第II部 国土交通行政の動向 

(4)地震対策

1)住宅・建築物の耐震・安全性の向上
 阪神・淡路大震災や平成16年新潟県中越地震においては、建築物に多数の被害が生じ、特に、昭和56年以前に建築された現行の耐震基準を満たさない古い建築物の被害が顕著に見られた。住宅・建築物の耐震化を図るため、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」に基づき、耐震診断及び耐震改修の指針の策定、地方公共団体による計画策定等を行うとともに、耐震診断や耐震改修などに対する補助制度や融資制度などに併せ、改修や建替えについても住宅ローン減税の対象としている。平成16年度には、補助制度について対象地域を拡大(注)した。

2)被災建築物の応急危険度判定の実施
 地震により被災した建築物の余震等による倒壊等から生じる二次災害を防止するため、被災後速やかに応急危険度判定を実施できるよう、業務マニュアルの整備や全国連絡訓練等により都道府県と協力して体制整備を図っている。平成16年新潟県中越地震では、36,143件について応急危険度判定を実施した。

3)オープンスペースの確保
 都市の防災機能の向上により安全で安心できる都市づくりを図るため、地震災害時に復旧・復興拠点や復旧のための生活物資等の中継基地等となる防災拠点、周辺地区からの避難者を収容し、市街地火災等から避難者の生命を保護する広域避難地、及び地域周辺の集結場所や消防救護活動の拠点等として機能する一次避難地となる防災公園等の整備を推進している。
 また、大都市圏等において、先行取得した防災公園予定地に防災施設を機動的に整備する防災緑地緊急整備事業をさやか公園(大阪府)等2地域で実施するとともに、防災公園と周辺市街地の整備改善を一体的に実施する防災公園街区整備事業を大洲防災公園(千葉県)等13地域で実施している。

4)総合的な耐震安全性を確保した防災拠点施設の整備の推進
 「国家機関の建築物及び附帯施設の位置、規模及び構造に関する基準」及び「官庁施設の総合耐震計画基準」に基づき、建築物の構造体、建築非構造部材、建築設備について総合的な耐震安全性を確保した防災拠点となる官庁施設の新営及び既存施設の耐震改修を推進している。平成16年度は花咲港湾合同庁舎(北海道)の整備に着手した。

5)構造物の耐震性向上

 (ア)河川事業における耐震性対策
 河川堤防耐震点検マニュアル等に基づき点検を行い、河川堤防等が被災した場合に浸水被害が生じないよう、平成15年度は約11kmの耐震対策を実施した。

 (イ)道路事業における耐震性対策
 東海地震、東南海・南海地震等の大規模地震の逼迫性が指摘されていることから、被災時の円滑な救急・救援活動、緊急物資の輸送や復旧活動を支援する緊急輸送道路における橋梁の耐震補強対策を実施している。平成16年度は一般国道1号新安間橋(静岡県)等で実施している。

 (ウ)港湾事業における耐震性対策
 大規模災害時に、発災直後から復旧完了に至るまで、一定の幹線貨物輸送(国際コンテナ貨物、幹線フェリー等)を確保するとともに、臨海部防災拠点として避難者や緊急救援物資用の輸送拠点となる耐震強化岸壁(平成15年度末現在146バース供用)や、緑地等のオープンスペースの整備を推進している。さらに、地域の実情に応じて、被災地にえい航し、救急・救援活動の拠点となる浮体式防災基地を東京湾、伊勢湾、大阪湾、室蘭港に配備している。

 
図表II-6-1-9 港湾事業における耐震性対策

港湾事業における耐震性対策として、耐震強化岸壁の整備のほか、臨港道路の橋梁部の耐震強化、オープンスペースの整備、緊急道路の整備を行っている。


(注)東海、東南海・南海、南関東地域直下の地震の被害が想定される地域等で、30戸/ha、戸数300戸以上の住宅集積がある地域の補助対象への追加など

 

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