1 都市部、地方部における地域コミュニティの衰退  地域コミュニティは、平常時における定期的な防災訓練の実施、住民の防災意識や災害時に向けた準備の喚起等に大きな役割を果たすとともに、災害時においては、災害発生直後の住民の安否確認、初期救助活動、情報の伝達、避難所の運営、被災した住居を狙った窃盗等を防ぐための住民による見回り等に重要な役割を果たしている。実際に、平成7年の阪神・淡路大震災では、倒壊した家屋等に閉じ込められ救助された人々の多くは、救助隊員等のほか、家族や近所の住民によって救助された。  しかし、都市部、地方部における地域コミュニティの状況を把握するために行った調査によると、15大都市(注)においては、地域コミュニティはかなり衰退しているとともに、町村部においても、15大都市ほどではないものの、地域コミュニティが衰退している状況にある。 図表I-2-2-1 地域の人々との付き合い 図表I-2-2-2 地域の人々との付き合いが疎遠な理由(複数回答)  地域コミュニティの衰退を促す事象として、相対的に強く認識されているものは、「昼間に地域にいないことによるかかわりの希薄化」、「コミュニティ活動のきっかけとなる子どもの減少」、「住民の頻繁な入れ替わりによる地域への愛着・帰属意識の低下」等が挙げられる。  「昼間に地域にいないことによるかかわりの希薄化」については、15大都市、町村部ともに回答した割合が最も高い。また、「住民の頻繁な入れ替わりによる地域への愛着・帰属意識の低下」、「学生や単身赴任者など地縁的関係を志向しない住民の増加」等については、15大都市で回答した割合が相対的に高い一方、「コミュニティ活動のきっかけとなる子どもの減少」、「自動車社会の進展による生活圏の拡大」等については、町村部で回答した割合が相対的に高い。 (都市部、地方部共通の地域コミュニティの衰退要因)  都市部、地方部に関係なく、郊外化の進展等に伴い、居住地域と職場・学校等が分離し、主に昼間における地域とのかかわりが少なくなっている。  時間帯別の屋内滞在者数を見ると、都市部(川崎市)、地方部(神奈川県津久井郡相模湖町)ともに、昼間は自宅にいる人が半分程度である。 図表I-2-2-3 時間帯別の屋内滞在者数(川崎市、神奈川県津久井郡相模湖町) (都市部における地域コミュニティの衰退要因)  都市部では、地方部からの人口の流入が進んだことや、住民の頻繁な流出入により、地域への愛着・帰属意識が低下している可能性がある。また、加えて、単身世帯やワンルームマンション等の増加等、地縁的なコミュニティ活動を志向しない世帯も増えつつある。  三大都市圏における転入超過数を見ると、ここ数年、年間10万人弱の転入超過で推移している。また、三大都市圏における単身世帯の比率は30%弱を占めており、三大都市圏における居住室が1室の専用住宅は200万戸を超えている。 図表I-2-2-4 三大都市圏、地方圏における単身世帯比率の推移 図表I-2-2-5 単身世帯における地域の人々との付き合い 図表I-2-2-6 三大都市圏、地方圏における居住室が1室の専用住宅の推移 図表I-2-2-7 ワンルーム共同住宅居住者の地域の人々との付き合い (地方部における地域コミュニティの衰退要因)  地方部では、若年層を中心に都市部への人口流出が目立ち、過疎化や高齢化が進行していることから、地域内での世代を超えた交流が困難になるとともに、地域コミュニティの担い手の減少を引き起こしている。また、学校の行事等を通じてコミュニティ活動のきっかけとなる子どもの減少も顕著になっている。さらに、自動車社会の進展に伴い生活圏域が拡大したことも、地域とのかかわりが少なくなっている要因の一つと考えられる。  子どものいる世帯比率の減少は、三大都市圏、地方圏共通の傾向である。しかしながら近年、特に地方圏においては、子どものいる世帯数の減少傾向が強い。また、地方圏においては、人口当たり自動車(乗用)保有台数は三大都市圏より高い。 図表I-2-2-8 三大都市圏、地方圏における子どものいる世帯数の推移 図表I-2-2-9 学齢期の子どもの有無による地域の人々との付き合い 図表I-2-2-10 三大都市圏、地方圏における人口当たり自動車(乗用)保有台数 (注)東京都区部及び14政令指定市