第II部 国土交通行政の動向 

1 犯罪・テロ対策等の推進

(1)各国との連携による危機管理・安全保障対策

1)国際交通セキュリティ大臣会合の合意事項の具体化
 国際的な交通セキュリティの確保のため、我が国が平成18年1月に東京で主催した「国際交通セキュリティ大臣会合」は世界的に非常に高い評価を受けており、同年7月のサンクトペテルブルク・サミットにおいて発出された「テロ対策に関するG8首脳宣言」においては、同大臣会合の成果、特に陸上交通分野において国際協力を強化する「陸上交通セキュリティ国際ワーキンググループ」の創設に対する支持が盛り込まれた。同ワーキンググループにおいては、鉄道テロの未然防止・被害軽減策についての国際的なベストプラクティスの策定等に取り組むこととしている。また、液体爆発物、プラスティック爆弾等巧妙化する手口に対応した航空保安検査、大量かつ多種多様であり効率的な保安対策が容易でない航空貨物についてもベストプラクティスの策定、国際基準への反映を図るなど、同大臣会合の合意事項の具体化に向け取組みを進めている。

2)交通セキュリティ確保に向けた国際的枠組み
 平成16年のシーアイランド・サミットで取りまとめられた「安全かつ容易な海外渡航イニシアティヴ(SAFTI)」等、G8やAPEC等の多国間の枠組みにおける交通セキュリティに関する議論に積極的に参加している。また、米国及び欧州連合(EU)との間で、18年6月、10月に第3回日米、第2回日EU運輸保安会議を開催し、積極的な意見交換・政策協調を行った。

3)海賊対策
 海上輸送路を東南アジア周辺海域に大きく依存している我が国にとって、その安全を図ることは重要な課題である。国土交通省及び海上保安庁では、平成18年3月、「海賊等対策会議」において策定された「海賊・海上武装強盗対策の強化について」を踏まえ、日本関係船舶における自主警備対策の推進や情報伝達訓練の実施等関係省庁、民間関係者等との連携強化を図っている。
 また、海上保安庁では、平成12年から、毎年、東南アジア周辺諸国へ巡視船・航空機を派遣し、連携訓練等を行い、沿岸国海上保安機関に対する人材育成、技術供与等の協力を行うなど、各国との連携・協力に努めている。
 さらに、平成18年9月に発効した「アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)」に基づく情報共有センターに職員の派遣を含めた支援・協力を実施するほか、19年1月には、海上保安庁に「海賊対策室」を設置し、体制強化を図っている。
 
図表II-6-4-1 日本関係船舶における海賊等事案の発生場所(2005年)

2005年の日本関係船舶における海賊等事案の発生場所は、インドネシア、シンガポール、マレーシア沿岸となっている。
 
図表II-6-4-2 最近の海賊等事案の発生状況

最近の海賊等事案の発生状況については、2005年は昨年よりも64件少ない266件となっている。発生は東アジアで最も多く、年間117件となっており、インド洋、アフリカ、中南米では約30件から約70件である。
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4)港湾保安対策
 平成18年4月に、「日ASEAN港湾保安向上行動計画」を策定し、同計画に基づき、日・ASEANが参加する情報伝達共同訓練や各種マニュアルの整備を実施するなど、ASEAN諸国の港湾保安対策を推進している。

5)海上におけるテロ対策・PSIへの取組み
 国際社会の平和と安定に対する深刻な脅威となっている大量破壊兵器、その運搬手段及びそれらの関連物資の拡散を阻止することを目的とする「拡散に対する安全保障構想」(PSI)に、我が国も積極的に参加している。海上保安庁は、PSIの関係会合への出席や海上阻止訓練に巡視船や職員を派遣しているほか、ASEAN各国の海上法執行機関に対するアウトリーチ活動(連携の拡大に向けた働きかけ)を実施するなど、PSIに積極的に貢献している。

 

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