第II部 国土交通行政の動向 

(1)低公害車の開発・普及

 低公害車の開発・普及は、運輸部門におけるCO2排出量削減対策の最大の柱である一方で、後述する自動車に起因する大気汚染問題へ対応するための排出ガス対策として、非常に重要であり、国土交通省においては、双方の課題に対応するため、低公害車の開発・普及に取り組んでいる。
 既に実用段階にある低公害車には、CNG(圧縮天然ガス)自動車、電気自動車、メタノール自動車、ハイブリッド自動車及び低燃費かつ低排出ガス認定車があり、開発中の次世代低公害車としては、大型ディーゼル車代替として、ジメチルエーテル(DME)自動車やスーパークリーンディーゼル車等があり、また究極の低公害車である燃料電池自動車等が挙げられる。国土交通省では、これらの環境負荷を低減した低公害車の開発・普及を促進している。

1)これまでの自動車グリーン税制の取組みによる効果
 環境負荷の小さい自動車の普及を促進するため、税収中立を前提に排出ガス及び燃費性能に優れた自動車に対して自動車税の税率を軽減する一方、新車新規登録から一定年数以上を経過した自動車に対しては税率を重くする措置を講じる自動車税のグリーン化や、低公害車、低燃費車等を取得した場合の自動車取得税の特例措置を講じてきているところである。
 これらの取組みにより、技術開発の進展や自動車メーカーの努力、一般消費者の環境に対する関心の高まり等が相まって、自動車税のグリーン化の軽減対象となる自動車については、平成15年度上半期の新車新規登録台数の49%にあたる91万台を占めており、この結果、低公害車の保有台数は575万台(全保有台数の11.4%)に達している。

2)排出ガス低減・燃費性能の向上を促す新たな仕組みの創設
 このような低公害車の普及状況、自動車メーカーの技術開発の向上等を踏まえ、平成15年10月より、最新の排出ガス基準値から有害物質の低減レベルに応じ、低排出ガス性能の認定等を行う「低排出ガス車認定制度」に、平成17年排出ガス基準値に対応した新しい低排出ガス認定レベル(「新☆☆☆☆(平成17年排出ガス基準値より75%以上低減)」及び「新☆☆☆(平成17年排出ガス基準値より50%以上低減)」)を追加するとともに、これを示すステッカーを車体に表示することとした。
 また、依然として自動車からのCO2排出量は増加傾向にあることにかんがみ、より燃費性能に優れた自動車を容易に一般消費者が識別・選択できるようにし、低燃費車の普及を促進することを目的として、自動車の燃費性能を評価し、その結果を一般国民に広く公表する「自動車燃費性能評価・公表制度」を創設した。なお、同制度に係る燃費性能の表示については、該当する自動車の車体に「燃費基準達成車」及び「燃費基準+5%達成車」のステッカーを貼付することとした。

3)平成16年度税制改正における取組み
 平成16年度税制改正においては、2)の取組みに併せ、大気汚染対策及び地球環境対策の一層の推進を図るため、「低排出ガス車認定制度」及び「自動車燃費性能評価・公表制度」を活用し、自動車税の軽減対象及び自動車取得税の低燃費車特例の対象をより環境負荷の小さい自動車(新☆☆☆☆かつ燃費基準+5%達成車等)に重点化する等自動車環境施策の強化を行うこととしている。

 
図表II-8-2-4 平成16年度税制改正における自動車税のグリーン化及び自動車取得税の特例措置の軽減対象・軽減率等

平成17年排出ガス基準値より75%以上低減かつ燃費基準をプラス5%達成した車に対して、自動車税を概ね50%低減し、自動車取得税を30万円控除する。また、平成17年排出ガス基準値より50%以上低減かつ燃費基準をプラス5%達成した車に対して、自動車税を概ね25%低減し、自動車取得税を20万円控除するなどの制度を新たに設けることとしている。

4)低公害車開発・普及のための支援策
 低公害車購入に必要な実用的情報を地方自治体・企業等の自動車購入責任者及び国民一般に対し直接提供する「低公害車メールマガジン」を月1回発行しているほか、地方運輸局において低公害車導入促進協議会を設置し、地方公共団体、運輸事業者、産業界等に対して低公害車への切り替え要請や啓発活動を行っている。

5)自動車の燃費改善
 自動車の燃費の改善を推進するため、エネルギーの使用の合理化に関する法律に基づく燃費基準の策定や自動車の燃費の公表等を行っている。この結果、平成14年度に出荷されたガソリン乗用車のうち約70%が燃費基準を達成しており、平均燃費値は、7年度と比較して約19%向上した。また、15年7月にLPガス乗用自動車について燃費基準を策定したほか、車両総重量2.5トンを超える重量車の燃費基準導入について検討している。

 

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