(6)建築物・市街地の防災対策と適正な維持保全の推進

イ 既存建築物の耐震改修の促進
 阪神・淡路大震災での建築物の被災状況を受けて制定された「建築物の耐震改修の促進に関する法律」の的確な施行を図るとともに、耐震診断技術者の育成や普及啓発等に努めている。また、助成制度として、地方公共団体の耐震診断助成制度に対する補助、耐震型優良建築物等整備事業による耐震改修工事に対する補助、住宅金融公庫、日本政策投資銀行等の政府系金融機関による融資制度を講じており、特に耐震改修工事に対する補助については、マンションの耐震改修を促進するための拡充を行った(平成11年度第2次補正予算)。
ロ 建築物の適正な維持保全の推進
 建築物の維持保全は、今後の経済社会を支えるための良質で重要な建築ストックの形成を図る上で、極めて重要かつ不可欠なものであることから、主に以下の事項を推進している。
  維持保全計画の策定と定期報告制度の推進
 特定の建築物(劇場、映画館、病院、ホテル、百貨店等で特定行政庁が指定するもの)の所有者等は、必要に応じて建築物の維持保全に関する計画等の作成を行うこととされている。この計画等の作成については、各特定行政庁等を通じ指導に努めているところである。
 また、特定行政庁が指定する建築物の所有者等は定期的に建築物の状態を調査・検査し、特定行政庁に報告することとされており、今後とも定期報告制度の充実を図り、建築物の安全性の確保を図っていくこととしている。
ハ 危険住宅の移転の促進
 がけ地の崩壊等により住民の生命に危険が生じるおそれがある区域内に存する危険住宅の移転を促進する制度として「がけ地近接等危険住宅移転制度」がある。この制度により、平成11年度は、国の助成を受けて、危険住宅174戸が除却され、危険住宅に代わる住宅162戸が建設された。
 平成12年度予算では、補助限度額を引き上げるとともに、輪中堤の外側の地域等を「出水による災害危険区域」に指定する場合について、補助限度額のかさ上げ地域に追加した。
ニ 被災建築物の応急危険度判定体制の整備
 地震により被災した建築物の余震等による倒壊等から生じる二次災害を防止するため、被災後速やかに応急危険度判定を実施できるよう、業務マニュアルの整備や民間判定士に対する補償制度など、都道府県等と協力してあらかじめその体制の整備を図っている。平成11年度においては、全国から判定士を応援派遣する場合を想定した全国連絡訓練の実施、ビデオの作成等を行った。
ホ 建築防災分野における国際協力
 世界各国では地震等による建築物の被害が毎年のように発生しており、地震国である我が国の技術協力が期待されている。平成11年8月に発生したトルコ北西部地震、9月に発生した台湾中部地震では、阪神・淡路大震災での経験を生かした被災建築物応急危険度判定に関する技術協力を行い、現地での判定活動の実施に貢献した。また、平成2年に始まった「国際防災の10年」の一環としても技術協力を行ってきたが、平成12年からは引き続き「国際防災戦略」の中で、建築物に関わる災害の被害軽減に資するため、協力を行うこととしている。
ヘ 市街地再開発事業等の活用
 都市の既成市街地内においては、老朽化した木造家屋が密集した地区や、中高層建築物の老朽化した地区等、災害時における危険性の高い地区の存在が大きな問題となっている。
 また、阪神・淡路大震災の被災地において避難場所が不足した経験を踏まえ、既成市街地内においては、災害時に救援、救助、避難等の防災活動の拠点となる施設の整備の必要性が高まっている。
 このため、市街地再開発事業や優良建築物等整備事業による細分化された敷地の共同化や老朽建築物の建替えにより災害に強い建築物の整備を行うとともに、災害時に地区の防災活動の拠点となる施設を整備する事業について補助の拡充を行う防災活動拠点型プロジェクトを推進している。