第II部 国土交通行政の動向 

1 交通分野のIT化

(1)公共交通分野のIT化

 公共交通分野においては、従来からITを利用した座席予約システム、列車運行管理システム等を活用し、運営事務や運行の効率化等が図られてきた。さらに、近年の携帯電話や携帯端末の普及と技術の高度化にあわせ、利用者の利便性向上を目的として、公共交通分野のIT化を図るべく、以下の施策を行っている。

1)「e-エアポート」構想の推進
 世界への玄関口となる国際空港の利便性を高めるとともに、我が国の国際競争力の向上を図るため、成田国際空港において関係民間企業及び成田空港会社の協力の下、ITを多面的に活用した「e-エアポート」構想の推進に取り組んでいる。平成16年度は、1)関係府省と連携し、生体認証技術(バイオメトリクス)を活用した本人認証の高度化による空港における旅客手続の安全性と利便性の確保(e-Passport連携実証実験)、2)自動通訳(日英)、観光ガイド(英中韓)機能を有する携帯情報端末を活用した国際観光旅客移動支援(e-ナビ)等について実証実験を行っている。
 また、RFIDタグ(注)を活用した航空手荷物管理の高度化については、平成15年に関係民間企業等による技術研究組合が設立され、次世代の手荷物管理に関する検討を行っている。
 これらの取組みは、将来的にはSPT(搭乗手続、手荷物預託等の一連の空港手続の総合化、簡素化)の実現や国際観光旅客の移動支援に貢献し、迅速かつ快適な移動の実現が可能となる。

 
図表II-4-5-1 「e-エアポート」構想の推進

国際空港において、バイオメトリクス技術により安全で迅速な渡航手続きを実現させるイーチェックイン、アールエフアイディー技術により「手ぶら」旅行を実現するイータグ、自動通訳技術により言語を越えたコミュニケーションを実現させるイーナビ等について実証実験を行うなど、イーエアポート構想を推進している。

2)公共交通情報提供の高度化
 公共交通機関に関する情報については、各交通事業者が保有する時刻表や運賃等の固定情報のみならず、遅延等の運行状況や車両の走行位置等まで含めた情報を柔軟に加工、分析できるようにするとともに、ドア・ツー・ドアの移動に必要な情報をパソコンや携帯電話等の携帯端末で即時に入手できる環境を整備することが期待される。
 国土交通省では、煩雑な操作を必要とせず、利用者に便利な端末による公共交通情報の提供のあり方を検討するため、地上デジタル放送開始に伴い普及が見込まれるデジタルテレビを用いた公共交通情報の提供実験を行い、2004年(平成16年)10月に名古屋地区で開催された「ITS世界会議 愛知・名古屋2004(ITS世界会議2004)」においてその成果の発表を行った。交通情報提供事業者や民間放送事業者による実験的な取組みも開始されており、地上デジタル放送の普及とともに今後の発展が期待される。

 
図表II-4-5-2 インターネットITS基盤を活用したタクシー業務高度化に関する研究

車両情報端末の位置情報を活用し、利用者がオペレータを介することなく、直接に運転手と通話できる仕組みを構築し、実証実験を行う。実験により、利用者利便の向上、タクシー運行管理の向上を検証する。

 このほか、国土交通省では、タクシー利用の利便性拡大、及び事業者によるタクシー運行管理の高度化を進めるため、車両情報端末の位置情報を活用し、利用者がオペレータを介することなく直接にドライバーと通話ができるシステムを構築し実証実験を実施した。
 また、東アジア地域で共通に使用できる交通系ICカードの実現に向けて、シンガポール、香港、タイ及び日本国内の鉄道事業者やカード事業者等と技術面・運用面での課題に関する検討を行うなど、公共交通分野のIT化に関する実践的な政策研究を進めている。

 
図表II-4-5-3 東アジア共通ICカード構想

アジア各都市での共通化、各種交通機関での利用、東アジアでの複数通貨の利用を可能とさせる東アジア共通ICカードの実現に向けた研究が進められている。


(注)超小型の無線ICチップにより人や物の個別情報を識別・管理する仕組み。ICタグの一種

 

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