第I部 人口の減少、少子高齢化の進展など人口構造の変化に対応した国土交通行政の展開 

(外国人旅行者の訪日促進)

 世界各国の経済における観光の比重は高く、観光交流の促進に力を入れる国は多くなっている。国際観光収入(注)は、一国の経済にとってみれば観光サービスの輸出額であるが、平成11年の世界の国際観光収入は世界の財・サービスの輸出額の約8%を占めており、自動車や食料品、コンピュータ関連といった主要商品の輸出額を上回っている。
 一方、我が国においては、13年の国際観光収入は財・サービスの輸出額の1%程度にすぎず、国際観光収支は、内外の旅行者数のアンバランスによって、大きなマイナスが続いている。この国際観光収支の赤字は、結果として、これまで大幅な貿易黒字に伴う国際収支の不均衡の改善に寄与してきており、13年の我が国の国際観光赤字額は貿易黒字額の約4割に相当するものとなっている。

 
図表I-3-3-5 国際観光収支と貿易収支の推移

国際観光旅行に関する国際収支は、昭和63年が約2.5兆円の赤字で、平成13年も約3.6兆円の赤字と、赤字が続いている。一方、貿易収支は、昭和63年が約12兆円の黒字で、平成13年も8.5兆円の黒字と、大幅な黒字が続いている。
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 人口減少や高齢化の進展により国内需要の低迷が懸念される中、外国人観光客を飛躍的に増加させることは、国内の人口動向に影響されない新規需要の創出、拡大という我が国経済へのプラスの効果が見込まれるものであり、外国人観光客477万人(平成13年)が800万人になることにより、新たに2.7兆円の経済効果があると試算されている。また、今後製品輸入の増加等による貿易黒字の減少も考えられる中で、外国人観光客の増大は、国際観光収支の改善にもつながるものである。
 さらに、経済効果以外にも、国際観光交流を通じた国際相互理解や地域の魅力を再発見し、地域を活性化する効果が期待されている。
 このため、政府を始め官民の関係主体が連携しながら外国人の訪日旅行を促進するための国家戦略である「グローバル観光戦略」に基づいて、世界に開かれた観光大国を目指して、訪日外国人旅行者数と日本人海外旅行者数の格差を早期に是正するという目標に向けて、さまざまな施策を実行することとしている。



(注)国際収支統計の旅行収入に国際輸送収入のうち旅客輸送サービスに係る運賃収入を合計したもの。国際観光収支はそれらに係る収支であり、いずれも国際観光機関(WTO)の定義による。

 

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