5.遭難の状況と防止対策の推進
1)山岳遭難の防止対策
1概況
 2年中の全国における山岳遭難は、発生件数1,215件、全遭難者数1,494人で、前年と比べ、発生件数で20件(1.7%)、遭難者数で50人(3.5%)増加した。
 遭難の特徴としては、1遭難者に占める中高年登山者の比率が依然として高いこと、2体力及び技術の不足を始め、気象判断の誤りや装備の不備・登山計画書の未提出等の登山の基本的な知識や技術を欠いたことによる遭難が多いこと、3遭難が発生した際に自救能力のないパーティが多いこと、4ツアー登山では、参加者自身の体力・健康などの問題やガイドの人員不足、経験不足により、ガイドが登山者に同行していながら遭難するケースが多いこと等が挙げられる。

2 防止対策
 山岳遭難の防止のために、山岳救助隊等を設置して救助体制を確立するとともに、山岳遭難の発生実態の把握及び分析を行い、インターネットを始め、各種の広報媒体を通じて国民に登山の留意事項、山岳情報等を積極的に提供して、安全登山の啓もうに努めたほか、関係機関、団体等と連携して、登山道における危険箇所の点検、道標の整備及び登山者に対する安全登山の指導を行うなどの諸施策を推進した。

2)水難の防止対策
1概況
 12年中における水難は、発生件数1,813件、死者数(行方不明者を含む。以下同じ。)1,006人であった。
 これを前年と比較すると、発生件数で131件(6.7%)、死者数で173人(14.7%)と減少した。死者のうち、中学生以下の子供は112人で、前年に比べ7人(5.9%)減少し、全体の11.1%を占めている。また、遭難して救助された者は1、157人であった。
 なお、8月に群馬県内を流れる湯檜曽川で鉄砲水により31人が流され、1人が死亡し、6人が負傷するという特異な事案が発生している。

2 夏期(6月〜8月)
 水難の発生は、例年、6月から8月に集中しており、12年中においても、この3か月で1,012件発生し、年間死者数の55.8%に当たる561人が水死した。
 12年夏季の主な水浴場への人出は約4,753万人と、前年に比べ約13万人(0.3%)減少し、水死者数は61人(9.8%)減少した。
 なお、夏期における事故件数を場所別、行為別に見ると図4-8-2のとおりである。

図4-8-2 場所別・行為別事故件数(12年6〜8月)

3 防止対策
 都道府県、市町村、警察、消防、海上保安庁及び学校等関係機関、団体の連携の下に、地域住民の水難防止意識の高揚を図り重点的かつ実践的な水難防止活動を行っている。12年12月末現在、全国で8県(福島県、福井県、滋賀県、兵庫県、和歌山県、長崎県、宮崎県、沖縄県)において、遊泳者の保護等を目的としたいわゆる水上安全条例が制定されている。
 また、関係機関等において、水難が発生しやすい危険箇所を調査の上、危険区域の設定、表示、柵やふたの設置等保全措置の促進、緊急救助体制の確立、救助用資機材の整備充実に努めたほか、特に幼児に対する保護者の監護及び小中学生に対する安全教育を徹底し、その実効を期した。さらに、海浜パトロールや船舶・航空機等による監視活動を強化し、水難防止の呼び掛け、遭難者の早期発見、救出救護に努めるとともに、各地で水難防止に関する広報を行ったほか、救急法講習会や各種の救助訓練を実施した。
 また、海洋レジャー活動の活発化する時期及び海域を考慮し、船舶・航空機を配備するなど、迅速かつ的確な救助に努めた。

3)避難体制の確立
 観光旅行者は、一般に地理等に不案内であるため、これらの人々に対し災害危険箇所及び避難場所・避難路等について周知徹底を図る必要がある。
 そこで、地方公共団体に対し、事前に避難路や避難計画を定めるとともに、避難場所等の安全性についての点検、観光旅行者等への迅速かつ確実な情報伝達及び十分余裕をもった避難の勧告・指示等避難誘導体制全般の整備を図るよう要請した。また、防災関係機関との連携の下に、実践的な防災訓練を実施するよう要請した。
 また、離島及び半島地域並びに沿岸域において火山噴火、地震、津波等の災害が発生した場合における海上からの救難・救助活動を迅速かつ適切に実施するため、海岸線、水深等の自然情報、公共機関所在地等の社会情報及び災害危険地、避難地等の防災情報を網羅した沿岸防災情報図の作成及び調査を行った。