(4)市街地整備の推進

イ 建築活動の適切な誘導
1) 総合設計制度の活用等
 総合設計制度とは、敷地内に一般に公開された広場、緑地などの空地を確保した良好な建築計画に対して、容積率の割増し、斜線制限等の緩和を行い、市街地環境の整備改善を図る建築基準法上の制度である。昭和45年創設以来、平成10年3月末現在で2,087件の許可実績があり、市街地における貴重なオープンスペースの確保等に貢献している。
 また、壁面線の指定等を積極的に行い、道路を中心としたオープンスペースを拡大すること等により、防災安全性の高いまちづくりを推進し、併せて壁面線を指定した住宅地等における容積率制限の合理化措置の活用を図っている。
2) 地区計画、建築協定等によるまちづくりの推進
 それぞれの地区の実情に対応したきめ細かな建築物の規制・誘導を行い、良好な市街地環境を整備保全するとともに、きめ細かなまちづくりの推進や良好な景観の整備を図るため、地区計画制度及び建築協定制度の活用等を図っている。平成11年3月末現在、都市計画に地区計画が定められた2,955地区のうち1,667地区で建築基準法に基づく条例が制定されており、また、平成10年3月末までの建築協定認可件数は2,532件(失効分除く)となっている。
ロ 再開発事業等の活用
1) 市街地再開発事業の推進
 都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図り、併せて良質な市街地住宅の供給を促進するため、都市再開発法に基づく市街地再開発事業に対する助成を行っており、年々制度の拡充、整備を行っている。
 平成12年度においては、福祉空間形成型市街地再開発事業を推進するため、交通結節点と一体的に又は隣接して実施されるものについても、社会福祉施設等の導入を支援する制度拡充を行っている。
2) 優良建築物等整備事業の推進
 敷地の共同化等により土地の合理的利用の誘導を図りつつ、市街地環境の整備、市街地住宅の供給等を推進するため、優良な建築物等の整備を行う事業について、優良建築物等整備事業として助成を行ってきており、年々制度の拡充、整備を行っている。
 平成12年度においては、福祉空間形成に資する優良建築物等整備事業を推進するため、一定の条件を満たす交通結節点と一体的に又は隣接して実施されるものについても、社会福祉施設等の導入を支援する制度拡充を行っている。
3) 高齢者・障害者等に配慮したまちづくりの推進
 長寿社会の到来、都市化の進展等に対応して、高齢者・障害者等に配慮した活動空間の形成を図り、高齢者・障害者等の社会参加を促進するため、市街地における高齢者・障害者等の快適かつ安全な移動を確保するための動く通路、エレベーター等の施設の整備、高齢者・障害者等の利用に配慮した建築物の整備等を行う人にやさしいまちづくり事業を推進している。
 その他、環境負荷の低減や福祉空間の形成、さらには安全市街地の建設に関し、関連法規上の基準に適合する施設建築物を整備する等、特に公益性の高い市街地再開発事業等に対し、「再開発緊急促進事業」により国が特別の助成を行っている。
4) 住宅金融公庫、日本政策投資銀行等の融資の活用
 市街地再開発事業等に対しては、住宅金融公庫、日本政策投資銀行等の政府系金融機関が長期低利の融資を実施しており、年々制度の拡充、整備を行っている。
 平成12年度においては、住宅金融公庫融資において、住宅市街地における居住環境改善を促進するため、住宅及び生活関連施設等の計画的な共同・協調建替え等に対し、「都市居住再生融資制度」を創設した。
 また、日本政策投資銀行融資においては、市街地再開発事業に対する融資の金利の引き下げ、工業専用地域等内の工場跡地における再開発地区計画に係る事業に対する融資の金利の引き下げ、都市基盤整備公団の土地有効利用事業に係る建築物整備事業の融資対象への追加を行った。
ハ 既成市街地等の高度利用
 大都市地域の既成市街地等における住宅確保が重要な課題となっているが、既成市街地の土地の高度利用等により市街地住宅を供給するため、次のような措置を講ずることとしている。
1) 市街地住宅総合設計制度・都心居住型総合設計制度・敷地規模別総合設計制度の活用
 敷地内に一般に公開されたオープンスペースを確保した建築物に対して容積率の割増し等を行う総合設計制度について、主たる用途が住宅である建築物に対して容積率の割増しの特例を認める市街地住宅総合設計制度を活用し、良好な市街地住宅の供給促進を図っている(平成10年3月末現在707件、86,469戸供給)。
 さらに、都心居住を推進するため、大都市圏の都心部等において住宅比率の特に高い優良な建築物について、一層の容積率の割増を行う都心居住型総合設計制度の積極的活用を図っている。
 また、既成市街地等において細分化した敷地の集約化を図り、市街地の整備改善に資する良質な建築物の建築を促進するため、敷地規模が大きくなるほど容積率が高くなる敷地規模別総合設計制度を創設した。
2) 用途別容積型地区計画制度、住宅地高度利用地区計画制度の活用
イ)用途別容積型地区計画制度
 住居地域、商業地域等で、住宅供給を促進するため、地区計画に敷地面積の最低限度、壁面の位置の制限等が定められた地区について、住宅に係る容積率をベースの用途地域の容積率の1.5倍以内まで割増しすることができる制度で、平成11年3月までに計14地区で決定されている。
ロ)住宅地高度利用地区計画制度
 低層住居専用地域等内のまとまりのある農地等について、良好な中高層の住宅市街地を整備するため、道路等の公共施設の整備と併せて、容積率、高さ制限等を緩和することができる地区計画制度で、平成11年3月までに計15地区で決定されている。
3) 市街地再開発事業等の活用
 市街地再開発事業及び優良建築物等整備事業においては、従来から住宅が一定割合以上のプロジェクトに対して、補助の優遇を行う等の配慮を行い、市街地住宅の供給を積極的に推進している。
ニ 複合化・高度化
  再開発地区計画制度の活用
 再開発地区計画制度は、土地利用の変化が顕著であり、十分な公共施設がない等の条件に該当する低・未利用の区域において、土地利用に関する基本方針その他の整備及び開発の方針、公共施設の配置並びに地区施設及び建築物に関する事項等を内容とする再開発地区整備計画を定めるとともに、再開発地区計画の内容に照らし、容積率制限、斜線制限及び用途制限の緩和を行うもので、昭和63年施行以降、平成11年3月末現在で119地区において都市計画が定められている。
 また、市街地再開発事業の施行区域要件として、高度利用地区等内のほか、再開発地区計画区域内が追加されている。
 さらに、日本政策投資銀行等の融資についても、再開発地区計画の区域内で行われる建築物整備事業を推進し、市街地における土地の合理的かつ健全な高度利用等を図っている。