第II部 国土交通行政の動向 

(2)ITSの推進

 高度道路交通システム(ITS)は、最先端の情報通信技術を用いて人・道路・車両を一体のシステムとして構築するもので、高度な道路利用、運転や歩行者等の負担の軽減を可能とし、道路交通の安全性、輸送効率及び快適性の飛躍的向上を実現するものである。これにより、今日の自動車社会が抱える、交通事故や渋滞、環境問題、エネルギー問題等の解決に大きく貢献することが期待される。また、ITSの実用化の進展は、自動車産業、情報通信産業等の関連する分野において、大規模かつ新たな市場の形成に結びつくことも期待される。

1)ITSの導入・展開
(ア)ETCの普及促進
 有料道路の料金所をノンストップかつキャッシュレスで通行可能なETCについては、平成18年4月に全国の利用率が週平均で60%を突破し、料金所渋滞も大幅に解消している。今後も、多様で弾力的な料金設定、車載器の購入支援、民間事業者等によるETC車載器を利用した駐車場料金決済等の多様なITSサービスの展開の支援等により普及促進を図っていく。また、高速道路の利便性を向上し、地域生活の充実、地域の活性化を図るためETC専用のインターチェンジ(スマートIC)の整備促進を図っていく。
(イ)道路交通情報の提供の充実
 渋滞や交通規制等の道路交通情報を即時にカーナビゲーションシステムに提供する道路交通情報通信システム(VICS)については、提供情報の充実を図ることにより、VICS対応の車載機が平成18年6月末に1,580万台を突破した(VICSセンター調べ)。今後も、3メディア対応型VICS車載機(注1)の更なる普及促進を図るとともに、VICSの高度化を推進していく。
(ウ)地図情報等の活用によるサービス高度化の支援
 カーナビゲーションシステムの高度化を支援するため、道路の幅やカーブの大きさ等、道路構造上の「走りやすさ」に関する情報をカーナビゲーションシステムで活用するために、官民共同で検討を行っている。
(エ)バス事業におけるITSの活用
 平成18年度には、首都圏において標準データ形式を活用して複数のバス事業者の時刻表、路線・系統等の固定情報及びリアルタイム運行情報(注2)を統合する実証実験を行い、その効果と課題を検証し、効率的なバス情報提供のためのシステム化を推進している。

2)ITSに関する技術開発
(ア)新たなITSサービスの開始
 一つのITS車載器で、1)あらゆるゲートのスムーズな通過、2)場所やニーズに応じた地域ガイド、3)タイムリーな安全走行支援情報等の様々なサービスを実現するため、平成18年度は、サービス提供に必要な規格・仕様の策定等を行った。
(イ)走行支援道路システム(AHS)及び先進安全自動車(ASV)プロジェクトの推進
 ICTの活用により道路と車両を連携させ、ドライバーへの注意喚起等により事故を削減し、安全で快適な自動車の走行を支援するシステム(AHS)の研究開発を推進している。
 
図表II-4-7-3 走行支援道路システム(AHS)の社会実験

ドライバーにカーブの先の道路交通状況を事前に知らせる社会実験を行っている。この実験では、既に普及している3メディア対応型VICS車載器を使用している一般ドライバーを対象に、カーブの先の危険情報を路側のアンテナから車両に提供することで、ドライバーに注意を促し、追突事故や側壁衝突事故の削減やヒヤリ・ハットとよばれる危険な状況を減少させる検証を行っている。

 また、ICT技術により安全性を格段に高めた先進安全自動車(ASV)の開発・普及の促進のため、ASVプロジェクトを推進している。
 
図表II-4-7-4 通信を利用した運転支援のイメージ(先進安全自動車)

先進安全自動車とは、歩行者保護及び突き倒し防止前部構造、路面センサー、前方障害物センサー、周辺視認性向上カメラ、後方障害物センサー等を備えた自動車のことである。自動車や道路が互いに通信を行うことによる運転支援が可能となる。

 さらに、「IT新改革戦略」に基づき、交通事故を削減すべく、インフラ協調による安全運転支援システムを実用化するため、平成20年度に大規模実証実験を実施する予定であり、AHS及びASVプロジェクトも大規模実証実験に向けて取り組んでいる。
(ウ)ナンバープレートの電子化
 スマートプレート(電子ナンバープレート)とは、自動車の登録番号等を記録したICチップを、ナンバープレート上に取り付けたものであり、それにより車両の電子的識別が可能となり、偽変造防止、ショットガンシステムによる交通渋滞対策等への活用が期待されている。


(注1)FM多重放送に加え、電波ビーコン、光ビーコンからの情報も合わせて受信できるVICS車載機
(注2)現在の時刻における運行状況等の情報

 

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