2 所得や雇用の状況  本章の冒頭において、一人当たりGDPや失業率の地域間格差に関するOECDによる国際比較を見たが、ここでは、地域ごとの所得や雇用の状況について我が国における推移を見ることとする。 (県民所得の状況)  近年の各都道府県における一人当たりの県民所得を見ると、県民所得上位県の多くは三大都市圏にある都府県であり、県民所得下位県は地方圏にある県となっている。  一人当たり県民所得の地域間格差を、ジニ係数を用いて見てみると、昭和36年度に0.134を記録するなど、40年代半ばまでは、現在より相対的に高い水準にあり、この所得格差が、前項で見た地方圏から三大都市圏への人口移動を引き起こす一因となったと考えられる。その後、40年代後半以降は、主に地方圏における産業構造の変化等を通じた所得増加により、ジニ係数は急速に低下した。50年代以降は、バブル期に上昇があった後、再び低下する傾向にあったが、直近では、平成13年度の0.070から16年度は0.079へ上昇している(注)。 図表I-1-2-11 一人当たり県民所得の地域間格差(ジニ係数)の推移 (地域の雇用の状況)  地域ブロック別の有効求人倍率について、昭和50年代以降の推移を見ると、有効求人倍率の相対的に高い地域と低い地域があることが分かる。具体的には、北関東・甲信、東海、北陸、中国では、一貫して全国平均を上回る一方で、北海道、近畿、九州では、全国平均を下回り続けてきた。  最近は、景気の回復を反映して、すべての地域ブロックで有効求人倍率が上昇しているが、その動きはそれぞれ異なる。もともと有効求人倍率の高い北関東・甲信、北陸、東海、中国で上昇するとともに、バブル崩壊後に低迷していた南関東でも大幅な上昇が見られ、近畿でも改善が進み平成18年には全国平均を上回る一方で、北海道、東北、九州においては、雇用の改善の動きが弱い状況となっている。 図表I-1-2-12 地域ブロック別有効求人倍率の推移  地域ブロック別の完全失業率についても、近年の推移を見ると、完全失業率の相対的に高い地域と低い地域があり、北海道、近畿、九州では、一貫して全国平均を上回っているのに対し、北関東・甲信、北陸、東海では他の地域より低い状況が続いている。  最近は、景気の拡大を反映して、完全失業率は低下傾向にあるが、北海道、近畿、九州では依然として5%台(平成18年)の高い水準にある。 図表I-1-2-13 地域ブロック別完全失業率の推移  このように地域の雇用の状況が異なっているのは、次に見る地域ごとの産業構造の違いや、次章で見る建設投資の縮減に伴う建設業の雇用減等が影響していると考えられる。 (注)地域間格差は指標の取り方によって様々な解釈が可能になるため、様々な指標から総合的に判断することが必要である。