第I部 人口の減少、少子高齢化の進展など人口構造の変化に対応した国土交通行政の展開 

(都心部の土地利用の転換と低未利用地の存在)

 既に東京や大阪での都心回帰の現象について述べたが、大都市部では郊外への拡大が収束する一方で、都心部で土地利用の転換が大きく進みつつある。
 東京23区内における土地取引の面積を取引主体別にみてみると、平成9年(1997年)頃から法人による土地売却が大きく増加している。東京都心8区における用途別建物床面積の増減の推移をみると、このような法人による土地売却の増加を背景としながら、工場・倉庫が減少する一方、住宅・アパートや事務所・店舗等が増加していることがうかがえる。

 
図表I-3-3-7 東京23区における取引主体別土地移動(売払)面積

法人による土地売却は、平成6年は3091697平方メートル、9年は4601395平方メートル、13年は5596732平方メートルである。
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図表I-3-3-8 東京都心部(都心8区)における用途別建物床面積の増減率の推移

工場・倉庫は1993年以降減少し続けているが、住宅・アパート、事務所・店舗等は増加し続けている。
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 国土交通省土地・水資源局が行った「『都心回帰』現象の実態把握調査」(平成13年)によって、平成7年から12年までに東京都心8区で分譲されたマンションの敷地の従前の所有者と用途をみてみると、平成7年以降、所有者については法人の割合が大幅に増加しており、用途については住宅が大きく減少する一方、駐車場、オフィス、社宅・寮等が増加する傾向が見られ、法人の売却土地を中心として都心部において業務系用途から住居系用途への土地利用の転換が進んでいる様子がうかがえる。

 
図表I-3-3-9 竣工年別 マンション敷地の従前所有者(棟数)

マンション敷地の従前所有者は、平成7年竣工分では個人が52%、法人が42.7%で、12年竣工分では個人が27.5%、法人が57.2%となっている。
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図表I-3-3-10 竣工年別 マンション敷地の従前用途(棟数)

マンション敷地の従前用途は、平成7年竣工分では住宅が41.3%、駐車場、オフィス及び社宅・寮を合わせて26.6%、12年竣工分では住宅が22.5%、駐車場、オフィス及び社宅・寮を合わせて49.3%となっている。
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 しかしながら、同局が行った「低・未利用地等の実態把握のための基礎調査」(平成13年)によれば、人口30万人以上の都市の市街化区域内には、低・未利用地が約6万ha(面積割合9.7%)存在するものと推計されており、土地利用の転換は全国的にみればまだ十分には進んでいないものと考えられる。特に、地方都市においては、モータリゼーションの進展とともに中心市街地の空洞化が進み、都心部の土地の非効率的な利用が放置される状況も広がっている。

 

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