III 不動産業の動向と施策

1 不動産業の現状と課題

(1)不動産業の国民経済に占める位置

イ あらゆる人間活動を支える不動産
 国民の日常生活や産業活動において、不動産(土地、建物等)は極めて重要な地位を占めている。家庭生活の場としての住宅、就業の場としてのオフィス、生産の場としての工場、それらの基盤としての土地など、あらゆる人間活動は不動産なしには存在し得ない。
 国民資産を構成する要素として不動産をとらえれば、平成10年末現在で2,186兆円(土地1,616兆円、住宅252兆円、住宅以外の建物318兆円)に上っており、国民総資産額7,412兆円のうちの約30%を占めている。金融資産を除いた実物資産だけで考えれば約71%を占めている(平成12年版経済企画庁「国民経済計算年報」)。
 このように、重要な意味を持つ不動産を、国民のニーズに合わせて供給し、管理するのが不動産業である。
 今後我が国が限られた不動産を最大限有効に活用し、世界に誇れる良質な都市ストックを形成することにより、国民が真に豊かさを実感できる社会を築いていく上で、今後の不動産業のあり方が重要となる。
ロ 産業全体に占める不動産業の地位
 では、現在、不動産業は産業全体の中で、どのような地位を占めているのか。不動産業の産業規模については、様々な指標でとらえることが可能であるが、まず法人数でみると、25.7万社を数え、全産業比10.4%を占めている(平成10年度大蔵省「法人企業統計」)。事業所数では、29.2万箇所、同4.4%、従業者数では93.4万人、同1.5%となる(平成8年総務庁統計局「事業所・企業統計調査報告」)。
 昭和38年には、法人数1.2万社、事業所数8.2万箇所、従業者数が18.5万人に過ぎなかったことを考えれば、不動産業は、高度成長期等を通じて大きく拡大してきた産業であるといえよう。また、法人売上高については、平成10年度現在、約33.1兆円に達しており、全産業の2.4%を占めている。同年の鉄鋼業の法人売上高は13.0兆円、同0.9%、石油製品・石炭製品製造業の売上高が10.0兆円、同0.7%であることからも、今や、不動産業は国民経済の中で無視し得ない規模を有しているといえよう(表3-III-1)。

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