齢者の接遇等について教育研修を実施している。12年12月現在で879軒の旅館・ホテルが認定登録されている。

    3民宿・ペンション等
     民宿は、比較的低料金で宿泊することができ、かつ、家庭的なサービスを受けられることから、多くの人々に利用されている。また、ペンションも若い世代を中心に利用されている。
     民宿・ペンション等を含む簡易宿所数は、表4-6-3のとおりである。

    表4-6-3 簡易宿所営業施設数の推移

    2)整備
     一定規模の旅館については、衛生水準を高めその近代化を促進するため、国民生活金融公庫において、長期かつ低利の設備資金・運転資金(「旅館業の振興指針」に基づいて行われる事業(振興計画事業)に係る資金等)を融資しており、11年度における融資実績は204億円となっている。
     また、国際観光の基盤施設等として、重要なホテル、旅館の整備を促進するため、民間金融機関からの融資のみでは起業及び採算維持が困難である場合においては、政府系金融機関から融資が行われている。

    3)経営状況
     主要登録ホテルにおける客室利用状況は、表4-6-4のとおりとなっている。12年と11年を比較すると京浜地区は1.3%の増、京阪神地区は3.5%の増、地方都市は0.2%の減、リゾート地区は0.5%の増で、全国では1.0%の増となっている。

    表4-6-4 主要登録ホテルの客室利用状況の推移

     経営状況については、表4-6-5のとおりとなっている。11年度と前年度を比較すると、ホテルにおいては、赤字ホテルの割合は54.8%から42.2%へ、赤字旅館の割合は51.6%から50.6%へそれぞれ減少している。

    表4-6-5 主要登録ホテル・旅館の経営状況

  2. 公的施設の整備
    (1)国民宿舎

     国民宿舎は、自然公園、国民保養温泉地等自然環境に恵まれた休養適地において、国民の誰もが健全なレクリエーションを楽しみつつ、健康の増進を図ることを目的とした低廉で快適な宿泊休養施設で、11年度末現在全国で246施設あり、811万人が利用している。

     2)ユースホステル
    ユースホステルは、青少年の「旅をしたい」「野外活動をしたい」という意欲にこたえ、見聞を広めたり自立心を育むとともに、外国青少年を含めた多くの青少年と交流し合うことにより協調性や国際感覚の醸成を図る青少年の健全育成を目指した低廉な宿泊施設である。
    公営ユースホステルは全国に35か所あり、地方公共団体によって運営されており、公営を除くユースホステルは、(財)日本ユース・ホステル協会の直営又は契約により運営されている(表4-6-6)。

    表4-6-6 ユースホステルの状況

     12年度に同協会は、ユースホステル活動指導者養成講習会、ペアレント研修会、ユースホステル国際交流事業等を行ったほか、国庫補助を受け、全日本ユースラリーを開催した。また、同協会は、学校週5日制に対応し、青少年の学校外活動の充実を図るため、全国の各ユースホステルの特色をいかした青少年のための様々な事業を実施した。

    3)その他の宿泊施設
     上記のほか、参考-3に記載されている公的観光レクリエーション地区等の関連宿泊施設に加え、簡易保険加入者の福祉を増進するための施設として、簡易保険保養センター(79か所)、勤労者の福祉を増進するための施設として、勤労者野外活動施設(32か所)、勤労総合福祉センター(24か所)、労働福祉事業団体休養所(8か所)などがある。