(国土の均衡ある発展)

 次に、「国土の均衡ある発展」という視点から、住宅・社会資本整備の現況をみてみよう。これは全国総合開発計画(昭和37年)に都市の過大化による生産面・生活面の諸問題、地域による生産性の格差について、国民経済的視点からの総合的解決を図るために掲げられた目標である。
 まず、1人当たり所得で地域間格差をみてみると、1970年代以降大幅に縮小している(図表1-3-9)。1980年代後半から1990年代初頭にかけてのバブルの時期には一時的に格差は拡大したものの、その後は再び縮小している。現時点での1人当たりGDPの地域格差の大きさを諸外国と比較してみると、諸外国のデータを幅をもってみる必要があるが、我が国の場合、欧米諸国に比べて低い水準にあると考えられる(図表1-3-10)。
 次に、地域の発展可能性をみる上で都道府県別の交流可能性を、交流可能人口比率からみてみよう。ここで交流可能人口比率とは、全国人口に占める当該都道府県の一日交流可能圏の人口の割合である。一日交流可能圏とは、各都道府県の県庁所在都市から3時間以内で到達できる都市とその圏域を指している。国土の均衡ある発展が達成されるためには、各地域から他の地域にアクセスできる可能性に格差がない方が望ましい。昭和60年時点と平成9年の2時点における各都道府県の一日交流可能人口比率をみると、ほとんど全ての都道府県で向上が見られ、平均でみても49.1%から58.0%へと向上している(図表1-3-11)。各県ごとの交流可能人口比率の格差指数をみても、昭和50年から平成9年にかけて一貫して低下しており、交流可能性の地域格差は縮小傾向にある(図表1-3-12)。一日交流可能圏は各県のおかれた地理的な条件により大きく影響される(国の中央部にある都道府県では高く、周辺部にある道県では低い)ため、一日交流可能人口比率はすべての都道府県で同じになるのが望ましいとは言えないが、少なくとも近年、地域格差は縮小傾向にあるということはいえる。
 このように1人当たり所得や交流可能性の面で地域格差は縮小傾向にあるのは事実である。しかし、下水道普及率など社会資本整備に関して地域格差が残されていることもまた事実である。「国土の均衡ある発展」は、1)基礎条件の改善、2)地域間格差の是正、3)人口と産業の適正な配置の3つの面が中心と考えられてきており、これらはなお重要であるが、これまでの達成度や地域の「自立の促進」「個性の発揮」「持続可能性」等の要請に調和した概念がより強く求められている。

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