第1節 震災からの復興 

7 福島の復興・再生等

 原子力災害により深刻かつ多大な被害を受けた福島県の復興・再生を推進している。平成24年5月現在、福島県内の避難者数約9.6万人、県外への避難者数約6.2万人となっており、合計約15.9万人が避難生活を余儀なくされている。今後、警戒区域の見直しに合わせ、避難者の帰還支援を行うため、除染、インフラ整備等の主要課題について政府内での一元的検討と県、市町村との連携を図っていくことが必要である。
 特に、警戒区域内の常磐自動車道については、早期復旧・供用に向けて、関係省庁及び東日本高速道路(株)による放射線対策検討合同チームを設置している。20ミリシーベルト/年未満の区域では、平成24年3月に工事に着手し、20ミリシーベルト/年以上の区域では、24年3月に開始された環境省の除染モデル事業の結果を踏まえ、除染及び工事を進めることとしている。
 
図表40 警戒区域内の常磐自動車道の除染・復旧状況

図表40 警戒区域内の常磐自動車道の除染・復旧状況

 また、24年3月31日に公布・施行された「福島復興再生特別措置法」に基づき、国は、避難解除等区域復興再生計画を策定し、公共施設の工事(道路、河川等)の代行や公共施設の清掃等により当該施設の機能を回復する生活環境整備事業を実施することとしている。また、同法においては、公営住宅への入居資格の特例等により、避難者の居住の安定の確保を図ることとしている。

(下水道における放射性物質対策)
 東京電力福島第一原子力発電所事故により放出された放射性物質は、市街地の表面等に堆積し、特に合流式下水道(雨水と汚水を合わせて収集する下水道)において、雨天時に下水処理場に流入し、処理の過程で下水汚泥に濃縮され、下水汚泥及び下水汚泥を焼却した焼却灰等から放射性物質が検出されることとなった。このため、従来はセメント原材料等建設資材、コンポスト等緑農地利用等に活用されていた下水汚泥等の有効利用・処分に支障をきたすことになった。
 原子力発電所の敷地外に放射性物質が飛散することは、現行法で想定されていなかったため、内閣総理大臣を本部長とする原子力災害対策本部が「放射性物質が検出された上下水処理等副次産物の当面の取扱いに関する考え方」を平成23年6月に示し、その後、同年12月に環境省から「廃棄物関係ガイドライン」が発出され、また、除染と汚染廃棄物の対策を二本柱とする「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(放射性物質汚染対処特別措置法)」が24年1月1日に全面施行された。
 国土交通省では、(公社)日本下水道協会とともに「下水道における放射性物質対策に関する検討会」を23年6月に開催し、下水処理場における放射性物質の挙動の解明と今後の推移の予測、周辺環境への影響、情報提供のあり方、下水汚泥の減容化対策を含めた管理方法等について検討を行い、現時点の知見の集約として、同年11月25日に中間取りまとめを行った。
 「放射性物質汚染対処特別措置法」においては、放射性セシウムについての放射性濃度が8,000ベクレル/kgを超える廃棄物で国が指定した物については、指定廃棄物として取り扱われることとなり、基本方針では、1)指定廃棄物のうち、公共下水道・流域下水道に係る発生汚泥等の処理については国土交通省と連携して環境省が行う、2)指定廃棄物の処理は、当該指定廃棄物が排出された都道府県内において行う、3)廃棄物の再生利用の推進のため、安全性を確保しつつ、可能な限り廃棄物からの再生品(セメントや再生砕石等)の活用を図るものとする、とされており、今後同法に基づき、適切に処理が進むものと期待される。
 
図表41 脱水汚泥等の保管量(平成24年2月3日現在)

図表41 脱水汚泥等の保管量(平成24年2月3日現在)
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