第II部 国土交通行政の動向 

(2)公共交通機関等におけるテロ対策の徹底・強化

1)鉄道におけるテロ対策の推進
 駅構内の防犯カメラの増設や巡回警備の強化等に加え、国土交通省では、平成17年8月に鉄道事業者や関係行政機関等で構成される「鉄道テロ対策連絡会議」を設置し、「危機管理レベル」の設定・運用を行うとともに、「見せる警備・利用者の参加」(注)を軸としたテロ対策を推進している。また、「鉄道テロ対策のベストプラクティス」を策定し、国際会議での報告、各国との鉄道テロ対策の情報共有等に積極的に取り組んでいる。
 
図表II-6-4-3 「見せる警備・利用者の参加」を軸とした鉄道テロ対策の実施

鉄道においては、利用者に対して不審物等への注意を喚起する危機管理ポスターを駅構内に掲出し、また、車内通報器には「不審なものを発見したとき」にも使用できることを明記し、さらに、駅ばいてん職員等のテロ防止協力者ワッペンの着用など、「見せる警備・利用者の参加」を軸としたテロ対策を実施している。

2)船舶・港湾におけるテロ対策の推進
 平成16年に「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律(国際船舶・港湾保安法)」が施行され、国土交通省では、国際航海船舶の保安規程の承認・船舶検査、国際港湾施設の保安規程の承認、入港船舶に関する規制、国際航海船舶・国際港湾施設に対する立入検査及びPSCを通じて、海事保安の確保について積極的に取り組んでいる。
 また、国際船舶・港湾保安法が適用されない内航船舶や内航船舶が利用する港湾施設においても、(ア)警戒の強化、(イ)はり紙等による不審物等への注意喚起、(ウ)ゴミ箱の集約等のテロ対策を実施するように指導している。
 
図表II-6-4-4 国際航海船舶及び国際港湾施設における保安措置

ソーラス条約の改正に伴い、国際船舶・港湾保安法が施行され、国際港海船舶、国際港湾施設について、貨物の取扱管理、船舶・港湾内外の監視、出入管理、保安管理者の選任が定められている。さらに、国際航海船舶については、船舶警報通報装置の設置、国際港湾施設については、制限区域の設定などが定められている。

3)航空におけるテロ対策の推進
 我が国では航空機に対するテロの未然防止に万全を期すため、平成17年4月にそれまでの最高水準の警戒体制を恒久化し、旅客及び手荷物の保安検査、航空機の保安強化、空港警備強化等を柱とする新しい航空保安体制に移行した。18年1月には空港内で働く従業員等を対象にした保安検査を開始するとともに、同年4月には航空貨物に対する保安検査を強化するなど、国際民間航空条約に規定される国際標準に従って、順次、航空保安体制の強化を図っている。
 このような状況の中、平成18年8月英国において、液体性爆発物を使用した航空機爆破テロ計画が未然に摘発される事案が発生し、我が国においても直ちに液体物検査の確実な実施等保安検査の徹底を関係者に指示した。また、同年4月以降、神戸空港における車両侵入に加え、東京国際空港(羽田)、宮崎空港においても不法侵入事案が発生したことから、各空港において、車両侵入に対応するため、道路・駐車場・空地脇など侵入が想定される箇所へのガードレール・杭等を設置拡充するとともに、人の侵入に対応するため、フェンスの強化に加え、万一侵入があった場合にも侵入者の迅速な発見・捕捉ができるよう、センサーを設置拡充することとしている。
 さらに、我が国はICAOが策定した航空保安行動計画の推進に財政的及び人的貢献を積極的に行っているほか、ASEAN地域においては、航空保安専門家を集めたセミナーの開催や保安検査機器の無償導入等の支援を実施しており、引き続き航空保安分野の国際的な連携・協力を推進していくこととしている。

4)自動車におけるテロ対策の推進
 国土交通省では、バス事業者及びバスターミナル事業者に対し、主要バスターミナルの巡回警戒、車内の点検、監視カメラによる監視の実施、利用者への不審物発見に係る放送・ポスターによる協力要請の実施等を指示している。また、トラック、タクシー、レンタカーの各事業者に対しても、車内の点検等テロ対策を講じるよう指示している。

5)重要施設等におけるテロ対策の推進
 河川関係施設では、河川点検・巡視時の不審物等に対する特段の注意、ダム管理庁舎及び堤体監査廊等の出入口における施錠の強化等の対策を行っている。
 道路関係施設では、高速道路における巡回の強化やサービスエリア・パーキングエリアのゴミ箱の撤去・集約を行っている。また直轄国道における巡回の強化等を行っている。
 そのほか、国営公園では、巡回警備の強化、利用者へのはり紙掲示等による注意喚起等、工事現場では、看板設置等の注意喚起等を行っている。


(注)「見せる警備」…テロの未然防止を図るため、人々の目に触れる形で警備を行う施策
「利用者の参加」…テロに対する監視ネットワークを強めるため、一人一人の利用者にテロ防止のための意識を持ち行動することを促す施策

 

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