第1章 触れ合いと活力に満ちた観光交流大国日本の実現をめざして

 21世紀には、旧来の社会や組織に全人格的に帰属することなく自立した個人が、それぞれの個性を発揮しながら幅広く活動する時代が到来すると考えられる。経済優先から生活の豊かさへ国民の関心が移行している事も踏まえると、観光の振興は今後ますますその重要性を増していくと思われる。
 今後は、このような大きな変化を踏まえながら、観光の振興を図っていくために、観光振興を国づくりの柱に据え、観光交流を支える基盤の整備や旅行しやすい環境づくりにハード・ソフト両面から総合的かつ一体的に取り組んでいく必要がある。

第1節 基本的視点
 観光は、1人々にとっては、健康・体力の維持向上に重要な手段であり、ゆとりとうるおいのある生活に寄与し、地域の歴史や文化を学ぶ機会を提供、2地域にとっては、地域住民の誇りと生きがいの基盤の形成、地域活性化に寄与、3国民経済にとっては、大きな経済効果、4国際社会にとっては、国際相互理解の増進、国際平和に貢献、といった点で重要な意義を有しているということに鑑みると、21世紀初頭に日本社会を真に活力ある社会として構築するためには、観光の担う役割は極めて大きいといえる。
 したがって、我が国は21世紀初頭において、観光交流大国を国是とした上で、観光振興を国づくりの大きな柱に据えていくべきである。
  ア 誰もが「気軽」に楽しめる観光の振興
 21世紀においては、国民一人一人がゆとりと潤いを感じられる生活の実現が重要な課題となっているが、今後は、高齢者、障害者、訪日外国人旅行者等様々な人々が大きな負担感がなく、これまで以上に気軽に楽しめるような観光振興が必要である。
  イ 住民と旅人とが互いに交流しあう観光の振興
 従来は、観光関係者と観光客との間に観光活動の中心があったが、今後は、観光関係者のみならず、地域住民全体が観光客と互いに交流し合い、共に楽しめるような観光振興が必要である。
  ウ 自然・社会環境と共生する観光の振興
 環境意識の高まりを踏まえ、今後は、これまで以上に、自然・社会環境と共生し、魅力の継続、資源の保全・発展、住民や観光客の満足度の継続等多様な側面からも持続的な発展が可能となる観光振興が必要である。

第2節 具体的施策の方向
 以上のような基本的視点に立ち、今後は、12年12月の観光政策審議会答申「21世紀初頭における観光振興方策」を踏まえて、観光振興に強力に取り組んでいく必要がある。
 具体的には、観光まちづくりの推進、観光分野でのITの積極的活用、高齢者等が旅行しやすい環境づくり、外国人観光客来訪促進のための戦略的取組み、観光産業の高度化・多様化、連続休暇の拡大・普及促進と長期滞在型旅行の普及、国民の意識喚起に重点的に取り組み、「触れあいと活力に満ちた観光交流大国日本」を目指して各種施策を推進していく必要がある。