第II部 国土交通行政の動向 

(2)土砂災害対策

 我が国では、集中豪雨や地震等に伴う土石流、地すべり、がけ崩れ等の土砂災害が、過去10年(平成6〜15年)の年平均で約800件発生しており、国民の生活に多大な被害を与えている。さらに、都市化の進展に伴い宅地が都市域周辺の山麓部まで広がり、土砂災害危険箇所が増加傾向にある。そのため、土砂災害の防止対策として、砂防えん堤等の施設整備を実施しているが、全国に約21万ある土砂災害危険箇所(注1)に対する整備率は2割と未だ低い水準にあり、警戒避難等のソフト対策を含めた様々な施策に取り組んでいる。

 
図表II-7-1-7 過去10年(平成6年〜15年)の土砂災害の発生件数

平成6年から15年の過去10年の年平均の土砂災害発生件数は、がけ崩れ543件、地すべり140件、土石流154件、合計837件である。過去10年のうち最大は、平成10年で、がけ崩れ1,160件、地すべり152件、土石流317件、合計1,629件である。
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<平成15年7月の梅雨前線豪雨による土石流災害(熊本県水俣市)>



1)土砂災害対策3つの緊急プロジェクト
 平成15年7月の梅雨前線豪雨では、熊本県水俣市などにおいて大規模土石流等により、死者が23名を数える大災害が発生し、これを契機に、(ア)危険箇所の認知、(イ)土砂災害情報の伝達、(ウ)警戒避難のさらなる推進を図っている。

 
図表II-7-1-8 土砂災害対策3つの緊急プロジェクトの概要

土砂災害対策3つの緊急プロジェクトは、土砂災害危険箇所認知プロジェクト、土砂災害情報伝達プロジェクト、土砂災害警戒避難プロジェクトである。

2)「土砂災害防止法」による総合的な土砂災害対策の推進
 土砂災害から国民の生命及び身体を守るため、土砂災害防止工事等によるハード対策と相まって、土砂災害が発生するおそれのある土地の区域を明らかにし、当該区域における警戒避難体制の整備を図るとともに、著しい土砂災害が発生するおそれのある土地の区域において一定の開発行為の制限・建築物の移転勧告等のソフト対策を講ずることを規定した土砂災害防止法(注2)に基づき、全国で土砂災害警戒区域等の指定等に必要な基礎調査を実施しており、平成15年3月に広島県で13箇所が指定されている。

3)再度災害防止対策等の推進
 (ア)砂防事業等による土砂災害対策の推進
 集中豪雨や火山噴火等により激甚な災害を受けた地域等や災害のおそれの高い地域について、再度災害防止等を目的として火山砂防激甚災害対策特別緊急事業等により土砂災害対策を実施しており、平成15年度は、北海道の有珠山や高知県土佐清水市等82箇所で実施している。
 (イ)危険住宅の移転の促進
 「がけ地近接等危険住宅移転制度」の活用等により、崩壊の危険があるがけ地に近接した危険住宅の移転が促進されており、平成14年度は危険住宅99戸が除却され、危険住宅に代わる住宅79戸が建設された。

4)都市山麓グリーンベルトの整備
 都市域における土砂災害に対する安全性を高め、無秩序な市街化による土砂災害危険箇所の増加を抑制するとともに、緑地を確保するため、市街地に隣接する山麓斜面にグリーンベルトとして、一連の樹林帯の形成や在来植生を活かしつつ、斜面の安全を図る緑の斜面工法による土砂災害対策を推進しており、平成15年度は六甲地区(兵庫県)等13地区で実施している。


(注)1 ここでいう土砂災害危険箇所のうち、土石流危険渓流及び急傾斜地崩壊危険箇所については、被害想定区域内に人家5戸以上等のある渓流(箇所)を対象としている。
   2 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成13年4月施行)

 

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