第I部 地域の活力向上に資する国土交通行政の展開 

コラム・事例 建設業における農業等への進出の取組み

 建設業は、地域に根付いたコミュニティ産業として、地域ニーズへの新たな担い手として大きな役割を果たすことが期待されています。
 新潟県のある中山間地域の建設会社は、過疎化・高齢化の進展によって耕作放棄地が拡大する中で地域の農業の新たな担い手となるべく、農地リース方式(注1)を活用して農業分野に進出しました。同社は、公共事業が減少していることに加え、雪の影響で工事の施工が7月から12月に集中するため、閑散期の雇用対策を求められていました。そこで、「閑散期の冬季から春季にかけて開田・開畑作業を行うなど、人材の有効活用が可能である」、「建設機械や車両等の転用が可能である」、「社員の多くが兼業で農家を行っている」などの理由から、農業に着目しました。現在、有機無農薬栽培による米作りや、野菜、山菜の生産・加工販売、転作水田を利用したイワナの養殖等を行っており、自然環境をいかした付加価値の高い農産物の生産に取り組んでいます。
 新しい地域行政ニーズへの対応も期待されています。官の事業を民間に開放する動きが加速する中で、指定管理者制度(注2)が導入され、公共施設の管理を、民間企業等も行うことが可能となりました。とりわけ建設業は、公共施設の施工を担ってきた主体として施設の構造等に明るく、参入に当たって優位性を持っていると言えます。東京都のある造園工事業者は、指定管理者として都内の公園の管理を行っています。長年培ってきたノウハウを活用できる植栽管理に加えて、施設管理や園内警備のほか、公園利用促進のためのイベントや講習会の企画・運営を行うなど、「公園を造る」建設業から「公園利用者へサービスを提供する」サービス業への脱皮を図っています。
 そのほか、建設業は介護分野や環境分野等への進出をしていますが、国土交通省では、建設業の経営革新の取組みを促進するために、新分野進出に関連する情報提供等を1箇所でまとめて受けられるワンストップサービスセンターを都道府県ごとに設置するとともに、新分野進出のモデル的な取組みを支援し、広く普及・促進を図っています。
 


農作業の様子
 


公園でのイベントの様子
 


その他の新分野進出の事例 介護分野においては、老朽化した社屋を介護施設として自社で施工、改修し、デイサービス、ショートステイを行う介護事業に参入している事例がある。環境分野においては、強力な風力という地域資源に着目し、新エネルギーの研究開発による地域活性化に取り組んでいる事例がある。建設関連分野においては、公共施設建築が主体だった会社が住宅の新築、リフォーム分野に進出している事例がある。


(注1)所有者から農地を借り受けたり、買い取ったりした地方公共団体等と協定し、賃料を払って農地を借り受ける仕組み
(注2)これまで地方公共団体の出資法人等に限定されていた住民の福祉向上のためのサービスを提供する公共施設の管理について、民間事業者やNPO等も指定を受け、管理主体として参入できるようにした制度

 

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