第2章 国際観光振興に向けた総合的施策の展開をめざして
―ワールドカップ等の開催をバネに―

第1節 新ウェルカムプラン21による外国人旅行者の訪日促進

  1. 国際観光テーマ地区の整備と重点的観光宣伝の実施
     優れた観光資源を有する地域と宿泊拠点とからなる地域をネットワーク化して、外国人旅行者が3〜5泊程度で周遊できる観光ルートを整備する広域的な地域である外客来訪促進地域(通称「国際観光テーマ地区」)の整備を進める。また、同テーマ地区について、国際観光振興会による重点的海外宣伝を実施する。

  2. 国際交流拠点・快適観光空間の整備
     外客来訪促進地域における外客誘致の拠点として、地域の歴史文化の紹介機能や体験機能を備えた国際交流拠点を整備するとともに、地域の観光資源を有機的に連携させ魅力あふれる賑わいのある歩いて楽しい観光空間を整備する。

  3. 外国人旅行者の国内旅行費用の低廉化と接遇の向上
     博物館、宿泊施設、飲食店等を利用する際に提示することにより割引等の優遇措置を受けられる「ウェルカムカード」及び外国人向けの割引運賃制度の導入・普及により外国人旅行者の国内旅行費用の低廉化を図り、外客誘致法に基づき創設された地域限定通訳案内業制度により外国人旅行者の接遇の向上を図る。

  4. 海外観光宣伝・キャンペーンの実施
     国際観光振興会は、海外主要市場である韓国、中国及び英国において、テレビ、新聞広告等を活用し、日本の観光魅力をPRするキャンペーン活動を積極的に展開し、訪日促進を図る。

  5. 東アジア広域観光交流圏構想(EASTプラン)の推進
     日韓両国を一つの地域としてとらえ、域外からの観光交流の拡大を目指す、周遊も可能な外客用共通乗車船券の検討等を内容とする「東アジア広域観光交流圏構想(EASTプラン)」の具体化を図っていく。

第2節 世界観光機関総会、ワールドカップ等を契機とする国際観光の振興
 平成13年9月に大阪市において開催される世界観光機関(WTO)第14回総会は、加盟国(133ヶ国)の観光担当大臣・次官を含め世界の官民観光関係者が1,000名以上参加する予定の国際会議であり、我が国の観光の魅力をPRする絶好の機会と捉え、総会参加者に対し総会開催前及び総会期間中において積極的に宣伝活動を行う。
 2002年に日韓共同で開催されるワールドカップサッカー大会の開催を契機に、引き続き、競技開催地を中心とした日本の魅力を広報宣伝していくとともに、受入体制の充実を図ることとしている。

第3節 海外における訪日促進活動・国際交流
  1. 国際観光振興会による広報・宣伝活動
     国際観光振興会は、「新ウェルカムプラン21」の提言に基づき訪日旅行促進キャンペーンを実施するとともに、地方公共団体や国際観光テーマ地区推進協議会等との連携の下に、訪日旅行を促進するための諸事業を実施する。また、地方公共団体、航空事業者等からの協力を得ながら米国向けの訪日旅行促進のための広報・宣伝事業を推進するほか、隣国政府観光機関等との連携により共同プロモーションを実施する。さらに、アジア諸国・地域を中心とした海外の有力旅行関連業者を対象に、新たな日本向けツアーの具体的開発を促進するため、13年4月東京ビッグサイトで行われる旅フェア2001の場を活用して我が国各地の観光魅力の宣伝を積極的に行う。

  2. 在外公館等による日本の紹介活動
    (1)在外公館

     諸外国の国民に我が国の政策及び一般事情を正しく伝え、その認識と理解を深めることがますます重要となってきており、このような観点及び訪日促進の観点から在外公館等では各種広報媒体を利用し、また、様々な文化事業を通じた紹介活動を積極的に展開する。

    2)国際交流基金
     国際交流基金は、13年度においても引き続き、例えば以下にあげるような事業を通して我が国に対する諸外国の理解を深め、国際相互理解、国際友好親善の促進を図っていく。
     「横浜トリエンナーレ2001」を開催し、日本をはじめ世界各地の作家の作品の展示を通じて、世界の最先端の美術動向を幅広く紹介していく。また、英国における大型日本文化行事(Japan 2001)をはじめ、エジプトにおけるジャパンフェスティバル2001、バ
    ルト三国との外交関係開設10周年記念事業、ウルグアイとの外交関係樹立80周年記念行事等の日本文化紹介事業も予定されており、これらの事業の実施に可能な限り協力していく。

    3)国際放送
     諸外国の対日理解の促進及び在外邦人、旅行者等に対する必要な情報の提供のため、我が国の国際放送の一層の充実を図る。
     また、映像情報による日本の紹介活動及び国際交流の推進は、我が国と諸外国との相互理解の促進等に有効な手段として期待されており、今後、映像国際放送を充実していく。

  3. 青少年交流事業
    (1)修学旅行

     次代を担う青少年が諸外国の青少年との交流を深めていくことは極めて重要である。このため、教育上及び安全上の適切な配慮の下に行われる海外への修学旅行など引き続き各種青少年交流事業の実施を図る。

    2)ワーキング・ホリデー
     現在、我が国との間でワーキング・ホリデー制度を実施している、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、韓国、フランス、ドイツ及び連合王国との間における本制度の運用については、制度利用(希望)者に対する情報提供等の支援・広報活動に引き続き取り組んでいく。また、上記以外の諸国との間におけるワーキング・ホリデー制度の新規導入の可能性についても引き続き検討していくこととする。

第4節 国内における国際交流の推進対策

  1. 外国人旅行者向け情報提供体制の整備
     外国人旅行者の関心は、日本の文化・歴史・生活に触れることに向けられてきており、地方に対する関心が高まるにつれ地方の国際化が強く求められてきている。そのため、国際観光振興会において、外国人旅行者が簡単にアクセスできる総合的な観光情報データベースの構築を図る。
     その他、国際観光ホテル・旅館の整備促進、通訳案内業制度の拡充、外国人旅行者の利用に適した低廉な宿泊施設を紹介するウェルカム・イン制度や無料で電話相談に応じるトラベルフォン制度等、外国人旅行者へのサービスの向上のための各種施策を講ずる。

     

  2. 地方公共団体が行う国際交流
     国際交流拠点・快適観光空間については、引き続き整備を進める。
     さらに、地方への来訪を促進するため、「地域伝統芸能等を活用した行事の実施による観光及び特定地域商工業の振興に関する法律」に基づき、地域に固有の伝統芸能や行事の実施により地域の特性を生かした観光の振興を図る。  

     

  3. 国際民間交流の拡大
     国際観光振興会は、草の根レベルを含めた民間交流の拡大を図るため、国内外の国際交流関連情報を収集しつつ、潜在的な交流希望の把握に努め、外国人にとって魅力的な交流事業の企画、交流相手先の仲介・斡旋等の支援を行う。また、国際交流に効果的なホームステイ制度の拡充・活性化、善意通訳(グッドウィル・ガイド)の普及、ホーム・ビジット制度の拡充に努める。

     

  4. 国際コンベンション等の振興
    (1)国際コンベンションの振興
     国際コンベンションの一層の振興を図るため、「国際会議等の誘致の促進及び開催の円滑化等による国際観光の振興に関する法律」に基づき、国際コンベンションの誘致の促進、開催の円滑化を柱とした総合的な施策を講じる。具体的には、国際観光振興会に設置したコンベンション誘致センターにより、国際コンベンションを積極的に誘致するほか、企画型コンベンションの開催支援や国際コンベンションの主催者に対する寄付金の募集及び交付金の交付を行うこと等により、国際コンベンションの開催、受入体制の整備を行う。
     また、日本コングレス・コンベンション・ビューロー(JCCB)においては、コンベンション主催者を対象にした国際ミーティングエキスポの開催や人材育成等に関する事業を行う。

    2)民間能力の活用による国際交流のための施設整備
     「民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法」に基づき、国際見本市場施設、国際会議場施設、国際交流研修施設及び国際市民交流基盤施設について、認定済み整備計画の着実な実施とともに、新規プロジェクトについても引き続き整備計画の認定を行うなど国際交流のための施設整備を推進する。

    3)国際競技大会への支援・協力
     オリンピック競技大会など国際競技大会の開催は、国際親善や我が国のスポーツの振興等に大きな意義を有するものであり、国としても、必要な支援・協力を行う。
     特に、2002年に日韓共同で開催されるワールドカップサッカー大会については、大会の成功に向けて、引き続き両国間の政府レベルでの協議を行うとともに、大会組織委員会に対して必要な支援・協力を行う。
     また、2008年オリンピックについては、大阪市への大会招致が実現されるよう、(財)大阪オリンピック招致委員会に対し、引き続き必要な支援・協力を行う。

    4)国際博覧会
     2005年日本国際博覧会の開催に向けて、(財)2005年日本国際博覧会協会が行う、会場基本設計に基づく実施設計及び環境影響評価の追跡調査等について支援を行う。
     また、政府出展については、基本計画を具現化するため、展示・催事の企画設計及び施設の実施設計を行う。

     

  5. 映像媒体を活用した国際交流
     映画のロケーション撮影をスムーズに進めるための支援組織をフィルム・コミッション(FC:FilmCommission)といい、映画のロケ隊の誘致は、「外客誘致の促進」や「観光による地域振興」に資することから、先進地域の事例調査の実施及びFC設立マニュアルの作成等を行うとともに、国際観光振興会を活用して海外での誘致宣伝活動を行う等、FC設立の動きを積極的に支援していく予定である。

第5節 旅行関連手続きの円滑化
  1. 出入国管理の適正・円滑化等
     今後とも出入国審査の適正・円滑な処理に努めるとともに、出入国審査体制の整備を図る。
     また、大型観光船の日本向け航海中の海上審査を引き続き実施し、外国人乗客の利便を図る。

  2. 検疫の適正・迅速化等
     海外旅行者が気軽に利用できるよう考慮した健康相談室をおいて、有症者及び健康相談者に対しての診察、検査、保健指導、健康相談等を行うとともに、今後とも、検疫手続の迅速化、効率化及び海外旅行者への健康被害防止や感染症予防啓発に努める。

  3. 通関の適正・迅速化等
     旅行者の携帯品通関手続については、徴税事務のコンピュータ化の推進等、従来からの種々の改善を行ってきており、今後とも必要な改善を加えることにより、通関手続の一層の適正・迅速な処理に努める。

第6節 日本人の海外旅行に対する施策
  1. 事故・事件への対応と安全対策
    (1)  13年度においても引き続き次の諸点に力点を置いた情報提供、広報活動を外務省「海外安全相談センター」等を通じ実施する。
    1  海外旅行の自己責任と渡航者の危機管理の重要性に関する啓発に努める。
    2  旅行先の治安状況、法制度、風俗・習慣等の情報の周知徹底を図る。
    3  渡航或いは滞在にあたって通常以上の特別な注意が必要な国・地域の治安状況等を5段階の危険度に区分し、海外危険情報として一般国民に周知する。
    4  日本人が旅行先で犯罪被害に遭わないよう、犯罪に共通の手口とその対策の周知徹底を図る。
    5  引き続き、海外安全意識啓発資料としてビデオ、リーフレット等を作成し、ビデオの貸出、リーフレットの無料配布等を行う。
    6  海外における旅券の紛失、盗難を防止するため、国民に対する旅券の管理に関する啓発に努める。
    7  その他、次の諸点を推進する。
     「海外安全相談センター」の整備・充実に努める。
     海外旅行者に対する安全対策の啓発手段として、政府広報を積極的に活用する。
     インターネットの「海外安全ホームページ」を活用し、「国・地域別海外安全情報」、「海外危険情報」及び「海外安全相談センター情報」の広報に努める。
     「海外安全情報タッチビジョン」の一層の普及に努める。
     「国別・海外安全情報FAXサービス」及び「海外安全テレフォンサービス」の拡充に努める。
     「海外安全週間」を拡充し、国民一人一人の海外安全意識の啓発強化に努める。
     各種旅行情報誌、報道機関への積極的な情報提供に努める。
    (2)  国際観光振興会は、次のような日本人海外旅行者の安全に関する業務を実施する。
    1  旅行先における治安、日本人海外旅行者の安全の確保に役立つ情報、トラブルの未然の防止に役立つ情報を提供するため各種パンフレットを作成するとともにFAX、インターネット「国際観光振興会ホームページ」を活用した広報にも努めるとともに一般消費者向け「海外旅行安全セミナー」も実施する予定である。
    2  各海外観光宣伝事務所において、日本人海外旅行者に対する旅行の安全に関する情報の提供と相談・案内業務を行う。また、日本人海外旅行者の安全対策のための体制を整備し、総合的にノウハウの蓄積を行う。
    (3)  旅行業者を通じて、旅行者に対し「海外危険情報」の書面等の交付による周知や、旅行の安全のためのリーフレット等の配布を行う。

  2. 海外での感染症対策
     感染症の感染を防止するため、海外旅行者に対して海外における感染症発生情報や予防方法などに関し、インターネット、FAXサービス及び電話相談等により情報提供を行うとともに、主要な検疫所において予防接種を実施し、衛生思想及び感染症予防の普及・啓発を図る。
     特にエイズ対策については、海外旅行者等に対する正しい知識の普及等の施策を関係省庁の協力により重点的に推進する。

  3. 海外での薬物規制及び持込みの防止対策
     海外での薬物の乱用や、国内への持込みを防止するためには、薬物乱用を拒絶する社会環境が形成されることが極めて重要であることから、引き続き、関係機関等との緊密な連携の下、覚せい剤、大麻及び最近押収量が急増している錠剤型薬物等の危険性に関する知識の普及・啓発を積極的に推進するとともに、我が国の薬物乱用に対する厳しい取締り実態についても広報し、海外旅行者の規範意識を喚起する。

  4. 銃器持込みの防止対策
     昨今の厳しい銃器情報を踏まえ、「平成13年度銃器対策推進計画」に基づき、銃器対策を強力に進めていくこととしているが、この一環として、日本人及び外国人旅行者による我が国への銃器の持込みを防止するため、海外進出企業、通関業者、旅行業協会等関係企業、団体に働きかけるなど広報・啓発活動を引き続き積極的に実施するとともに、在外公館、航空会社、旅行業協会等を通じ、銃器の危険性や我が国の厳しい銃器規制についての広報活動を推進する。

  5. 海外での児童買春の防止対策
     海外旅行者を中心に、児童買春防止を目的とした啓発活動を引き続き行うとともに、我が国社会全体が認識を高めるよう努めることとする。
     また、我が国は、商業的な児童の性的搾取の問題への理解と取組みを促進するため、平成13年12月に横浜にて「第2回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」を開催する。

第7節 観光の分野における国際協力等
  1. 観光関係二国間協議の開催
     観光関係二国間協議については、引き続き我が国と密接な関係を有する国との間で開催し、相手国との一層の観光交流の促進を図って行く。

  2. 国際機関等に対する協力
     世界観光機関(WTO)、アジア太平洋経済協力機構(APEC)、経済協力開発機構(OECD)及び国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)が行う観光関係の活動に協力するとともに、資金・技術の面で東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センター(日本アセアンセンター)の事業に協力する。
     特にWTOについては、13年9月に日本と韓国で共同開催されるWTO総会は、世界各国から大臣級の参加者が多数出席することが見込まれ、我が国の国際観光の振興、国際親善等に大きな意義を有するものであり、総会の成功に向けて必要な支援・協力を行う。

  3. 開発途上国への協力
     開発途上国に対する二国間技術協力の一環として、国際協力事業団を通じた観光分野の研修員の受入れ、専門家の派遣及び開発調査の充実を図る。
     また、開発途上国への技術協力の効率化を図るため、開発途上国における広域的、総合的観光開発等の調査、研究を行うとともに、専門家の派遣、研修員の受入れ等の民間能力を利用した技術協力を推進する。

  4. 国際航空と外航海運の充実等
     国際航空については、我が国航空企業の中長期的な競争力の強化及びこれにより消費者利益の確保が図られることを目指して、引き続き諸外国との航空当局間協議を進めていく。
     国際空港の整備については、引き続き第7次空港整備七箇年計画に基づき、新東京国際空港、関西国際空港、中部国際空港等の整備を進めていく。
     外航クルーズについては、10年5月の「客船クルーズ事業振興懇談会」における、その需要喚起のためのキャンペーン的な事業実施に加え、制度面から検討が必要であるとの報告を受け、11年2月、関係者により「外航クルーズ船に関する制度調査委員会」を開催し、約款の整備等外航クルーズ船における諸問題について議論を行った。今後ともこれを踏まえつつ、事業を一層普及するための施策を検討していくこととしている。