第3節 観光資源の保全・保護施策の展開

  1. 自然環境の保全
     自然環境の保全等については、従前より各種施策を進めてきているが、平成12年12月に閣議決定した環境基本計画も踏まえ、計画的に推進する。

    1)自然公園の整備等
    1公園計画の見直し
     国立公園の区域並びに保護及び利用のための計画について、関係都道府県の協力を得つつ逐次見直しを行い、所要の改定を進める。
     公園区域及び公園計画の全般的な見直し(再検討)が終了してから概ね5年を経過する国立公園については、公園区域及び公園計画の変更(点検)を進める。
     なお、国定公園についても、国立公園に準じて作業を進める。

    2都道府県立自然公園
     都道府県立自然公園は、地域住民にとって身近な自然の風景地として、また、日常的な野外活動の場として重要な位置を占めている。このため、都道府県が公園区域の拡張と保護及び利用計画の策定を進めるように指導する。

    3乗入れ規制地域の指定
     国立・国定公園において車馬若しくは動力船を使用し、又は航空機を着陸させることを規制する区域を必要に応じ追加指定する。
     また、日光国立公園尾瀬地区、中部山岳国立公園上高地地区等において、マイカー等の無制限な乗入れを抑制し、自然環境の保全と健全な利用の促進を図るため、それぞれの地区の特性に応じた適正な自動車規制を実施する。

    2)森林等の保全・管理
     森林の持つ保健文化機能の確保が重要となっており、林業生産との調整を図りつつ、良好な自然環境を保全・形成するため、次の施策を講ずる。

    1  森林計画制度の運用により、適正な森林施業の推進を図る。
    2  林地開発許可制度の適正な運用により、森林の無秩序な開発を防止し、森林の公益的機能の保全を図る。
    3  緑豊かな保健休養の場等を提供するため、保健保安林等の指定を計画的に推進するとともに、環境保全保安林整備事業として実施する保安林の整備について助成する。
    4  全国山火事予防運動等林野火災の未然防止についての普及活動、林野火災予防体制の強化、林野火災予防組織の育成、特定危険日に対応した予防活動の強化、林野火災予防情報システムの整備等を地域単位で推進する事業、防火林道の整備等につき助成する。
    5  森林病害虫等の防除については、「森林病害虫等防除法」等に基づき、機動的な防除システムの下で、松くい虫をはじめとする森林病害虫等に対する各種防除措置等を、環境の保全に配慮しつつ、総合的に実施する。
    6  巨樹、古木林等の保全技術の開発・普及を図るとともに、ふるさとの貴重な「緑の文化財」である巨樹、古木林等のうち樹勢の衰退しつつある緊急性を有する樹木に対するモデル治療を行う事業に助成する。
    7  国有林野では、適切な森林の管理経営に努めるとともに、保護林及び緑の回廊の設定や、既存の保護林において入山者の影響等を受けた植生等の保全・回復を図るなどの適切な保護管理等を行う。また、森林生態系保護地域のうち、保存地区を取り巻く保全利用地区(バッファーゾーン)においては、森林の仕組み・働きと森林との接し方を学ぶ場の整備等を行う。さらに、林野火災等の森林被害の防止のため、森林レクリエーション利用の多い地域を重点的に巡視するほか、入山者に対する指導及び林野火災予防のため広報活動を行い、一方で森林病害虫等の適切な防除を実施し、森林の保全管理の強化を図る。

    3)河川・湖沼・山地流域の保全
    1水環境の保全
     河川及び湖沼の水質の保全を図るため、「水質汚濁防止法」に基づく排水規制を行う。また、環境基準の確保が特に緊要な10指定湖沼については、「湖沼水質保全特別措置法」等に基づき富栄養化対策等を含む総合的な対策を推進する。
     また、水質汚濁の要因の一つである生活排水について、下水道の整備等の対策を推進する、さらに、水生生物や生態系の視点を含めた地域住民に親しまれる水辺環境を再生するため、水路の修復や環境再生施設の整備、その周辺の遊歩道の整備や植栽等を行うとともに、水生植物等の生態系を活用した水質浄化施設の整備を推進する。加えて、枯渇又は水量が減少している湧水、井戸の復活、再生、地下水を中心とした流域の水循環回復に向けての取組みを進める。

    2浄化対策
     河川等の浄化対策事業として、水質汚濁の著しい河川等を対象に、河床等にたい積した底泥の浚渫事業等の河川環境整備事業(水環境整備)を実施するほか、水資源開発と併せて浄化用水の導入を行う流況調整河川2事業を実施し、ダム貯水池水質保全事業を21ダムにおいて実施する。
     また、緊急に水環境の改善を図る必要のある河川等においては、「清流ルネッサンス21」に基づいた事業を重点的に実施してきたが、改善目標を拡充するなどにより、「清流ルネッサンスII」として、引き続き、地域の取組と一体となって河川事業、下水道事業を重点的に実施する。

    3山地流域の保全
     山地流域は景観、生態系等の自然環境の優れている地域が多いことから、山地流域の個々の特色をいかした、崩壊地に植生を回復させる山腹工、砂防樹林帯等の周辺環境に配慮した砂防事業を実施する。

    (4)海の環境保全
    1海域の水質保全等
     海域における水質の保全を図るため、工場、事業場についての排水規制を推進するとともに、大阪湾等汚濁の進みやすい海域に関連する流域別下水道整備総合計画の策定を進め、下水道の整備を推進する。
     また、海域の富栄養化を防止するため、5年8月に設定した海域の窒素及び燐に係る環境基準の類型指定及び見直しを進めるとともに、海域の富栄養化防止の総合的推進に努める。
     さらに、水質汚濁の要因の一つである生活排水について、下水道整備を促進するほか、地域の実情に応じ、合併処理浄化槽、農業集落排水施設、漁業集落排水施設、コミュニティプラント等各種生活排水処理施設の整備を進めるとともに、各家庭からの汚濁負荷を削減するため、住民意識の啓発、住民による実践活動等を推進する。
     水質総量規制については、東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海を対象として生活系、産業系等の汚濁負荷量の一層の削減を図るため、第5次水質総量規制の実施に向け検討を進める。
     また、引き続き水質測定及び排水規制に必要な監視測定実施体制の整備を図るため、地方公共団体に対する助成を行う。
     さらに、海上保安庁による巡視船艇・航空機、監視取締り用資器材、防除資機材等の整備等及び官民合同による油等排出事故対策訓練等を実施し、監視取締り体制及び防除体制を強化するとともに、海のごみの現状を把握するため、漂流、漂着ごみの調査を関係機関とともに実施し、また海洋環境保全講習会等のあらゆる機会をとらえて、海洋環境の保全に関する指導、啓発を行う。

    2港湾、漁港、海岸等の環境保全
     港湾における環境の保全を図るため、廃棄物を埋立処分するための護岸整備、船舶や港内から発生する廃棄物を処理するための施設整備等を行う。さらに、東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海における浮遊ごみや油の回収を実施する。また、ヘドロのたい積した海域において、水質・底質の改善を図るための汚泥浚渫、覆砂、海浜整備や、生物・生態系に配慮した環境の形成を図るため、干潟・渫場の回復・創造を推進する海域環境創造事業(シーブルー事業)を実施するとともに、水質浄化技術の開発を行う。
     漁港及び漁場の環境保全を図るため、漁港区域内の水域において、汚泥・ヘドロの除去・覆砂・藻場・干潟、水質浄化施設等の整備を行う漁港水域環境保全対策事業、漁港内の浮遊ゴミ等を処理するための施設整備等を行う漁港漁村活性化対策事業及び漁業集落排水施設整備等を推進する。
     海岸における環境保全を図るため、エコ・コースト事業として、生態系や自然景観等周辺の自然環境に配慮した海岸整備を実施する。
     港湾等の公共水域における放置艇は無秩序な係留による景観の悪化などの問題を引き起こしていることから、港湾においては放置艇を収容する簡易な係留・保管施設(ボートパーク)の整備を推進するなど、放置艇の解消に努める。
     船舶の廃船不法投棄事犯の発生の抑制及び廃船の適正処理の促進を目的として海上保安庁が「廃船指導票」を用いた指導を実施し、また、それぞれの地域に適した船舶の処理体制の確立を関係自治体に働きかける等して、港湾、海岸等の環境保全に努める。

    5)都市緑地の保全
    1大都市近郊緑地
     首都圏及び近畿圏における近郊緑地保全区域において、一定の開発行為について届出制を設けるとともに、緑地保全のために必要な施設の整備等の積極的な緑地保全措置を講ずる。
     また、首都圏及び近畿圏における近郊緑地特別保全地区の指定を促進する。なお、この地区内において、建築等の行為の許可を受けることができなかった土地所有者からの土地の買入れの申出に基づき、地方公共団体及び緑地管理機構による土地の買入れを進め、緑地の保全利用のための施設の整備を行う。

    2都市内緑地
     「都市緑地保全法」に基づく緑地保全地区の指定を促進するとともに、建築等の行為の制限を行い、自然的環境の保全を図る。また、行為の許可を受けることができなかった土地所有者からの土地の買入れの申出等に基づき、地方公共団体及び緑地管理機構による土地の買入れを進め、緑地の保全利用のための施設の整備を行う。

    6)温泉の保護
     温泉の適正な利用の確保を図るため、温泉利用基準の改正等について検討を行うとともに、泉源の保護と温泉の適正かつ効率的利用の増進を図るための指導を行う。

    7)野生生物の保護等
     多様な野生生物とその生息環境を保全するため、「生物多様性国家戦略」に基づき、生物多様性に関する情報の的確な把握と研究の充実を図るとともに、前述した自然公園等の保護地域やその他の生態系及び自然生息地等を適切に保全していく。また、野生動植物の保護管理の充実を図るため、次の措置を講じる。

    1  特に渡り鳥の重要な渡来地を中心に国設鳥獣保護区の新規設定に努める。また、絶滅のおそれのある野生動植物について、捕獲、譲渡等の規制を行うとともに、その生息地等の保護、保護増殖事業を実施する。
    2  国設鳥獣保護区において、人と野生鳥獣との共生を図るため、人の利用の適正な誘導、野生鳥獣の生態等に関する普及啓発、鳥獣の生息に適した環境の保全・整備等を推進するほか、保護管理方針を示すマスタープランの策定を進めることにより管理の充実に努める。
    3  野生生物保護に関する国際協力の推進等
     東アジアにおける渡り鳥及び湿地の保護、日米、日豪、日中、日ロ及び日韓間における渡り鳥等の保護などに関する国際協力の一層の強化を推進する。

  2. 文化遺産の保存
    (1)文化財の保護等

     文化財の指定等については、綿密かつ的確な調査に基づき、文化財としての価値はもとより、社会的諸条件も考慮し、緊急性、優先度等を勘案し、適切に進める。
     「文化財保護法」に基づいて指定された美術工芸品及び建造物に対しては、その修理・防災事業等に対する補助を、重要無形文化財の保持者に対しては、技の維持向上と伝承者の養成のため特別助成金の交付を、祭りなどの民俗文化財に対しては、地域における伝承活動に対する補助を行う。
     史跡等については、「地方拠点史跡等総合整備事業」(歴史ロマン再生事業)」「歴史の道整備活用推進事業」「天然記念物整備活用事業」といった補助事業を継続することに加えて、指定地域の公有化を進めるなど、国民の貴重な財産である文化財の保存・活用を図るための施策を一層推進する。

    2)歴史的町並み・地域の保存等
    1 歴史的集落・町並み
     港町、門前町、宿場町、城下町等の歴史的な町並みや農山村、漁村等の集落のうち、伝統的な景観をよくとどめている地区について、文化遺産として保存伝承するとともに、町づくり・村づくりの資源や観光資源として活用するための調査を促進する。
     市町村、地区住民が歴史的集落・町並みの保存に積極的な地区については、市町村で「文化財保護法」に基づく伝統的建造物群保存地区保存条例を制定し、保存地区、保存計画が決定されるよう助言を行う。また、重要伝統的建造物群保存地区選定の申出が市町村からあった地区については、積極的に選定を進める。
     重要伝統的建造物群保存地区に選定されている地区については、保存事業を継続し、伝統的建造物や環境物件の修理修景及び復旧、防災施設の整備などを実施する。
     以上の事業を推進しながら、歴史的集落・町並みを保存整備し、保存地区はもとより市町村の活性化を図る。

    2歴史的風土
    ア.歴史的風土特別保存地
     「古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法」に基づく歴史的風土特別保存地区において、建築等の行為の許可を受けることができなかった土地所有者からの土地の買入れの申出に基づき、土地の買入れを進めるとともに、歴史的風土の保存及び利用のための施設の整備を行う。

    イ.飛鳥・藤原地域
     飛鳥・藤原地域の保存整備を図るため、重要な史跡の買上げ、整備、発掘、調査及び飛鳥史料館の充実を図るとともに、国営飛鳥歴史公園においてキトラ古墳周辺地区をはじめとする整備、維持管理を推進し、高松塚古墳の壁画及び保存施設の保守、管理を行う。
     また、明日香村については、「明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法」に基づいて決定された明日香村歴史的風土保存計画に基づき、歴史的風土の保存を図る。
     さらに、引き続き「明日香村における生活環境及び産業基盤の整備等に関する計画」に基づき、歴史的風土の保存と住民生活の調和を図るための各種事業を推進するほか、明日香村が同整備計画に基づき行う特定事業に係る経費に対する補助率のかさ上げ等特別の助成措置を講ずる。

    3歴史的港湾・灯台
     歴史的な情緒漂う空間を整備する歴史的港湾環境創造事業を横浜港等において実施する。また、瀬戸内海における自然や歴史的港湾施設、クルージングに対処する係留施設の整備など「瀬戸内・海の路事業」を下関港などにおいて実施する。
     また歴史的・文化財的価値の高い灯台については、その価値を損なうことなく現役のまま運用するための整備に努める。

    4歴史的道路
     特に重要な歴史的・文化財的価値を有する道である「歴史国道」(東海道「関宿」等24ケ所を選定済)について、その整備・活用等を図る。

  3. 世界遺産条約に基づく世界遺産の保護
     世界遺産一覧表に記載されている「姫路城」、「法隆寺地域の仏教建造物」をはじめとする我が国の文化遺産については、世界遺産条約の趣旨に基づき、その保存に努める。
     また、自然遺産に登録されている「屋久島」、「白神山地」については、管理計画に基づき、世界遺産としての価値を損なうことのないよう適切な保護管理を行う。

  4. 良好な景観の形成
    (1)街並み景観の形成
    1  良好な都市景観の形成を図るため、「都市景観形成モデル都市制度」や「うるおい・緑・景観モデルまちづくり制度」に基づき、モデル市町村等において整備計画に基づく事業の複合的、重点的実施等を行う。
     「都市景観の日」を中心に行われる各種のイベントや「都市景観大賞」の表彰の実施により、都市景観に対する国民意識の高揚を図る。
     さらに、都市景観の保全と形成を図るため、風致地区等の地域地区の指定を推進するとともに、屋外広告物条例による屋外広告物の規制・誘導を行う。
    2  土地区画整理事業施行地区の核となる一定の区域を「地域の顔」として位置付け、重点的に質の高い公共施設整備等により良好な景観形成に配慮した事業をふるさとの顔づくりモデル土地区画整理事業として指定し、積極的に推進する。
    3  歴史的建築物等活用型(メモリアル)再開発事業により、歴史的建築物を活用した市街地の一体的整備を推進する。また、民間等の任意の建築活動の適切な誘導により良好な建築景観の形成を行う事業を推進する。さらに、建築規制の弾力的運用等と連携し、優れた街並み・建築景観を創出する「アーバン・スペリオール・ビルディング」を優良建築物等整備事業により推進する。
    4  地域が主役のまちづくりを推進するため、まちづくりに必要な各種市町村事業をパッケージで一括助成する「まちづくり総合支援事業」を推進する。本事業の補助対象には、道路・街路、公園等の施設整備や土地区画整理事業、市街地再開発事業等の面整備のほか、修景施設、地域交流センター、人工地盤、ソフト事業等、多彩なメニューが含まれており、これにより、美しい街並みの形成等「地域が主役のまちづくり」を積極的に支援する。
    5  山麓斜面に市街地が接している都市において、景観に配慮した砂防関係施設等の整備を実施するとともに、土砂災害に対する安全性を高め緑豊かな都市環境と景観を保全・創出することを目的に、「都市山麓グリーンベルト整備事業」を実施する。
    6  地域の持つ自然、伝統、文化などの特性を生かしながら、将来に継承しうる質の高い居住空間を整備するため、地域の住文化等に係る住宅供給に関する事項を定めた住宅マスタープランの策定及びプランに基づく景観に配慮した住宅・街並み整備等を推進する。

    2)農山漁村景観の形成
    1  農山漁村の美しい景観を次世代へ引き継ぎ、地域の特色を活かした農山漁村の活性化を図るため、生産基盤・生活基盤の整備と併せて、農山漁村地域の秩序ある土地利用と、景観に配慮した整備を実施するとともに、全国的な普及活動を推進する。
    2  美しい農山漁村の創出に資するため、景観形成、環境・生態系の保全、伝統文化の継承、資源の循環利用等住民主体の美しいむらづくりに対して、施設整備等を行う各種農林水産施策の連携により支援するモデル事業と、国民への情報提供・意識の啓発を図るため、全国・都道府県段階での啓発普及活動を併せて実施する。
    3  地域住民が快適で豊かに暮らせ、都市住民にも魅力ある地域環境を形成するため、住民参加や関係府省間の連携を図りつつ、地域の多様なニーズに応じた総合的な整備を行う農村振興総合整備事業を実施する。
    4  農業が行われることにより生ずる文化の伝承等の多面的機能を発揮するため、田園整備事業により、農村に存する伝統的農業施設、美しい農村景観等の保全・復元に配慮した整備を実施し、魅力ある田園空間づくりによる都市との共生を図る。

    3)水辺景観の形成
    1  豊かで潤いのある水環境の形成を図るため、水辺空間整備を実施する。
    2  水と緑あふれる個性ある地域づくりを支援するため、地方の自主性を尊重し個性的なまちづくりを推進する治水事業として、ふるさとの川整備事業や桜の植樹等水辺の緑化を図る桜づつみモデル事業を実施する。また、地域交流の拠点となる水辺プラザの整備を実施する。
     さらに、各種河川事業において、治水上の安全性を確保しつつ、多様な河川の環境を保全・復元する多自然型川づくりを推進する。
     そのほか、紫川(北九州市)等において河川改修と市街地整備事業等を併せて行うマイタウン・マイリバー整備事業を実施するとともに、地域のシンボルとして地域にふさわしい河川整備を推進する河川再生事業を実施する。
    3  水害に強く、また、良好な水辺環境の創出に寄与するスーパー堤防整備事業を荒川小松川地区等で推進しているが、街づくりと水辺景観の整備を一体的に図る。 
    4  都市化の進展等に伴う都市河川の環境機能の低下に対する対策として、水量の豊かな河川等からの導水事業等により良好な水辺環境を確保するとともに、都市内の河川等のネットワーク化、川沿いの緑の整備を実施するなど、「水と緑のネットワーク」の整備を推進する。また、レクリエーションスペースの提供等を行う水環境対策ダム事業を大和沢川・大和沢ダムにおいて実施する。
    5  都市内の失われた良好な水と緑を復元し、循環させ、快適な都市環境の形成、多様な生物の生育・生息地の確保等を図るため、都市内の河川、水路等の水辺空間等と一体となって水と緑のネットワークを形成する地区において、市町村が策定する「緑の基本計画」に基づき、多様な公園緑地の整備、公共公益施設の緑化を地区単位の市町村一括採択により実施する緑化重点地区総合整備事業を積極的に推進する。
    6  都市内における良好な水環境の創出を図るため、新世代下水道支援事業制度において、下水処理水や雨水等をせせらぎ用水等として活用するとともに、雨水渠等に沿って緑化のための植栽や遊歩道、四阿等の整備を推進する。
    7  景観に配慮した港湾施設の整備を実施するとともに、港湾空間を景観面から評価し、港の特色をいかした美しい景観形成を促進するため、各種の施設整備を総合的に実施する港湾景観形成モデル事業を実施する。
    8.  農業水利施設の有する水辺空間等を活用し、都市住民にも開かれた豊かで潤いのある快適な水辺景観の創出による農村の活性化を図るため、引き続き農業水利施設の保全管理又は整備と一体的な親水空間等の整備や歴史的価値の保全に配慮した土地改良施設の保全を行う地域用水環境整備事業を積極的に実施する。

    4)道路景観の形成
    1  電線共同溝等の整備や道路のり面の樹林化、植樹帯の整備、景観に配慮した道路構造物の整備等を推進し、地域の自然や歴史・文化をいかした道路空間を創出するとともに、緑豊かで安らぎとうるおいのある道路景観整備の推進を図る。
    2  伝統的建造物群保存地区や重要文化財建造物等を含む地区において、その歴史的街並みの景観を活かした道すじの整備に併せ、電柱・電線の撤去等を行い、地区の歴史性を活かしたまちづくりを行う「身近なまちづくり支援街路事業(歴みち事業)」を推進する。

  5. 観光資源の保護活動等の推進
    (1)観光資源保護思想等の普及

    1 観光週間
     国民の観光に対する正しい観念の普及と観光資源の保全などについて広く国民に広報するため、第37回「観光道徳の高揚と観光資源の保護週間(観光週間)」(8月1日〜7日)を実施し、関係各省庁及び都道府県において、それぞれ実施計画を立てて広く広報活動等を行うとともに、関係団体との緊密な連絡を図りつつ、観光道徳の普及・啓発、観光資源保護活動、美化清掃活動等について適切に指導を行う。

    2 自然保護思想
     自然公園等の優れた自然に親しみ、その適正な利用と自然保護思想の普及等を図るため、「自然に親しむ運動」(7月21日〜8月20日)期間中に、第43回自然公園大会を磐梯朝日国立公園(福島県北塩原村)で開催するほか、全国各地で自然とのふれあいを推進するための各種野外活動を実施する。
     また、4月29日のみどりの日に「自然に親しむみどりの日の集い」を新宿御苑ほか全国各地で実施するとともに、10月には自然歩道を歩くことにより自然への理解を深めることを目的として、「全国・自然歩道を歩こう大会」を実施する。
     さらに、パークボランティアの育成を図るため、「パークボランティア活動推進事業」を継続実施するとともに、自然解説に係る指導者育成のための「自然環境学習指導者育成事業」を行うほか、全国の国立公園等において、自然保護官等の指導・協力の下、小中学生を「子どもパークレンジャー」として、国立公園等のパトロールやマナーの普及、自然環境の維持・復元活動等を行うプログラムを実施することにより、自然とのふれあいを推進し、環境の大切さ及び社会への貢献の心を学ぶ機会を提供する。

    3緑化思想
     国民の国土緑化思想の高揚を図り、国土緑化を推進するため、全国植樹祭及び全国育樹祭の開催、緑化技術の開発・普及に助成する。
     全国緑の少年団連盟を活動の核とし、次代を担う青少年に対して緑化思想の普及啓発に努める。
     「みどりの日」(4月29日)、「みどりの週間」(4月23日〜29日)を中心に、各種緑化活動等の全国的な展開を推進する。
     都市緑化について、各種普及啓発活動の実施や、緑の相談所(都市緑化植物園)、都市緑化基金の拡充強化等を推進する。

    4文化財愛護思想
     文化財保護強調週間(11月1日〜7日)には、文化財保護思想の高揚のため有効と思われる展示会や芸能発表会、史跡めぐり等各種行事を全国各地において実施するよう依頼し、文化財保護の充実に努める。
     文化財防火デー(1月26日)には、全国的に文化財の防火演習等の運動を展開し、文化財愛護活動の高揚を図る。

    (2)ナショナル・トラスト活動の推進
    1観光資源の保護・活用
     ナショナル・トラスト活動の推進を通じて、我が国固有の文化遺産や自然景観などの観光資源の保護・活用を図るため、(財)日本ナショナルトラストが行う対象資産等の取得、修復、整備、このための調査、ナショナル・トラスト事業に必要な募金活動の展開及び観光資源の保護・活用の意義の普及啓発等の諸活動に対する支援を行う。

    2自然環境の保全
     全国各地において推進されているナショナル・トラスト活動は、国民自らが募金活動を通じて土地の買取等を行い、貴重な自然環境等を保全していくもので、国民主体の自然保護活動として極めて有意義であり、引き続き普及啓発等の施策を通じその一層の推進を図る。

    (3)観光地における美化・環境衛生対策の実施
    1自然公園の美化清掃
     国立公園内においては、国立公園内集団施設地区等美化清掃事業として、関係機関の協力の下に清掃活動を実施する。
     自然公園美化管理財団の事業対象地を更に拡大し、自然公園内の主要利用地点の美化清掃の強化、公共施設の維持管理等の充実を図るように指導する。

    2都市公園の美化清掃
     都市公園については、地方公共団体が地域住民等の協力を得て清掃、補修等のきめ細い管理に努める。また、国営公園については、快適に利用できるよう国が清掃等の維持管理を行う。

    3観光地における廃棄物処理
     観光地における廃棄物処理問題に対応するには、排出される廃棄物の量の減少を図る必要があり、これは国民のモラルの高揚に期待する面が極めて大きい。このため、引き続き、ごみ減量化推進週間、環境衛生週間等の機会を通じて、観光地の廃棄物処理問題、特に空き缶の散乱防止について教育、啓発活動を実施する。
     また、観光地等を持つ市町村に補助を行うこと等により、廃棄物の質及び量の変動を考慮したごみ処理施設等の整備を行うとともに水質保全を図る観点から合併処理浄化槽の整備を行う。