第II部 国土交通行政の動向 

(2)自動車の総合的な安全対策

1)今後の車両安全対策の検討
 平成18年6月に交通政策審議会報告書が取りまとめられ、22年までに死者数を2,000人削減(対11年比)、負傷者数を25,000人削減(対17年比)することが目標に掲げられた。これを踏まえ、これまで進めてきた衝突後被害軽減対策に加え、予防安全対策の普及・拡大を図ることとしている。また、全国で飲酒運転による事故が多発し、大きな社会問題となっていることから、飲酒運転事故防止対策の一環として、アルコールインターロック(注1)の実用化に向けた検討を行っている。

2)安全基準の拡充・強化
 平成18年3月には、固定機能付きチャイルドシート、乗用車の後部中央席三点シートベルト等について基準化を行った。また、予防安全技術の効果評価に関して、ドライブレコーダ(注2)等の活用方策を検討している。

3)自動車アセスメントによる安全情報の提供
 自動車とチャイルドシートに関する安全性能の評価結果を公表し、安全な自動車等の選択や製作者のより安全な自動車の開発を促進している。平成12年度から17年度の間に自動車130車種、チャイルドシート50機種の評価結果を提供することにより、自動車等の安全性能の向上に貢献している。

4)先進安全自動車(ASV)の開発・普及の促進
 ASVの開発・普及を促進すべく、平成18年度から産・学・官の協力体制で第4期ASV推進計画を進めるとともに、大型車用衝突被害軽減ブレーキの普及策を講じていく。
 
図表II-6-3-9 大型車用衝突被害軽減ブレーキ例

大型車用被害軽減ブレーキは、前方障害物に衝突するおそれがある場合に運転者が回避操作を行うように警報し、その上でさらに障害物との衝突が避けきれないと判断された場合に、障害物との衝突時の衝撃を緩和するため自動的にブレーキ操作を行うもので、大型トラックの安全性の向上を図っている。

5)リコールに係る不正行為再発防止対策の徹底
 自動車メーカーによるリコールに係る不正行為の発覚を受け、平成16年度に再発防止対策を取りまとめ、情報収集体制、監査体制及び技術的検証体制を順次強化してきたが、18年度には、「道路運送車両法」等を改正し、独立行政法人交通安全環境研究所にリコール技術検証部を設置し、実車実験等により自動車の欠陥の原因を検証することとし、体制の強化を完了した。

6)事業用自動車の安全対策
 事業用自動車の交通事故件数は、年間約6万3千件(平成17年)であり、事業用自動車に係る交通事故防止は緊急の課題となっている。このため、運行管理制度の徹底、監査の強化、行政処分の厳格化等を強力に推進している。

7)不正な二次架装等の排除
 不正な二次架装(注3)による積載量や乗車定員の水増し等に対応するため、「道路運送車両法」を平成18年5月に改正し、架装メーカー等に対する立入検査等の規定を新設した。また、ICT化された自動車検査情報の活用等、検査の高度化を進め、不正の排除に努めている。


(注1)飲酒状態の有無を判断し、飲酒状態にある場合にはエンジンを始動させないようにする装置
(注2)事故や急ブレーキ作動時の車両の状態を映像及び減速度等のデータで記録する装置
(注3)自動車の一部部品を取り付けない又は取り外した状態で新規検査を受検し、自動車検査証の交付を受けた後に、当該部品を取り付けて使用者に納車する行為

 

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