第3節 「場所を移動する」 

コラム 和歌山電鐵貴志川線のたま駅長

 和歌山電鐵貴志川線は、和歌山駅(和歌山市)と貴志駅(紀の川市)を結ぶ延長14.3kmの地方鉄道路線です。
 元々は南海電鉄の一路線でしたが、マイカー増加等のため様々な需要喚起の取組みにも関わらず利用者が減少し、平成16年9月には事業廃止の届出がなされました。しかし、地域にとって重要な路線を廃止されては困るという住民が、自治体の協力を得ながら存続活動を行った結果、新たに設立された和歌山電鐵が事業を引き継ぐとともに、自治体が鉄道用地を保有し、事業者に無償で貸し付け、かつ、運営を補助することにより、路線が存続されることとなりました。
 住民による利用促進活動、自治体による地域公共交通活性化・再生法に基づく取組み、貴志駅に併設する商店の飼い猫であった「たま」「ミーコ」「ちび」の駅長や助役への任命が話題となったことによる路線の知名度向上など、地域(猫を含む)が一体となった取組みが功を奏し、事業継承後の利用者数は長年の減少傾向に歯止めを掛け、増加に転じています。また、こうした取組みは、関西大学大学院の宮本勝浩教授らが「たま駅長」の就任1年間の経済波及効果を約11億円になるとの試算を発表しているなど、観光振興を含めた地域経済の活性化にも資するものです。
 なお、たま駅長は、その功績から、20年1月にスーパー駅長に昇進し、同年10月には和歌山県から「ナイト(騎士)」の称号を贈られました。21年3月からは、たま駅長をモチーフにした「たま電車」が運行されています。
 たま駅長の話題が全国に広まったように、地域が一体となって公共交通機関を活性化させようという取組みが多くの地域に広まることが期待されます。
 
たま駅長−県から贈られた勲章を首に−

 

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