第I部 安全・安心社会の確立に向けた国土交通行政の展開 

コラム・事例 増大は必至、社会資本の維持管理・更新費

 我が国では、社会資本が高度経済成長期を中心に大量に整備・蓄積され、それらに必要となる維持管理・更新費は、着実に増大しています。このような状況を客観的に把握するため、国土交通省所管の社会資本(道路、港湾、空港、公共賃貸住宅、下水道、都市公園、治水、海岸)を対象に、平成42年(2030年)までの維持管理・更新費の推計を行いました。
 推計に際しては、厳しい財政状況を考慮して、1)今後の投資可能総額の伸びが、平成17年度(2005年度)以降対前年比±0%(ケース1)、2)国が管理主体の社会資本については、2005年度以降対前年比マイナス3%、地方が管理主体の社会資本については、2005年度以降対前年比マイナス5%(ケース2)の2つのケースを設定しました。
 その結果、平成42年(2030年)の状況を平成16年(2004年)と比較すると、ケース1では、維持管理・更新費の合計額が投資可能総額に占める割合は、約31%から約65%に増大する一方、新設充当可能費が投資可能総額に占める割合は、約65%から約31%に減少します。ケース2では、投資可能総額が不足し、社会資本を更新できなくなっています。

 
ケース1(対前年比プラスマイナス0%)
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ケース2 (国:対前年比マイナス3%、地方:対前年比マイナス5%)
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推計の対象
 ・国土交通省所管の社会資本のうち、下表のものとした。

推計方法の概要
 ・更新費(注1)は、社会資本ストックが耐用年数に伴い消滅すると仮定し、同一の機能で更新するのに必要な額として推計した。
 ・維持管理費(注2)は、社会資本のストック額と維持管理費との相関に基づき、回帰分析により推計した。(一部、過去の平均値を使用した。)
 ・災害復旧費(注3)は、過去の年平均値と設定した。
 ・新設(充当可能)費(注4)は、投資(可能総)額から更新費、維持管理費、災害復旧費を除いた額を計算した。
 ・更新費や維持管理費についてのコスト縮減は、平成16年度までのコスト縮減への取組みの実績を踏まえ、設定した。

耐用年数の設定
 ・耐用年数は、施設の特性により、必要に応じて細分化し、それぞれの更新の実態を踏まえ、検討を行い、下表のように設定した。

 


※新設改良費(新築、改築、改良、更新等を合わせたもの)、維持管理費、災害復旧費のデータについては、「日本の社会資本」(内閣府政策統括官、2002年)、「下水道統計要覧」((社)日本下水道協会)、「建設業務統計年報」(国土交通省、以下同様)、「道路統計年報」、「海岸統計」等を使用した。


(注1)施設等の耐用年数経過に基づく更新のための経費
(注2)施設等の維持のために必要な経常的経費と新たな機能の追加を伴わない補修、修繕のための経費(例:橋梁・舗装路面や下水管の亀裂の修繕、パトロール、施設の運転等の日常的な管理)
(注3)災害被害からの現状回復のための経費
(注4)施設の新設や機能向上のための経費

 

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