今後の変化を考えるために、人はどのような地域に住みたいと考えるのか、マインドの面からもみる必要がある。図表38は、現在どこに住んでいるかを尋ねた上で、住むのに最も理想的な地域はどこかを尋ねたものである。「三大都市圏の主な都市」、「地方圏の主な都市」ではそれぞれ同地域に住みたいと考える者が7割前後と高くなっている。また、「三大都市圏の市町村」、「地方圏の市」に住む人は、それぞれの圏域の主な都市に住みたいとする割合が比較的高い。住みたい地域は、全国的にみて三大都市圏の主な都市に集まるとともに、地方圏の中でもその圏域の主な都市に集まる傾向がある。
図表26では、社会移動が減少していることをみたが、都市部への指向は依然としてあることがうかがえる。
ただし、これを持って東京都の方が住みやすいことにはならない。例えば、図表40は、共働き率、持ち家率、合計特殊出生率、19時台帰宅率及び待機児童率について都道府県別にみたものである。地方圏では、持ち家率や合計特殊出生率、19時台帰宅率などは高く、待機児童率は低いなど、三大都市圏と地方圏で生活の諸条件それぞれに特徴があることがわかる。生活の各基礎的条件は地域により異なり、地方圏の方が暮らしやすい要素も多い。
しかしこれは、都市部ではすでに整備がおよそ十分であることを一概に意味するものではない。例えば道路に関してみると、図表42で示すように、近年減少傾向にあるものの依然として渋滞により大きな損失時間が生じており(注1)、都市部の活発な諸活動を支える基盤としては必ずしも十分なものではない。もちろん、地方部においては別の課題が存在する。図表43は、第三次救急医療機関(注2)への到達時間の現状を示しているが、60分圏に入らない地域が地方部を中心に存在しており、アクセスの確保が必ずしも十分ではない。
人口減少・少子高齢化が進みまた厳しい財政状況下で、選択と集中が求められるところであり、地域により事情は異なる中、地域に真に必要なものはなにかを見極めた上でそれに応じた投資が求められる。
このように、地域レベルでみても人口減少や少子高齢化の影響は大きく、将来の地域の姿を変える要素となっている。また、それを支えるまちの中心部や公共交通には、衰退の傾向がみられた。都市と地方の関係をみると、給与などの地域差が広がる一方で、生活の各条件では地方部の方が暮らしやすい要素も多い。社会資本のストックの様子も異なり、地域に真に必要なものは何かを見極めた上で整備が求められる。
(注1)例えば、混雑時旅行速度(一般国道)を沿道の状況別にみると、DID(人口集中地区)21.3km/h、その他市街部31.1km/h、平地部40.3km/h、山地部43.0km/hとなっている。(国土交通省「平成17年度道路交通センサス」による平日値)
混雑時旅行速度:
朝または夕方のいずれかのラッシュ時間帯(7:00〜9:00、17:00〜19:00)に混雑方向に実走行した際の平均速度
(注2)重篤な救急患者を受け入れる救命救急センターを有する医療機関