第I部 地域の活力向上に資する国土交通行政の展開 

コラム・事例 貴志川線の存続に向けた地域の取組み

 和歌山電鐵貴志川線は、和歌山駅(和歌山市)から貴志駅(紀の川市)を結ぶ14.3kmの路線です。
 貴志川線は、山東軽便鉄道株式会社により大正5年に開業し、昭和36年に、南海電気鉄道株式会社(南海電鉄)と合併した後も、地域住民の足として運営されてきましたが、マイカーの増加、路線と並走する県道の整備、少子化の進行等の影響を受け、年間利用者数が昭和49年度の360万人から、平成16年度の192万人まで減少し、5億円を超える経常損失が生じていました。南海電鉄は、コストの削減や列車の増発等、様々な需要喚起策を実施しましたが、利用者数の減少に歯止めが掛からず、16年9月に国土交通大臣に対して事業の廃止届を提出しました。
 一方、貴志川線は、通勤・通学に利用する沿線住民や、自家用車を持たない高齢者等の足として大きな役割を果たしていました。そこで、沿線住民が「貴志川線の未来を“つくる”会」を立ち上げ、関係機関への存続要請活動や利用者増に向けたイベントを開催するなど、貴志川線の存続に向けた取組みを活発に実施しました。
 このような沿線住民の活動が実り、平成17年2月には、沿線自治体による、「貴志川線存続に向けた支援の枠組」が決定しました。同年4月に、岡山電気軌道株式会社が貴志川線運営事業者として公募により選定され、その後同社により、和歌山電鐵株式会社が設立されました。これを受け、18年2月に、貴志川線の南海電鉄から和歌山電鐵への鉄道事業譲渡譲受について国土交通大臣が認可を行いました。
 これにより、貴志川線は路線の廃止を免れ、平成18年4月から、和歌山電鐵貴志川線として運営されています。
 路線の継承後も、貴志川線の利用促進が不可欠だという認識から、地元自治体、沿線住民、沿線学校関係者、商工会及び和歌山電鐵で組織された貴志川線運営委員会が設置され、貴志川特産のいちごをテーマに著名なデザイナーの手により従来の車両を大胆にリニューアルした「いちご電車」の導入や多くの沿線住民や観光客の参加する貴志川線祭りの開催等、様々な貴志川線活性化策が行われています。今後とも同委員会による取組みが期待されています。
 


いちご電車

 

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